ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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すいません!また遅れてしまいました!

今回はいよいよBOBの始まりです!一体誰が勝つのか!そしてテツヤとキリトは無事に事件解決に至るのか!

それでは本編をどうぞ!


Part117 本戦~殺人の瞬間~

GGOにログインし、総督府に向かった俺は何事も無く無事に総督府に到着。総督府は既にこれから始まるBOB本戦の色に染まりきっていた。

 

総督府に着いてまず確認したのは今日の本戦出場全プレイヤーの名前。その中に今回の標的であるデスガンがいるかを探したが流石にその名は無かった。となると偽装登録してる可能性が高い。一体誰が・・・・・・

 

プレイヤーネームを見終えて改めて会場を見渡すと辺りには様々なプレイヤーがいた。まるでそれはお祭り騒ぎのような盛り上がりの様子だった。これだけで如何にBOBが凄い大会なのかが改めて伺える。

 

だが、俺は祭り事で終わらせちゃいけない。既に中にはデスガンも当然いるはず・・・・・・気を抜ける暇なんざありゃしない。

 

会場内を移動してると、俺を見て周りのプレイヤーがざわざわし始めた。良くはわからないけども本戦出場者であるからだろうか?

 

中央にあるモニター前でふと止まると、右斜め前にはシノンが、左斜め前にはキリトがいて、俺達は三角形の状態で出会うこととなった。

 

テツヤ「よぉ2人共、いよいよだな。」

 

シノン「えぇ、テツヤ。2度目は無いわ。必ず貴方を倒してみせる。」

 

キリト「こっちだってそうだ。テツヤ いざとなったらお前も踏み倒さなきゃいけない障害になるんだからな。手加減は・・・あれ?お前その頬の傷は?」

 

テツヤ「これか?これはお前も見慣れてるだろ?」

 

キリト「なるほどな。そういう訳ならお前もいよいよ本当の意味で本気になるってことだな。」

 

テツヤ「そういうことさ。こっちだって手加減しねぇからな!」

 

シノン「その傷になんの意味があるって言うの?ただのフェイスパーツの1部分じゃない。」

 

テツヤ「まぁそこは企業秘密ってことで。ただ言えるのは・・・今の俺は一昨日の俺までとは違うってことさ。下手したらシノンも一撃で殺られちゃうかもな。」

 

シノン「よ、良くは分からないけどつまりそれは貴方の力の源ってことで今は了承しとくわ。」

 

テツヤ「まぁそういう感じでよろしく♪」

 

シノン「ただ後で教えなさいよその秘密。有耶無耶のままで終わらせたら許さないから。」

 

テツヤ「分かってるよ。本戦が終わったら教えるさ。」

 

シノン「じゃあ2人共。本戦出場者認証は済んだ?済んでいないならこっちに来て。」

 

テツヤ「あいあいさー♪」

 

キリト「お前のその豹変ぷりがやっぱし気持ち悪いな・・・」

 

テツヤ「好きでこんなことやってんじゃねぇ!!!」

 

シノン「はいはいオカマの苦労話は良いから行くわよ。」

 

テツヤ「ちくしょう・・・人の苦労も知らずに・・・」

 

とりあえず出場者認証も終わらせ、俺達はシノンから色々と話を聞くことに。と言うか俺とキリトのシノンへの一方通行の情報収集と言った方が正しいかな。

 

一昨日と同じく控え室のある場所まで向かうと、その場は先程の場よりもさらに盛りあがっていた。出場選手を使って賭け事に勤しんでるプレイヤーもいれば、恐らくかなりの実力者であるプレイヤーがインタビューを受けていたり、既にアルコール類を飲んでいるのか酔っ払ってるプレイヤーもいたりと会場は多種多様のプレイヤーと声で埋め尽くされていた。

 

テツヤ「すげぇな・・・お祭り騒ぎだと思ってたけど本物の祭り事みたいだな・・・」

 

シノン「本戦になるといつもこうなの。試合開始前30分間から情報戦が始まってるのよ。」

 

キリト「なるほど・・・じゃあこっちも色々と策を練れるって訳だな。」

 

シノン「ただ、貴方達みたいな新しく出場する選手だと余り情報が得られてない人が多い。寧ろ私やいつも出てるような選手だと不利になるのよ。だから今回は既に貴方達が1歩リードしてる状況ね。」

 

テツヤ「そっか!んじゃあの戦法で行けそうだな!」

 

シノン「と言ってもテツヤ。油断大敵よ。変なとこで足掬われて私以外に撃たれてやられたなんて言ったらこの前の食事代と装備代含めて全部請求するからね!」

 

