ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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申し訳ございません!めちゃくちゃ時間かかってしまいました!約半年ぶりの投稿です!

ほんとになかなか時間が取れなくて先程ようやくストーリーを書き終えました!

長い間お待たせしてしまい申し訳ございません!

とりあえず半年ぶりのお話をどうぞ!



Part101 検査~藍子と木綿季の運命~

時間はほんの少しだけ遡り、6月中旬頃・・・

 

哲也「失礼します。」

 

藍子「いらっしゃい、哲也君。」

 

今日は藍子さんの元に行き、お見舞いと俺と木綿季の現状報告の日だった。

 

え?お前一体いつぶりに藍子さんに会いに来たんだって?

 

いやいや、それは諸事情で省いていただけでちゃーんと毎月2~3回は会いに行ってるんだぜ。

 

哲也「どうですか?その後の様子は。」

 

藍子「えぇ、もう病気なんか関係ないってくらい絶好調よ!!!!」

 

哲也「それは良かったです。ていうかすいません、昨日木綿季と一緒に来れなくて・・・」

 

藍子「良いの良いの、哲也君も大変なんでしょ?」

 

哲也「ま、まぁ・・・」

 

そう、今日は木綿季とは一緒ではなく俺1人でのお見舞い。本当は昨日木綿季と一緒に行くはずだったのだが、俺と翔は部活の関係で居残り練習。木綿季と琴音らマネージャーは残る必要は無いので帰らせ、木綿季はそのまま病院へ。

 

まぁ本来木綿季も今日来るはずだったのだが、藍子さんが『貴方は友達と遊んできな。折角の花の女子高生なんだから、今の内に楽しんでおきな♪』とのことで今日は明日奈や琴音らと『星輝くカフェ』通称スタフェに行っている。

 

藍子「さて、今日はどんな面白い話を聞かせてくれるのかな?」

 

哲也「今日も飛びっきりの木綿季秘話を持ってきましたよ~!」

 

藍子「それじゃあ、早速聴こうかな♪」

 

俺は藍子さんにとって妹である木綿季のあんな話こんな話を色々と話した。例えば、木綿季がこんなドジをしたとか、木綿季が寝込みを襲ってきたとか。

 

藍子「あら、木綿季ったら大胆ね。」

 

哲也「まぁ、おかげで俺と木綿季の中はもっと深まりましたね。」

 

藍子「ふふふ♪あ、哲也君?避妊はしなきゃ駄目よ?いくら可愛い木綿季がおねだりしてもそれだけは甘えさせちゃいけないんだから。」

 

哲也「は、はい・・・」

 

藍子「近い将来、そんな日が来るんだからそれまで我慢よ♪ね♪」

 

そう言って藍子さんはウィンクしてきた。木綿季の可愛らしいウィンクとは違い、綺麗で美しいウィンクだ。おっと、決して木綿季が美しくないって言ってるわけではねぇぞ?

 

哲也「ははは・・・」

 

藍子「・・・・・・哲也君、ちょっといいかしら?」

 

哲也「はい?」

 

藍子「・・・一応まだ木綿季には内緒にしてるんだけども・・・以前今使ってる薬でウィルスを倒せるかもって言ったじゃない?」

 

哲也「はい。覚えてます。」

 

藍子「実は、その薬が更に強化されて、もしかしたら私の病気、治るかもしれないの。」

 

哲也「えっ!?それってほんとですか!?」

 

藍子「えぇ、でも、確率は五分五分。手術って形でウィルスを撃退するんだけど・・・」

 

哲也「五分五分ってことは・・・」

 

藍子「えぇ、全身麻酔をかけて、その内に薬を体内に注入するんだけど、もし体内に入れる薬が多すぎたら・・・・・・私はそのまま、目を覚ますことはないって。」

 

哲也「なっ!?」

 

藍子「薬の量は分かってはいるんだけども、この手術自体本当に最近見つかったものだから医者の皆もその手術の経験が足りないからどうなるかはって・・・足りなかった分には良いんだけど 入れすぎた場合には・・・」

 

哲也「そんな・・・」

 

藍子「でも、成功すればもう完全にウィルスは消滅。今まで通りの生活が送れるわ。今のままなあなあにして過ごすより、一発逆転のホームラン狙いで手術して、成功して楽しい生活が送れるなら私は手術を取るわ。」

