IS インフィニット・ストラトス ~未来をパラドックス~ 作:智明
とりあえず読みやすい様に色々と書き方を変えてみました。
季節は冬春、暦は3月中旬。寒さが抜け始める季節だが冷気がまだ肌を痛める。
「う、うぅん・・・」
あまりの寒さで思わず毛布を頭まで被せる。と・・・その時だった、階段からドカドカと駆け上がる音が聞こえたのは。そして鍵がかかってないドアを乱暴に開けてその人物は怒鳴る。
「こらゆう!いつまで寝ている、後少しで遅刻だぞ!」
未だに寝ている夕霧を起し、彼の毛布を無理やり取り上げる・・・だが、それでも起きない。
「いい加減起きろ!」
「ぐふッ!」
箒の正拳突きが夕霧の腹に刺さる。見事にクリーンヒットしたので夕霧は呼吸困難に陥る。
「お、お腹はヤメテ・・・」
「だったら早く起きろ、いい加減時間が過ぎてるぞ」
「う、はい・・・」
夕霧はのろのろと支度を始める。
「・・・」
箒は無言で夕霧をじっと見ている。その視線に耐え切れず、夕霧は文句を言い始める。
「あの・・・気が散るんですけど・・・」
「いやスマン・・・こうして見ていると中学時代の千冬さん見ているようでな」
「・・・そんなに似ているのか?」
「ああ、顔のパーツやその伸びた髪なんか特にな」
とりあえず自分の顔を触れてみる。
(そんなに似ているだろうか・・・)
今まで指摘されたことが一度もないので改めて言われると変に意識してしまう。
「もう時間がないので母さんにはパンだけを用意させるがジャムでいいか?」
「いや、バターで頼む」
「うむ、わかった・・・では下で待っているぞ」
それだけ言って箒は部屋を出る。篠ノ之箒・・・剣道部に所属していた夕霧の先祖。あれから箒と話し合い、二人の関係はややこしくも幼馴染という事て収まってる。
夕霧はさっさと制服を着て伸びた髪を三つ編みに束ねて支度を三分で済ませた。男の支度は早いのである・・・髪以外は。
その後は朝食を急ぎで済ませてはダッシュで家を出る。夕霧がもっと早く目を覚ませれば余裕で出かけることが出来るのだが改善出来ない事をこの五年間で箒は思い知ってる。
そう・・・あれから五年が過ぎたのだ。
「走れゆう!遅刻まで後十分もないぞ!」
「いや、それ絶対間に合わないし・・・」
夕霧はいつもの様に体内で待機中のISを起動させる。起動と言っても呼び出すのではなく、あくまでその機能を使うでけ、そして彼が使ったのはお馴染みの加速装置である。
「掴まれ箒!」
「え、何を・・・ってうわッ!?」
箒を抱き抱えながら高速で走る。その速さは競馬でのラストスパートで駆ける馬の如く・・・ちなみに夕霧はこれでもかなり速さを抑えてる。
そして走って二分弱が過ぎた頃にようやく学校に着いた。
「この方が早いだろう」
「だからと抱き抱える奴がいるか!」
降ろされて間髪入れずに怒鳴るも直ぐにそっぽ向いて頬を赤らめる。
「全く・・・せめて私と二人っきりの時にだな・・・」
夕霧には聞こえたがあえて聞こえないフリをする。
そう、あれから五年・・・二人の関係は幼馴染で収まっているが箒の方は相変わらず夕霧の事を諦めていない。
その証拠に一週間前に織斑一夏が世界初の男性IS操縦者としてテレビや新聞で注目を集めつつも箒は懐かしむだけでそれ以上の感想は特になかった。
この件に関してはもう諦めた方がいいかもしれない。別に某タイムマシン映画みたいに結果が違えば消滅する訳でもないしな。
それより気になるのはやはり織斑一夏がIS学園に入学するという話が進んでいるという事だ。ここまでは歴史通りなのだが気になるのは隣にいる箒までもが入学する事についてだ。
「なあ、箒もやっぱりIS学園に入るのか?」
教室を目指して歩きながら夕霧は質問する。
「愚問だな、ゆうが行くのに私が行かない訳がないだろ」
ちなみに夕霧もIS学園の入学もとっくに政府から決定が下されている。何故そうなったかというと・・・話は一月前に遡る。世界で唯一の男性IS操縦者が見つかり世界中でその事実を発表された。一人でも大騒ぎなのに政府の人間や研究員は゛他にもいるかもしれない゛と欲張り、世界中で男性のIS適正試験を同時に始めた。
