ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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今回は前回の後書き通り哲也の心情が明かされます!一体哲也は今回の騒動で何を思うのか!

それでは本編をどうぞ!


Part115 英雄とは~孤高の存在の弱さ~

あの後、ログアウトした俺は終電が無くなってしまった為にそのまま病院に泊まらせてもらった。木綿季に帰れると言ったのにこれだからきっと寂しがってるだろうなぁ・・・

 

俺は俺でしっかりと起床。今日も暑そうな夏日だなぁ。

 

哲也「ん~!いい朝だな~!」

 

詩織「やっと起きたのか。いいご身分だな哲也。」

 

哲也「っ!?詩織さん!?なんでここに!?」

 

泊まらせてもらったのは俺がGGOにログインした際に使った病室。詩織さんはログアウト後に病室から出て別の場所で寝てた為目の前にいることに俺は驚いてしまった。

 

詩織「仮眠室使わせてもらったんだよ。んな驚くことか。」

 

哲也「だ、だっててっきり家に帰ったのかと・・・」

 

詩織「御生憎様 私も終電逃しだよ。どっかの誰かのせいでな。」

 

哲也「うっ・・・すんません・・・」

 

詩織「まぁんなことはいいんだ。とにかくお前が無事に帰ってきて何よりだよ。ほれ。」

 

そう言って詩織さんはおにぎり2つとお茶を俺に差し出してくれた。

 

哲也「あ、あざっす!」

 

詩織「まぁそれ食いながらで良いから聞け。まずログイン中にお前の携帯に着信がかなり来てたこと。」

 

哲也「着信?誰からだ?」

 

おにぎりを食べながら携帯を見ると、GGO非公式サポートからの連絡だった。なんなんだろう?

 

詩織「後はだ、何か悩み事あるか?」

 

哲也「へ?」

 

詩織「昨日のお前の心拍数の上がりようが妙に引っかかってな。何か悩み事とかあるんじゃないか?私でよかったら聞くぞ?リハビリ受け持った好だ。なんでも言っていいぞ。」

 

哲也「・・・・・・・・・・・・」

 

確かに今悩み事はある。それはデスガンのこと、それと俺の解消しない正義の殺しだと知っていても未だに襲われる悪夢について。こんなこと詩織さんに話したところで・・・

 

哲也「いや。大丈夫っす。悩み事は何一つありません!」

 

詩織「そうか?なら良いけど・・・」

 

哲也「あ、強いて言うなら詩織さんが怖いとか・・・」

 

詩織「アァん!?」

 

哲也「嘘です最高です詩織さん!!!!」

 

詩織「ったく、まだまだガキだな哲也も。」

 

詩織さんはそう言って俺の頭を鷲掴みにしてくしゃくしゃと弄ってきた。

 

哲也「し、詩織さん?」

 

詩織「まぁ、私からしてみればお前はまだまだ可愛いガキンチョってことだよ。」

 

哲也「だからってこんなこと・・・」

 

詩織「ガキは大人しくお姉さんにこうされてろってことだ♪」

 

詩織さんはこういったことを良くしてくる。なんでも気に入った奴にしかやらないらしいが俺は詩織さんにとって絶好のイジリの対象なのだろうか?

 

詩織さんは俺を弄るのをやめると、帰り支度の準備を始めた。

 

詩織「今日は何も無いんだろ?私も非番だし今日はもう帰る。お前も疲れ残すんじゃないぞ?」

 

哲也「はい!明日もよろしく!」

 

詩織「はいはい。」

 

そう言って詩織さんは病室から出ていった。去り際に手を振ってくれる所は詩織さんなりの優しいところだ。

 

でも・・・・・・悩み事か・・・・・・・・・

 

・・・・・・こんな悩み言ったところで解決策は見つかりはしない・・・・・・もういっそ一生この悩みと暮らすってのも・・・・・・・・・

 

哲也「・・・・・・正義の死神って・・・・・・ほんとにいるんすかね・・・・・・ヒースクリフ団長・・・・・・」

 

俺はそう呟きながらお茶を含み、喉元につっかえてる何かと一緒に飲み込んだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

詩織さんと別れ、病室から出た俺は病院の施設内にある小さな外庭でGGOサポートの人達に折り返しの電話を入れていた。

 

今度の電話もツーコールで出てくれた。

 

『はいはいこちらGGOサポートの者っす。知っての通り非公式っす。』

 

電話に出てくれたのは昨日と同じ人のようだ。

 

哲也「あ、すいません。先日電話入れた者なんですが・・・」

 

『あぁ、テツヤさんっすね。折り返しありがとうございます。』

 