テツヤ「いぃ!?マジで!?」

 

シノン「嫌だったら撃たれないことね。貴方なら簡単でしょ?」

 

テツヤ「そりゃそうかもしれねぇけど・・・」

 

キリト「シノンにとっての良いカモだなテツヤは。」

 

シノン「そういう事ね♪」

 

テツヤ「くそ・・・俺のラッキースケベ症を怨む・・・」

 

こんな感じで3人で歩いていると、どこかからか俺達のことを喋っている声が聞こえてきた。

 

「なぁアレ、キリトちゃんじゃないか?」

 

「フォトンソードで敵をズタズタに斬り裂くプレイングだってな!」

 

「クールビューティーなバーサーカーってやつだな。」

 

「クールビューティーって言ったらやっぱしシノっちでしょ。」

 

「あのクールな眼差しで睨まれてへカートで撃たれてみてぇなぁ・・・」

 

「おいおいドMかよお前。」

 

「でもさでもさ!テツヤちゃんも可愛いさとあのシノンちゃんを倒した程の強さのギャップが良いよねぇ!」

 

「使い物にならないと言われてるスラッシュエッジであそこまでやれる女の子がいるなんて男のメンツ丸潰れだな。」

 

「テツヤちゃんのコンビネーションで倒されてぇ~!」

 

「俺シノっちに撃たれたい派。」

 

「俺キリトちゃんに斬られたい派。」

 

「俺テツヤちゃんに料理されたい派!」

 

「かぁ~あの3人が今大会同時に出るなんてレベル高ぇ~別の意味でも!!!」

 

・・・・・・勝手な想像してるとこ悪いけども俺達は女1に男2だぞ・・・まぁ言ってるうちはタダだしな・・・楽しんでくれたまえ・・・

 

俺はそんな会話をしてるプレイヤー達の方に目をやってると、2人組の男プレイヤーとぶつかってしまった。

 

テツヤ「あっ!ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 

「だいじょ・・・ひぃ!?し、失礼しましたァ!!!」

 

「どうぞお進み下さい!!!テツヤさん!!!」

 

そう言って2人は俺の前に道を譲ってきた。なんだ?本戦出場者ってそんな恐ろしいのか?

 

俺はそのまま譲られた道を通ると、その場で立ち止まった。

 

「な、なんだ・・・?」

 

「ま、まさか俺達を殺る気じゃ・・・!?」

 

テツヤ「ねぇ・・・・・・君達・・・・・・」

 

「ひぃぃ!?なんでしょうか!?」

 

俺は背を向いていた状態から前を向き、女の子らしい可愛らしいポーズを取りこう言った。

 

テツヤ「皆♪本戦はボクのことを応援してね♡」

 

俺がそのセリフを言うと辺りにいたプレイヤーはまるで稲妻でも打たれたのような表情になったと思うと、次第にその顔はにやけ顔へと変わって行った。

 

「ま、任せてください!!!死に物狂いで応援します!!!」

 

「今回は貴女に全財産を賭けます!!!」

 

「テメェらテツヤちゃんに全財産特攻する準備は出来たかぁ!?」

 

テツヤ「えへへ~♪皆の応援があればボクも百人力だよ♡」

 

キリト「・・・・・・何やってんだ・・・・・・テツヤ・・・・・・」

 

シノン「・・・・・・変態というか変人ね・・・・・・なんでこんなのに負けたのかしら・・・・・・」

 

こうして俺の悪ふざけも終わると本戦が始まるまで残り20分となり、いよいよ本格的に腰を落ち着けて本戦までの情報収集に入った。

 

シノン「それじゃあそこの変態と変人の掛け合わせたオトコ女のせいで時間も減ったし簡単に本戦のルール確認と出場プレイヤーを見ていきましょう。」

 

テツヤ「なぁ!?どんどん俺の扱い酷くなってない!?」

 

キリト「あんなことするからだよ。普通の人ならあんなことやらない。」

 

テツヤ「だ、だって・・・皆がつられてるの見て少し調子に乗っちゃって・・・」

 

シノン「はいはい言い訳はいいわよ女装趣味人間。」

 

テツヤ「また悪化したよ!」

 

シノン「良い?本戦はね・・・」

 

話に聞くと本戦は予選とは違い本戦出場者30人が同時に同じフィールドに転送され、転送先は完全ランダムの遭遇戦ルールらしい。マップは10キロに渡り山岳地帯、森林地帯、草原地帯、廃墟地帯、砂漠地帯と様々。時間は午後からの設定となりそれにより防具などの有利性も無し。10キロのマップでどう敵を見つけるかと言うと、サテライトスキャンと呼ばれるシステムを使ったプレイヤー認識機能があり、そのサテライトスキャン端末を見ると15分に一度全プレイヤーがどこにいるかが掲載される。移動せずに人数が減るまで待とうとしても無駄という訳だ。

