とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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プロローグと外道な探偵

うちは夢を見とった。

 

 うちのろくでなしの腐れ親父がニコニコ笑いながらこっちに手をふっとるんや。

 

「マリー!! お父さん仕事に就いたでぇ!!」

 

「ほんま!! ほんまなんお父ちゃん!!」

 

 なぜか幼くなっとった私は、父親の言葉に無邪気に喜び、腐れ親父に駆け寄って行きよる。

 

「ほんまやで!! お父さんは自分で企業を立ち上げたんや!! これやったらお父ちゃんも就職できるやろう!?」

 

「お父ちゃんすごーい!!」

 

 私は大いに喜びながら父親に抱きついた。その時、父親の最後の言葉が耳に入る。

 

「実は起業すんのに二千万ほどかりてんねんけどな!!」

 

「やっぱりかぃいいいい!! そんなオチやと思うたわボケオヤジィイイイイイイイイ!!」

 

「うわ!! なんだ一体!! どうしたんだマリー!!」

 

 私の名前は安川マリー。借金まみれの父親に人身売買されたあげく、とある少年の下で働く薄幸の美少女(自称)や。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 安川マリーがいる場所は麻帆良学園女子中等部1-A。

 

 デス眼鏡ことタカミチ・T・高畑を担任にもつ曲者クラスである。

 

 今現在彼女はクラスに多くいる友人の一人、長谷川千雨の愚痴を聞いているところだった。

 

 クラスにおいては公然のツッコミ役についているマリーは、麻帆良にいる数少ない常識人の一人だ。他の人間にあまり心を開かない長谷川が彼女には普通に話しかけるのもここが原因だったりする。

 

「でさ、そのガキが不良をぶん殴ったら、その不良がまるで建築用のハンマーでぶん殴られたみたいに吹っ飛んでいったんだって!! マジでありえねぇえって!! どこのドクタースランプだよ」

 

「はははは……。そら凄い子がおったもんやなぁ。クーフェイよりもすごいんとちゃうん」

 

 微妙に引きつった笑みを浮かべながらマリーは何とかそう答えた。

 

 しかし、彼女は内心では冷や汗を滝のように流しているのである。なぜなら、その不良を殴り飛ばしたガキとやらは、マリーが良く知る人物だったからだ。

 

『い、言われへん。そいつがうちの上司やなんて絶対に言われへん!!』

 

 マリーは内心そんなことを考えながら、長谷川が飽きるまで彼女の愚痴に付き合ったのだった。

 

 

 

 それから数時間後。マリーはとある会社の前にやってきていた。

 

 犬神アンダーグラウンドサーチ。マリーが父親に人身売買された会社である。

 

 職種は一応探偵事務所。といっても、ドラマや漫画に出てくるような冴え渡る推理で事件解決なんてスタイリッシュな探偵事務所ではない。

 

 主な仕事はペット探しや不倫の裏づけといったいわゆるリアルサイドに沿った探偵事務所である。

 

 マリーがそんなことを考え溜息をついていると、突然彼女の後ろに長身で細い影が差した。

 

「これはこれはマリー様。お帰りなさいませ」

 

「クランレスさん。ただいまー」

 

 サイドでピンと跳ねた特徴的な口ひげを持つ燕尾服を着た細身の老紳士は、この探偵事務所の執事・クラレンス。年齢、正体、過去その他一切が不明なナイスガイである。

 

 執事脳の腕も、助手としての力量も一級品のため、本来正式な助手であるはずのマリーに回ってくるはずの仕事を根こそぎ掻っ攫っているマルチスキル能力者だ。

 

「ゲル様がお待ちです。どうぞ中に」

 

「ありがとうクラレンスさん」

 

 扉を開けマリーを先に入れてくれるクランレスにお礼を言いつつ、マリーは事務所のなかに入った。

 

 人身売買と言ってもマリーの場合はその形態をとった保護といったほうが相応しいのだろう。

 

 借金まみれの父親に付き合い借金取りに終われる日々を送っていた小学生時代のマリー。そんな彼女を不憫の思った……のかは定かではないが、彼女の父親である男はむかし借りを作っていたこの会社を営んでいる人物に、借りを返す代わりにマリーの身元引受人になってくれるようにたのんだのだ。

 

 結果、彼女の父親はマリーに内緒で、一人逃走。強制的に身寄りがなくなったマリーは助手としてこの会社に勤務することになったのだ。

 

 さて、散々引っ張ったこの会社のオーナーについてだが……

 

「お、お願いです!! 俺の娘を助けてください!! このままじゃ、あのマフィア達に娘はひどい目に会わされてしまうんです!! お金はこれだけしかないですがうちの全財産です。どうか、どうか娘を!!」

