ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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今回は久しぶりに長めの話となります!

少しでも楽しんで頂けたら幸いです!

ではどうぞ!


Part109 過去の傷~血に染まる自身~

哲也『はぁ・・・はぁ・・・一体・・・ここはどこなんだよ・・・!』

 

ある時、哲也はどこかも分からない暗闇に立たされ、そこから抜け出す為に闇雲に走り続けていた。

 

暫く走っていると、哲也は何者かに右足を掴まれた。

 

哲也『っ!誰だ!!!』

 

哲也は右足を見ると、そこには哲也がSAOの時、殺したプレイヤーがいた。

 

哲也『っ!?』

 

『人殺し・・・』

 

哲也『っ・・・勝手抜かすんじゃねぇ!!!元はと言えばテメェらが飛鳥を殺したから!!!』

 

哲也はそう言うが、次第に左足も別のプレイヤーに掴まれ、哲也はあの時殺した30人に下半身を掴まれていた。

 

哲也『っ!?』

 

『人殺し。』

 

『お前が殺したんだ。』

 

『英雄を気取った犯罪者だ。』

 

哲也『ち、違う!!!俺は犯罪者なんかじゃ!!!』

 

色々な言葉が哲也に浴びせられるが、それを哲也は必死にかき消そうとする。しかし、1人対30人じゃ哲也でもどうしようもう無かった。

 

『お前は生き返る必要はなかった。』

 

『お前も地獄行きだったはず。』

 

『俺達の殺しが正当な殺しなんて笑わせるぜ。』

 

哲也『なっ・・・』

 

『人殺しに正当もクソもあるかよ。』

 

"人殺しに正当もクソもあるか"。この言葉に哲也は僅かながら確かにそうだと思い込んでしまい。それを皮切りに哲也の身体全身が掴まれてしまった。

 

『分かったらお前も死ぬんだ・・・死神さんよぉ?』

 

哲也『ふ、ふざけるな・・・誰か・・・誰でも良い!!!俺を・・・俺を助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

哲也「ぐっ・・・がっ・・・」

 

木綿季「哲也!!!哲也!!!大丈夫!?」

 

哲也「っ!!!」

 

俺はあの恐怖から逃げるように身体を跳ね起こした。すると、目の前には心配そうな顔をした木綿季がそこにいた。どうやら、あれは夢だったらしい。

 

木綿季「大丈夫!?魘されてたし、汗も凄いよ!?」

 

哲也「はぁ・・・はぁ・・・そうか・・・夢か・・・」

 

夢から覚めても、俺はあの恐怖からか身体全身が小刻みに震えていた。

 

俺がこの夢を見るようになったのはあの日以来から。SAOの頃から定期的に悪夢に襲われ、その都度俺は軽い過呼吸を起こすようになった。

 

木綿季「大丈夫だよ。ボクが一緒だからね。」

 

木綿季は俺を抱きしめ、頭を撫でてくれた。以前も言ったが、この夢を見ると俺はいつも木綿季に励ましてもらえている。寧ろそうしないと俺は恐らく重度の過呼吸に陥るだろう。

 

哲也「・・・ごめんな・・・いつも・・・」

 

俺はそう言いながら木綿季に強く抱きついた。いつもは真逆だが、この時ばかりは俺が甘える方だ。

 

木綿季「良いんだよ。誰にだって怖いことはあるんだから。」

 

そう。誰にだって怖いこと、恐れてることはある。でも、一々それで彼女に甘えてたんじゃ俺は生きて行けなくなっちまう。

 

強くなるんだ。もっと。力を付けるんじゃない。精神的にもっともっと心を強くしなくちゃ。

 

そうじゃなきゃ、"あの娘"に示しがつかねぇからな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今朝の悪夢から目覚め、木綿季のおかげで何とか回復した俺はその後、コンバート前最後のALOにログインしていた。

 

理由はインプの2人にコンバートするという事を伝えること。昨日鈴奈に連絡を入れたところ今日ならカノンも朝からログイン出来るということで、2人には申し訳ないが少し時間を貰った。

 

~ALO・インプ領~

 

テツヤ「以上が、俺のコンバートする理由だ。数日すればまたここに戻ってくるから安心してくれ。」

 

俺はカノンとレイにコンバートの理由を一通り説明し、暫くALOを離れる事を話した。

 

カノン「ふむ・・・まぁお主の事だからそこまで心配では無いが万が一がある。危険だと思えば直ぐにその場から離れるんじゃぞ。」

 

レイ「君はもう普通のプレイヤーではなくインプの代表格と言う自覚を持ってくれよ。無事に帰ってくること以外は許さないからね。」

 

テツヤ「おう。任せとけ。昔はこう言った事件を良く解決したもんさ。今回も無事に終わらせてくるよ。」

 

カノン「じゃが、よりによってあのGGOにコンバートとは・・・本当に気を付けて本件に当たるんじゃ。わらわからの命令じゃ。無事に帰ってこいテツヤ。」

 

テツヤ「あぁ。その命令受け取った。」

 

レイ「テツヤ。SAOの時の君の活躍はあまり分からないがこれまでの経験踏まえての君の力を全て活かせば君ならどうとでもなる。だが、当然だけどアロンダイト・・・天鎖斬月と言うべきか。それは使えないんだから無茶はするんじゃないぞ?」

 

