IS インフィニット・ストラトス ~未来をパラドックス~   作:智明

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今回は少しだけ短めです。


五話 ~アイ・ワン・トゥ・ステイ・ヒア~

「箒ちゃんおはよう!」

 

 とある街にある小学校の教室にて箒を待ち構え、元気よく挨拶していたのは箒の親友の鷹月静寐・・・ちなみに五年後に箒と共にIS学園を通う事となる女の子でもある。教室は既に多くのクラスメイトで満員で教師がいない間は基本的に騒がしい。

 

「ああ・・・おはよう、静寐」

「うん・・・ふぇ・・・」

 

 箒が普通に挨拶を返しただけなのにいきなり泣き始める静寐。

 

「ど、どうしたのだ!?何故泣く!?」

「だって・・・箒ちゃんが無事だから・・・」

 

 それを聞いてそれまで騒がしかったクラスメイト達が一斉に箒達へと注目する。

 

「そういえば篠ノ之、お前昨日は誘拐されたって本当か?」

「・・・何故知っている?」

「いや、知ってるも何も・・・昨日お前の母ちゃんから電話があったぞ」

 

 一人の男子がそう言うと・・・

 

「あたしも静寐ちゃんから・・・」

「俺も」

「俺は帰り道に警察から聞かれたよ」

 

 次から次へと箒について色々と語るクラスメイト達。

 

「・・・」

 

 その光景を見ていた箒は唖然としていた・・・そして思い出す。初日でこの学校へ転校した日に箒は常に周辺を無視し、自ら孤独になろうとした。転校して四度目、箒は疲れ果てていたのだ。この生活が始まってからまだ二ヶ月しか立っていないのにとある少年が懐かしく思う。周りなんかはどうでもいい、幼馴染との思い出にただ浸ってさえいれば箒は満足だった。周りのクラスメイト達もそんな箒を見て嫌気が差したのか、転校した初日に比べ徐々に関心を無くし、そして箒と言葉を交す事さえ無くなった。だが彼女・・・鷹月静寐だけは違った。

 

「どうしたの箒ちゃん?ぼーっとしてて・・・」

「あ、いや・・・何でも」

 

 箒がどれだけ周りと壁を取り繕っても静寐だけは何度も話しかけていた。時に静寐は箒に睨まれ、怒鳴られ、脅されたりもした。だが箒が何度拒絶しようとも諦めなかった、静寐だけが彼女を見捨てなかった。何故静寐がここまで箒を気にかけるのか・・・その理由は箒自身にもわからなかった。そしてある日、暗い顔で学校を訪れた静寐の姿があった。クラスメイト達は彼女を心配し、何があったのかと聞くとどうやら両親が喧嘩した事が原因のようだ。子供にとって実の親同士の喧嘩程不安なものはない。静寐が落ち込んだまま席に着くと聞く耳を立てていた箒はランドセルから何かを取り出し、そして目を合わせず、一言も喋らず、ただ物を静寐に手渡した・・・その後箒は教室から出て行った。何を手渡されたかと視線を落とすとミニサイズカートンパックのお茶だった。何事かとクラスメイト達は思いながらも静寐はその意図を理解した・・・それでも飲んで元気出せ・・・と箒は言いたかったのだ。静寐は思わず涙を流した、あの箒がまさか自分を励ます為に行動してくれたなんて。

 

「ところで篠ノ之、今回の騒ぎのせいでまさか転校する事になるのか?」

「そうそう・・・あのなんとかと言うプログラム」

「それは・・・」

 

 これまでの箒の拒絶は自分自身が傷つけられない為と周りが傷つけられない為への幼い箒なりの配慮だった。一夏との別れを経て、箒はこれまでと違い人との交流を改めようとしていた。転校先でも一夏がいなくても友人を作ってみせると彼女なりに努力もした。しかし、どんなに絆を育んでも直ぐにまた別れてしまう。箒がどれだけ頑張っても、問題が起きれば直ぐにまた転校する事となる。ただただ心が痛くて・・・辛いだけなのに、だから箒は再び心を閉ざそうとした・・・なのに静寐は何度も話しかけた。どんなに拒絶しても諦めず何度も箒に話しかけようとした。それがどれだけ箒を感動させたか・・・箒だって人間だ、寂しくて、寂しくて何度も泣た。箒は静寐に全てを明かした・・・自分が抱えてる悩みを。そして静寐はそんな彼女に手を差し伸べて友達になろうと言ってくれた。静寐と友人になった後、箒はクラスメイト達に対し無粋な態度をとっていた事について深く

お詫びしていた。事情はもう話たがそれでも許してもらえないだろうと考えたが・・・結果は箒の杞憂に終わった。むしろ事情を話さなかった事に逆に怒られたくらいである、そして箒にとってそれがたまらなく嬉しかった。

 

「・・・」

「篠ノ之?」

「あ、うん・・・大丈夫だ・・・私はずっとこの街にいる」

 

 それは嘘だ・・・先日の事件で政府が動かない訳がない。今頃家近くでは政府が派遣した仲介業者・・・エージェントが母親である普に接近する筈。おそらく明日、明後日は箒はこの街にはいないだろう。そういえば・・・あの少年はどうなるのだろうか、箒にとっての命の恩人・・・秋葉原夕霧。会ってまだ日は浅いが彼に対して少しだけ心を開きかけ始めた。それはかつて箒がある少年に対して抱いていた気持ちと同様だった。

 

「い、いやいやいやいやいや!」

「箒ちゃん?」

 

 わ、私は今でも一夏が好きな筈だ!まだ二ヶ月しか立っていないが一夏への気持ちはまだ健在な筈!・・・だが箒はここで少しだけ考える。今の夕霧は篠ノ之宅に泊まっているが身内でも何でもない彼が例の保護プログラムに引っかかる訳がない・・・つまり夕霧ともこの街で別れる事になるのだ。

 

「ゆう・・・」

 

 一夏の事が忘れられないが夕霧に対して気持ちが芽生え始めてるのもまた事実。素性が殆ど明かされていないが悪い人ではないなのも確か。夕霧、静寐、そして仲良くなり始めたクラスメイト達・・・せっかく上手くなりかけているのにまた全てを失うのか。箒はとてつもない無力感に苛まれながら最後になるかもしれないこの学校の受業を静かに受けた。

 

 場所は代わりそこは篠ノ之家の仮家の前。車に乗っている二人の黒服の男が会話をしていた。箒達の監視役の二人だった。普段はここから離れたアパートで様子を見てたが今回はある理由で篠ノ之宅を訪れた。

 

「おい、まだ電話が繋がらないのか?」

「やってますけど・・・やはり反応がありませんね」

「盗聴、カメラ・・・そしてお次は携帯か・・・」

「この前までは普通に作動していた筈なのに・・・どう思います先輩?」

「分からん・・・」

 

 ジャミング、ハッキング、器物破損・・・理由は多々あるが篠ノ之箒の誘拐事件発生から昨日今日でこんな事が起こるのはあまりにも不自然。救われた篠ノ之箒、監視機器の無力化・・・明らかに第三者の存在を意味する。

 

「まぁいい・・・そろそろ時間だ、行くぞ」

「はい」

 

 目的はわからないが自分達の仕事を遂行するのに何の問題もない。扉を開け、車から降りようとしたところ・・・

 

「動くな」

 

 二丁拳銃を手に持った八枚羽の黒いISが車の屋根から黒服達をフルフェイスのヘルメット越しで見下ろしていた。

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