哲也「ええっと、何か俺に要件があったりします?」

 

『大アリっす。寧ろこれ聞くの忘れてたのはこちらの不覚っす!』

 

哲也「な、なんでしょうか。」

 

『実は私達バグの保証対象として何かしらのプレゼントをしてるんすよ。』

 

哲也「プレゼント?粗品的な?」

 

『そんなものじゃないっす!バグが起きてたゲームアカウントに直接何かを送り込むっす!所謂ゲーム内でのプレゼントっすね。』

 

哲也「ええっと・・・イマイチ掴めないんですが・・・」

 

『前例を上げるとすると、貴方と同じように女の子になってしまった人はALOの持ち金を全部GGOに持ってきてくれって頼んできたっす。私達はそのお願いをしっかり叶えて全額GGOに持ち越したっす!まぁ恐らく換金されたっすね。』

 

哲也「ええっ!?別ゲーの物をGGOに!?」

 

『と言っても似たようなプログラミングしてるALOとGGOだから出来たことっすけどね。さて、テツヤさんは何かご要望はありますか?』

 

哲也「ちょ、ちょっと待ってください。そんなことなんでするんですか?非公式サポートってだけなのに・・・」

 

『んなの決まってるっす!ザスカーのバグが最近あまりにも酷いっす!それこそネカマになるなんて言語道断っす!だからそんなバグを対応しないザスカーへの反抗として私達は無償でバグを治すし、こういったプレゼントもしてるっす!これもGGOを愛する・・・いや、全てのVRMMOを愛する者の辿るべき道!!!!』

 

哲也「な、なるほど・・・」

 

『と言っても何も無ければ何も無いで構わないっす。』

 

うーん・・・プレゼントか・・・何にしようかな・・・

 

・・・・・・ALOから持ち越しか・・・・・・

 

哲也「・・・・・・こんなことって可能ですか?」

 

『はいはい!なんでも言ってみてください!』

 

哲也「じゃあ──────────」

 

『ふむふむなるほど!そんなこと楽勝っす!ではすぐ様対応させてもらいますっす!』

 

哲也「はい。分かりました。」

 

『あ、それと 女の子になってしまったバグなんすけど 思った以上に早く対応が終わりそうっす。明日にでも!』

 

哲也「ほ、ほんとっすか!?明日のいつ頃に!?」

 

『申し訳ないっすけど貴方がBOBに参戦してることは確認させてもらったっす。BOB本戦の終戦間際になる可能性が高いっす!』

 

哲也「てなると生き残らなけりゃ男にはなれないって訳か・・・」

 

『頑張って生き残ってしっかりと男の子としてBOBを楽しんでくださいっす!』

 

哲也「はい!色々とありがとうございます!それじゃあよろしくお願いします!」

 

『はいはい!私達も頑張りますっす!!では!』

 

俺はここで通話を終わらせ、携帯を閉じて一呼吸付いた。

 

早く男になれるのは良いとして・・・時間が時間だな・・・多分あのマント野郎・・・いや、デスガンの奴はしっかりと本戦でも勝ってくるはず・・・それまで生き残れるかが鍵になってくるな・・・

 

哲也「よし!明日までにしっかり休んで勝つぞ~!」

 

俺はそう意気込んで外庭を出て、帰る為に駅に向かったのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

場所は変わり、BOB予選を勝ち残った少女 朝田詩乃は公園にて新川恭二と共にいたのであった。

 

詩乃「はぁ・・・まさかテツヤに負けるとはなぁ・・・私もまだまだだな・・・」

 

新川「いや、あれは朝田さんが弱かったんじゃない。彼女が強すぎた。アジリティじゃもうこの先やっていけないって言われてるGGOであれだけ勝ち残ったのは大したものだよ。」

 

詩乃「でも彼女にはただの強かとは違う・・・全く別のものを持ってる気がした・・・私にはそれがない・・・でもその別の物って正体も・・・これじゃあ私は彼女には・・・」

 

新川「別の物?一体彼女から何を感じたんだい?」

 

詩乃「・・・・・・凄い殺気・・・・・・あんな殺気・・・・・・それこそベヒモスと闘った時でも感じられなかった・・・・・・」

 

新川「殺気・・・・・・きっと彼女は一戦一戦に全てをかけるつもりで戦ってるんだろうね。」

 

詩乃「・・・・・・あの・・・・・・あの殺気を私が持てれば・・・・・・トラウマを乗り越えられるのかな・・・・・・」

 

新川「朝田さん・・・・・・」

 

