ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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暇になるとついつい書いてしまいます、考えるのがなかなか楽しいもんです

今回は予定通り第一層攻略です

やっとあの3人が出せます

それではどうぞ


part2 第一層攻略~痛感される死~

SAOがデスゲームと化してから、約一ヶ月。

 

その間にもモンスターとの戦闘で命を落とす者や、現実を受け入れられず自ら命を絶つ者が現れていた。

 

そんな中、テツヤとユウキはβテスターであるショウの指導もあり、第一層攻略戦へ参加できるほどに成長していた。

 

《トールバーナ》

 

「いよいよ攻略会議が始まるって本当か?」

 

「あれから一ヶ月だからな。そろそろ攻略組も動くらしいぞ。」

 

「βテストの時はどんなボスだったの?」

 

ユウキに尋ねられ、ショウは当時を思い返す。

 

「確か《イルファング・ザ・コボルト・ロード》だったな。でかい牛みたいな奴。」

 

「まぁ俺達以外にも色んな奴が来るんだろ?だったらなんとかなるだろ!」

 

「お前はそうやってすぐ楽観視すんなよな・・・」

 

ショウが呆れたようにテツヤを見る。

 

「いいか、肝に銘じとけよ。HPがゼロになったら、本当に死ぬんだからな。」

 

「そうだよ!テツヤはすぐ突っ込むんだから、ボス戦では絶対無茶しないでよね!」

 

「了解~」

 

「本当に分かってんのか、こいつ・・・」

 

ショウはため息を吐いた。

 

「とにかく攻略会議までの間は、無理に戦闘しないでアイテム集めに回るぞ。ボス戦でポーションがありません、なんて話にならねぇからな。」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

三人はそれぞれ道具屋や武具屋を回り、迫る攻略戦へ向けて準備を進めていった。

 

数日後。

 

トールバーナの広場には、大勢のプレイヤーが集まっていた。

 

「はーい!皆、注目してくれ!」

 

一人の青髪の男が前へ出る。

 

「俺の名前はディアベル!気持ち的にナイトやってます!」

 

「ナイトなんかあったっけ?」

 

「“気持ち的に”って言ってただろうが。」

 

テツヤの呟きにショウが即座に突っ込む。

 

ディアベルは集まったプレイヤー達を見渡した。

 

「今回は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。」

 

周囲が静かになる。

 

「俺達がこの世界に閉じ込められてから約一ヶ月。だけど、未だに第一層すら突破できていない。」

 

ディアベルは一度言葉を切る。

 

「でも、いつまでもここにはいられない。」

 

「俺達で第一層を攻略して、まだ《はじまりの街》にいる皆へ届けようぜ!このゲームはクリアできるんだって!」

 

プレイヤー達から歓声が上がった。

 

「作戦について説明する。まず、配られている攻略本を確認してくれ。」

 

攻略本は、βテスター達から提供された情報を元に作られたものだ。

 

第一層のモンスターやフィールドの情報が記されており、テツヤ達もこれまで何度も世話になっていた。

 

「ボスは《イルファング・ザ・コボルト・ロード》。取り巻きとして《ルイン・コボルド・センチネル》が出現する。」

 

ディアベルは攻略本を掲げながら説明を続ける。

 

「今回は複数のパーティーをまとめてレイドを組む。それぞれボス攻撃、取り巻きの処理、交代要員に分かれて戦ってもらう。」

 

さらに、イルファングはHPが減ると武器を斧から曲刀へ持ち替える。

 

その時に攻撃パターンが変化するため、特に注意が必要だという。

 

「詳しい役割はレイドを組んでから決める。今から各自パーティーを─」

 

「・・・・・・」

 

「テツヤ?」

 

ユウキが隣を見る。

テツヤは実に退屈そうな顔で頬杖をついていた。

 

「・・・・・・」

 

「おい・・・!」

 

ショウが睨む。

 

「・・・話が長ぇ。」

 

「ちゃんと聞けこのバカが!」

 

ゴンッ!とショウの拳がテツヤの頭へ落ちた。

 

「いってぇぇぇ!?何すんだよ!」

 

「お前が聞いてねぇからだ!」

 