 

テツヤ「ふーん、なるほどね。」

 

シノン「ていうか!今まで私が言ったこと全部運営からのメールに書いてあるんだけど読んだの!?」

 

テツヤ「め、メール?そんなの来てた?」

 

キリト「い、一応俺は読んだけども・・・ほら!最終確認が必要じゃないか!」

 

シノン「はぁ・・・じゃあ女装趣味の変人無確認男は助かったって訳ね。」

 

テツヤ「お前俺のこと酷い呼び方にするの楽しんでない!?」

 

シノン「さぁね♪」

 

そう言ってシノンはテーブルに置かれたドリンクを飲んだ。駄目だ・・・このままじゃ勝ったはずのシノンに舐められっぱなしだ・・・なんでもいいからここは牽制しとくか・・・!

 

テツヤ「なぁシノン?そんなサテライトスキャンがあったらスナイパーは不利じゃないか?ずっと一定の位置にいるんじゃ15分後にはバレて終わりってことになっちまうぞ?」

 

シノン「ふんっ。1人撃ち抜いて1キロ移動するのに15分もかかると思う?こっちは伊達にスナイパーやってる訳じゃないのよ!」

 

テツヤ「なるほどね。相当な自信をお持ちのようで。ただ分からねぇぞ?すげぇ速さで近づいてくるプレイヤーがいたら流石のシノンもお陀仏だろ?」

 

シノン「そんなプレイヤーいたらお目にかかりたいわね。まぁその可能性を握ってるのは1人ってとこかしらね。」

 

テツヤ「へっ。結局俺とお前の一騎打ちってことになりそうだな。」

 

シノン「やっぱり闘いともなると目付きが変わるところは流石と言ったとこかしらね。楽しみにしてるわよ?テツヤ君。」

 

テツヤ「そっちこそ俺以外にやられんなよ。シノンちゃん。」

 

俺とシノンは互いに目を合わせるとまるで火花が散るかのように睨み続けた。

 

キリト「ストップストップ!!!2人の一騎打ちになる可能性は分かったから!最後に1つ!俺とテツヤ以外で今大会が初出場ってやつはいないのか!?」

 

シノン「へ?初出場者?」

 

テツヤ「なんでそんなことを?」

 

キリト「お前はシノンがいることで熱くなりすぎだ!俺達の本来の目的はなんだ!?」

 

・・・・・・俺の本来の目的はデスガンの正体を暴く事・・・・・・目先のシノンばっかしに注意が行ってしまうとは俺もまだまだだな。

 

テツヤ「確かにな・・・・・・。確かにそうだ!よしシノン!俺にも教えてくれ!!」

 

シノン「はいはい・・・初参加はキリトと変態女装趣味男を除くと後3人だけね。」

 

テツヤ「結局それかよ!」

 

キリト「いいから!それで!?その3人の名前は!?」

 

テツヤ「あ!そうそれだ!名前を教えてくれ!」

 

シノン「分かったから少し落ち着きを持ちなさいよ・・・1人目は銃士X 2人目はペイルライダー。3人目はSterben・・・スティーブンかしら?」

 

この3人の中にデスガンの野郎がいるってことか・・・・・・一体誰なんだ・・・・・・?

 

シノン「それでこれはなんの話になるの?アンタの女装仲間?」

 

テツヤ「あのなぁ・・・」

 

シノン「説明も無しに人の話を聞こうとするからよ。推測になるけどもこのプレイヤーの中に一昨日キリトが変に震えていた時の元凶となったプレイヤーがいるってこと?」

 

キリト「っ・・・・・・それは・・・・・・」

 

キリトは説明しようとしたがまた若干だが震えていた。俺はキリトの震える肩を持ち、変わりに俺が話した。

 

テツヤ「そうだ。そいつは俺とキリトがやってたVRMMOで出会った奴でな。そいつとは俺も会場内で会った。3人の中のどれかがそいつだって可能性があるんだ。」

 

シノン「それは友達って訳じゃないのよね。状況的に考えて。」

 

テツヤ「寧ろ敵だ。俺はそいつらの仲間と殺し合いをする程に戦った。恐らくはそいつとも殺り合ってるはず・・・」

 

シノン「殺しあった・・・・・・?パーティーでトラブって仲違いが起きた・・・ってとこ?」

 