詩乃がGGOをプレイし始めたのは他でもない新川の誘いだ。新川は詩乃の悩みを聞いてるうちに、銃の世界であるGGOにログインすれば少しでも悩みを解消出来るのではないかと考えたからだ。

 

確かに昔よりかは耐性はついたかもしれない。だが確実ではなく"かもしれない"の段階にある時点でまだまだ詩乃のトラウマ克服は先のようだ。

 

詩乃「はぁ・・・私も・・・あれくらい強ければなぁ・・・」

 

新川「そうだ!そのモヤモヤを今日晴らしとこうよ!今日はBOB本戦前日だから出場者と付き添い1人くらいなら無料でバトルシュミレーターを使えるはずだよ!」

 

詩乃「ううん。大丈夫だよ。だから心配しないで新川君。」

 

詩乃に進めた新川もまた、GGOプレイヤーでありプレイヤーネームはシュピーゲル。そう テツヤにアジリティでもやれるってことを教えられた張本人だ。

 

詩乃「それにしても、こんな所で油売ってて平気なの?勉強は大丈夫なの?」

 

新川「まぁ一応それなりにね 頑張っております!」

 

そう言って新川は詩乃に向け敬礼をした。新川は親が医者であり、その後を追うために1年生から猛勉強に励んでいる。GGOはその息抜きという訳だ。

 

詩乃「そっか。頑張ってね。」

 

新川「BOBを蹴ったんだから勉強に本腰入れなきゃ朝田さんに怒られちゃうよ。」

 

詩乃「明日の本戦見学はできるの?」

 

新川「一応ね 明日の勉強時間は減っちゃうと思うけどね。」

 

詩乃「そっか・・・・・・勝てるかな明日・・・・・・でも・・・・・・見てなさいテツヤ!本戦では私とへカートが貴女を狙い撃つわ!!」

 

詩乃はそう言って指で銃口を作って公園内にある木を狙った。

 

そう、あの時の遠藤のように。

 

新川「あ、朝田さん!?大丈夫なの!?そんなことして!?」

 

詩乃「へ?・・・・・・あ、あれ?」

 

詩乃はあの時遠藤の指による銃口を見ただけで発作を起こした。今回自分で銃口を表したがなんの発作も起きない。これは今までにないことだった。

 

新川「もしかしたら彼女への闘争心が朝田さんのトラウマを跳ね返したのかもしれないね。」

 

詩乃「そ、そうね・・・」

 

詩乃(別のことで経験を・・・か・・・・・・)

 

詩乃はあの時哲也に言われた台詞を思い出していた。他のことで経験を積めば今克服したいことがそれによって本当に克服できるかもしれない。詩乃にとって他のことで経験を積むというのはBOBが始まる今が絶好のチャンスだった。

 

詩乃「なら・・・テツヤを倒すことで・・・私は・・・今までの自分と決別してみせる・・・!」

 

新川「その意義だよ 朝田さん。」

 

そう言って新川は詩乃の手を握った。

 

詩乃「へ?」

 

新川「朝田さんはきっとトラウマなんて跳ね除ける!きっと今より強くなれるよ!」

 

詩乃「あ、ありがとう・・・新川君・・・」

 

新川「朝田さん・・・僕は君のためならなんだって協力するよ・・・」

 

新川はそう言ってじっと詩乃を見つめる。それはどこか狂気を感じさせる目線であった。

 

詩乃「し、新川君?」

 

新川「朝田さん・・・朝田さん・・・!」

 

新川はそう言って詩乃のことを抱きしめた。詩乃は思わず困惑して新川のことを押し飛ばしてしまった。

 

詩乃「ご、ごめんね・・・まだそんな気分になれなくて・・・」

 

新川「いや・・・こっちこそごめん・・・つい・・・」

 

詩乃「テツヤ・・・貴方に勝ってみせるわ・・・・・・」

 

詩乃(・・・応援してくれるかな・・・貴方は・・・)

 

詩乃は新たな目標を胸に、明日の本戦に望むのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~哲也 side~

 

俺は自宅の最寄り駅に付いてからそのまま家に帰るのではなく近くの川沿いに来ていた。

 

夏場の川沿いは少し涼しくて気持ちがいいし、なにより静かで自分のことに集中することが出来る良い場所だ。

 

哲也「・・・・ラフィン・コフィンか・・・・・」

 

昨日遭遇したあの野郎は俺にとっては因縁の相手だった。キリトが怯えていたのも無理もない 何故か?それはあの場面 俺は少し震えていたからだ。

 

未だに殺したヤツらの夢を見るくらいの俺が本物のラフコフに会って平然としていられるわけがない。本当なら俺だって何かに甘えたかった。

 

