ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~ 作:畜生ペンギン
4話添削
アインクラッドに閉じ込められてから約1年が経とうとしていた。
俺達は常に最前線で戦い続け、レベルは俺が75、ユウキが74、ショウが70と言った所だ。
この1年で俺達は大きく変わった。
ユウキはアインクラッドの情報誌で《美少女剣士》として取り上げられるほどの有名人になっていた。
中には
「デュエルに勝ったら付き合ってほしい」
と挑んでくる者も現れたが、ユウキはその全てを返り討ちにしている。
そんなユウキについた異名が――《絶剣》。
俺もその本は愛読していて、俺の扱いはユウキの付き添いみたいな感じだ。
ショウは最近、第50層でエギルが経営している店を手伝うことが増えていた。
ボス攻略には変わらず参加しているものの、今では店の仕事もかなり忙しいらしい。
そして、何より大きいのはユウキの料理スキルの上達だ。
あの野菜炒めからユウキは毎日少しでも料理を作っていて、最近はカンストに近いアスナに料理を教えて貰ってるそうだ。
アスナと俺はボス攻略で顔を合わせることが多い。
そして、今日俺とユウキはとある理由で35層へと来ていた。
「ったく・・・迷いの森にある食材取ってこいなんてめんどくさいこと言いやがって、ショウのやつ。」
「まぁまぁ。その食材も取れたんだし、戻ったら料理も作って貰えるんだから文句言わないの。」
「はーい。さて、転移結晶使って戻るか・・・」
この迷いの森はその名の通り迷いやすく、1度入ったらなかなか抜け出せない。
その為手っ取り早く転移結晶を使って抜け出そうとした。
「ちょっと待ってテツヤ! ねぇ、声が聞こえない・・・?」
耳を研ぎ澄ましてみると、確かに少女らしき声が聞こえた。
「・・・本当だな、行ってみるか ユウキ」
「うん!」
俺達は声のした方向へ向かった。
少し進むとその声の持ち主が見えてきた どうやら戦闘中らしいが・・・
「ピナ・・・ピナ!」
少女が小さな竜を抱きかかえている。
少女の腕の中で、小さな竜の身体が光の欠片へ変わっていく。
その後ろにはドランクエイプと呼ばれる猿人型のモンスターが3体いた。
俺達のレベルなら問題は無いが、少女のレベルは到底高そうには見えない。
「ユウキ!片方頼んだ!」
「OK!」
俺とユウキでエイプを一体ずつ倒したが、残り一体が少女の方へと武器を振り下ろそうとしていた。
「や、やばい!?」
しかし、エイプは攻撃する間もなく1人のプレイヤーによって倒された。
「大丈夫か!」
残る一体を倒した男が振り返る。
「あぁ、俺は・・・って、テツヤ?」
「キリト!?」
どうやら、残った一体を処理してくれたのはキリトのようだった。
「こんな所で会うなんてな、驚いたよ。」
「あぁ、会えて嬉しいよ。だが、今はそんなことより・・・」
キリトの視線の先には、泣き続ける少女がいた。
「ピナ・・・私を1人にしないでよ・・・」
少女は《ピナ》と名前を呼びながら泣いている。
青い羽のような物を持ちながら
「その羽は・・・?」
「ピナです・・・私を庇って・・・こうなっちゃったんです・・・」
「君はビーストテイマーなんだね・・・ 」
「はい・・・助けてくれてありがとございます。」
「ねぇ、その羽にアイテム名って設定されてるのかな?」
ユウキに言われ、少女が調べてみると、《ピナの心》というアイテム名になっていた。
「・・・ピナぁ・・・」
「泣かないで、その心があれば復活させる事ができると思うよ。」
「・・・本当ですか?」