 

哲也「・・・・・・決意は固いみたいですね・・・・・・」

 

藍子「だって、成功すれば木綿季や哲也君に、渚ちゃん達と遊べるようになるんだよ?そんなの想像しただけでワクワクするじゃない!」

 

哲也「藍子さん・・・・・・俺には、病院で寝たきりの生活なんて考えられない。でも、俺ももし同じ待遇で、死か楽しい未来を選択するなら、楽しい未来を取ると思います。俺は藍子さんの意見を尊重します。」

 

藍子「ありがとうね哲也君。一応お爺ちゃんやお婆ちゃんにはこのことを話してあって、2人も私の意見を尊重してくれてるんだ。」

 

哲也「じゃあ、もう手術に踏み込むんですね。」

 

藍子「えぇ。木綿季には手術1週間前に伝えようと思うんだ。」

 

哲也「いつ頃が手術なんですか?」

 

藍子「7月の頭かな?そんなに長くはかからない手術らしいの。もし、私が死んじゃったらその程度の運命だったのよ。」

 

哲也「大丈夫ですよ、きっと成功します。」

 

藍子「ふふふ。哲也君に言われると自身になるわ♪」

 

哲也「気持ちは上に保ってくださいね。ネガティブ思考でいるとろくな事は起こりませんよ。」

 

藍子「うん。ありがとうね哲也君。」

 

こうして、俺はあの日に藍子さんの手術の事を聞いて。今日この日、そう、藍子さんの手術の日に至る。

 

俺と木綿季は病院の近くのバス停に着いて、徒歩で病院に向かっていた。

 

木綿季「あぅぅ・・・怖いよぉ・・・」

 

哲也「こらこら、お前がそんなネガティブだと、藍子さん本当に死んじゃうぞ?死んじゃうなんて考えるなよ?」

 

木綿季「だってぇ・・・」

 

木綿季は涙目で俺に悲しさを訴えかけてくる。俺はそんな木綿季の頭を軽く撫でながら続けて言った。

 

哲也「大丈夫さ、今までだって絶望の淵を乗り越えてきたのが俺達だろ?きっと手術も上手くいくよ。」

 

木綿季「うぅぅ・・・」

 

哲也「俺だって怖いんだ。でも藍子さんは自分でその道を望んだんだ。だったらその道を応援してやるのが俺らの筋だろ?」

 

木綿季「・・・・・・頑張る・・・・・・」

 

木綿季は出てきそうな涙をこらえながら必死にその言葉を出した。

 

哲也「よっしゃ、それでこそ木綿季だ!」

 

俺は木綿季の手を繋ぎ病院で待ってる藍子さんの元へと向かった

 

~病院~

 

今日は姉ちゃんも藍子さんの手術の応援に来てるらしい、俺らより早く着いたみたいだから多分もういるはずだが・・・

 

渚「哲也、遅いわよ。」

 

哲也「あ、悪い悪い、ちょっとばかし木綿季あやしててさ。」

 

木綿季「・・・・・・・・・」

 

渚「大丈夫よ木綿季ちゃん、藍子ちゃんならきっと上手くいくから!ねっ?」

 

木綿季「でも・・・半分半分なんてそんなの・・・」

 

「弱音を吐きたいのはお前じゃないんだぞ、木綿季。」

 

声のした方向を向くとそこには源次郎さんの姿が。

 

源次郎「藍子だって内心では怖いだろう、でもその先にある未来のために恐怖を押し殺してるんだ。だから木綿季もお姉ちゃんのこと応援してやってくれ。」

 

木綿季「・・・・・・じゃあまずお姉ちゃんに会わせてよ・・・・・・」

 

渚「それは藍子ちゃんも言ってたの、ほら、こっちよ。」

 

源次郎「哲也君も是非。」

 

哲也「えぇ、無論そのつもりです。」

 

俺と木綿季は姉ちゃんと源次郎さんに連れられ、手術を控える藍子さんの元へ。

 

~藍子の病室~

 

渚「藍子ちゃん、入るね。」

 

姉ちゃんが病室のドアを開けると、そこには普段と変わらぬ藍子さんがそこにはいた。

 