でも何故それをしないか?答えは簡単。俺は皆にとって"英雄"だからだ。

 

英雄の俺がガタガタ震えてたんじゃ話にならない。だからあの時は敢えて強気に振る舞うことで震えを止めていたんだ。

 

そう・・・・・英雄は皆の前では常に強くなくちゃならない いついかなる時も。

 

哲也「英雄か・・・・・・」

 

俺は流れる川をしばらくぼーっと見つめ、数十分後にその場を離れ家へと向かった。

 

・・・・・・俺が甘えられるのは木綿季の前だけだからな・・・・・・

 

こうして、俺は家に帰り、寂しい思いをさせた木綿季の相手をしていた。

 

木綿季「むぅ~終電逃すまでログインしてるなんて聞いてないよ~ボク寂しかったな~」

 

哲也「悪かった悪かった。ほら、おいで。」

 

俺は手を広げ木綿季を迎え入れる準備をすると、木綿季はすぐ様俺の胸に飛び込んだ。

 

哲也「よしよし。」

 

俺は木綿季のことを撫でてやると、木綿季は嬉しそうに声を漏らした。

 

木綿季「にへへ~♪」

 

アホ毛もめちゃくちゃ振ってるしご機嫌なようで何よりだ。

 

木綿季「ねぇ哲也?もしかしてとは思うけど・・・終電逃したの女の子と一緒にいたからとかじゃないよね?」

 

哲也「んなわけないだろ?ちょっと仕事が長引いただけだよ。」

 

木綿季「なら良かった♪」

 

・・・・・・言えない・・・・・・シノンの胸を揉んだことでログアウト時間を遥かに超えてログインしてたなんて・・・・・・しかも二人きりで食事まで・・・・・・木綿季に言ったらまた半殺しにされる・・・・・・

 

俺はヤンデレ化した木綿季にされてきた罰を思い出すと恐怖と共に大量に汗をかいてしまった。

 

今思えば月牙天衝何百連発から始まり・・・椅子ぶん投げられそうになったり・・・・・・アホ毛ドリルで腹を攻撃されたり・・・・・・女の子と一緒にいると小一時間問い詰められて・・・・・・しかも返答にミスるとその時点で半殺し確定・・・・・・お、恐ろしい・・・!

 

木綿季「?なんでそんなに汗かいてるの?そんなに部屋の中暑い?」

 

哲也「い、いや!大丈夫だよ!て、テレビでも見よっか!!!!」

 

俺は恐ろしいあの光景を忘れたくて思わずテレビを付けた。

 

だが、それ以上に忘れたいことを思い出してしまった。

 

『今日。数年前に起きた"連続殺人"犯の死刑が執行されます。この事件は・・・』

 

哲也「っ・・・・・・」

 

木綿季「れ、連続殺人犯だって・・・怖いね・・・」

 

連続殺人犯・・・・・・俺も・・・・・・それをやっちまった内の1人・・・・・・なんだよな・・・・・・

 

35人だぞ・・・35人・・・こんな人数・・・許されるわけ・・・なのに俺は何のお咎めも無しに生きてる・・・・・・

 

35人もの生命が・・・俺の手によって・・・俺は・・・本当は正義の死神なんかじゃなくて・・・本物の死神なんじゃないか・・・?

 

何人も何人もこの手で・・・・・・天鎖斬月で斬り裂いて・・・・・・気づいた時には俺の手はもう後戻り出来ないほどに赤く染まり・・・・・・本当は木綿季と一緒にいる資格も 木綿季を愛する権利も俺には無いんじゃないのかな・・・・・・

 

アイツらが人殺しだってのは分かるさ・・・・・・でも・・・・・・殺されたから殺してなんて・・・・・・そんなことやってたら永遠に真の平和なんて来るはずがない・・・・・・

 

俺に・・・・・・返り血で染まった手なんかで手の届く人を助けることなんか・・・・・・

 

頭の中で色々な考えが巡ると俺の胸はだんだんと苦しくなり、昨日とは比べ物にならないレベルの過呼吸に陥ってしまった。

 

木綿季「て、哲也!?どうしたの!?」

 

哲也「はぁ・・・!はぁ・・・!」

 

苦しい・・・もっと・・・もっと酸素が欲しい・・・俺に・・・俺に酸素を・・・

 

木綿季「哲也!!!!哲也!!!!!!!!」

 

哲也「ゆ・・・うき・・・苦・・・し・・・・・・」

 

俺はそう言いながら とてつもない苦しみと共に意識が途絶えた。

 