「お前知ってんだろ!?俺が長い話苦手なの!」

 

「命懸かってんだから聞け!」

 

「まぁまぁ・・・テツヤ、後でボクも教えてあげるから。」

 

「ユウキぃ・・・!」

 

「甘やかすなユウキ!」

 

そんなやり取りをしながら、三人もパーティーを探す。

 

「さて・・・あと何人か欲しいところだが。」

 

ショウが辺りを見回し、一人の黒髪の少年を見つけた。

 

「もしかして・・・!」

 

突然走り出したショウを、テツヤとユウキも追いかける。

 

「すいません!」

 

「はい?」

 

少年が振り返る。

 

その顔を確認した瞬間、ショウが笑った。

 

「やっぱりそうだ!"キリト"!」

 

「ショウ!?お前も攻略戦に参加するのか!」

 

二人はどうやらβテスト時代からの知り合いらしい。

 

「あぁ。そこでなんだが、俺達とパーティー組まないか?」

 

「もちろんいいぜ。」

 

キリトはショウと握手を交わした。

 

「それで・・・君がテツヤか。ショウからよく話を聞いてるよ。」

 

「俺のこと?」

 

「ああ。この一ヶ月、ショウとはちょくちょく会っててな。」

 

「お前は話のネタに困らねぇからな。」

 

「何話したんだよお前!?」

 

「色々。」

 

「色々ってなんだよ!?」

 

キリトが思わず笑う。

 

「まぁよろしく。俺はキリトだ。」

 

「おう!俺のこともテツヤでいいぞ!」

 

テツヤは隣のユウキを指差す。

 

「んで、こっちがユウキ。」

 

「よろしくね、キリト!ボクのことも呼び捨てでいいよ!」

 

「なら俺のこともキリトで頼む。よろしくな。」

 

「さて・・・もう一人くらい欲しいな。」

 

ショウが再び周囲を見る。

 

次々にパーティーが作られていく中、一人だけ離れた場所に座る少女の姿があった。

 

茶色いフードを深く被っているのが印象的だった。

 

「あの子、一人みたいだな。」

 

ショウが少女へ近づく。

 

「すいません。俺達、今パーティー組んでるんですが、一緒にどうですか?」

 

少女は少しだけ顔を上げた。

 

「・・・・・・いいわよ。」

 

「良かった。俺はショウ。」

 

「俺はテツヤ!」

 

「ボクはユウキ!」

 

「キリトだ。」

 

少女も小さく頷く。

 

「私は"アスナ"。呼び捨てで構わないわ。」

 

こうして五人のパーティーが完成した。

 

やがて各自の編成が終わった頃。

 

「皆、準備はできたか?」

 

ディアベルが再び声を上げる。

 

「それじゃあ明日の攻略戦に備えて・・・」

 

「ちょっと待てや!」

 

一人の男が立ち上がった。

 

逆立った髪が特徴的な男だ。

 

「ワイはキバオウっちゅうもんや!この中にβテスターの奴はおるか!」

 

その言葉に、ショウとキリトの表情が曇る。

 

「どうしたんだよ、二人とも。」

 

「あいつ、βテスターを酷く嫌ってんだ。」

 

「βテスターは自分達だけ情報を独占してるって思ってるらしい。」

 

キバオウは周囲を睨み回す。

 

「βテスターははよ出てこんかい!」

 

その時。

 

一人の大柄な男が前へ出た。

 

「βテスターをそこまで責める必要はないだろ。」

 

「なんやと?」

 

「お前、あの攻略本がどうやって作られたか知ってるか?」

 

キバオウの表情が変わる。

 

「βテスターが情報を提供して作ったものだ。」

 

大柄な男、エギルは攻略本を掲げる。

 

「俺達がここまで来られたのも、その情報があったからだろ。βテスター全員を敵扱いするのは違うんじゃないか?」

 

「・・・・・・。」

 

キバオウは舌打ちをすると、その場へ戻っていった。

 

「・・・・・・あの人、俺達を庇ってくれたな。」

 

ショウが呟く。

 

「ああ。後で礼言っとかないとな。」

 

キリトも静かに頷いた。

 

「とにかく!」

 

ディアベルが再び声を張り上げる。

 