テツヤ「分かってるって。俺も正直楽しみだよ新しいVRMMO。天鎖斬月を使えない戦いなんだ。俺の実力が試されるって訳さ。」

 

以前ALOに初ログインした時は斬月が使えないことで全然動けなかった。それ以来、定期的に斬月以外の武器でユウキと戦闘訓練を行っていた。そのおかげで斬月以外の武器でもそれ相応に動けるようになった。だから以前のような武器問題は恐らくは大丈夫だろう。

 

カノン「良いかテツヤ。受け持った任務は最後までやり通すんじゃ。GGOの事件はわらわも聴いておる。まぁいつも通りやっていればきっと大丈夫じゃろう。わらわ達はお主の無事を祈っておるぞ。」

 

テツヤ「サンキューな2人共。んじゃは俺は・・・・・・っと、最後に一つ。」

 

レイ「どうしたんだ?」

 

テツヤ「もしもだけど・・・俺が人を殺してたら・・・幻滅するか?」

 

正直こんな質問2人にする気は無かった。でも今朝の夢の人殺しに正当もクソもってワードが俺の頭の中でずっとグルグル渦巻いていた。俺の殺しは本当にして良かったのか?でもあそこで殺してなければ飛鳥以外の犠牲者が出ていたかもしれない。考えれば考える程に俺の頭はこんがらがっていった。だからだろうか。こんなことを聞いたのは。

 

カノン「な、なんじゃいきなり。藪から棒に。」

 

テツヤ「良いから教えてくれ。」

 

レイ「例えの話であろうと・・・・・・君のことだ。きっとやむを得ない状況だったのだろう。僕は幻滅するなんてことはしないよ。」

 

カノン「まぁわらわも同じじゃな。お主の殺しが正当防衛であることを信じるのう。」

 

テツヤ「・・・・・・そうか。悪ぃな急にそんな話して。」

 

レイ「い、いきなりそういう話をするなんてどうしたんだい?何かあったのかい?」

 

テツヤ「なんでもないから安心してくれ。俺の気まぐれさ。んじゃあな。」

 

俺の殺しは正当防衛か・・・・・・確かに殺ってなけりゃ今頃俺はいない。でも・・・・・・

 

クソ・・・・・・あんな夢こんな時に見るから・・・・・・!!!

 