テツヤ「そんな生温いもんで片付いたらこっちも助かるよ。俺達とそいつらがやってたのは本物の命を懸けた殺し合い。食うか食われるかの正にデスゲーム。」

 

シノン「・・・・・・デスゲーム・・・・・・?どこかで聞いたフレーズのような・・・・・・」

 

テツヤ「ログイン前までは俺もそいつらにビビってた心があったんだ。でももう俺は迷いはしない。自分のとった行動にも後悔はしない。なんせ俺は・・・・・・死神だからな。」

 

俺はそう言ってシノンとキリトに笑みを見せた。するとキリトの震えも止まり、シノンも笑みを浮かべていた。

 

シノン「そうなのね。ならその敵とやらを倒してさっさと私のところに来なさい。そこで思う存分戦うわよテツヤ。死神の本当の強さ。証明してみなさい。」

 

テツヤ「任せとけ!キリト!お前も腹はくくったか?」

 

キリト「・・・・・・あぁ・・・・・・俺は1人じゃない・・・・・・お前がいるんだ・・・・・・!なら怖いものなんて無い!!!」

 

テツヤ「その意気だ!!!よっしゃ!!!いよいよ本戦も始まるぞ!!!気合い入れてくぞキリト!!!」

 

キリト「あぁ!!!」

 

シノン「じゃあ2人共。待機ドームに移動するわよ。そこで武具点検や最後の精神集中時間に使うの!」

 

テツヤ・キリト「あぁ!!!」

 

俺達は待機ドームに向かうためにエレベーターに乗っていた。既に皆移動したのかエレベーター内は俺達3人だけだった。

 

シノン「テツヤ。」

 

テツヤ「ん?」

 

シノン「貴方とキリトに事情があるのは分かった。でも、貴方の事情とこっちの事情は混ぜないで。何度も言ってるけど私以外の弾丸で倒れたら本当に許さないからね。」

 

そう言ってシノンは俺の背中に指で作った銃口を押し付けてきた。これはシノンなりのエールであり俺への挑戦状だろう。

 

テツヤ「任せとけ。女の子との約束は果たす主義でね。」

 

シノン「そう。変態の貴方が言うなら安心したわ。」

 

テツヤ「最後までそれかよ・・・・・・」

 

シノン「テツヤ。私も貴方を倒すために生き残る。だから貴方も私に倒されるために生き残りなさい。」

 

テツヤ「あぁ。神の名に誓うさ。」

 

俺はそう言いながら拳を胸に当て目を瞑り、胸に誓いを込めた。

 

待機ドームに到着した俺達は個室でその時を待った。個室の方が静かになれるし何より集中がしやすい。

 

俺達は一言も発さないまま自身の武具調整等を行っていた。ただ静寂の中武器の音が響き渡っていた。

 

そして、遂にその時が。

 

『皆さんいよいよお待ちかね!!!バレット・オブ・バレッツの開催時間まで残り30秒となりました!!!一体誰が優勝をするのか!!!そして最強プレイヤーの座を掴むのは誰か!?』

 

『残り15秒は皆さんと共にカウントしていきましょう!14!』

 

テツヤ「なぁシノン。お前も俺以外のやつに殺られんなよ。」

 

シノン「えぇ。貴方以外に撃たれる気は微塵もないわよ。撃たれるなら貴方のコルトパイソンの方がよっぽどましね。」

 

キリト「2人とも完全に俺の事を忘れてないか・・・!?一応俺も本戦出場者なんだからな!?」

 

テツヤ「いやぁ悪い悪い。何分俺とシノンは再戦を誓った戦友だからさ♪」

 

キリト「戦友の前に親友を忘れてどうするんだよ!?」

 

テツヤ「まぁまぁ。んじゃ2人共。無事に生き残ってこの3人で1位を争おう!!!」

 

シノン「当たり前よ!」

 

キリト「当然!!!」

 

互いの健闘を称えて3人で拳を合わせたその瞬間。第3回バレット・オブ・バレッツ開催の火蓋が切って落とされた。

 

『第3回バレット・オブ・バレッツスタートです!!!』

 

大歓声が聞こえるなか、俺達はバトルフィールドに転送されたのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~side シノン~

 

試合開始から既に30分弱。30人のプレイヤーが各自で銃撃戦を繰り広げていた。

 

無論私は生き残っていた。そして今もスコープで敵に狙いを済ましてる真っ最中だった。

 

こちらにも気づいてない様子。私は敵の腰部にマウントされていた手榴弾を狙撃するとその手榴弾は爆発し、敵は一瞬で倒れることとなった。

 