「明日は第一層ボス攻略戦だ!誰一人欠けることなく、全員で帰ってこよう!」

 

「おおおおっ!!」

 

広場に大きな歓声が響いた。

 

翌日、森を抜けた先。

 

テツヤ達は巨大な扉の前に立っていた。

 

第一層、ボス部屋。

 

「いよいよか・・・」

 

「いいかテツヤ。」

 

ショウが念を押す。

 

「作戦通り動けよ。ディアベルが指示するまで勝手に突っ込むんじゃねぇぞ。」

 

「分かっとるわ!」

 

「昨日攻略会議で寝かけてた奴が言っても説得力ねぇんだよ。」

 

「まだ言うか!?」

 

「テツヤ、本当に無茶しちゃダメだからね?」

 

「ユウキまで!?」

 

そんな三人を見て、キリトが苦笑する。

 

やがてディアベルが全員の前へ出た。

 

「皆、俺から一言だけ言わせてくれ。」

 

剣を握り締めるディアベルが、静かに告げた。

 

「勝とうぜ、誰の犠牲も出さずに!」

 

プレイヤー達の表情が引き締まった。

 

「行くぞ!」

 

巨大な扉が開かれる。

 

全員が一斉にボス部屋へ踏み込んだ。

 

薄暗い、広間空間が広がっていた。

 

「・・・あれ?」

 

テツヤが周囲を見る。

敵はどこにも見当たらなかった。

 

「いなくね?」

 

「来るぞ!」

 

キリトが叫んだ次の瞬間。

 

頭上から巨大な赤い影が落下してきた。

 

「うおっ!?」

 

轟音と共に着地したのは、巨大なコボルド。

 

《Illfang the Kobold Lord》。

 

その頭上には、四本ものHPゲージが表示されている。

 

「でっか・・・」

 

ユウキが思わず呟く。

 

さらに周囲へ《ルイン・コボルド・センチネル》が次々と出現した。

 

「皆!戦闘開始!」

 

「おおおおっ!!」

 

ディアベルの号令と共に、第一層攻略戦が始まった。

 

戦闘は順調に進んでいた。

 

各班が交代しながらイルファングへ攻撃を加え、取り巻きのセンチネルを処理していく。

 

やがてボスのHPは二本目を切った。

 

「B班、一旦後退!D班と交代!」

 

「頼んだぞ!」

 

「よっしゃぁ!行くぜ!」

 

テツヤ達のD班が前へ出る。

 

向かってきたセンチネルへテツヤが剣を構えた。

 

刀身が光を放つ。

 

「おらぁ!」

 

《レイジスパイク》。

 

一気に距離を詰めたテツヤの剣がセンチネルを貫き、その身体をポリゴン片へ変える。

 

「こっちも終わったよ!」

 

ユウキも最後の一体を倒した。

 

「ならボスへ加勢頼む!」

 

ショウが叫ぶ。

 

「テツヤ!スイッチ!」

 

「了解!」

 

イルファングを相手にしていたキリトが横へ退く。

 

その瞬間、入れ替わるようにテツヤが前へ飛び出した。

 

「喰らえぇ!」

 

ユウキも反対側から駆け込む。

 

「いっけぇ!」

 

二人の攻撃が同時にイルファングへ叩き込まれた。

 

けたたましい咆哮がボス部屋全体を包んでいた。

 

「よっしゃあ!三本目入ったぞ!」

 

「テツヤ!息ピッタリだったね!」

 

「当然!」

 

「二人とも!またセンチネルが湧いた!そっち頼む!」

 

「了解!」

 

「うん!」

 

その後も危なげなく、戦闘は進んでいく。

 

イルファングのHPは、ついに最後の一本へ入った。

 

「あと少しだ!」

 

キリトが叫ぶ。

 

「ここから武器が変わるんだよね?」

 

ユウキの言葉にショウが頷く。

 

「あぁ。βじゃ曲刀に持ち替えて・・・」

 

その時、イルファングが突然動きを止めた。

 

全身を震わせ、大きな咆哮を上げる。

 

「きゃっ!?」

 

アスナが思わず耳を塞ぐ。

 

「武器を変えるぞ!」

 

ショウが叫ぶ。

 