そして三日間に渡る検査の結果、日本でもう一人だけIS適正のある男子が発見された・・・それが秋葉原夕霧である。こうして織斑一夏は唯一では無くなり、夕霧と仲良く入学が決まったのだった。
「でも箒の成績は低い上にIS適正もCだろ、やっぱ無理なんじゃ・・・」
「ゆうは私とじゃ嫌なのか?それに政府がコネで入れてくれると言ってくれたのでそれに乗った、これでも問題か?」
「箒といやって訳じゃないんだが・・・」
可愛いし良い子で間違いないのだがやはり相手が血の繋がりがあるとどうしても抵抗してしまう。何よりこれから起こる数々の事件を知ってるだけに箒を巻き込みたくない思いもある。
(一夏さんの事を諦めたんならISから離れて普通の生活で暮らして欲しいんだが・・・)
「まぁいい・・・この話も何百回も繰り返したから別に落ち込まないが・・・それでもやはり寂しいな・・・」
夕霧が箒の子孫という事は彼女自身も知っている。しかし、そうと分かっていてもまだ若い箒に親の気持ちや先祖としての気持ちなんて分かる訳がない。
夕霧はちょっとだけ肩を落としてる箒を励まそうとするが既に教室に着いたのでそれぞれの席に座る。
そして今日もいつも通りに授業を受ける。夕霧は授業を受けながら今までの五年間を頭の中で振り返る。
夕霧が自分の正体を箒に明かした数日後、箒の母親である篠ノ之普は夕霧に養子にならないかと持ちかけたが夕霧はこれを断っている。それが普の気持ちだと知りつつも断らなければいけないと夕霧は思ってる。
それでも普は夕霧の力になりたいと強く思っていたのでせめて彼の生活をサポートしたいと申し出た。何の当てもない夕霧は生活を保証してくれるのは大変ありがたい話である。彼としてもこれ以上は気持ち的に断りきれないのでその申し出を受け入れる事にした。ちなみに普は夕霧が未来人である事を知らない。
その後は箒と共に学園生活を送っている。休みの日は箒達に黙ってISで世界中を飛び回る、何の為かといえば『組織』について調べる為だ。『組織』について何か情報はないか、何かが動き出す前に出来ることはないか・・・答えは何もなかった。
『組織』には元々組織としての名前は存在しない。所有してるビル、研究施設、拠点もなくただ『組織』として存在している。会員は基本的にネットでどこにでもありふれたとあるサイトで話のやり取りをする。これに関してさすがの夕霧もびっくりした。これが『組織』としてのカマフラージュなのか、それともまだ力が弱いだけなのか・・・夕霧は目を離さず動向を見守っている。
そうして意識を過去に向けながら今日一日の終わりを告げる予鈴が鳴る。
「はい、今日はここまでにしよう」
そして各自帰り支度を始める。
「あ、そうそう秋葉原君・・・校長室で君に客人が来ているよ、会いに行って来なさい」
初老の教員はそれだけ言って教室を出る。
「ゆう、終わるまで待つか?」
「いや・・・先に鷹月さんと帰りなよ、いつ終わるか知らないし」
「そうか、じゃまた後でな・・・行こう静寐」
「うん、また明日ね夕霧君」
箒の親友である鷹月静寐は夕霧にお別れを済ませて箒と共に帰る。二人が出ていくのを見計らった後、夕霧は校長室へと向かう。校長室は教室から歩いて二十秒の距離しかない為直ぐに着いてしまう。
「校長室なんて初めて来たよ俺・・・」
校長室と書かれたプレートを見ながらドアをノックする。
「入れ」
「失礼します」
ドア開けた先に夕霧に会いに来たを人を見つける。その人に見覚えがあった、いや・・・ない方がおかしいだろう。
「初めまして、私はIS学園の教員の織斑千冬だ・・・よろしく」
夕霧に対し千冬は手を差し出した。握手のつもりだが、夕霧は慌ててその手を取る。
「フッ、そう緊張するな」
「あ、はい・・・すみません・・・」
「まぁ・・・とりあえず座ろう」
そう進められて夕霧は如何にも高そうなソファーに座る。そして気がつく、校長がどこにもいない事に。
「校長先生には私から席を外させてもらった・・・この場にはお前と私しかいない」