「テツヤの言う通り。47層に《思い出の丘》って場所があって、そこにある使い魔の蘇生用アイテムさえを使えば、蘇生させることができる。」
「そうなんですか・・・でも47層・・・情報だけでもありがたいです、ありがとうございます。いつか、もっとレベルを上げてから行ってみようと思います。」
「いや・・・蘇生できるのは倒されてから3日以内じゃないと駄目なんだ・・・」
「そんな!? ピナにもう会えないんですか・・・!?」
少女はまたしても泣き出してしまった。
そんな時、ユウキが俺の防具の袖を引っ張ってきた。
「ねぇ、テツヤ?」
「考えは一緒か、ユウキ。」
「うん!ねぇ、ボク達とその思いでの丘に一緒に行こうよ!」
「そんな・・・良いんですか?私レベルも低いし・・・」
「それなら・・・」
そう言ってキリトは少女に装備アイテムを渡していく。
キリト「これだけあれば5、6レベルは底上げできるはずだ。俺も一緒に行くから、頑張ろう。」
「・・・ありがとうございます ・・・その、どうして私をそこまでして助けてくれるんですか?」
「困ってる人を見つけたら助けたい。俺はこの世界でそうやって生きてくって決めたんだ。」
俺は・・・君が妹に似ていたから・・・」
オレとキリトの理由を聞いた少女は、初めて笑みを見せてくれた。
「ありがとうございます。あなた達に会えて私は嬉しいです。」
少女が立ち上がると、目に溜まっていた涙を腕で拭っていた。
「自己紹介がまだでしたね、私の名前はシリカと言います。」
「俺の名前はテツヤだ。」
「ボクはユウキ!」
「俺の名前はキリトだ、しばらくの間よろしくな。」
俺達は握手を交わし、ひとまず35層の主街区である、《ミーシェ》へと向かった。
「お!シリカちゃん発見!」
そう言って近づいてきたのは二人の男のプレイヤー。
「ずいぶん遅かったんだね、心配したよ。」
「ねぇ!今度パーティー組もうよ!好きな場所に連れて行ってあげるからさ!」
「えぇっと・・・」
シリカは迷いながらも、隣に立っていたキリトの腕に抱きついた。
「すみません。今この人とパーティー組んでるんです。」
キリトは二人に睨まれていたが、シリカは気にせず歩き出していた。
「行きましょ、キリトさん。」
「あ、あぁ・・・」
「俺達も行こうぜ、ユウキ。」
「ね、ねぇテツヤ?」
「ん?どうしたんだ?」
「ボクもああして歩きたいんだけど・・・ダメかな?」
「え?別に良いけど・・・歩き辛くないか?」
「良いの!」
そう言うとユウキは俺の右腕に抱きついた。
さっきキリトを睨んでいた二人が今度は俺を睨んできていた。
「は、はは・・・じゃあ行くぞ、ユウキ。」
「うん♪」
改めて俺達はキリトとシリカの元へと歩きだした。
「そう言えば、皆さんのホームタウンってどこなんですか?」
「俺は50層だけど今日はここに泊まっていくよ。」
「俺とユウキも一応50層。俺達も泊まっていくよ」
「そうなんですね、ここのチーズケーキが結構美味しいんですよ?」
「へぇ~!じゃあ一緒に食べようよテツヤ!」
「はいはい・・・シリカ、そのお店の案内頼めるか?」
「はい!場所は─」
シリカに案内を頼もうとしたその時、シリカを呼ぶ声がした。
シリカに声を掛けたのは、口元に薄い笑みを浮かべた女性プレイヤーだった。
「あの森を抜け出せたのね。あら?あのトカゲはどうしたの?」
「・・・ピナは死にました。でも、必ず生き返らせてみせます。」
「なら思い出の丘に行くのね?でもあんたのレベルで大丈夫なの?」
「まぁ大丈夫さ。さほど難易度も高くねぇしな あそこは。」
シリカがどこか怯えてるのを見て助け舟を出すと、女は俺とキリトを見ると鼻で笑っていた。