 

 今日は珍しいことにお客が二人来ていた。

 

 一人はボロボロの服を着たいかにも貧乏そうな男。その両手には数枚の小銭が握られており、大粒の涙を流しながら土下座をしていた。

 

「そんなことより、私のメリーちゃんを早く探してほしいざます!! お金ならいくらでも払うざます!!」

 

 もう一人は、いかにも金持ちそうな太った夫人。その手には分厚い万札の束と、デブ猫の写真が一枚握られていた。

 

 その二人に対面するように座っていたオーナーは、

 

「御意。すべては私にお任せ下さいマダム。」

 

 メタルフレームの眼鏡に、切りそろえられた黒髪。鋭い目つきをした美少年。

 

 マリーと同い年の少年にしてこの会社のボス!! 犬神ゲルはそういって、金持ちそうなマダムの手を取った。

 

 

「っておかしいやろうがぁああああああああああああ!!」

 

 その顔面にマリーの鋭いツッコミを伴ったハリセンが直撃したのは言うまでもないことだろう。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 事件が起これば警察が動く。

 

 しかし、奴らは動かない。

 

 すべては、

 

 依頼と

 

 金と

 

 気分次第。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「いやいや。動こうや、少年探偵」

 

「安川……世の中にはな、できることとできないことがある」

 

「ただのやる気の問題やろ!?」

 

 ここは犬神アンダーグラウンドサーチ。探偵事務所である。

 

 そこで言い合っているのは金髪碧眼に巧みな関西弁を操るアンバランスな少女、安川マリー。そして、完璧な無表情のままメガネをクイッと上げとんでもないことをのたまった、この探偵事務所のボス。少年探偵犬神ゲルである。

 

 この探偵事務所には数々の異常な箇所がある。

 

 一つ目。まだ中学生の犬神ゲルが経営者をしていること。

 

 二つ目。そこにいる従業員のほとんどがまだ高校生にもなっていないメンバーで構成されていること。

 

 そして三つめ。何よりも異常な箇所は……

 

「金にもならん依頼をするのは僕の主義に反する。摩訶不思議な難事件や怪盗との直接対決なんてものは名探偵にでも任せておけ」

 

「君はそうやないんかいな!!」

 

「少なくとも自分で名探偵というほどうぬぼれてはいない」

 

「あやまり!! 全国の名探偵の皆さんに謝りっ!!」

 

 何よりも金を尊び、金にならなければどんな難事件であろうと動かない!! という、ある意味あっぱれな経営理念もっているところだった。

 

「大体、安川。ここ麻帆良では摩訶不思議な事件なんて腐るほど起きているんだぞ。いまさら僕らが動き出したところですぐにもみ消されてしまうのが落ちだ」

 

「う……。まぁ、そらそうやけど……」

 

 そう。残念なことにここ麻帆良で起きる摩訶不思議な事件のほとんどが魔法使い(・・・・)が絡んでいる。基本的に彼らは存在を隠しているものなので、当然彼らが起こした事件はもみ消され名探偵が活躍する場所なんて存在しなくなってしまうのだ。

 

 この会社に入ってマリーが嫌というほど思い知ったこの学園都市での真理である。

 

「まぁ、ようするに……僕はお金が大好きだから、金にならん事件などで働きたくないというだけなのだがな」

 

「って、やっぱりかぃい!!」

 

 メガネをきらりと輝かせながらそうのたまった犬神の脳天にマリーのハリセンによる一撃がきれいに決まった。

 

 安川マリー。職業・中学生兼探偵助手。職業内容・勉強とツッコミ。

 

 何かが間違っている気がしないでもないマリーだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 さて、そんな少年探偵とその助手にあるまじき存在である犬神とマリーであったが、意外や意外。仕事はちゃんと来るのである。

 

 その主な仕事の一つを今日は紹介させていただこう。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 犬神は屋根の上を爆走していた。

 

 場所は生徒や教員たちが住む寮が立ち並ぶ麻帆良学園居住区。

 

 二十メートル近くあいている家々の屋根。それらの上を平然と飛び移りながら、犬神はターゲットを追跡し続ける。

 

「安川!! 目標が西通りの路地を曲がった!! ヘマをするな!」

 

「あいあい、ボス」

 

 やる気のない掛け声とともに、マリーは待ち伏せしていた物陰から飛び出し目標の目の前に立ちふさがる!!