源次郎「木綿季と哲也君が来てくれたよ、藍子。」

 

藍子「来てくれたんだね、2人共。」

 

木綿季「お姉ちゃん!!!」

 

木綿季は藍子さんに近づくと思い切り抱きついた。

 

藍子「ゆ、木綿季~!!苦しいよ~!!」

 

木綿季「お姉ちゃん・・・死んじゃやだよ・・・・・・?絶対手術成功させてね・・・・・・」

 

藍子「木綿季・・・・・・大丈夫よ、信じて待ってて♪私今から楽しみにしてるんだから、木綿季や哲也君達と遊びに行くのが!」

 

渚「私だって楽しみなんだから、こんな所で死なないでよね!」

 

藍子「木綿季のウェディングドレス姿を見るまでは死ねないわよ♪」

 

哲也「藍子さん、頑張ってくださいね。未来を手繰り寄せてきてください!」

 

藍子「えぇ、勿論よ!手術が成功して退院したら、嫌ってほど皆には付き合ってもらうからね!」

 

良かった、どうやら藍子さん自身は手術に恐怖感はないみたいだ。後は本当に手術をしてくれる担当医の人に任せるしかない。

 

俺達ができるのは、精一杯の懇願だけだ。『藍子さんの手術が成功するように』って。

 

木綿季「うぅぅ・・・やだよぉ・・・・・・怖いよぉ・・・・・・」

 

藍子「こらこら、木綿季がそんな事じゃ私死んじゃうよ?木綿季もお祈りしてて♪手術が成功するようにって!!」

 

源次郎「木綿季、藍子の言う通りだ。ここにいる誰もが控えてる手術に恐怖感は抱いている。それでも成功した時の喜びも同様に考えている。木綿季も信じるんだ。手術の成功を。」

 

木綿季「・・・・・・分かった。ボク覚悟を決めるよ!!」

 

そう言って木綿季はしがみついてた藍子さんから離れた。

 

木綿季「ボク一生懸命お祈りする!信じる!手術の成功を!だから、次にお姉ちゃんに甘えるのは手術が成功した時!だからお姉ちゃんも絶対負けないでね!」

 

藍子「木綿季・・・・・・ふふふ♪可愛い妹に言われたらそうするしかないわね♪任せなさい♪絶対に成功して戻ってくるわ♪」

 

こうして、手術前の会話の時間を終えると、いよいよ藍子さんの手術の時。

 

それは、藍子さんが自由の権利を勝ち取るのか、それとも勝ち取れずにそのまま消え去ってしまう存在なのか。藍子さんの運命が試される。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

手術自体は10分少々で終わるらしい。俺達は手術室の前で藍子さんを待っていた。

 

木綿季「・・・・・・・・・」

 

木綿季は時間が経つにつれ俺の手を握る力が強くなっていく。さっきはああ言ったが内心ではまだ怖いんだろう。

 

俺は木綿季を撫でて落ち着かせながら手術室のライトの消灯を待った。

 

とてつもなく長い時間にも感じられた10分15分が過ぎると、手術室のライトは消えた。

 

木綿季「っ!!!!!」

 

木綿季は俺から手を離すと共にすぐさま手術室の前に立った。すると、中から担当医の人が出てきた。

 

木綿季「先生!!!!!お姉ちゃんは!?」

 

「・・・・・・・・・・・・誠に申し訳ありません・・・・・・・・・・・・」

 

哲也「っ!?」

 

木綿季「へ・・・・・・?」

 

「・・・・・・我々も細心の注意で望んだのですが・・・・・・」

 

渚「う・・・・・・嘘・・・・・・でしょ!?」

 

木綿季「嘘だ!!!!!」

 

木綿季は先生を押しのけて病室の中に入っていった、俺達も木綿季に続いて病室に入った。

 

そこには手術を終えた藍子さんが目を覚まさぬまま、眠っていた。

 

木綿季「お姉ちゃん!!!!!嘘だよね!?ねぇ!!!!!ねぇってば

!!!!!」

 

源次郎「先生・・・・・・本当に・・・・・・本当に藍子は・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・申し訳ありません・・・・・・彼女の希望を叶えられず・・・・・・」

 