木綿季「哲也!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ここは・・・・・・どこだ・・・・・・目の前が真っ暗だ・・・・・・

 

俺の身体すら見れない・・・・・・早く・・・・・・明かりを・・・・・・

 

『お前に明かりなんてねぇんだよ。』

 

哲也『っ!?』

 

俺はその声を聞いた瞬間に目に光が灯された。しかし、目の前に広がったのは数多の死体の山だった。

 

哲也『こ、これは・・・・・・!』

 

どれもこれも、斬り裂かれた跡が残ってる。間違いない。これは俺の殺してきた・・・・・・

 

『俺らを殺してのうのうと生きやがって・・・死神様よぉ・・・』

 

哲也『ち、違う!俺がお前らを殺したのは・・・自己防衛であって・・・』

 

『自己防衛で35人も殺すか?普通・・・』

 

『殺し屋の癖に英雄を気取るなよ。』

 

『お前に生きてる資格はないんだ。』

 

『人を助ける資格も。』

 

『今すぐ死ね。』

 

『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』

 

辺りの死体がどんどんゆっくりと立ち上がり、俺を囲むようにポジションを取り始めた。

 

哲也『や、止めろ・・・!これ以上・・・!何も言うな!!!!』

 

『んじゃあさっさと死んじまえよ!正義の死神を気取った偽善者よぉ!!!!』

 

哲也『偽善者じゃねぇ・・・!俺達の仲間を殺したのはお前らであって・・・!』

 

『俺らの仲間殺したお前も一緒だ!』

 

『都合のいい御託並べればいいと思ってんじゃねぇぞ!』

 

『さっさと死ねよ!』

 

『地獄に落ちろ!!!!』

 

俺の耳が罵声という罵声で埋め尽くされる。もう嫌だ。助けてくれ。誰でもいいから・・・誰でもいいから・・・!!!!

 

哲也『助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

もうこの際この罵声が聞こえなくなればいい・・・聞こえなくなれば・・・・・・

 

・・・・・・あれ?なら・・・・・・

 

手っ取り早くコイツらを"殺しちまえば"良いんじゃねぇか・・・・・・

 

そうすりゃもう罵倒も何も無くなる・・・・・・今更35人から1人増えようが・・・・・・もうどうでもいい・・・・・・

 

あれ・・・・・・俺の手に丁度天鎖斬月があるな・・・・・・もうこれは殺せってことだな・・・・・・

 

哲也『・・・・・・月牙天衝!!!!!!!!』

 

俺は月牙天衝を罵倒してくる奴らに向かって放った。当たった月牙天衝はそいつらを斬り裂き多量の血が俺に跳ね返ってきた。

 

俺はそのまま近くにいる奴ら全員を殺した。何人も 何十人も 何百人も 全てこの手で斬り裂いた。

 

気づいた時にはもう周りには誰もいなくて、俺1人だった。

 

そして、俺の身体は数多の返り血で濡れていた。

 

哲也『はぁ・・・はぁ・・・これで・・・全員・・・か・・・』

 

ふと我に帰ると、足元に死体が転がっていた。男にしては大分小さな死体だけど・・・・・・俺はまさか女の子を・・・・・・?

 

俺はその死体の顔を見るために、上向きにした。

 

哲也『っ・・・・・・!?』

 

俺はその死体の顔を見て思わず困惑した。何故か?それは殺してた相手が・・・・・・"木綿季"だったからだ。

 

哲也『う、嘘だろ!?木綿季!?木綿季!!!!!!!!木綿季!!!!!!!!!!!!』

 

木綿季の身体を揺さぶるが、木綿季はなんの返事もせずただ虚ろな目が俺を睨みつけていた。

 

嘘だ。俺が木綿季を殺したなんて・・・そんなの・・・そんなの嘘に決まって・・・・・・

 

俺は何かに縋る思いで辺りを見回した。すると、俺のしていた行動の全てがそこに映し出されていた。

 

数多の横たわる死体は、全て俺の大切な仲間の死体だった。

 

木綿季に加え母さん 親父 姉ちゃん 翔 和人 直葉ちゃん 明日奈 クライン エギル 珪子 里香 琴音 鈴奈 カノン。横たわる仲間は・・・無意識の内に俺が殺したのか・・・・・・?