そのまま木影に移動すると、サテライトスキャン端末を見て、現状の人数と誰がどこにいるかを確かめた。

 

シノン「人数も既に21人・・・近くにいるのはダインね・・・」

 

少し移動すればダインとダインと交戦しているペイルライダーと遭遇するはず。ここは行動を先読みして2人のすぐ側にある橋の近くに行くのが無難ね。

 

シノン「・・・・・・テツヤとキリトは・・・・・・あの二人なら余計な心配か。」

 

私はサテライトスキャン端末を閉じ、作戦通りに橋近くに向かう。

 

ダインより先回りして橋近くの高台の上で2人を待っていると、予想通りダインがやってきた。

 

ダイン「さぁ来い新参者!蜂の巣にしてやらぁ!」

 

ダインは橋を渡りきった場所でペイルライダーを待ち構えていた。確かに良い作戦ではあるかもしれない。でも・・・

 

シノン「いつも言ってるでしょダイン。常に四方八方に注意を向けろってね。」

 

完全に注意の全てがペイルライダーに向いているダインを撃ち抜こうとしたその時だった。

 

「動くな。」

 

シノン「っ!?」

 

私は背後から何者かに頭に銃口を押し付けられていた。でも近くにいたプレイヤーなんてあの2人以外には・・・

 

その時、私はふとあの時のやり取りを思い出した。

 

『すげぇ速さで近づいてくるプレイヤーがいたら流石のシノンもお陀仏だろ?』

 

シノン「っ!?まさか!?」

 

「ご名答♪」

 

後ろを振り向き銃口を押し付けていた犯人を確認すると、それはテツヤだった。

 

シノン「な、なんで!?さっき確認したときには・・・!?」

 

テツヤ「言ったろ?すげぇ速さで近づいてくるプレイヤーがってな。」

 

・・・・・・やっぱりムカつく。何もかもを見通したかのような言動と、バグとはいえあどけない容姿の癖にめちゃくちゃに強い。テツヤの強さは一体どこから来るって言うの?

 

テツヤ「ってそんなこと言ってる場合じゃねぇ。シノン。あのオッサン撃つの待ってくれ。」

 

シノン「はぁ!?ここは戦場よ!?撃てる敵を撃たないでどうしようって言うのよ!?」

 

テツヤ「頼む。あの2人の戦い俺に見せてくれ。」

 

そうか・・・・・・ダインと戦ってるのはペイルライダー・・・・・・テツヤにとっての目的となりうる可能性があるってことね。

 

シノン「分かったわよ。ったくアンタって人は・・・・・・」

 

テツヤ「サンキュー♪」

 

シノン「大体、あの2人の戦いを見た後どうする気よ。」

 

テツヤ「んーまぁそんときゃ離れるのが無難かな。作戦は後から練る。」

 

シノン「私が背後から撃たないとは限らないのに?」

 

テツヤ「お前はそんなくだらない方法で俺なんかを倒しゃしねえよ。信頼におけるから今こうしてここにいる。」

 

シノン「はぁ・・・・・・アンタの馬鹿さ加減は天井知らずね・・・・・・」

 

テツヤ「それ程でも♪」

 

シノン「ほら。これ。」

 

私はテツヤに双眼鏡を渡した。私にはへカートのスコープがあるからなくても困らないし。

 

テツヤ「悪いね。」

 

テツヤは双眼鏡を使って2人の戦いを観戦し始めた。私もスコープで2人の様子を伺ったけども、あのペイルライダーってプレイヤーの動きが柔軟でダインの放つ銃弾は一向に当たってはいなかった。動きはこの前のテツヤの崩れたビルの破片の乗り移りをもっと綺麗かつスピーディーに行ってるって感じに近い。

 

シノン「どう?あれが例の?」

 

テツヤ「まだ分からん。あの二人の戦いが終わるまでだ。」

 

シノン「それにしてもあそこまでアクロバットに動けるなんて・・・・・・アイツかなりのやり手よ。」

 

テツヤ「あぁ。でもスピードは俺の方が1枚上手かな?」

 

シノン「今だけはその自信買ってあげるわ・・・」

 

ダインは負けじと弾丸を次々と放つけれど、華麗に動き続けるペイルライダーを捉えることは出来ずに、リロードの隙を付かれ遂に至近距離に追い込まれペイルライダーの武器であるショットガンで頭を撃ち抜かれ、ダインは倒れた。

 

シノン「ダインも惜しかったわね・・・リロードをもう少し早く出来ていれば勝機もあったのに・・・・・・」

 