木綿季「お姉ちゃん!!!!!お姉ちゃん!!!!!お姉ちゃん!!!!!!!!!!」

 

渚「そんな・・・・・・なんで・・・・・・」

 

哲也「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺は何も言えずただ泣きながら叫ぶ木綿季と静かになく姉ちゃんのそばにいた。理由は簡単だ 俺だってまさかこんなとこで藍子さんが・・・・・・

 

木綿季「・・・・・・なんで・・・・・・?なんでいつもこうなの!?SAOから生還したと思ったら変な人に捕まえられて!!!!!その騒動が終わったら哲也は死んじゃうし!!!!!・・・・・・それで・・・・・・今度はお姉ちゃんだなんて・・・・・・・・・こんなのおかしいよ!!!!!!!!!!」

 

木綿季は大粒の涙を流しながら藍子さんに抱きつき、自分の悲しみを吐露した。

 

哲也「木綿季・・・・・・」

 

木綿季「嘘だって・・・・・・嘘だって言ってよ!!!!!お姉ちゃん!!!!!!!!!!」

 

いくら泣き、叫ぼうがもう運命は変えられない・・・・・・神様・・・・・・貴方も酷いよ。毎度毎度木綿季を酷い目に合わせるなんて。

 

哲也「藍子さん・・・・・・」

 

俺は藍子さんの元に近づき、藍子さんとの短くも楽しかった思い出を思い出していた。

 

いつもいつも木綿季の事で会話して、互いに木綿季への愛を譲らず、張り合う。それがとてつもなく楽しかった。もうそれが出来なくなるなんて・・・・・・

 

哲也「今まで・・・・・・ありがとうございました・・・・・・」

 

俺は涙をこらえながら藍子さんの手を握った。

 

死の直後からか、まだほんのり暖かい藍子さんの手を、俺はぎゅっと握った。

 

渚「藍子ちゃん・・・・・・いままでありがとうね・・・・・・天国でも私達のこと見守っててね・・・・・・・・・」

 

姉ちゃんは必死に涙を堪えながらそう話す、姉ちゃんにとってはほぼ義理の姉妹に近かった人だ、辛いのは当たり前だ。

 

源次郎「藍子・・・・・・よく頑張ったな・・・・・・安らかに眠ってくれ・・・・・・」

 

源次郎さんは背を向けながら、声を震えさせながらそう伝えた。俺は今まで見たことのない源次郎の姿に更なる悲しみを抱いた。

 

木綿季「お姉ちゃんの馬鹿!!!!!馬鹿馬鹿馬鹿!!!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死んじゃ嫌だよぉ・・・・・・」

 

・・・・・・藍子さん、俺絶対木綿季を守ってみせます。だからそっちに行っても不安にならないでくださいね。

 

さよなら、藍子さん。

 

「─────ぷっ。」

 

哲也「・・・・・・へ?」

 

渚「だ、誰よ・・・今笑ったの・・・・・・」

 

源次郎「お前か!?」

 

源次郎さんは医者の人の胸ぐらを掴み、高く持ち上げた。

 

「ち、違います!!!!!」

 

木綿季「じゃあ誰なのさ・・・・・・・・・お姉ちゃんのことを笑ったのは!!!!!!!!!!」

 

木綿季が余りの怒りに叫んだ。一瞬の静寂を包んだ後に次に声を出したのは・・・・・・・・・

 

藍子「ふふふ、私よ木綿季。騙してごめんね?」

 

そう、死んでしまったはずの藍子さんだった。

 

木綿季「へ・・・・・・・・・?」

 

藍子「ごめんね?私皆のことをドッキリさせたくて担当医の人に無理言って手伝って貰っちゃったの♪」

 

木綿季「じゃ、じゃあ手術は!?」

 

藍子「大成功よ♪」

 

木綿季「っ・・・・・・・・・やったぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

木綿季は今度は嬉し涙を流しながら藍子さんの首元に抱きついた。

 

藍子「皆ごめんね?騙すようなことしちゃって♪」

 

渚「もぉ!!!!どれだけ悲しんだと思ったのよ!」

 

源次郎「・・・・・・済まなかった・・・・・・手荒な真似をして・・・・・・」

 

源次郎さんは担当医の人に頭を下げた。

 