 

哲也『う、嘘だ・・・・・・こんなの・・・・・・全部・・・・・・!』

 

俺は仲間を殺してしまった自分の手を見た。俺の手は人間特有の色をしておらず、真っ赤に染まりあがっていた。

 

俺が・・・俺がもっと強ければ・・・あんな罵声にも屈せずにいられる心の強さがあれば・・・・・・こんな・・・・・・こんな事態には・・・・・・

 

俺は・・・・・・弱い癖に人を殺せる無差別殺人者だ・・・・・・

 

そう思った時点で、自分の意思ではなく身体が勝手に俺の腹部に天鎖斬月を突き刺していた。

 

痛い。痛いけど 俺はそんなことを知らずに仲間全員を・・・

 

こんな・・・こんな男死んでしまった方が身のためだ・・・もう・・・俺は英雄でもなんでもない・・・ただの殺人者だ・・・・・・

 

ごめんな・・・飛鳥・・・今度は・・・会えそうにないよ・・・

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

木綿季「哲也!!!!しっかりして哲也!!!!!!!!哲也!!!!!!!!!!!!」

 

哲也「っ!!!!」

 

俺は大きな声に反応して思わず飛び起きた。目の前には涙目の木綿季がいた。

 

どうやら、あれは俺の見た悪夢のようだ。あんな悪夢今までで見たことないくらい一番酷い・・・・・・

 

木綿季「哲也・・・・・・!!」

 

木綿季は涙を流しながら俺に飛びついてきた。

 

哲也「木綿季・・・・・・?」

 

木綿季「いきなり哲也が倒れたから・・・ボク心配で・・・!でも直ぐに治ったみたいでほんとに良かった・・・!」

 

直ぐに・・・・・・ってことは俺は短い間にあんなものを・・・・・・

 

哲也「・・・・・・」

 

木綿季「哲也・・・!ほんとに大丈夫なの・・・!?」

 

哲也「・・・・・・平気さ・・・・・・大丈夫・・・・・・」

 

俺はそう言いながら木綿季のことを撫でた。

 

木綿季にこんなこと相談できっこない・・・・・・誰か・・・・・・誰か・・・・・・助けてくれ・・・・・・!!!!

 

俺の胸の苦しみを取ってくれ・・・!!!!

 

哲也「・・・・・・正義の死神なんか・・・・・・いる訳ねぇ・・・・・・」

 

俺は自分の中に蔓延ってる負の塊を忘れたくて、小さな木綿季の身体を思い切り抱きしめた。

 

何が・・・・・・何が英雄だよ・・・・・・自分のやったことにいつまでもグダグダと後悔し続けやがって・・・・・・それで何が英雄だ・・・・・・!!!!

 

彼女の前では威勢を張ってられるのに本当は自分のやったことに後悔し続けてる弱い男・・・・・・

 

それが俺・・・・・・似非のヒーロー・・・・・・荒波哲也だ・・・・・・

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

あれから時間は経ち、夕食も食べ終え風呂も入り寝る時間に。

 

木綿季「哲也。そろそろ寝よっか。」

 

哲也「そうだな。俺は明日も任務があるからな。」

 

木綿季「じゃあちゃーんと寝て疲れは残さないようにしなきゃね!電気消すよ?」

 

哲也「うん。良いよ。」

 

木綿季「それじゃあおやすみ!哲也!」

 

哲也「おやすみ木綿季 愛してるよ。」

 

電気を消した木綿季が布団に入ったのを確認して、俺は木綿季の頬にキスをして眠りについた。

 

昼間あんなことがあったからだろうか。今日はとてつもなく眠い。このままぐっすり眠れそうだ。

 

明日はいよいよデスガンとの直接対決になる可能性がある・・・・・・でも・・・・・・こんな精神状態で俺はやって行けるのかな・・・・・・

 

『なぁに辛気臭い顔してんだよ哲也。お前らしくない。』

 

哲也「へ?木綿季?」

 

「ハズレだ馬鹿哲也。私だよ。」

 

俺は声の方を向いた。するとそこには飛鳥がいた。

 

哲也「あ、飛鳥!?なんでお前が!?」

 

飛鳥「なんでって、お前が寝たのを確認したからこうして久しぶりに遊びに来たんだよ。中間テストぶりかな?」

 

哲也「お、俺そんな早く寝たのか・・・どんだけ疲れてたんだ・・・」

 

飛鳥「さてと、今日はこんなこと話に来たんじゃない。もっと大事な話をしに来たんだよ。」

 

哲也「大事な?」

 

飛鳥「哲也 お前ラフィン・コフィンの残党に会ったらしいな。」

 

哲也「っ・・・・・・あぁ。そうだ。」

 

飛鳥「そうか・・・会っちゃったのか・・・」

 

哲也「・・・・・・お前を亡くした事件前に退治してた野郎だ・・・・・・あの野郎共より遥かに腕が立つ・・・・・・」

 