テツヤ「ペイルライダー・・・・・・あの野郎がデスガンなのか・・・・・・?いや待て・・・・・・あんな動きするやついたか・・・・・・?アクロバティックな動きと言えばそれこそPoHの奴の真骨頂・・・・・・となると下手するとPoHの野郎が敵って可能性が・・・・・・」

 

テツヤはいつに無く冷静かつ慎重に考え事をしていた。戦いとなるとこうしてギアを変えられるのもテツヤの強みなのかしら。

 

シノン「とにかく、戦闘は終わったわよ。私は今からアイツを撃つ。」

 

テツヤ「撃ってみてくれ。それで死ねばアイツは違うってことになるし、死ななければ・・・」

 

シノン「私がこの距離外すとでも?アンタには一撃も当たらなかったけどこれでも私は・・・」

 

そう言いながらスコープを覗いていると、ダインを倒しその前に仁王立ちしていたペイルライダーが何者かに襲われ、肩の部分に何かが突き刺さっていた。

 

いきなりのことで驚きはしたけど、一番驚いたのは何より銃声音が一切しなかったってこと。

 

シノン「テツヤ。聞こえた?」

 

テツヤ「いいや、となるとそっちもか。シノン この状況で考えられる戦闘方法は?」

 

シノン「口径の小さなレーザー銃で撃つか、サイレンサー付きの実弾銃だったか・・・そのどちらかね。」

 

テツヤ「お前みたいなスナイパーだったって線は?」

 

シノン「それもあるけど、近くにいたプレイヤーはあの2人以外にはいなかった。そう。だからアンタが今ここにいることが本来おかしいのよ。」

 

テツヤ「まぁ俺が本気で移動すればそんじょそこらのプレイヤーじゃ何年経っても追いつけねぇよ。それとだ、スキャンされた頃だったら丁度戦闘しててな。敵を倒した後に場所を隠そうと川に潜ってたんだよ。んで、川から上がった後にすぐ側で殺られたオッサンとペイルライダーの戦闘を見つけて、さっさと先回りしてあの2人の戦いを見ようとしたら ここに女神様が居たってわけよ。」

 

シノン「それじゃあ丁度スキャン終了間際に川から出たからサテライトスキャンからは逃れられたってこと?」

 

テツヤ「そゆこと♪いやぁ女の子の服装だから軽くて良いねぇ♪身体も軽いしすーいすい泳げちゃうしいつもより超速で移動できるし♪」

 

シノン「いっその事そのままずっと女のままでいたら?とにかくサテライトスキャンは川を潜ってれば逃れられるってことがよぉく分かったわ。」

 

テツヤ「話を戻してだ。シノン。アイツの肩に妙なエフェクト付きの物が突き刺さってないか?」

 

シノン「アレのこと?アレは・・・」

 

私はスコープの倍率を高め、もっと正確に撃たれたペイルライダーを見る。そして良く肩を見てみると肩に突き刺さっていたのはスタンバレットだった。

 

シノン「スタンバレット・・・なるほどね・・・」

 

テツヤ「なんだ?スタンガンみたいなものか?」

 

シノン「えぇ。そんなとこね。」

 

テツヤ「なるほ・・・・・・っ!?そうか・・・・・・あの野郎か・・・・・・!!!!」

 

テツヤは何か驚いた様子で橋の様子を見ていた。私もスコープで良く見てみると、橋の側にはなにやらマントを羽織り、髑髏のフェイスマスクを付けたプレイヤーがいた。テツヤの様子からしてアレが例の殺し合いをしたっていう・・・・・・?

 

シノン「な、何で・・・!?今までいなかったのに・・・!!」

 

テツヤ「んな事俺が知りてぇ位だよ!!」

 

髑髏マントのプレイヤーはゆっくりとペイルライダーに近づいて行った。そして、髑髏マントのプレイヤーが所持していた武器は 私と同じスナイパーライフルのサイレントアサシンだった。

 

シノン「サイレントアサシン!?」

 

テツヤ「なんだ?それがあの野郎の武器の名前か?」

 

シノン「えぇ。サイレンサーを標準装備したスナイパーライフル。GGOに存在するとは聞いていたけど・・・・・・扱いがかなり厄介だとも聞いたけれどそれを使いこなすなんて・・・!!」

 

髑髏マントのプレイヤーがペイルライダーの目の前で止まると。サイレントアサシンは使わず、ハンドガンを手に取りペイルライダーに狙いを定め、何やら手でジェスチャーのようなものをしていた。

 

シノン「状況的に考えたら確かにハンドガンか・・・」

 

テツヤ「おいシノン!!!撃て!!!」

 

シノン「へ?ペイルライダーを?」

 

テツヤ「ボケてる場合か!!!あの髑髏マント野郎だよ!!!