「ふーん。あんたら2人はたらしこまれたのね?シリカはお得意ね。そういうの。」
「んだとコラ。」
「相手にするなテツヤ。さぁ、行こう。」
俺達はその女を後にし、宿屋に入った。
明日思い出の丘に行くことを決め、それぞれ別れて部屋にはいった。
明日の準備を進めている中、俺の部屋にノックの音が響いた。
『テツヤ、起きてるか?話しておきたい事があるんだ。』
「キリト?入っていいぞ。」
「夜分遅くにすまないな、さっき変な事が起きてな。」
「変な事?」
「あぁ、シリカに思い出の丘に関する説明をしていた時、外に人がいてな。盗み聞きされた可能性がある。」
「盗み聞き・・・あの女にか?」
「俺もそう思うんだ。それであの人なんだが、俺が今探している"オレンジギルド"のリーダーにそっくりなんだ。」
《オレンジギルド》。
窃盗や傷害といった犯罪行為を繰り返すプレイヤー達によって構成されたギルドだ。
中には、プレイヤー殺しにまで手を染める者もいる。
「オレンジギルド?どうしてそんな奴らを追ってるんだ?」
「あるギルドが奴らのに襲われて、リーダー以外が殺されてしまったんだ。そのギルドのリーダーが転移門前でずっと頼み込んでたんだよ 『奴らを牢獄に入れてくれって』な。」
「なるほどな・・・んで?奴らをどうやって牢獄に入れるんだ?」
「依頼主が買った回廊結晶がある。牢獄に行くようにセットしてあるから、後はあいつらを捕まえるだけさ。」
「そうか、じゃあ俺もそれ手伝うよ。シリカの手助けをし終わったら、そいつらを牢獄にぶち込んでやろうぜ。」
「悪いな。とにかく、明日はシリカの為に頑張らなくちゃな。」
「あぁ。やってやろうぜ、キリト。」
俺とキリトは顔を見合せ、強く頷いた。
その頃、ユウキとシリカは─
「そっか・・・シリカは大変だね・・」
「皆私を入れ替り立ち替りパーティーに誘うんですよ?もううんざりしちゃって・・・ユウキさんはそうゆうのないの?」
「ボクもよく付き合って欲しいなんて言われるけど、その度にデュエルして追い返してるよ!」
「自分で解決できるなんて羨ましいです・・・」
「ボクにはテツヤがいるしね・・・」
「ユウキさんはテツヤさんが好きなんですね。」
「うん!大好きだよ!でもテツヤったら鈍くてボクの想いに全然気づいてくれないんだよ・・・」
「テツヤさん鈍そうですもんね・・・ 」
ユウキ「この前なんかね!?――」
ガールズトークに花を咲かしていた。
~~~~~~~~~~~
翌日。
第47層のフローリアについた俺達を、色彩鮮やかな花たちが出迎えてくれた。
ユウキとシリカも転移するなり、花に近づいていた。
「ここは別名フラワーガーデンとも呼ばれているんだ。」
「にしてもカップルが多いな、ここ。」
見渡す限りで5組みのカップルがいる。
どうやらデートの名所でもあるらしい。
「ユウキさん?」
「どうしたの?」
「いっその事ここでアタックしてみたらどうですか?当たって砕けろ!です!」
「ふぇぇ!?ボクにそんな勇気ないよぉ・・・それに砕けてもやだし・・・」
ユウキとシリカがコソコソと話しているが、もうそんなに仲良くなれたんだな。
そんな二人が戻ってきたけど、ユウキが頬を赤く染めていた。
「どうしたんだユウキ?顔が赤くなってるぞ。」
「ななな、何でもないよ!?」
「皆、そろそろ出発するぞ。」
キリトを先頭に、思い出の丘を進む。
色鮮やかな花畑は、日々戦いに明け暮れる俺達の心を癒してくれていた。
「ん~!なんだか和む道だな~!」
「そうだな、のんびりしていたい気分だな。」
「でも、早く行きましょう!」
シリカがそう言って足を踏み出したのだが、彼女足にはいつの間にか触手のような蔓が絡みついていた。