イルファングが腰へ手を伸ばした。

 

「皆!一旦下がれ!」

 

ディアベルが飛び出す。

 

「お、おい!?」

 

テツヤが声を上げる。

 

その時、イルファングが武器を抜いた。

 

「そんな・・・!」

 

だが、キリトの表情が凍った。

 

「嘘だろ・・・」

 

ショウも目を見開く。

 

「か、刀!?」

 

イルファングが抜いたのは、攻略本に書かれていた曲刀ではなかった。

 

湾曲した刀。

 

直後。

 

イルファングが地面を蹴った。

 

「おいディアベル!避けろ!!」

 

テツヤの叫びも間に合わない。

 

刀の一閃でディアベルの身体が宙へ打ち上げられ、そのまま地面へ叩きつけられた。

 

「ディアベル!」

 

キリトが真っ先に駆ける。

 

テツヤもすぐ後を追った。

 

「おい!しっかりしろ!」

 

ディアベルのHPは、僅かしか残っていない。

 

しかも徐々に減少している。

 

「ポーションだ!早く飲め!」

 

「・・・・・・無理だ。」

 

「はぁ!?」

 

「もう・・・間に合わない。」

 

「そんなこと言ってんじゃねぇ!」

 

テツヤが吠える横で、キリトがディアベルを見る。

 

そして何かに気付いた。

 

「まさか・・・」

 

「・・・・・・」

 

「ラストアタックを狙ったのか?」

 

ディアベルが僅かに笑った。

 

「お前も・・・βテスターだったのか。」

 

テツヤには何のことか分からない。

 

だが今は、そんなことどうでもよかった。

 

「ふざけんなよ!」

 

ディアベルの胸元を掴む。

 

「誰も死なせねぇって言ったのお前だろ!?言い出した奴が死ぬんじゃねぇよ!」

 

「テツヤ・・・」

 

「皆で生きて帰るんだろ!?」

 

ディアベルは静かに二人を見る。

 

「・・・・・・後は、頼んだ。」

 

「おい・・・?」

 

その瞬間。

 

ディアベルのHPがゼロになった。

 

「・・・っ!」

 

身体に無数の亀裂が走る。

 

次の瞬間、無数の光の欠片となって、砕け散った。

 

「・・・・・・」

 

テツヤは、その場から動けなかった。

 

ほんの少し前まで。

 

自分達へ笑いかけていた人間が。

 

目の前で消えた。

 

「・・・・・・くっそおおおおおおっ!!!」

 

怒りのまま立ち上がろうとする。

 

「テツヤ!」

 

キリトが腕を掴んだ。

 

「落ち着け!今突っ込んだら、お前まで死ぬぞ!」

 

「でもよ!」

 

「死んだら終わりなんだぞ!」

 

その言葉に、テツヤの動きが止まる。

 

三人で生き残る。

 

一ヶ月前、ユウキにそう言った。

 

自分までここで死んだら。

 

その約束すら守れない。

 

「・・・・・・」

 

テツヤは大きく息を吐いた。

 

「ディアベル・・・」

 

剣を握り締める。

 

「仇は取ってやる・・・!」

 

ディアベルを失った後も、攻略戦は続いた。

 

各班がその場で連携を取り直し、未知の攻撃パターンへ対応していく。

 

「こいつ!刀になってから攻撃強くなってんぞ!」

 

テツヤが叫ぶ。

 

「うわぁっ!?」

 

「ユウキ!」

 

イルファングの刀がユウキを掠めた。

 

直撃こそ避けたものの、ユウキは体勢を崩し、その場へ倒れる。

 

その隙を逃さず、イルファングが刀を振り上げた。

 

「させっかよ!」

 

テツヤが二人の間へ飛び込み、片手剣で巨大な刀を受け止めた。

 

「くっ・・・!」

 

「テツヤ!?」

 

「早く態勢立て直せ!ユウキ!」

 

「う、うん!」

 

「こいつは・・・やらせねぇ!」

 

力任せに押し返そうとする。

 

だが力の差はあまりにも大きい。

 

「くっそ・・・!」

 

耐えきれなくなったテツヤの身体が剣ごと吹き飛ばされた。

 