!!早く!!!マント野郎が撃つ前に!!!じゃないと俺がお前を今ここで倒すぞ!!!!!!」

 

凄い剣幕でテツヤは迫ってくる。脅しまでかけてくる程のことなのね・・・テツヤにとっては・・・

 

私にとってテツヤは何がなんでも倒さなきゃいけない相手・・・テツヤにとってもあの髑髏マントはどうにかしなきゃいけない相手・・・・・・それならアイツは私とテツヤにとって共通の相手って訳ね・・・!!

 

シノン「了解!!!」

 

私はバレットサークルが髑髏マントの頭部と重なり合う状態で止まると、へカートの引き金を引いた。

 

普通のプレイヤーなら一撃で終わるこの攻撃だったけれども、あの髑髏マントはいとも容易くその攻撃を避けてみせた。

 

シノン「う、嘘っ!?私の狙撃を!?」

 

テツヤ「てなるとこっちに気づいてて泳がせてたって訳だな・・・!!!相変わらず汚ぇ野郎だ・・・・・・!!!」

 

一度リロードして再度狙いを定めると、既にペイルライダーはあのプレイヤーに撃たれてしまっていた。だけど急所を外したのか生き残っていたペイルライダーはスタンバレットの効果が切れると同時に立ち上がりショットガンの銃口を髑髏マントの頭部に押し付けた。

 

しかし、ペイルライダーは引き金を引くことなく倒れると、胸を抑えながらまるでもがき苦しむように身体を小刻みに震えさせ、遂には強制ログアウトしてしまった。

 

シノン「な、なによ・・・今の・・・?」

 

テツヤ「・・・・・・アレがアイツの殺り方か・・・・・・」

 

髑髏マントのプレイヤーはハンドガンを高らかに上げると、近寄っていたカメラビジョンに向かいこう宣言した。

 

「我が名、そしてこの銃の名は・・・・・・死銃(デスガン)俺は貴様らの前に現れ、文字通り死を齎してやろう。俺にはその力があるんだ。忘れるなよ まだ何も終わってない。これは序曲にしか過ぎない。さぁ奏でよう 死のダンスを。IT'S SHOW TIME」

 

デスガンと名乗ったその男は何やら不気味なことを発言すると、マスクの中から水蒸気のような物が勢いよく出てきた。その姿は不気味その物だった。

 

テツヤ「確信した・・・・・・あの野郎がやっぱりデスガンだったんだな・・・・・・!!!!!!」

 

シノン「デスガン・・・・・・って例の撃たれてしまったら最後二度とログインしてくることはないって噂の?」

 

テツヤ「噂なんかじゃねぇ・・・!!!アイツは本物の殺人鬼だ・・・・・!!!!!!」

 

シノン「へ・・・・・・?」

 

本物の・・・・・・殺人鬼・・・・・・?一体それってどういう・・・・・・

 

テツヤ「でも大丈夫さシノン。安心しな。」

 

テツヤはそう言うと私の頭に手を置いた。

 

テツヤ「お前を危険な目には合わせはしないよ。約束だ。」

 

テツヤはそう言うとニッコリと笑った。分からない。なんであんなことが起きた後なのにこんなことが言えて笑えるのかが。

 

でも、何故だろう。テツヤの笑みは今現在他の何よりも安心できる気がした。私はしばらくその笑みをじっと見つめていたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

場所は変り、時間を遡ること35分前。ここはALOのインプ領内。

 

アスナ「うーん。ユウキ遅いね~」

 

ショウ「ユウキのやつ『テツヤの出る大会だから絶対見る!』って言ってたのになぁ。」

 

フィリア「ユウキのことだからドタキャンなんてことはないと思うけど・・・」

 

クライン「もうそろそろ始まっちまうぜ~BOB。」

 

そう、テツヤら3人がBOB本戦に挑もうとしているその頃。ALO内にはいつもの仲間達が勢揃いでインプ領内の現在のテツヤ・ユウキの仮住まいの家の前にいた。

 

そして、ちょうどその時ユウキが皆の前に姿を現した。

 

ユウキ「ごめーん!!!待った!?」

 

リズ「おっそい!!!私達は折角始まる30分前に集まってたのに何してたのよ!」

 

ユウキ「時、実はその・・・テツヤに会いに行ってて・・・・・・」

 

シリカ「相変わらずで良かったです♪」

 

レイ「僕もそれには賛成だけれど、時間を指定といての遅刻は感心しないな。15分前待ち合わせだろう?」

 