「きゃぁぁぁ!?」
シリカはそのまま宙ぶらりんになっていた。
触手の持ち主は、植物型モンスターだった。
シリカは短剣を振り回していたが、リーチ不足でかすりもしていなかった。
「落ち着いて!そいつ凄く弱いぞ!」
「キリトさん、テツヤさん!助けて!見ないで助けて!」
シリカはスカートを履いていたため少しまずい状況になっていた。
「それでは助けられないのだが・・・」
「それはちょっと無理があるぞ・・・」
俺もキリトと同じように手で目を覆った。
だが、シリカが無事かどうかは気になる・・・ 俺は指の間からちょっと見ようとした─のだが。
「テ~ツ~ヤ~?」
背後から凄まじい殺気を感じる。
恐らくいや、確実にユウキだ。
「は、はい?」
「指の間から見ようとしないの!!!」
ユウキが俺の頭を掴み、勢いよく横に回した。
「あがァ!?」
この世界で骨が折れる心配はない。
だが俺は確実に聞いた。
俺の首が『バキッ』と鈍い音を鳴らしたのを。
「この!いい加減にしろぉ!」
俺が悶絶している合間に、シリカはモンスターを倒していたようだった。
「み、見ました・・・?」
「見てないぞ・・・」
「た、助けて・・・首が・・・」
「ふん!テツヤのバカ!」
ユウキはそう言うとぷんぷん怒って先に進んでしまった。
「大丈夫か?」
「大丈夫な訳あるか・・・!?」
キリトとシリカが俺に肩を貸してくれて、なんとか歩ける状態になった。
「しばらくしたら首が元に戻ると思うからしばらくこのままでいさせてくれ・・・」
「あ、あぁ・・・じゃあ行こうか、シリカ。」
「はい!しっかりしてくださいね、テツヤさん!」
その後も道中を進み、シリカのレベルが上がったり、またしてもシリカが敵に捕まったり色々とあった。
未だ首が痛む俺はユウキに支えられながら歩いていた。
「だいぶ歩いたな・・・ そろそろあるはずなんだが・・・」
「あの台座みたいなのがそうなんじゃない?」
ユウキが指さした先に、確かに台座があった。
それを見たシリカはいち早く駆け出して行った。
「ほら!行くよテツヤ!」
「な、なぁ・・・もうちっとゆっくり歩いてくれねぇかユウキ・・・」
「テツヤが悪いんだから文句言わない!」
なんとか台座に辿り着くと、台座に寄り添うように、一輪の花が咲いていた。
そこに咲いていたのは《プネウマの花》。
使い魔の蘇生用アイテムだ。
「良かったね、シリカ!」
「はい!ありがとうございます!」
「ここは強い敵も出るから主街区に戻ってから蘇生させてあげよう。その方がピナも喜ぶと思うぞ。」
「んじゃあ戻るとするか。」
《プネウマの花》を手に入れた俺達は、そのまま帰路についた。
少し歩いていた所で、キリトが立ち止まった。
「テツヤ、気づいているな?」
「あぁ。俺達を尾けてるやつがいる。」
「へ?ぼ、ボクたちを?」
「ユウキ、もう大丈夫。ありがとな。」
俺はユウキから離れ、首を軽く伸ばしてから尾行してるやつを誘い出すために声を上げた。
「そこにいる奴ら、出てこいよ。」
木の影から出てきたのは、昨夜俺達の前に現れた例の女だった。
「私の事を見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね?剣士さん。」
「おっ、こいつは好都合ってやつだな、キリト。」
「そうだな。オレンジギルド、《タイタンズハンド》のリーダー、ロザリアさん。」
「へぇ・・・私の事知ってるんだ。」
「10日程前、あんたらシルバーフラグスってギルドを襲っただろ。」
「あぁ~あの貧乏ギルドね。それが?」
「あんたらはリーダー以外のメンバーを全員殺した。そうだな?」