「テツヤ!」

 

キリトが叫ぶ。

 

「大丈夫か!?」

 

「あぁ・・・なんとかな。」

 

起き上がろうとする。

 

だが身体が痺れたように動かない。

 

「くそ・・・スタンかよ・・・!」

 

「テツヤ!前!」

 

ショウが叫ぶ。

 

イルファングが再び刀を構えている。

 

「んなこと言われても・・・身体が動かねぇ!」

 

「そんな!?テツヤ!」

 

刀が振り下ろされる、その瞬間。

 

巨大な斧が横から飛び込み、イルファングの刀を弾き飛ばした。

 

「なっ・・・!」

 

テツヤの前に立ったのは、攻略会議でキバオウを止めた大柄な男、エギルだった。

 

「ここは俺達の班が食い止める!お前は早く立て直せ!」

 

「あんた・・・」

 

「早く行け!」

 

「すまねぇ!」

 

ユウキが駆け寄ってくる。

 

「テツヤ!大丈夫!?」

 

「あぁ。助かった・・・」

 

ポーションを飲み、HPを回復させる。

 

その間に、スタンも解除された。

 

「よし!行ける!」

 

「本当に大丈夫?」

 

「あぁ!行くぞ、ユウキ!」

 

「うん!」

 

イルファングのHPは残り半分を切っていた。

 

だが追い詰められたことで、攻撃はさらに激しさを増している。

 

「くそっ!これじゃ近付けねぇ!」

 

ショウが刀を避けながら叫ぶ。

 

「一瞬でも隙ができれば・・・!」

 

キリトが歯を食いしばる。

 

「でも、どうやって・・・?」

 

アスナが呟いた。

 

「決まってんだろ・・・隙が無ぇなら・・・!」

 

テツヤが剣を構える。

 

「作ればいいんだよ!」

 

「お、おい!?」

 

ショウが振り向いた時には、テツヤは走り出していた。

 

「ちょっと!?テツヤ!?」

 

ユウキの声を背中で聞きながら、イルファングの真正面へ立つ。

 

「来いよ!」

 

イルファングが咆哮と共に刀を大きく振り上げる。

 

巨大な刃がテツヤ目掛けて振り下ろされた。

 

「よっと!」

 

紙一重。

 

テツヤが横へ飛ぶ。

 

轟音と共に刀が地面へ叩きつけられた。

 

イルファングの動きが一瞬止まる。

 

大技直後の硬直。

 

「今だぁ!!」

 

「そらぁ!」

 

ショウの《スラント》が炸裂する。

 

「てやぁぁぁっ!」

 

アスナが高速の連続突きを叩き込む。

 

「行くよ、テツヤ!」

 

「おう!」

 

二人が左右から同時に飛び込む。

 

「はぁぁぁ!」

 

「これでどうだぁ!」

 

ユウキの《バーチカル》。

 

テツヤの《ホリゾンタル》。

 

二つのソードスキルが同時にイルファングへ炸裂した。

 

HPが一気に残り僅かまで削られる。

 

「キリト!」

 

「任せろ!」

 

キリトが走り出す。

 

剣が青い光を放った。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

《バーチカル・アーク》。

 

二連撃がイルファングを切り裂き、最後のHPが消滅した。

 

イルファングの咆哮の後、巨大な身体に亀裂が走る。

 

そして無数の光の欠片となって、砕け散った。

 

しばしの静寂の直後。

 

「・・・・・・やった。」

 

誰かの声をきっかけに。

 

「やったぁぁぁぁぁ!!!」

 

部屋中に歓声が響き渡った。

 

第一層攻略。

 

一ヶ月間、誰も突破できなかった壁を、ついに越えた。

 

「テツヤぁ!」

 

「うおっ!?」

 

突然ユウキが飛びついてきた。

 

勢いに耐えられず、そのまま二人で床へ倒れこんでいた。

 

「いってぇ・・・何すんだよユウキ。」

 

「あんな危ないことして!」

 

「え?」

 

「もし最後の攻撃、避けられなかったら・・・テツヤ死んでたかもしれないんだよ!」

 

ユウキは明らかに怒っていた。

 

その目には僅かに涙も浮かんでいる。

 