俺は2人に手を振り、少し苦しくなった胸に手を当てながらログアウトするための家へ戻った。

 

~~~~~~~~~~~~

 

場所は変わり、ある高校に移る。

 

「じゃあ今日の講習はここまで。復習はしとくように。」

 

哲也達が夏休みに突入しているように、他の高校でも大体は夏休みに入っている。

 

この高校では夏休みの夏期講習を実施していて、もっと自身の知力を伸ばしたいという生徒が自主的に参加している物だ。

 

ここにいる少女もまた、そう言った考えからか講習を受講していた。

 

「帰る前に買い物行っとかなきゃな・・・」

 

いわゆる可愛いらしい顔付きに加え眼鏡をかけ、ボーイッシュな髪型で両サイドの少し長めの髪を結んでいるその少女の名は朝田詩乃(あさだしの)

 

高校1年生である彼女は今でも充分上位の成績を残してはいるが、それでもなお講習に参加し、自身を鍛え上げようとしている実に素晴らしい少女だ。

 

最も。講習を受けている中には勉強の為に受けている訳では無い者

も・・・・・・

 

「さぁて・・・今日も小遣い稼ぎと行くか・・・」

 

~街中~

 

学校を出た誌乃はそのまま帰らずに買いものに。彼女は一人暮らしをしており、色々なことを自分自身でこなしている。

 

誌乃はスーパーの外に並んでる野菜類を吟味し、今日の献立を考えていると、誌乃にとっては聴きたくない声で呼ばれた。

 

「あ~さ~だ~?朝田詩乃~?」

 

誌乃「はぁ・・・今度は一体何?」

 

誌乃はそう言いながら振り向くと、2人組のガラの悪そうな誌乃と同じ高校に通う女2人が立っていた。

 

「へっへっへ。黙ってついてくりゃあ良いんだよ朝田ぁ。」

 

2人の女は誌乃の腕を無理やり掴むと、近くの路地裏へと連れて行かれた。

 

路地裏には2人組の親玉のようなこれまたガラの悪そうな女がそこにはいた。

 

「ほら。姉さんがお前をお呼びだぞ!」

 

誌乃はそう言われながら軽く突き飛ばされ、親玉の前に立たされた。

 

その親玉の名は遠藤。良くいる不良かぶれの女子高生と言ったところだ。

 

遠藤「悪い朝田。私達ファミレスで勉強してたら頼みすぎてよぉ 電車代無くなっちまったんだよねぇ。明日返すからこんだけ貸してくれ。」

 

誌乃の目の前に人差し指が1本出される。つまりは1万貸せと誌乃は言われていた。

 

誌乃「1万円・・・そんなに持ってないわよ。大体定期があるなら電車代なんていらないじゃない。」

 

遠藤「1万くらい下ろして来てよ。後、また出かけるんだよ。その為の電車賃。」

 

実はこの3人組。何かと言えば誌乃に金を貸せと言い、誌乃に付きまとっている。3人が夏期講習を受けたのは勉強なんかのためでは無く、夏休みでも誌乃に金をせびるためだった。

 

誌乃「嫌。今日出かけるのは諦めたらどう?大体、ファミレスで勉強してたって言っても信じられないわ。今日聞いたわよ、勉強道具で持ってきたのは筆箱位だって。」

 

遠藤「あぁ?てめぇ良くそんな口がきけるなぁ朝田。何様のつもりだ?」

 

誌乃「何様も何も私達は同級生でしょ。上も下も何も無い。どいてよ。私行かなきゃいけないんだから。」

 

誌乃は遠藤に背を向け、とりまき2人に退くように言ったが、遠藤がそれを許さなかった。

 

遠藤「まぁまぁ待てよ朝田・・・これ見れば考えも変わるだろ?」

 

遠藤は誌乃の目の前で指を拳銃のような形にしてみせた。今まで平然としていた誌乃だったがその指によって作られた銃口を見ると、まるで世界が逆さまになったかのような感覚に陥り、震えが止まらない。

 

遠藤「なぁ朝田?兄貴がモデルガン持ってるわけよ。今度見せてやるよ。お前好きだったよなぁ?ピストル。」

 

誌乃はそれを聞き首を振ると、軽くむせてしまい、口を抑えた。

以前誌乃は教室でこのやり取りをやられてしまい、教室で嘔吐してしまい、倒れた経験がある。

 

そう、誰しもトラウマがあるよう。誌乃にもピストルによるトラウマがある。それを3人は汚い手で利用していたのだった。

 

遠藤「んじゃあ仕方ねぇなぁ。今持ってる分で許してやるよ。朝田は具合悪そうだしなぁ?」

 

遠藤はそう言って誌乃のバックに手を伸ばし、誌乃の有り金に手をつけようとした。

 

だが、誰かが警察を呼んでいるのか「おまわりさん!」と言う声が路地裏に響いた。

 

その言葉を聞くと遠藤は誌乃のバッグを投げ捨てとりまきと共にその場から離れていった。

 

誌乃「はぁ・・・はぁ・・・!」

 

誌乃は膝から倒れ、荒い息を何とか持ち直そうとした。

 

誌乃が呼吸を持ち直そうとしているその時、誰かが誌乃に話しかけた。

 

「大丈夫?朝田さん。」

 

誌乃「だ、大丈夫だよ。ありがとう新川君。」

 

誌乃に話しかけたのは新川恭二(しんかわきょうじ)。制服を着ている誌乃と違い私服を着ており、くせっ毛が特徴の少年だ。

 

新川「そっか、それなら良かった。」

 

実を言うと先程の声は彼が正体。しかし本当はおまわりさんなんて呼んでもいなく、単なるハッタリだったのだった。

 

誌乃「また・・・助けられたのね・・・」

 

新川「朝田さん?どうしたの?」

 

誌乃「・・・・・・・・・・・・」

 

『俺はもっと手に入れたい、その精神的強さを。』

 

誌乃はある言葉を思い出しながら、己の無力さに苛立ちながら立ち上がった。

 

誌乃「もっと・・・もっと強く・・・!!!」

 

新川「?」

 