「え?でもロザリアさんのプレイヤーマーカーは緑に・・・」
プレイヤーマーカーとはプレイヤーの上にある矢印のことだ。
シリカの言う通り、ロザリアのカーソルは一般プレイヤーを示す緑色。
犯罪行為を行ったプレイヤーに表示される、オレンジではない。
「簡単なことだ。あいつは緑のまま他のギルドに潜入し、しばらくしてから本来のギルドメンバーの奴らにそいつらを殺してもらう。そうすればあいつは緑のままでいられるし、次の犯行もしやすくなる。」
「ふーん?あんたもなかなか冴えてるわね。そうよ。私は手を汚さない、代わりに私の忠実なしもべ達が殺してくれる。こんな楽な仕事はないわ・・・」
「あんたらのその活動も今日で終わりだ。」
「はっ、そんな簡単に行くかな?」
ロザリアがそう言って目配せをすると、周りの木から他のメンバーが出てきた。
「な、7人もいますよ!?」
「いくらあんたでもこの人数を相手にしたらまずいんじゃない?」
「なら試してみるか?」
キリトが背負う片手剣に触れながら歩き出したが、俺がそれを腕で止めた。
「ちょっと待ちなキリト。ここは俺が行く。」
「良いのか?」
「今のままじゃ、ユウキに首曲げられて良いとこ無しだ。少しくらい貢献させてくれよ。」
「・・・そうか じゃあ頼んだ。」
「そ、そんな!?そんな事したらテツヤが・・・!?」
「心配すんな、ユウキ。」
俺はユウキの髪を荒々しく撫でた。
「首ももう大丈夫だし、安心して待っててくれ。」
改めてロザリア達の方に歩き出し、背中にある斬月を抜刀した。
「テツヤ・・・?あのでかい片手剣・・・もしかしてあいつ攻略組の・・・!」
「俺も聞いた事ある・・・絶剣の付き添いだけどあいつも結構やるって噂だぜ・・・!」
「はっ!こんな所に攻略組なんかいるかよ!そら!さっさと殺して、身ぐるみ剥いじゃいな!」
ロザリアがそう言うと、七人が一斉に俺へ襲いかかってきた。
「テツヤ!!!」
ユウキが飛び出そうとする。
だが、その肩をキリトが掴んだ。
「何で止めるの!?このままじゃテツヤが!」
「ユウキ、テツヤのHPを見てみろ。」
「HP・・・って・・・!?」
「減って・・・ない・・・?」
攻撃を受けるたびにHPは削られていく。
だが、すぐに回復し、一定以上減ることがない。
「・・・10秒あたり400ねぇ・・・あんたらが俺に与えるダメージの総量だ。それでオレの事殺ろうとしたの?」
「くっそ・・・何で一向にHPが減らねぇんだよ・・・」
「簡単なことだ。俺のレベルは75でHPは13000で、バトルヒーリングの自動回復が10秒で500ある。それであんたらが俺のこと殺せると思ってんのか?」
「くっそ・・・そんなのありかよ・・・」
「あぁ。ありなんだよ。」
背後にいたキリトが、俺の隣に近寄った。
「少しでもレベル差が開けば、能力値にも圧倒的な差が出る。これがレベル制MMOってやつなんだ。」
「はっ!そいつらがダメでもまだ私が─」
ロザリアが言い終える前に、俺は一瞬でロザリアの元へ行き、首元に斬月を突きつけた。
「別にこのまま攻撃してもいいんだぜ?数日オレンジになろうが、俺は構わねぇからな。」
そう言うと、ロザリアは崩れ落ちたように座り込んでいた。
そして、キリトが回廊結晶を取り出していた。
「これは依頼主が全財産をはたいて買った回廊結晶だ。牢獄に行くようにインプットされてる。これで皆、牢に入ってもらうからな。」
「く・・・クソッタレが・・・!」
ロザリアの捨て台詞を最後に、キリトの回廊結晶でタイタンズハンドの奴らは牢獄に送られることとなった。
「お疲れ、テツヤ。」