「いえいえ、こちらも騙すような真似をして申し訳ありません。」

 

哲也「貴方も貴方ですよ。なんでこんなことに加担を・・・」

 

「それは藍子さんが自身のことを本当に皆が心配してくれるのかか知りたいとのことで、協力をさせてもらいました。どうですか?藍子さん。」

 

藍子「はい♪もう大満足です♪哲也君に至っては未だに手を握ってくれてるし♪」

 

哲也「あ、すいません直ぐに・・・」

 

藍子「えぇ~離しちゃうの~?」

 

哲也「・・・・・・分かりました。藍子さんの気の済むまでに。」

 

流石は姉妹と言ったところか。まるでわがままな時の木綿季のような声に、俺は逆らうことは出来なかった。

 

木綿季「お姉ちゃん!!!!酷いよ!ボク本当に心配したんだからね!!!!」

 

藍子「ごめんね木綿季。お詫びにいっぱい撫でてあげる♪」

 

藍子さんは木綿季のことを撫でながら優しく抱きしめた。

 

木綿季「・・・・・・うっ・・・・・・うっ・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

木綿季は大きな声で泣き出した、今度は悲しさとは正反対の、喜びからの涙だった。

 

藍子「木綿季、これからもよろしくね♪」

 

木綿季「うん・・・!うん・・・!」

 

俺達は姉妹のこれからの運命が幸運であることを祈りながら、2人を優しく見守った。

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

木綿季も落ち着き、ひとまず藍子さんの病室に戻り藍子さんのこれからについて医者の人に聞こうとしていた俺達・・・・・・だったのだが。

 

渚「木綿季ちゃん!大丈夫だって!」

 

木綿季「やっ!!!!!」

 

源次郎「木綿季、きっと大丈夫だから言うことを・・・」

 

木綿季「やだったらやっ!!!!!」

 

藍子「お姉ちゃんも頑張ったんだよ?木綿季も・・・・・・」

 

木綿季「それでもいやぁー!!!!!!!!!!!!!!!」

 

哲也「困ったなぁ・・・」

 

木綿季は俺の背中に抱きついて俺達の説得を拒否している、このやり取りが既に30分近く。なぜのようになったかと言うとそれは30分前に遡る。

 

~30分前~

 

哲也『藍子さんはこれからどうなるんですか?』

 

『手術も無事に成功したので、後はリハビリをこなせば日常生活を送れるようになります。退院は藍子さんのリハビリの進行具合ですね。』

 

木綿季『頑張ってねお姉ちゃん!』

 

藍子『任せなさい♪』

 

渚『なにか辛いこととかあったらすぐ言ってよね、私達が手助けに行くから!』

 

藍子『ありがとね渚ちゃん♪頼らせてもらうわね♪』

 

源次郎『・・・・・・さて、木綿季。』

 

木綿季『?何?』

 

『実は貴女にも一応の為検査を受けてもらいます。』

 

哲也『検査?何の?』

 

『HIVのです。木綿季さんの場合ほとんど可能性はありませんが念の為という事で源次郎さんにお願いをされていまして。一応今回の結果で陽性の反応が出なければ今後家系内でのHIVの心配は無くなると思います。』

 

木綿季『・・・・・・・・・』

 

源次郎『さ、木綿季。お前も検査を・・・』

 

木綿季『嫌!!!!!!!!!!』

 

木綿季はそう言うと俺の背中に隠れた。

 

哲也『ゆ、木綿季!?』

 

木綿季『い、嫌!絶対やだ!』

 

藍子『木綿季?ただの検査だよ?そんなに怯えなくても・・・』

 

木綿季『・・・・・・お姉ちゃんが手術に成功したことは凄く嬉しかった・・・・・・けれど、もし今までみたいにボクに不幸が舞い降りるならボクは多分陽性の結果になると思う・・・・・・そんな結果知りたくないもん!!!!!』

 

源次郎『むっ、まさか木綿季が嫌がるとは・・・・・・どうしてもか?』

 

木綿季『どうしても!!!!!』

 

哲也『大丈夫だって!お前なら平気だよ!頑張ろうぜ木綿季!』

 

木綿季『哲也が言ったって嫌!!!!!』

 