誌乃は拳を握り、再度自身の目標を確認するのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

あの後誌乃は新川と少しカフェで休息を取った後に別れ、帰宅していた。

 

~誌乃家~

 

誌乃「・・・・・・・・・・・・」

 

誌乃はスカートを脱ぎシャツだけのラフな恰好になった。

 

そして誌乃は目に入ったアミュスフィアをずっと凝視していた。

 

誌乃「ベヒモス・・・・・・か・・・・・・」

 

ベヒモス。それはGGO内においてシノンが倒したミニガン使いのプレイヤー。噂では集団戦で倒れたことの無いタフさを持っていたそうだ。

 

誌乃「私は朝田詩乃であって・・・・・・"シノン"じゃない・・・・・・」

 

何を隠そう。彼女こそGGO最強スナイパーと言われるシノンなのであった。

 

誌乃「でも・・・あのベヒモスを倒せた今なら・・・」

 

誌乃はそう呟きながら机の棚を開け、棚の中に入ってるモデルガンを手に取った。

 

遠藤も言っていたが、誌乃はピストルが好き・・・と言う訳ではなく、それどころか誌乃はピストルに対して深いトラウマを持っている。

 

それは、誌乃の少女時代に遡る。

 

誌乃は物心着く前に父親を亡くし、父親の顔は見たことが無かった。父親の死後は住んでいた東京から母親の実家に帰り、そこで暮らしていた。

 

そう、その日は誌乃と母親が銀行に行っていた時だった。

 

~数年前~

 

『誌乃?ここに座って本を読んでてね。お母さんすぐに戻ってくるからね。』

 

誌乃『うん!』

 

何も疑いもない、良くある親子の平穏な光景だった。だが、そんな平穏は直ぐに壊されることとなる。

 

ある男が銀行に入った。その男はハンドバッグを持っており、口から涎を垂らし、どう見ても違和感満載の男だった。

 

誌乃もどう見ても怪しいと思いその男を見ていると、ハンドバッグから拳銃を取り出した。そう、この男は銀行強盗だったのだ。

 

『おい!このバッグにありったけの金を詰めろ!警報なんて押してみろ!こいつが黙っちゃねぇぞ!』

 

男は銀行の職員に拳銃をチラつかせ、金を要求するが1人の職員が警報を押した。

 

『警報を押すなって言っただろうが!!!』

 

男はそう言いながら警報を押した職員に発砲し、撃たれた職員はその場で倒れた。

 

『おい!てめぇだそこの女!金詰めろ!』

 

男は女性職員に拳銃を向け再度金を詰めるように言った。

 

『さもなきゃこの女の命はねぇぞ!!!』

 

そう言って銃口を向けられたのは誌乃の母親だった。

 

誌乃『っ!?』

 

誌乃はその光景を見て何もしていなければ母親が撃たれると考え、誌乃は強盗犯に忍び寄ると拳銃を持っている方の腕に噛み付いた。

 

『っ!?てめェ!ガキっ!離れろ!!!!!!』

 

男は噛み付いた誌乃を振りほどくように腕を振るうが誌乃も相当な強さで噛み付いており中々離れない。男はもう片方の腕で誌乃を離すが噛まれた痛みで持っていた拳銃を落としてしまい、拳銃は誌乃の正面に落下し、誌乃はすぐさま拳銃を拾った。

 

『返しやがれこの!!!』

 

誌乃『嫌!離して!』

 

男は誌乃に掴みかかり拳銃を奪い返そうとするも誌乃も抵抗してジタバタと暴れた。

 

その時だった。誌乃の指は拳銃の引き金を引いておりその弾丸は男の肩を貫いていた。

 

『がっ・・・!?』

 

誌乃『っ!?』

 

誌乃自身は自分が引き金を引いたことを理解しておらず、再び掴みかかろうとする男に向けまた無意識に1発の弾丸を放つ。

 

今度は脇腹に当たり、男は血まみれになっていた。

 

『ぐっ・・・このクソガキがぁ!!!』

 

男は最後の力を振り絞り三度誌乃に掴みかかろうとする。

 

誌乃『っ!!嫌ぁ!!!』

 

誌乃は今度は己の意思で引き金を引いた。今まで放った2発の弾丸は一生懸命の無意識の内に放ったものだが、今度のは誌乃自身で放った弾丸だった。

 

3度目の弾丸は心臓付近に直撃し、男は誌乃に触れることなく倒れた。

 

誌乃『はぁ・・・はぁ・・・お母さん・・・?大丈夫・・・?』

 

誌乃は自分の事ではなく真っ先に母親の心配をした。だが当の母親は誌乃をまるで殺人鬼かと思うよな表情で見ていた。

 

違和感を感じた誌乃は自身の身体を見ると、放った弾丸による返り血で血まみれになっていた。

 

誌乃『っ!?』

 

誌乃は血に濡れた自身の腕を震えながら見つめた。ここで誌乃はようやく理解したのだった。

 

"自分が人を殺した"と。

 

それ以来、誌乃はピストル含む銃器に大きなトラウマを抱えており、それによるPTSDに悩まされていた。

 

誌乃の通う高校でも直ぐに誌乃の殺しの噂は広がり、その噂を聞きつけた遠藤たちに良いように利用されてしまっている訳だ。

 

誌乃は拳銃を持つとその時の光景を思い出してしまい、身体が拒絶反応起こす。誌乃はこの現象をなんとかしたいと考えてはいるが、どうにもならずに数年経っている。誌乃はこの現象は自分がもっと強くなれば治ると考えている。誌乃の強さへの渇望はこう言った訳があったのだ。

 

だが、克服しようにも拳銃を持つだけで拒絶反応を起こしてしまっては克服しようがない。誌乃は長年その事で悩まされていたが、そんな悩みを解消しのがGGOだった。

 

GGOに初ログインし朝田詩乃としてではなく、シノンとして拳銃に触れると不思議なことに拒絶反応は起こらなかった。以来、GGOで強くなり、拳銃に触れていればトラウマが克服できるのではないかと考えた誌乃は、シノンとして拳銃、弾丸と向き合っている。

 