「・・・・・・」

 

テツヤは言い返そうとして、やめた。

 

少し前、本当に目の前で一人死んだのだ。

 

「・・・・・・悪かった。」

 

「本当だよ!」

 

「でも、誰かが隙作らなきゃ・・・」

 

「そういう問題じゃない!」

 

「はい・・・すんません・・・」

 

「もう!」

 

ユウキは頬を膨らませる。

 

「・・・・・・でも。」

 

ぎゅっとテツヤの防具を掴んだ。

 

「無事で良かった・・・」

 

「ユウキ・・・」

 

ユウキの不安そうな表情を見たテツヤは、彼女の頭に手を乗せていた。

 

「心配かけて悪かったな。」

 

「次からは本当に無茶しないでね?」

 

「努力します。」

 

「そこは約束してよ!」

 

「いてっ!?」

 

ユウキがテツヤの肩を叩く。

 

その様子を見て、ショウがため息を吐いた。

 

「全く・・・」

 

キリトとアスナはそんな二人を見て、小さく笑っていた。

 

だが、第一層攻略の喜びは、長くは続かなかった。

 

「なんでや!」

 

キバオウの怒声が響く。

 

「なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!」

 

「・・・・・・」

 

テツヤの表情が険しくなる。

 

「あいつは・・・」

 

「やっぱりβテスターが情報を隠してたんだ!」

 

「そうだ!」

 

周囲から声が上がる。

 

「好き放題言いやがって・・・!」

 

テツヤが拳を握る。

 

「キリトとショウだって、刀を使うなんて知らなかったんだぞ!」

 

「テツヤ。」

 

キリトが静かに前へ出る。

 

そして、突然笑った。

 

「くっ・・・くく・・・」

 

「キリト?」

 

「なんや・・・何がおかしいんや!」

 

キバオウが睨む。

 

「情報を隠してたのは俺だよ。」

 

「なっ!?」

 

テツヤが目を見開く。

 

「おいキリト!」

 

ショウもすぐに意図を察した。

 

「ああ。俺は普通のβテスターとは違う。」

 

キリトは周囲を見渡す。

 

「βの時、他の連中よりずっと先まで進んだ。攻略本にも載ってない情報だって知ってる。」

 

「そんなん・・・!」

 

キバオウが叫ぶ。

 

「チートや!チーターやないか!」

 

「チーター・・・か。」

 

キリトが笑う。

 

「いいね、その呼び方。」

 

そして。

 

「βテスターとチーターを合わせて―」

 

黒いコートを装備する。

 

「これから俺のことは《ビーター》とでも呼んでくれ。」

 

周囲が静まり返った。

 

キリトはそのまま第二層へ続く階段へ歩いていく。

 

「キリト!」

 

テツヤが呼び止める。

 

キリトは振り返ろうとはしなかった。

 

「テツヤ、お前も何か言おうとしてただろ。」

 

「だったら・・・!」

 

「ここは俺が泥被って終わらせる。」

 

それだけ言って、再び歩き始める。

 

「馬鹿野郎・・・」

 

ショウが拳を握る。

 

「全部自分に被せやがった・・・」

 

少しして、アスナがキリトを追いかけた。

 

「ねぇ。」

 

キリトが足を止める。

 

「本当は・・・刀が出てくるなんて知らなかったんでしょ?」

 

「・・・・・・」

 

「なのに、どうしてあんなこと言ったの?」

 

キリトはしばらく黙っていた。

 

「他のβテスターまで責められるくらいなら、俺一人でいい。」

 

「でも・・・」

 

「これでいいんだよ。」

 

キリトはそれ以上何も言わず、第二層へ向かっていった。

 

「キリト・・・」

 

テツヤはその背中を見つめる。

 

「俺達も行こう。」

 

ショウが声をかけた。

 

「いつまでもここにいられねぇ。」

 

「・・・・・・あぁ。」

 

こうして、テツヤ達にとって初めてのボス攻略戦は終わった。

 

第一層突破という大きな一歩。

 

その代償として三人は初めて、目の前で人が《死ぬ》という現実を知った。

 

その日の夜。

 

「・・・・・・」

 

ベッドに横になっていたテツヤは、目を閉じることができずにいた。

 