・・・・・・・・・と、こんな感じで木綿季が検査を拒み続けているんだ。大丈夫だとは思うんだがなぁ・・・・・・

 

哲也「なぁ木綿季、もしHIVにかかってたとしても今回みたいに手術があるし・・・・・・」

 

木綿季「そんな安い問題じゃないの!!!」

 

木綿季は背中越しに続けた。

 

木綿季「幸せな日々をいつもいつも壊されてきたんだもん!!!!きっと今回だって病気にかかっていて・・・・・・手術も失敗して・・・・・・それでボクは・・・・・・」

 

哲也「木綿季・・・・・・」

 

木綿季の言いたいことは分かる。俺達はいつだって苦しい現実との戦いだった。

 

SAO事件に巻き込まれ、その事件が終わったと思えば木綿季は須郷に監禁されされ、須郷も倒したと思えば俺は銃弾に・・・・・・木綿季からしたら苦難以外の何物でもないないよな。

 

哲也「・・・・・・確かにそうだったかもしれない、でも、もういい加減悪魔も木綿季を手放したんじゃないのか?きっといい結果になるさ。」

 

木綿季「・・・・・・・・・それでもいや!!!!!」

 

木綿季は抱きつく強さを更に強めそう言った。

 

藍子「うーん・・・・・・困ったなぁ・・・・・・」

 

源次郎「まさかこんなことになるとは・・・・・・」

 

渚「木綿季ちゃんの気持ちもわからなくもないかもしれない・・・・・・けれど、検査しなきゃ病気にかかってるのかかかってないのか分からないモヤモヤが一生ついて回るよ?それでもいいの?」

 

木綿季「・・・・・・もし検査して病気だってわかっても今回みたいに手術すれば平気かもしれない・・・でも!今回みたいに上手くいかなかったりしたら・・・・・・そんなこと考えたくもない!!!!!死にたくない!!!!!」

 

・・・・・・死にたくないか・・・・・・仕方ねぇ、だったら俺も木綿季の為に腹くくるか。

 

哲也「・・・・・・藍子さん、果物ナイフありますか?」

 

藍子「果物ナイフ?あるけど・・・・・・」

 

哲也「貸して貰えませんか?」

 

藍子「良いわよ、はい。」

 

藍子さんは机の棚から果物ナイフを取り出し、俺に渡してくれた。

 

渚「何するの?まさかこの状況でリンゴの皮剥くとか言うじゃないでしょうね?」

 

哲也「そこまで空気読めねぇやつじゃねぇよ。木綿季、手出して。」

 

俺は背中に抱きついてる木綿季の方に向き、木綿季の手を差し出すように右手を出した。

 

木綿季は不思議そうに俺の右手に手を乗せてきた。

 

哲也「悪いな木綿季、少し痛いぞ。」

 

俺は木綿季の手の甲を果物ナイフで微量な血が流れる程度に斬った。

 

木綿季「っ・・・」

 

細かな切れ目から流れる木綿季の血液。俺はその血を指ですくい、その血のついた指を口に運んだ。

 

これは何を意味するか?HIVウイルスは性行為なので移ると言われているが、相手の血液が自身の体内に入ることもまた移る原因と言われている。つまり、俺は木綿季がもしHIVにかかってた場合俺もまたHIVに感染するという訳だ。

 

ただ、微量の血を体内に含むだけで感染する確率はかなり低い。だけど、俺はこの行為で一生涯木綿季と共にいると誓いたかった。

 

哲也「・・・・・・よし、これでOKだな。」

 

藍子「哲也君!?何してるの!?」

 

木綿季「そうだよ!もしボクがウイルスにかかってたら・・・!!」

 

哲也「なぁに、俺と木綿季は一蓮托生。もしお前が病気にかかってんなら俺だって同じ様に病気にかかってやるさ。一緒に闘病生活も送ってやる。」

 

渚「哲也・・・」

 

源次郎「・・・・・・なぁ木綿季、哲也君が病気にかかったのかどうか、知りたくないのか?」

 

木綿季「っ!」

 

藍子「そうだよ木綿季!哲也君は自分の身を呈して木綿季に一緒にいてくれることを誓ったんだよ!私も哲也君も勇気を出したんだから、今度は木綿季の番だよ!」

 