以前ベヒモスを倒したことで、ある程度の克服はできたのではないかと思った誌乃は机の中にあるモデルガンを取り出し、手に取った。

 

モデルガンは中身は違えど見た目は本物そっくり。モデルガンを持つと途端に身体が震えだし、脳裏にあの時の光景が浮かび、誌乃の身体は拳銃を拒絶した。

 

それと同時に、誌乃の中の人を殺したと言う記憶が出てきて、誌乃は全身を恐怖で震わせた。

 

誌乃「あ・・・!あぁ・・・!嫌・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

誌乃は声を出す程に拳銃を拒絶してしまい、最終的には嘔吐してしまった。

 

今回も誌乃のトラウマ克服とはならなかったようだ。

 

誌乃「・・・・・・まだ・・・・・・駄目なのね・・・・・・」

 

誌乃はモデルガンをしまい、自身の嘔吐の後始末をした。

 

誌乃「・・・・・・なんでなの・・・・・・いくら敵を倒そうと・・・・・・!」

 

誌乃は自分自身に嫌気を感じながら、ベッドに倒れ込んだ。

 

誌乃「誰か・・・・・・誰か私を助けて・・・・・・」

 

誌乃はそう思いながら、眠りについた。

 

~数時間後~

 

誌乃「・・・私・・・寝ちゃったのか・・・」

 

PTSDを発症し疲れ切った身体は、眠りについたことで回復をしたが誌乃自身の精神状態は未だズタズタのままだった。

 

誌乃「・・・散歩でも行こう・・・」

 

誌乃は立ち上がり普段着に着替え、気晴らしの散歩に出かけた。

 

誌乃は良く人混みの中を歩く。ごった返した人混みの中にいるといらないことを考えないで済むからだ。

 

誌乃「・・・・・・」

 

誌乃(もう一度・・・彼と話したいな・・・あそこに行けば会えるのかな・・・)

 

誌乃はそう思いながら歩いていると、1人の青年とぶつかった。

 

「あ!悪い!大丈夫か・・・って、君はあん時の!」

 

誌乃「あ、貴方は!!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~哲也 side~

 

あの後ログアウトした俺は、菊岡さんから今日にはログインしてくれとの連絡を受けており、GGOには俺や木綿季がSAOにログアウトした後に入院していた病院でログインすることになっている。それも安全確保の為だ。

 

夕暮れ頃にログインすることになっており、俺はそれまで適当に過ごすことにした。

 

木綿季「ねぇね。今日だったよね?GGOにコンバートするのって。」

 

哲也「そっ。少し寂しい思いをさせるかもしんねぇけど我慢してろよ?」

 

木綿季「うん!ただ本当に気をつけてよね?約束破ったらただじゃ置かないからね!」

 

哲也「はいはい。」

 

木綿季「後、女の子とデレデレしたら殺す。」

 

哲也「は、はい・・・」

 

今回の件で女の子と触れ合うことなんてないと思うがなぁ・・・

 

木綿季「後は!きちんと受け持った事は最後までやるんだよ!サボったら許さないからね!」

 

哲也「分かってるって。木綿季は心配性だな。」

 

木綿季「いつも無茶するのはどこの誰だっけ!?」

 

哲也「・・・・・・俺です・・・・・・」

 

木綿季「大体1度ボクの前で死んでるんだからね!そこの所忘れない!」

 

哲也「はい・・・」

 

俺はその後も木綿季の説教を数十分聴いた。グサグサと心に刺さる事ばかり言われた。

 

木綿季「はい!お説教は終わり!」

 

哲也「いつもながら長ぇよお前の説教・・・」

 

木綿季「浮気性で巨乳好きの哲也が悪い!」

 

哲也「・・・・・・ご最もです・・・・・・」

 

木綿季「・・・・・・本当に気をつけてね?無事に仕事を終えたらご馳走作ってあげるからね♪」

 

そう言って木綿季は俺に抱きついてきた。これがあるから木綿季といるのは止められない。

 

哲也「うん。任せとけ。」

 

木綿季「哲也。ボクからのお守りだよ♪」

 

そう言って木綿季はキスをしてきた。俺は木綿季を抱きしめ、木綿季のお守りを受け取った。

 

哲也「サンキューな木綿季♪」

 

木綿季「えへへ♪」

 

哲也「良し!んじゃそろそろ出るな!行ってくるな木綿季!」

 

木綿季「行ってらっしゃい哲也♪」

 

俺は木綿季の頭を撫で、家を出た。

 

まだ早いが、なるべく早めに新しい環境には慣れておきたい。だから予定時刻より早めに向かうことにした。

 

俺は気を引き締め、無事に事件を解決する事を誓いながら病院に向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

家を出た後の俺は電車に乗り、病院の最寄り駅に着いていた。

 

和人に関しては一緒に来ている訳ではなく、別行動でGGOで合流ということになっていた。

 

後、和人は高校入学頃からバイクの免許を取るために教習所に通っていて無事に免許も取れた為、今ではあいつの足は大体バイクだ。

 

哲也「良し、んじゃ病院に向かうか!」

 

本来はバスで向かうのが早いが次のバスまでには大分ある、だったら軽くランニングしながら病院に行った方が早いし身体にも良い。

 

俺はランニングで病院まで向かおうとした。しかし、その前に俺の携帯に電話が。

 

哲也「誰だこんな時に・・・って和人か。もしもし?」

 

和人『哲也。今どこにいる?』

 