頭から離れない。

 

光の欠片となって消えていったディアベルの姿が。

 

「ディアベル・・・」

 

本当に死んだ。

 

もう二度と、彼と会うことはない。

 

「・・・・・・はぁ。」

 

ため息を吐いた、その時。

 

部屋の扉がノックされた。

 

『テツヤ?起きてる?』

 

「ユウキ?」

 

聞き慣れた声だった。

 

「あぁ、起きてるぞ。」

 

『中入ってもいい?』

 

「構わないぞ。」

 

扉が開く。

 

「お邪魔しまーす。」

 

入ってきたユウキは、いつもの装備ではなく簡素な寝間着姿だった。

 

「どうした?こんな時間に。」

 

「いや~・・・なかなか寝付けなくてね。」

 

「なんだ。ユウキもか。」

 

テツヤは苦笑する。

 

「実は俺も寝れねぇんだ。」

 

「そっか・・・」

 

ユウキはテツヤの隣へ腰を下ろす。

 

しばらく二人とも何も言わなかった。

 

そして。

 

「・・・・・・テツヤ。」

 

「ん?」

 

「今日は助けてくれてありがとう。」

 

「なんだよ、急に。」

 

「あの時、テツヤが間に入ってくれなかったら・・・」

 

ユウキが俯く。

 

「ボク、死んでたかもしれない。」

 

「・・・・・・」

 

「ボクが攻撃食らっちゃったから、テツヤまで危ない目に遭わせちゃって・・・」

 

「気にすんなよ、ユウキ。」

 

テツヤはユウキの頭へ手を置いた。

 

「誰だってミスくらいするだろ。」

 

「でも・・・」

 

「俺だって今日何回ショウに怒鳴られたと思ってんだ。」

 

「それはテツヤが無茶するからでしょ?」

 

「うっ・・・」

 

ユウキが少し笑う。

 

そんな彼女を見たテツヤも、笑っていた。

 

「だからさ、そう気を詰めんなよ。」

 

少しだけ沈黙する。

 

「ディアベルは・・・死んじまった。」

 

「・・・・・・うん。」

 

「でも、俺とユウキはこうして生きてる。」

 

テツヤは自分に言い聞かせるように言った。

 

「だったら今は、それでいいだろ。」

 

「テツヤ・・・」

 

「俺達は生き残って、いつかこのゲームから出る。」

 

「・・・・・・うん。」

 

ユウキが頷いた。

 

「そうだね。」

 

そして少し考えた後。

 

「あ!」

 

突然顔を上げる。

 

「なら今度、何かお礼させてよ!」

 

「お礼?」

 

「ボクが料理作ってあげる!」

 

「料理?できんのか?」

 

「こう見えても得意なんだよ!」

 

ユウキが胸を張る。

 

「へぇ~」

 

「何その反応!」

 

「いや、意外だなって。」

 

「失礼だな~!」

 

「じょ、冗談だよ。」

 

テツヤは笑いながら、ユウキの頭を軽く撫でる。

 

「それじゃ、期待して待ってるよ。」

 

「えへへ♪楽しみにしててね!」

 

「あぁ。」

 

「ふぁぁ~・・・」

 

ユウキが大きくあくびをする。

 

「なんか眠くなってきちゃった。」

 

「なら戻って寝ろよ。」

 

「うん。そうする。」

 

立ち上がり、扉へ向かう。

 

「じゃあテツヤ、また明日ね!」

 

「おう。また明日。」

 

「おやすみ!」

 

「おやすみ。」

 

ユウキが部屋を出ていく。

 

扉が閉まる。

 

「・・・・・・」

 

テツヤはもう一度ベッドへ横になった。

 

ディアベルの死が消えたわけではない。

 

怖くないわけでもない。

 

それでも。

 

明日もユウキとショウがいる。

 

「・・・・・・俺も寝るか。」

 

目を閉じる。

 

今度は先ほどまでよりも少しだけ。

 

眠れそうな気がした。




第一層を無事攻略したテツヤ達。

テツヤはユウキに料理を作ってもらう約束をしたが果たして・・・!?

次回はあの武器について!こうご期待!

※2026年8/23日 改稿
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