「おう。ったく、口だけ達者な雑魚が何やってんだか・・・牢獄で罪を償えってんだ。行くぞユウキ、シリカ。」
「う、うん・・・」
「行きましょう、ユウキさん。」
俺達はその後、無事フローリアから帰還し、35層に戻ることができた。
ピナの復活を見届けようと、シリカと共に宿屋についていた。
「皆さん、本当にありがとうございます。おかげでピナにもう一度会えます。」
「なぁにいいって事よ!」
「皆さんが攻略組だなんてビックリしました・・・」
「隠していてすまなかったな、シリカ。」
「あの・・・やっぱり皆さん、攻略に戻っちゃうんですか?」
「まぁ何日もさぼってらんねぇしな・・・申し訳ないがずっといられるのはここまでだな。」
「そうですか・・・」
シリカが寂しそうな表情を浮かべている。
キリトがそんなシリカの肩に手を置いていた。
「ここで生きていたら必ずまたどこかで会えるさ。今生の別れじゃないんだからな。」
「そうそう、さっさとゲームクリアして、現実世界で会おうぜ!現実で会っても俺達なら上手くやっていけるさ!」
「テツヤさん・・・はい!ありがとうございます!」
「さぁ、早くピナを生き返らせてあげよう。ここならもう邪魔者はいないだろうしな。」
「ボクも早くピナを見てみたい!」
「分かりました。」
シリカはストレージにあるピナの心をオブジェクト化し、プネウマの花を取り出した。
(ピナ・・・またいっぱい冒険に出かけようね)
(それで・・・いっぱい話してあげるね)
(私の・・・今日だけの2人のお兄さんと、お姉ちゃんの話を・・・!)
~~~~~~~~~~~
ピナの復活を見届けた俺とユウキは、50層のエギルの店の前に来ていた。
「ピナ凄く可愛かったな!懐かれて大変だったな~」
「そうだね・・・」
「ユウキ?どうしたんだ?」
ユウキは何故か暗い表情をしていた。
ピナを撫でてる時は元気だったのに、そんなに寂しかったのか?
「何でも無い・・・」
「そうか・・・何かあったら言えよ?」
そう言って店の扉を開くと、ショウが出迎えてくれた。
「いらっしゃ─ってお前はどこほっつき歩いてたんだよ!?」
「いやぁ・・・ちょっとやらなきゃならない事ができてな・・・」
「だったらメッセージくらい飛ばせよ!」
「ははは・・・忘れてました・・・」
「ったくこのバカは!」
「まぁまぁ2人とも喧嘩しなさんな。おかえり、テツヤ、ユウキ。」
「ただいま、エギル。」
「ただいま・・・」
「ユウキ?なんかあったのか?」
「さぁ・・・」
「まぁ、俺がクビを突っ込む話じゃ無さそうだな。ほら、ハーブティーだ。」
エギルが淹れたてのハーブティーを俺とユウキに渡してくれた。
「お、サンキュー。」
「ありがと・・・ エギル、後で上の部屋借りていい?」
「別に構わないが・・・」
「ありがと。テツヤ、後で一緒に来て。」
「別にいいけど・・・」
「・・・ったく、心配かけんなよなユウキに・・・」
「え?」
「鈍いテメェには分かんねぇよ。」
「なんだよ、教えてくれたっていいだろ?」
「すぐにわかるさ。ユウキが落ち込んでる理由もな。」
「そうか?なら良いけど・・・」
ショウが何を言いたいのかは分からないが、俺はユウキと一緒に上の部屋へ向かった。
「なぁ、どうしたんだ?」
ユウキに問いかけても、何も返事は返ってこない。
不思議に思いながら部屋を開けると、部屋に入るなりユウキが俺の手を握ってきた。
「ユウキ?」
「テツヤ・・・!」
ユウキの弱った声を聞いて、何事かと思い振り向く。
そこには、涙目のユウキがいた。
ユウキは無言で俺を押し倒した。
幸いにも押し倒された先にはベッドがあり痛みは感じなかった。
「なっ!?なにすんだ・・・よ・・・」