哲也「どこって、病院の最寄り。今着いたばっか。」

 

和人『なんだ、お前も予定より早く来てたんだな。俺はもう病院に着いてるから。』

 

哲也「考えることは同じって訳だな。俺を待たずに先にログインしててくれ。準備運動でもしててくれ。」

 

和人『良いのか?準備運動でお前より多くリードしてやるぞ?』

 

哲也「上等じゃねぇか。ハンデくらいくれてやらなきゃな。」

 

和人『なら俺は先にログインして待ってる。多分ログイン場所は同じだろうからその目の前くらいに立ってるよ。』

 

哲也「分かった。んじゃGGO内で落ち合おう。」

 

和人『了解だ。じゃあな哲也。』

 

哲也「おう!」

 

和人は先にログインする訳か。ちょっとリードされちまったがまぁ良いさ。後からでも充分追いつける。

 

哲也「んじゃ行きますか!」

 

俺は改めてランニングで病院に向かった。

 

病院までの道のりは多少人が多いいが仕方が無い、人にぶつからないように走らなきゃな。て言うか、マジで人が多かったら走るのは辞めるべきか。

 

それにしてもGGOはSAOやALOとは勝手が違うだろうからな・・・舐めてかかったら命が幾つあっても足りねぇだろうし。色々なことを用心してかからなきゃな。

 

その中でも特に気をつけるのはやっぱりデスガンか・・・あいつの弾丸で2人が実際に・・・あれから色々と考えてはみたがやっぱり理由は分からない。

 

一体どうやって2人は・・・・・・

 

俺はそういった事を考えながら走ってると、女の子とぶつかった。

 

哲也「あ!悪い!大丈夫か・・・って君はあん時の!」

 

俺がぶつかったのはあの雨の日に出くわした女の子だった。

 

誌乃「あ、貴方は!!!」

 

哲也「奇遇だな!こんな所で会うなんて!」

 

誌乃「え、えぇ。久しぶりね。」

 

哲也「久しぶり!まさかまた会えるなんて!どうだ?あれから調子は。」

 

誌乃「っ・・・・・・」

 

俺が質問をすると、余り良い顔をせずに俯いてしまった。

 

哲也「ええっと・・・大丈夫そうじゃなさそうだね・・・」

 

誌乃「・・・ねぇ、これから暇かな?」

 

哲也「へ?まぁ時間に余裕はあるが・・・」

 

誌乃「なら、また貴方に色々と話をしたいの。良いかな?」

 

哲也「俺でよかったら。この先に公園あったからそこでいいかな?」

 

誌乃「うん。そこでお願い。」

 

まぁ時間にはまだかなり余裕があるし大丈夫だろう。それに、この子のことはなんでか放っておけない気がする。

 

俺は女の子と一緒に公園に向かい、互いに公園のベンチに座った。

 

哲也「さて、まずどこから聴いたらいい?」

 

誌乃「以前、貴方は一番大切なのは精神的な力って言ってたよね。」

 

哲也「あぁ、それがなけりゃ基礎があっても駄目駄目になっちまうからな。」

 

誌乃「なら、その力はどうやって付けたら良い?」

 

哲也「うーん・・・難しい話だな・・・やっぱし、何事も場数を踏んでいくことが大事なんじゃないかな?」

 

誌乃「つまり、怖い事や苦手なことからも逃げずに立ち向かって行けば良いってこと?」

 

哲也「そういうことになるのかな?色々なことを経験すれば色々な事が分かってきて、そうすれば沢山のことを踏まえて行動できるだろ?」

 

誌乃「じゃあ、色々な経験を踏んでも、どうしても駄目な事が出来た場合どうすればいい?」

 

哲也「うーん・・・そんときゃ一旦その事を置いておくのが大事なのかな?」

 

誌乃「置いておく?」

 

哲也「そっ。駄目なことを良い方向に持って行こうとして、それがトラウマレベルに苦手になったら話にならないだろ?最も、俺もつい最近苦手な事をやりすぎて1つトラウマになっちまったんだけどな。」

 

誌乃「あ、貴方でもトラウマってあるのね。」

 

哲也「そりゃそうだよ。俺だって人間なんだしね。君の場合は確かストレス障害があったんだよね?」

 

誌乃「えぇ、そう。私はそれに何度も振り回されてきた。」

 

哲也「もしその事をどうにかしたいって思うなら、一旦その事を考えるのは辞めて、他のことを考えてみたらどうかな?」

 

誌乃「他のこと・・・」

 

哲也「もっと他のことで経験を踏むんだ。そうすれば、今持ってるトラウマにも立ち向かえるかもしれない。何度も駄目なら一度見方を考えなきゃね。」

 

誌乃「じゃ、じゃあ貴方だったらトラウマをどう克服する?」

 

哲也「お、俺か?そうだな・・・俺の場合ジェットコースターがトラウマになっちゃったんだけども、それだったら似たようなフリーフォールだとかであの圧力がかかる感じに慣れるとかになるのかな?」

 

誌乃「じぇ、ジェットコースター!?」

 

哲也「うん。いや、ほんとにあの超速度でGがかかる感じ無理なんだ・・・」

 

俺が震えながらにそう言うと、少女は声を上げて笑いだした。

 

哲也「そ、そんなにおかしいかな?」

 

誌乃「だ、だってこんなに強そうな貴方がジェットコースターにトラウマを持ってるなんて・・・」

 

哲也「君が思ってるほど俺は強くないさ。泣いたりするし、怖がったりもする。」

 

誌乃「そっか。貴方でも怖いことはあるんだね・・・そう思ったら安心したわ。」

 

哲也「・・・・・・そう。怖いことはあるさ・・・・・・俺にだって・・・・・・」

 

誌乃「?ど、どうしたの?いきなり怖い顔になって。」

 

哲也「へ?そんな顔してた?」

 

誌乃「うん。まるで今にも何か起こしそうな顔になってたよ?」

 