木綿季「・・・・・・哲也。」

 

哲也「どうする?俺はこのままでも構わないぜ?病気かどうか分からないスリリングな生活も悪かねぇ。」

 

木綿季「・・・・・・そんな思い・・・・・・哲也にさせたくない・・・・・・ボク検査受ける!」

 

「っ!ホントですか!?」

 

木綿季「哲也が誓ってくれたんだもん・・・・・・今度はボクが哲也の為に!」

 

源次郎「良く言った木綿季!」

 

藍子「それでこそ私の妹ね♪」

 

俺の背中から離れ、決意を表す木綿季。俺は多少の冗談も交えてこう続けた。

 

哲也「なんだ?怖いんじゃないのか?」

 

木綿季「哲也の為なら恐怖心なんて捨ててやるんだ!待っててね哲也!」

 

木綿季の目は真の決意を表していた。どうやら心配も無さそうだ。

 

哲也「よっしゃ!なら行ってこい木綿季!」

 

木綿季「うん!」

 

「では、こちらへ。検査が終わり次第こちらにお戻りしますので、こちらでおまちください。」

 

木綿季は医者の人に連れられ、検査へ向かっていった。

 

哲也「ったく、天真爛漫で元気なのにビビりなのは変わんねぇな。」

 

藍子「哲也君、ありがとうね。木綿季の為に身体を張ってくれて。」

 

哲也「愛する彼女の為です。あれくらい大したことないですよ。」

 

源次郎「では、木綿季が戻るまで待とう。」

 

哲也「はい、そうしましょう。」

 

俺達は木綿季の無事を信じて、藍子さんの病室で木綿季を待った。

 

~数十分後~

 

哲也「まだかな~・・・木綿季・・・」

 

渚「やっぱり心配?」

 

哲也「そりゃね・・・別に俺は身体がどうなってもいいんだけど、木綿季は・・・・・・」

 

藍子「無事であってほしいってことね。」

 

哲也「はい。」

 

源次郎「やはり、君を選んで正解じゃったな。安心して先に逝けるわい。」

 

哲也「そ、そんな不謹慎なこと言わないでくださいよ。木綿季にとって源次郎さんは必要不可欠な存在なんですから。」

 

そんな感じで会話していると、病室のドアが開き、木綿季が戻ってきた。

 

哲也「木綿季!」

 

木綿季「哲也!」

 

木綿季は俺に抱きついてきた、俺も木綿季を優しく抱きしめてあげた。

 

哲也「あ、あの!木綿季はどうでした!?」

 

「安心してください、なんのウイルスにも侵されてない健康な身体ですよ。」

 

健康体。つまり木綿季に目立った心配は特にないようだ。そう聞いた瞬間一気に緊張感が解けた。

 

哲也「っ!良かったぁ!」

 

木綿季「こんなところで死ねないもん!最後はちゃんと人生を楽しんでから死にたいもん!」

 

渚「良かったね藍子ちゃん、もう姉妹揃って生活できるのも目の前ね。」

 

藍子「えぇ♪楽しみだわ♪」

 

源次郎「まだまだ、紺野家は安泰じゃな。」

 

「・・・・・・ただ・・・・・・」

 

哲也「え?」

 

た、ただ・・・ってどういう・・・・・・?

 

「木綿季さん、貴女には一生かけても取れない病にかかってしまっているようです。」

 

木綿季「えっ!?」

 

藍子「う、嘘!?」

 

源次郎「どういう事じゃ!?ウイルスには感染してないはず・・・・・・」

 

「かかってないのはウイルスであって、病には・・・・・・」

 

哲也「う・・・・・・嘘だろ・・・・・・?」

 

木綿季「い、嫌・・・・・・死にたくない・・・・・・死にたくないよ・・・・・・」

 

木綿季は怯え、俺にしがみつくように抱きつき直した。

 

渚「ゆ、木綿季ちゃんの病状って一体・・・・・・」

 

「木綿季さんの病の名称・・・・・・それは・・・・・・」

 

哲也「そ・・・・・・それは・・・・・・?」

 

な、なんなんだ?がんとか?末期だったり・・・・・・

 

俺はそう考えただけで目の前が真っ暗になったような気がした。そして、医者の人が重い口を開いた。

 