ユウキに怒ろうとしたが、ユウキは涙をポロポロとこぼし始めた。
「テツヤのバカバカバカ!何であんな無茶な事したの!? ボク、心配で心配で・・・!」
「っ・・・ユウキ・・・もしかしてそんな事でずっと落ち込んでたのか?」
「そんな事!?もしあの七人がすっごく強かったらテツヤは今頃死んじゃってるんだよ!?」
「・・・テツヤが死んじゃったら・・・ボク・・・!」
「・・・すまなかったな・・・」
俺は泣き続けるユウキを優しく抱きしめた。
「テツヤ・・・!」
抱きしめられたユウキは、今まで貯めていた涙を出すように大きな声を出しながら泣き続けた。
「バカ!テツヤのバカ!ボクの気持ちも知らないで!」
「ユウキ・・・心配かけてすまなかったな・・・」
ユウキの事を優しくも、強く抱きしめる。
俺が今ユウキにできる事はこのくらいだ。
「ひぐっ・・・ テツヤぁ・・」
「わ、悪かったって・・・そうだ、今度一緒にどこかに出かけようぜユウキ。それで許してくれないかな?」
「うん・・・良いよ・・・絶対だからね?後・・・」
「ん?」
「・・・しばらく・・・このままでいさせて・・・」
ユウキは力強く俺に抱きついてきた。
「あぁ・・・良いぞ・・・」
「あの時はごめんね・・・首痛かったでしょ?」
「あれは俺も悪いんだ。謝る必要は無いよ。」
「でもその後もきつい口調になっちゃったし・・・」
「もう過ぎた事なんだ。ユウキと俺はこうして一緒にいるんだ。忘れちまえそんな事。」
「・・・テツヤは本当に優しいんだね・・・ やっぱりボク・・・テツヤの事・・・」
「ん?なんだ?」
「ううん、なんでも無いよ。」
「そうか?なら良いんだ。」
ユウキが何を言いたかったのかは気になるが、今はとにかくユウキと一緒にいることを噛み締めることにした。
(テツヤ・・・ボクの気持ちがいつ伝わるかなんて事は分からない。もしかしたらずっと伝わらないままかもしれない。それでも・・・)
(大好きだよ・・・!テツヤ・・・!)
~~~~~~~~~
一連の騒動の数日後のこと。
ユウキにメール受信の音が響いた
「メール?」
メールの送り主はシリカだった。
『先日はありがとうございました。私も早くレベルを上げて上層へ行きたいので頑張りますね!あと、テツヤさんのことは諦めないでください!私応援しますよ!今度会うときは付き合ってると良いですね♪それでは。』
(・・・ボクとテツヤが・・・)
ユウキは自然と考えていた、テツヤと付き合っている光景を。
『テツヤ、今日の夕陽は綺麗だね♪』
『あぁそうだな でも・・・』
『でも?』
『今1番綺麗なのはユウキだよ』
『も、もう!テツヤのバカ!』
『ははっ、本当の事を言っただけだよ』
『むぅ・・・ありがとう・・・』
『ユウキ。』
『テツヤ・・・』
(そのまま・・・て、テツヤがボクのほっぺに手を添えて・・・!?)
(ってボクのバカバカバカ!何考えてるの!?)
(でも・・・テツヤとこんなことできたらなぁ・・・)
愛しのテツヤとのやり取りを想像し、ユウキの表情はすっかり蕩けきっていた。
「お!何してんだユウキ?」
「ふぇ!?ててててテチュヤ!?」
ユウキは先程まで考えていた事を思い出してしまい、つい噛んでしまった。
「ん?どうしたんだ?」
「あ、えっと、その・・・ボク出かけてくるぅ!」
「え?い、行ってらっしゃい・・・」
ユウキがテツヤに想いを届けられるのはいつになることやら・・・
というわけで竜使い・シリカの登場回でした。
原作ではSAOではもうメインで出ることはないですが 今作では今後とも出すつもりです 。
次回!ついに斬月での戦闘シーン!乞うご期待!
※2026年9/16日、改稿。