ユウキ「ごめんなさい・・・」

 

リーファ「まぁまぁ♪良いじゃないですかラブラブな事で♪」

 

リナ「そうね♪朝もアツアツな所を見させてもらったしね♪」

 

クライン「よし!それじゃあ早速入らせてくれユウキちゃん!今日はこの日の為に取っておきの酒を持ってきたんだ!」

 

ユウキ「それじゃあ皆入って!モニターのチェックは住んであるから!」

 

こうして集まった全員は無事に試合開始前にテツヤ家に入り込み、各々好きな場所に座りモニターを見ることに。

 

ユウキがモニターの電源を付けるとMMOストリームが映り、試合開始3分前の状況だった。

 

アスナ「2人共どこまで勝ち進めるのかな?やっぱし2人の優勝争い?」

 

ショウ「どうだろうな。でもそう簡単にはやられないだろうな。」

 

レイ「でも・・・彼はコンバート前に変なことを言っていたけど・・・それが変なことに影響しなければ良いけど・・・」

 

クライン「変なこと?何を言ってたんだ?」

 

レイ「それが・・・」

 

レイがテツヤのことについて話そうとしたら、インターフォンの音が鳴った。

 

ユウキ「?こんな時に一体誰だろ・・・?」

 

ユウキは玄関に行き、玄関の扉を開いた。するとそこにはテツヤ、ユウキ、レイの3人にとっての領主であるカノンがいた。

 

ユウキ「ふぇぇ!?か、カノン!?」

 

レイ「なっ!?カノン様!?い、一体何故!?」

 

ユウキの声を聞くとレイは急いで玄関に向かい、カノンの前で膝を着いた。

 

カノン「何。わらわの部下が晴れ舞台で戦うというのに観戦しないでどうするんじゃ。折角ユウキもレイもいるならここでと思ってな。駄目じゃったか?」

 

ユウキ「い、いやボクは良いけども・・・」

 

レイ「僕は寧ろ歓迎しますが・・・」

 

カノン「ならいいじゃろ。失礼するぞ。」

 

カノンはそう言って2人と共に家に入っていった。無論中はリズ、リナ以外はカノンを見たことは無かったのでその存在に驚いていた。

 

ユウキ「と、とういう訳でボク達の領主であるカノンも今回試合観戦に来てくれました。」

 

カノン「リズやリナ以外とは初対面じゃったな。インプ領主のカノンと言う。一応テツヤは直属の部下ということになっている。皆よろしく頼む。」

 

アスナ「こ、これが領主なのね・・・」

 

ショウ「オーラが違う・・・」

 

シリカ「でも、怖いというよりかは優しさを感じます!」

 

クライン「私クラインと言います!サラマンダーやってます!以後お見知り置きを!」

 

カノン「ふむ。サラマンダーか そなたは間違った道に進むではないぞ?」

 

クライン「はい!!!」

 

ショウ「ここぞとばかりに媚び売ってるな・・・」

 

リーファ「で、でもリナちゃんは領主の集まりがある会合に付き合ってるんだもんね・・・私だったら緊張で押しつぶされちゃいそう・・・」

 

リナ「ううん。全然そんなことないよ?皆優しい人ばかりだしね。」

 

フィリア「凄く優しそうな人なんだね領主の人は。てっきり凄く怖い人がやっているのかとばかり・・・」

 

レイ「失礼だぞフィリア。」

 

フィリア「はっ!?ご、ごめんなさい!!!私変なこと言っちゃって!!」

 

カノン「構わぬ。そう思うのが普通じゃしな。」

 

クライン「美しいお顔に素晴らしいボディにその優しさ・・・・・・!俺のどストライクゾーンだ・・・・・・!」

 

リズ「はいはいどうせ振られんだから本気にしないしない。」

 

ユウキ「という訳で!!今日はこのメンバーでテツヤとキリトを精一杯応援しよう!!!ほら!もう始まるよ!!!」

 

既に試合開始前1分を切っていて、残り15秒の状態だった。

 

カノン「レイ。仲間を応援するのもまたわらわ達の仕事じゃ。張り切るのじゃぞ。」

 

レイ「はっ。」

 

ユウキ「頑張れテツヤ!!!」

 

ユウキのその声と同時に、BOBの火蓋が切って落とされたのであった。




始まった本戦で早速デスガンと遭遇したテツヤとシノン。

一体デスガンはどのようにして現実での殺人を可能としているのか?
そして、テツヤは本当にシノンを危険に晒すことなく守りきることは出来るのか?

次回もお楽しみに!

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