「゛恋の病゛ってやつですね。」

 

哲也「こ、恋の病?」

 

木綿季「な、なにそれ?」

 

源次郎「恋の病?それは確かまだ付き合ってない状況の人に現れる症状じゃないのか?」

 

「先程、検査のついでに木綿季さんに簡単なアンケートを取ったんです。」

 

木綿季「あのアンケート?」

 

藍子「そのアンケートが何を表してるんですか?」

 

「年頃の男女で、カップルの人に受けてもらうテストなのですが、木綿季さんのチェックした項目の半分以上が恋の病の症状になっていましてね。」

 

哲也「こ、恋の病ってなんかやばいんですか?」

 

「付き合ってない状況下なら、治すべき場合もあります。具体例では恋する相手を思うがあまりに、考えすぎたり、やる気が無くなったり、相手のことを詳しく知りたいという症状が現れたりします。ただ木綿季さんの場合、哲也さんもいますし、特に不味いという点は考えにくいですね。こうして目の前で抱きついてる2人を見ても、普段から仲睦まじいことが分かりますし。」

 

木綿季「じゃ、じゃあボクは死ぬとかじゃなくて・・・・・・」

 

「えぇ、死んだりすることは決してありませんよ。」

 

木綿季「っ!やったぁ!」

 

木綿季は俺の首元に抱きついてきた。俺は木綿季を撫でて抱きしめてあげた。

 

哲也「よしよし。」

 

「申し訳ありません、深刻な雰囲気にしてしまい。お詫び申し上げます。」

 

哲也「貴方の演技には驚かされますよ・・・」

 

「いえいえ、ですがそのおかげで見れる笑顔もあるものでしてね。」

 

確かに、医者の人のおかげで木綿季の笑顔はいつもより可愛く、そして美しく見える。嬉しさから来るものなのかな?

 

渚「でも、木綿季ちゃんが恋の病って言われても別に違和感はないわね。」

 

藍子「そうね♪頭の中はご飯か哲也君の事だもんね♪」

 

木綿季「そんな単純じゃないもん!」

 

「哲也さん、木綿季さんの恋の病は貴女といる限り治りはしないでしょう。木綿季さんは貴方の全てを知りたがり、貴方と常にいたいと思うでしょう。時には、貴方を思うがあまりやる気が無くなったりもするでしょう。ですので、どうか木綿季さんのお気持ちに真っ向から立ち向かい、支えてあげてください。」

 

哲也「はい!望むところです!」

 

源次郎「頼んだぞ哲也君。木綿季を支えられるのは君だけじゃ。」

 

木綿季「えへへ♪哲也!弱音を吐いても知らないからね!とことん付きまとうんだから!」

 

哲也「望むとこだ!かかってこい木綿季!」

 

こうして、藍子さんと木綿季。2人の姉妹は近い先にまた一緒に生活を送れるようになるだろう。

 

藍子さん、困ったことがあったら俺になんでも言ってください。いつでもサポートします。俺は将来の貴女の義理の弟なんですから。

 

哲也「これからもよろしくお願いします。藍子さん。」

 

藍子「えぇ!よろしくね哲也君!」

 

そんでもって木綿季。お前のヤンデレ加減は知ってる。お前のヤンデレが怖いことも知ってる。だけど手加減すんなよ。お前の想いには全力で応えてやるさ。恋の病のお前には俺がいなきゃ話にならねぇしな。

 

俺もお前がいなきゃ駄目なところはあるんだ、だから互いに支えあって、生きてこうな。木綿季。

 

木綿季「えへへ~♪」

 

哲也「お前もこれからもよろしく♪」

 

木綿季「うん♪」




藍子のウイルスも消え去り、木綿季の身体も健康体であることが分かり、今後はウイルスに悩まされる日々も無くなるでしょう。

さてさて、藍子はこれから先ストーリーにどう絡むのでしょうか。


そして、長い間お待たせしてしまい大変申し訳ございませんでした。私も時間の合間を縫って頑張ってきてたのですが、上手い具合にことが運べなくて・・・まだまだ多忙な日々が続くので、またこんな感じの投稿になってしまうかと思いますが、どうか、これからもお付き合いいただければ幸いでございます。

では!次回もお楽しみに!

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