哲也「そうか・・・うん。君がストレス障害があるって言ってくれたのに俺だけ君に何も打ち明けてないのは何か申し訳ないな。良し。君にだけ特別に話すか。」

 

誌乃「へ?何を?」

 

哲也「俺のやった事さ。君はソードアート・オンラインってゲームで起きた事件 知ってるかい?」

 

誌乃「SAO事件なんて起こった時から世間はそれ一色だったわよ。多分知らない国民はいないんじゃない?」

 

哲也「そ、そんなに有名だったのか。まぁそれなら話は早い。俺はそのSAOの生還者なんだ。」

 

誌乃「えぇ!?あ、あのSAOの!?」

 

哲也「うん。俺は2年間死と隣り合わせだったんだ。大分スリルのある2年間だったよ。」

 

誌乃「そ、そう・・・だから貴方の言う言葉には重みがあったのね・・・」

 

哲也「まぁ、君も知ってる通りあの世界でHPが無くなる=現実での死が待ってる訳だ。だから皆死なない為に必死こいて成長したんだ。んでだ、そんなゲームの中でも皆に協力しないで犯罪を犯すやつもいたんだ。」

 

誌乃「へ?犯罪?ゲーム内で犯罪って言うと盗みとか?」

 

哲也「そんなもんじゃない。殺しだよ。」

 

誌乃「っ!?」

 

哲也「俺達はゲームクリアに加えて、その犯罪者共の鎮圧もしなきゃいけなかった。俺の仲間も大勢死んだ。」

 

誌乃「そうなのね・・・そんなことが・・・」

 

哲也「ある時を境にその犯罪者達も消えた訳だが・・・・・・ある日のことだった。俺は1人の女の子と所謂ダンジョンに潜っていたんだ。そこに、その犯罪者共の残党がいたんだ。俺は必死にその女の子を逃がそうとした。でも、俺は手が出せずにその女の子の事を・・・・・・見殺しにした・・・・・・」

 

誌乃「っ・・・・・・」

 

哲也「本当なら、どうにかする方法はあったんだけど、あの時の俺にとってそれは諸刃の剣で、下手したら俺が死ぬ恐れもあったんだ。要は俺は自分が可愛くてその女の子を殺してしまったんだ。」

 

誌乃「そ、それで貴方はその残党達をどうしたの?上手く逃げたの?」

 

哲也「逃げてはいない・・・残党の数は30人。俺はその30人全員を・・・・・・殺したんだ。」

 

誌乃「なっ!?殺しっ!?」

 

哲也「SAOのシステム上、一度罪を犯したヤツらを殺そうが罪にはならない。だから俺は普通のプレイヤーのままでいれたけど、実際俺は30人を殺した殺人鬼だ。」

 

誌乃「じゃあ・・・貴方のした罪って・・・」

 

哲也「そう・・・・・・殺人だ・・・・・・」

 

俺はこの時初めて、自分がしたことを他人に話した。

 

哲也「悲鳴をあげ、命乞いをする奴らを俺はこの手で斬り裂いた。首を斬ると一瞬で殺せるけど、俺はそんなことをせずにまるで遊び感覚で何度も斬り裂いて殺した。最もあの時の俺は少し意識が飛んでて、正常な判断が出来てなかったってのもあるけどね。」

 

誌乃「・・・・・・30人・・・・・・貴方はその30人のことは忘れることは出来ているの?」

 

哲也「無理だ。忘れるどころか夢に出る。今日も夢に出た。言われたよ。殺しに正当もクソも無いってな。」

 

誌乃「殺しに正当もクソも・・・・・・か・・・・・・」

 

哲也「これが俺の秘密だ。一応内緒にしててね。あ、俺は現実ではそんなことはしないからね!善良なる高校生だ!」

 

誌乃「わ、分かってる!貴方はそんなことする人じゃないって信じられるし・・・」

 

哲也「なら良かった。とにかくだ。君もトラウマを持っているように俺もトラウマと戦ってるんだ。一緒に頑張ろう。」

 

俺はそう言ってあの時のように拳を出した。

 

誌乃「・・・・・・えぇ。そうね。頑張りましょう。」

 

俺達は拳をあわせ、互いの健闘を祈った。

 

哲也「さてと!んじゃ俺もそろそろ行かなきゃな。」

 

誌乃「あ!あの・・・」

 

哲也「ん?」

 

誌乃「よ、よかったら・・・連絡先を・・・」

 

女の子が言葉を言い終わる前に、俺の携帯の着信が鳴った。

 

哲也「ごめん!少し待ってね!」

 

俺は慌てて電話に出ると、いきなり電話越しに大声で怒鳴られた。

 

『ゴラァァ!!!一体何時だと思ってんだ哲也!!!!!!』

 

哲也「いぃ!?な、なんであんたが!?」

 

『ほぉう?あんたとはいい身分になったもんだねぇ?こっちはお前のメディカルチェックに付き合わされるってのに。』

 

哲也「ま、まさかとは思うがあんたが俺のチェックを?」

 

『そうだよ!!!!!!分かったらさっさと来いこの馬鹿野郎!!!!!!』

 

電話はそこで途切れた。だが、時間を見ると確かに予定時刻をかなりオーバーしていた。ここで話すぎていたようだ。

 

哲也「やっべ!ごめん!緊急で行かなきゃいけなくなった!多分数日間はこの辺にいれば会えると思うからまた!!!!!!」

 

俺はそう言って急いで病院に向かった。

 

誌乃「あっ・・・・・・・・・また・・・・・・・・・連絡先交換出来なかった・・・・・・」

 

誌乃(でも・・・・・・貴方も人を・・・・・・それも私より多く・・・・・・それでも私より強く振る舞えるなんて・・・・・・本当に貴方って強いのね・・・・・・見習わなくちゃね。私も。)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~病院~

 

哲也「やばいやばい!このままじゃ殺される!!!」

 

俺は本来は行けないことだと分かってはいたが急ぎ病院の中を走り、菊岡さんに指定された病室に向かっていた。

 