夕霧が辺りを見回した事を悟り、そう言い足す。そして夕霧に今後のIS学園での寮生活や授業の説明を始める。織斑千冬・・・第1回IS世界大会モンド・グロッソ総合優勝者および格闘部門優勝者。公式試合では一度も負けたことがなく、大会で総合優勝を果たしたことからも誰もが認める世界最強のIS操縦者。その美貌や実力に憧れを抱く者は多く、彼女を敬意をもって『ブリュンヒルデ』と呼ばれてる。
(そして彼女が一夏さんの姉で俺の・・・)
夕霧が千冬を分析しながらも彼女の説明を聞き逃さず全てを頭に入れている。やがて千冬は説明を終えては深呼吸をする。
「ふぅ・・・少し喉が渇いたな、お茶を入れてくれるか」
「あ、はい・・・ただいま・・・」
そう言われて夕霧は急ぎでお茶を作る。そして淹れたてのお茶を千冬に手渡す。
「すまんな」
「いえ・・・」
「少しはリラックスしたらどうだ、お前を見てると逆にこっちが疲れる」
「・・・すみません」
「はぁ・・・そうだな、今後の学園生活について何か聞きたい事とかあるか?いやあるだろ、何せこっちは男子禁制の女の薗だからな」
千冬はニヤついて夕霧をからかう。夕霧は気づく、千冬はこの様に人いじるの好きなのだろうと本能的に悟った。
「質問・・・ですか」
「ああ、なんだって構わん」
夕霧はいい機会だと思い、彼は先程から抱いていたある疑問をぶつけてみる。
「何故貴方が来たんですか?」
「ふむ?」
「だってそうじゃないですか・・・説明するだけならわざわざ貴方が来なくてもいい筈です・・・なのに」
「質問の意図がいまいち分からんが私だって教員だ、これぐらいの仕事だって請け負う事ぐらいある」
「俺は貴方がどういう経歴をしているか当然知っています・・・その上で聞きます、何故
千冬は手に持ったお茶を置いて考える。
「貴方の考えを当てましょうか?本来ならば一夏以外の男性IS操縦者が現れるわけがない、その理由は貴方自身も知っている筈です・・・だが実際に二人目が現れるというイレギュラーが発生した・・・だから貴方が直接俺に会いに来たと・・・」
まるで確信を突かれたかの様に千冬は反応する。その夕霧の言葉に思わず睨むが直ぐにやめる。
「はぁ・・・君は私や一夏を恨んでいるのか?だから学園に入学を・・・」
やはり当たりだった。しかし、正体を明かす訳にもいかないのでこのまま合わせて嘘をつくことにする。
「言っておきますけど俺が見つかったのはあくまで偶然です・・・元より貴方や一夏に危害を加えるつもりなんて微塵も考えていませんよ」
織斑千冬はある意味に置いて全ての元凶と位置づけされてもおかしくない。それだけ彼女のしでかした事があまりにも世界に大きく影響している。しかし、彼女を責めるのは難しい・・・何故なら責めるには彼女の願いが余りにも優しすぎるから。
「それに俺と貴方達姉弟の間に関係なんてありません・・・俺には俺の家族がいる様に貴方の家族は一夏だけです」
「・・・そうか」
千冬は静かに呟く。まるで報われたかの様に少しだけ笑ってみせる。そして話が終わり、彼女は校長室を出ようとすると後ろから夕霧に呼び止められる。
「それとも今後はお姉ちゃんとでも読んであげましょうか?」
「やめろ気持ち悪い・・・それと学園では織斑先生な」
夕霧は先程までの重い空気を何とか払拭させてみせた。箒同様、千冬にだって幸せになって欲しいと夕霧は願う。例え罪を犯してでも。
「あ、そうだ・・・一つ確認するがお前以外にもいたりするのか?」
それが何を指しているのか夕霧は知っている。
「他は知りませんが一人はいます、そいつは堂々と織斑と名乗っていますよ」
「そうか」
それだけ言って千冬は校長室を出る。残された夕霧はソファーに寝転がり、天井を眺めながら呟く。
「・・・織斑、か」
その存在がどういうものかは夕霧は全てを知っている。知っていてもどうにもならない事も。千冬も最初からこうなる事が分かっていた・・・だが、それでも彼女は愛を欲した。夕霧は織斑の運命をも変えられるだろうか・・・全ての答えはIS学園にある。
こうして千冬との面会が終わり、二週間後に夕霧はIS学園へと入学する事となる。