飛鳥「そうなのか?でも大丈夫だよ!お前なら勝てるさ!なんだっけ?GGOのBOBだっけ?本戦出場したからには勝てよ!!」

 

哲也「・・・・・・あぁ・・・・・・」

 

飛鳥「なんだ?お前らしくないな。元気出せよ!」

 

哲也「・・・・・・悪いな・・・・・・今悩んでてな・・・・・・」

 

飛鳥「・・・・・・私で良かったら聞くぞ?」

 

・・・・・・もう死んじまってる飛鳥なら・・・・・・悩みを打ち明けても平気かな・・・・・・

 

哲也「・・・・・・俺さ・・・・・・お前が殺された後にあの場にいた全員を殺したんだ・・・・・・」

 

飛鳥「その事なら一応知ってるよ?私の仇を取ってくれたんだよな♪」

 

哲也「実は・・・その前のラフィン・コフィンの本丸との戦いでも人を殺してて・・・・・・累計で35人俺はこの手で殺めてる・・・・・・」

 

飛鳥「・・・・・・」

 

哲也「こんな大人数殺して・・・俺は平然と生きてる・・・殺されることも無くただ平和に・・・・・・SAOの時にヒースクリフ団長にも言われたさ。君の殺しは正義の為の殺しだって。でも・・・だからって35人も殺して俺は・・・」

 

飛鳥「・・・・・・そっか・・・・・・それで苦悩してたんだね・・・・・・」

 

哲也「なぁ飛鳥・・・俺はどうすれば良いんだ・・・?もう俺の手は人を殺めた手だ・・・二度と治りっこない・・・永遠に人殺しの烙印を押されながら過ごさなきゃいけないのか・・・?俺は・・・ただ仲間達を助けたかっただけなのに・・・・・・俺の心の中の何かがその想いを吹き飛ばして締め付けるんだ・・・・・・」

 

飛鳥「・・・・・・ったく、お前はほんとに優しい男だな。」

 

飛鳥はそう言うと俺を撫でてきた。

 

哲也「飛鳥・・・・・・?」

 

飛鳥「きっとお前のことだ。あんな奴らでも人間だ。そんな人達でも殺すのが正解だったのかどうかで未だに悩んでるんだろ?」

 

哲也「・・・・・・分からない・・・・・・俺は一体どうすれば良いのかが・・・・・・」

 

飛鳥「なぁ哲也。もしも私が殺されたあの場面でお前がアイツらを全員殺してなければどうなってたと思う?」

 

哲也「・・・・・・そんなの・・・・・・」

 

飛鳥「答えは簡単だ。アイツらはお前に明確な殺意があった。あんな大人数で囲まれればお前も恐らく死んでただろうな。その後のSAOはどうなる?」

 

哲也「・・・・・・」

 

飛鳥「恐らく またラフィン・コフィンを復刻させて私やお前以外の多くのプレイヤーを殺してたのかもしれない。それこそ、お前の大好きな絶剣もな。もしそうなったら後の祭りだ。攻略組が全員殺される可能性もある。そしたらアインクラッド攻略はどうなる?残されたプレイヤー達はなんの反抗も出来ずに日々殺人者に怯えて暮らす最悪の世界になってだと思うぞ?」

 

哲也「・・・・・・そんな・・・・・・それはお前の考えすぎじゃ・・・・・・」

 

飛鳥「馬鹿野郎!!!!!!!!」

 

俺は飛鳥に力一杯ぶん殴られた。思わぬ自体に受身も取れずに俺は倒れてしまった。

 

飛鳥「確かに私の言ったことはIFに過ぎない!でもな!?その最悪なIFストーリーになってた可能性があったんだ!!だけど実際多くの犠牲者を出しながらもゲームはクリアされた!!!!それはなんでだ!?お前があの時アイツらを全員殺してお前自身がヒースクリフを倒してあの世界を終わらせたからだろ!?」

 

哲也「飛鳥・・・・・・」

 

飛鳥「良いか!お前は確かに人を殺した!だけどお前の行動で何千人の平和を取り戻したんだ!それを誇りに持てよ!!お前は英雄だろ!?」

 

哲也「・・・・・・」

 

・・・・・・英雄・・・・・・か・・・・・・

 

飛鳥「もしもお前が人殺しだって言ってくるやつがいたら私がそいつを呪い殺してやる!!!!だからお前は堂々と胸張って生きればいいんだよ!!!!俺は35人殺した以上に何千人の生命を救ったんだって!!!!」

 

哲也「・・・・・・」

 

飛鳥「だからお前が人を殺したことを気にすることは無い!分かったか!?」

 