哲也「良し!ここだ!」

 

俺は指定の病室のドアを勢いよく開いた。

 

「遅い!!!!!!」

 

病室に入った俺はいきなり目の前に立つ病院の先生に勢いよくかかと落としをくらった。

 

哲也「いでぇ!?」

 

「お前忘れたわけじゃないだろうね?私が時間に厳しいって。」

 

哲也「いつつ・・・!あのなぁ!俺はもうあんたが担当するリハビリ患者じゃねぇんだぞ!?」

 

「なら尚更時間通りに来るべきだろうがアホが!!!」

 

哲也「うぅ・・・悪魔め・・・」

 

俺の前に立ってるすごーく怖いこの病院の先生は朝日奈詩織(あさひなしおり)さん。SAOログアウト後はこの先生の元で俺はリハビリしていた。クールそうな目付きをしていて、髪は結ばずにいるセミロングの結構ナイスバディな先生ではあるが、見てくれた通り怖い。リハビリしてる時に時間に遅れたりするとこのようにめちゃくちゃキレる。いや、時間遅れた俺が悪いのは分かってるけどそれにしてもめちゃくちゃ怖い。

 

詩織「だいたい!夜勤明けで疲れてんのになんでこんなことを・・・!」

 

哲也「断りゃ良いじゃないっすか!俺だって詩織さんに見られんの怖いもん!!!」

 

詩織「大人には大人の事情があんだよ!ったく。久々に会ったんだ。身体チェックしてやるよ。」

 

詩織さんはそう言って俺の身体を弄り出した。

 

詩織「ふむふむ。大分良い筋肉の付き方になってるな。ちゃんと筋トレは欠かしてないみたいだな!」

 

哲也「こっちだって夢があるんだ。2年間分のツケはさっさと払わなきゃね。」

 

詩織「この分ならログインしても平気だろう。さて、大人の事情って奴だがな、眼鏡の総務省のお偉いさんに頼まれちまってな。お前のVR世界のログイン中のことについてな。一応リハビリを担当していた私がお前を担当することになったんだ。私はここであんたをモニタリングすることになった。異常があれば直ぐに私が何とかしてやるからあんたは安心してログインしててくれ。」

 

哲也「おう!」

 

詩織「ったく。アホみたいに元気だな。あった時は死んだ魚みたいな目をしてたのに。」

 

哲也「俺にだって色々とあるんすよ!んじゃ詩織さん。俺の事よろしく頼みますね!」

 

詩織「待った。急ぎすぎだ。これを預かってる。」

 

そう言って詩織さんは胸元のポケットから1枚の紙切れを取り出し、俺に渡してきた。

 

それを見てみると、菊岡さんからの今回のことについての連絡だった。

 

菊岡『哲也君。報告書は和人君に任せてあるから君はいつも通り存分に暴れてくれたまえ。諸経費は任務後に報酬と合わせて払うから請求を忘れないよう。

PS ナイスバディで若い先生と個室で二人きりだからって、若い衝動を爆発させないように♪ 』

 

哲也「爆発させてたまるか!!!」

 

俺はその紙をぐちゃぐちゃにしながらそう言った。

 

詩織「何が書いてあるか分からんが、ログインするなら服脱げよ。」

 

哲也「えぇ!?し、詩織さんまさか俺を狙って・・・」

 

詩織「殺すぞ。」

 

哲也「すんません!!!」

 

詩織「脱いで電極貼らなきゃモニタリングにならねぇだろうが。大体。入院してる時に全部見てるっての お前のソレもな。」

 

哲也「ひぃ!?」

 

俺は思わず股間を手で隠してしまった。俺先生の前では素っ裸同然なんだな・・・

 

詩織「上だけでいいからさっさと脱げ このエロ坊主。」

 

哲也「エロは余計だ!」

 

俺は言われた通りに上の服を脱ぎ、身体に電極を貼られた。

 

詩織「これで完了。良いぞ哲也。」

 

哲也「ありがとうございます。んじゃ早速!数時間は潜りっぱなしなんでそこんとこよろしくお願いします!」

 

詩織「分かったよ。早く行ってこい。」

 

哲也「んじゃ行ってきます詩織さん!」

 

アミュスフィアを付け、ベットに寝転がり、俺はGGOにログインした。

 

哲也「リンクスタート!!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

~誌乃 side~

 

会いたいと願っていた彼と会えた私は、話してるうちに今日のことがくだらないことだと思えてきて、散歩から帰ってきていた。

 

誌乃「30人・・・私は1人でこんなになってるのに・・・私と彼の違いは一体・・・」

 

考えたくもない。30人なんて人数この手で殺めたら恐らく私はショック死している。だけど彼は普通に生活出来ている。

 

いや、彼も私と同じで人を殺した過去と歩んでるんだ。私もきっと彼みたいになれるはず。

 

今度会えた時は、私から言わなきゃ。一番最初に会った時に聞いた事は全部私についてだって。

 

さて、そろそろログインしようかな。今日からのログインは色々なことを経験することを考えていかなきゃ。

 

丁度"アレ"も近づいてることだし。

 

私はアミュスフィアを装着して、ベットに横たわり、朝田詩乃からシノンに変わるためのあの言葉を言った。

 

誌乃「リンクスタート!!」




人を殺めた過去を持つ哲也と誌乃。

初めて自分の過去を他人に語った哲也。誌乃はそれを聞いて改めて哲也の凄さを理解する。

まだ互いの名も知らぬ2人だが、この先2人にどのような運命が待っているのだろうか?

次回はいよいよGGOにログインです!そして哲也にまさかのアクシデント!?お楽しみに!

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