・・・・・・35人殺した代わりに・・・・・・何千人を助けられた・・・・・・か・・・・・・

 

飛鳥「哲也 このこと私以外にも話してみろよ。きっとお前にとって為になることを言ってくれるはずだ。 私から言えるのはお前の取った行動と選択は決して間違いちゃいないってことだよ。」

 

俺の行動と選択に間違いはない・・・・・・か・・・・・・

 

哲也「そっか・・・・・・ありがとな飛鳥。このこと初めて相談できたから大分楽になれたよ。」

 

飛鳥「そっか!それなら何よりだ!」

 

哲也「飛鳥。明日お前の言ってくれた通り他の人にこのこと話してみる。それでその人の意見も聞いてみるよ。それで俺の心情が何も変わらなければ・・・・・・俺は一生をこの悪夢と添い遂げるよ。それもきっと英雄の宿命なのかもしれない。」

 

飛鳥「私は英雄でもなんでもないから何も言えないけど・・・・・・1人で何もかも背負うなよ。何もいいことは起きない 誰かに吐き出せる時に全部吐き出せよ。それに、彼女に言えなくても私が付いてる。私になら幾らでも言えるだろ?」

 

哲也「・・・・・・確かにな・・・・・・でも お前を毒吐きの相手になんかしないよ。毒は俺自身が何とかするさ。」

 

飛鳥「哲也。そんな精神状態で戦ったってラフィン・コフィンの野郎に殺られるのがオチだ。だから何とかしてみせろ!それで・・・私を安心させろ!お前はやっぱり英雄なんだって!」

 

哲也「あぁ。本戦の時までには何とかしてみせるよ。俺の弱さと一緒にね。」

 

飛鳥「負けたら許さないからな!勝ってみせろよ!」

 

哲也「分かってるさ ありがとう飛鳥。結果報告はまた後日に。」

 

飛鳥「待ってるよ!お前の勝利報告!」

 

哲也「それじゃあ飛鳥。俺はそろそろ帰らせてもらうよ。疲れは残したくないしね。」

 

飛鳥「・・・・・・絶対・・・・・・絶対勝てよ・・・・・・」

 

飛鳥はそう言って俺の事を強く抱きしめてくれた。今の俺にはそれが凄く暖かく 心地よい包容だった。

 

哲也「・・・・・・見守っててくれ・・・・・・飛鳥・・・・・・」

 

俺は小さくそう言って再び眠りについた。

 

飛鳥に抱きしめられたおかげでどこかに感じてた身体のダルさが解れ、ぐっすりと眠ることが出来た。

 

次に目を覚ました時には翌日になっていた。

 

ありがとな飛鳥 心のモヤが大分晴れたよ。だけど 完全に晴れたんじゃない。 これじゃあまたきっといつか悪夢を見る日が来るだろう。

 

哲也「・・・・・・」

 

俺は木綿季を起こさないようにゆっくりと立ち上がり、外に出て携帯から一通の電話をかけた。早朝ではあるがきっとあの人なら起きてるはずだ。

 

俺の予想通り、電話をかけた相手である詩織さんは通話に応じてくれた。

 

詩織『はいはいもしもし・・・朝からなんだ・・・?』

 

哲也「詩織さん 今日またGGOにログインする前に俺の悩み聞いて貰えませんか?」

 

詩織『あぁ・・・?昨日は何も無いって・・・』

 

哲也「お願いします!このことは詩織さんにしか頼めないんです!」

 

詩織『はぁ・・・分かったよ。お前の悩みの1つや2つくらい簡単に解決させてやるから安心して私に話せ。トップシークレットにしといてやる。』

 

哲也「頼りにしてますよ 詩織さん!」

 

詩織『んじゃあログイン前にちゃんと来いよ。出ないと話は聞いてやらないからな。』

 

哲也「はい!じゃあまた!」

 

詩織『またな 哲也。』

 

俺は詩織さんの声を聞いてから通話を終わらせた。

 

他力本願で申し訳ないんすけどきっと詩織さんなら俺の晴れかけたモヤを完全に吹き飛ばしてくれるはずだ。

 

俺が本当の意味での英雄なのか・・・・・・もしくは偶然祭り上げられてる偽物なのか・・・・・・教えてください・・・・・・詩織さん・・・・・・




数多の命を奪ってしまったことに心を痛めていた哲也。それは英雄であるからこそ抱き抱えている悩みであり、心の弱さでもある。

哲也は飛鳥との会話の中で何を思ったのか。そして哲也はこの悩みを解消するに至るのか。

次回は決勝戦のログイン前までをお送りします!お楽しみに!
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