 

「さぁ、おとなしくお縄につきや!! エリザベスちゃん!!」

 

 悪趣味なリボンを付けたトラ柄の猫は、突如出現したマリーに、『ギニャー』と名前に似合わないドラ声の悲鳴を上げながらあわてて反転しようとした。

 

 しかし……

 

「逃げることは許さん、金づる。おとなしく僕の利益になるがいい!!」

 

 そんなどこかの悪役のような言葉を吐きながら、隣に立っていた七十階建ての高級生徒寮の屋上から犬神が飛び降りてきた!

 

「って、犬神君!? どこから飛び降りとんねん!! 死んでまうやないかぁああああ!!」

 

 マリーはあわてて体を気で強化し、犬神を受け止めようとする。だが……

 

「邪魔だ、安川。どけ」

 

「へ?」

 

 瞬間。落ちてきた犬神の両足がマリーの顔面に食い込んだ!!

 

「ギニャァアアアアアアアアアアアア!!」

 

 先ほどの猫よりも大きな悲鳴を上げのたうちまわるマリーをしり目に、犬神は宙へと飛びあがり空中三回転ひねりを加えながら、地面に降り立ちポーズをきめる。

 

「チーン、6.5」

 

「点数出るんかい……あと、私の犠牲の上になりたっとるくせに点数低いやん……」

 

「だまれ安川。ミッションコンプリートだ。早く依頼主にこの金づるを届けに行くぞ」

 

 犬神はそんなことを言いつつ、いつの間にか捕獲していた(エリザベス)を掲げた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「なぁ、犬神君。なんかこう……私らがやってることって……なんか違わへん?」

 

 今彼らが歩いているのは麻帆良学園都市の大通り。何とかネコの捕獲を終え仕事を完了した彼らは、探偵事務所へ帰るための帰路についているところだった。

 

「何がだ?」

 

「全部にきまっとるやんか!!」

 

 鼻に詰め物をしながら、ゲージに入った猫を持つ犬神にマリーはそういった。

 

「私らがやってることって………犬探し、猫探し、浮気調査&猫探し、浮気調査、犬探しばっかしやん。仮にもカッコかわいくておしゃれチックな少年探偵なのっとるくせに、なんやもう浮気調査するペット探偵になっとるやんか」

 

「依頼が来て、仕事をして、金をもらう。そしてそこに信用が生まれまた次の依頼が来る。美しく循環していて結構なことだと思わんか?」

 

「いや、そらおもうけど………ちゃうやん!! もっとあるやん!! 少年探偵らしい事件!! 具体的には、小学生になってもうた某高校生探偵のような密室連続殺人事件とかさぁ!!」

 

「安川……その話を聞いた僕の感想を素直に言わせてもらうと……」

 

 犬神はそこで言葉を切り、眼鏡をクイッと押し上げた。

 

「超……どうでもいい」

 

「超!?」

 

「第一……依頼されたならともかく、なんで僕がそんな一銭の足しにもならんような事件を解決せねばならんのだ」

 

「いや、でも犬神君。難事件とか解決したら、評判が評判呼んで今よりさらに儲かんで」

 

「断固拒否する!!」

 

「なんで!?」

 

「そのためのたった一度のタダ働きが僕には我慢ならんのだ。儲かっているのはわかるが魂が拒絶する!!」

 

「いや、しようやそんくらい! 損して得取れ、商売の基本やん!!」

 

「無理だ!!」

 

 どうやら真剣に考えただけでも身の毛がよだつらしい。無表情ではあるが犬神の手がカタカタと震えているのがマリーにはわかった。

 

「はぁ、君も難儀な体しとんなぁ……。せやったら、もっとドラマチックな事件を……」

 

 そう言ってマリーたちが、事務所への近道のために小さな路地を曲がり、暗い裏路地に入ってしばらくあるいた時、

 

「ん?」

 

「お!!」

 

 なんとそこでは事件が起きていたのだ。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 裏路地には四人の人物が立っていた。

 

 二人は白い目だし帽をかぶった明らかな不審者。

 

 もうひとりはサングラスに薄い無精ひげ。片手にはサイレンサー付きの拳銃が握られている。

 

 最後の一人は女子高生。ウルスラ女子高等学校の制服を着ており、白い目だし帽をかぶった男たちの腕の中でぐったりと気絶している。

 

「こ、これは……事件!!」

 

 そこまで思考が行き着いたマリーは、顔いっぱいに歓喜の色を浮かべながら、びしっと男たちに指を突き付けた。

 

「そこまでや変質者ども!! 私らが通りかかったからには好きにはさせへんで!!」

 

「なんだ、このガキども……」

 

 目だし帽の男の一人は、マリーたちが警察に行く気はないということに気づき安堵の息をもらしながらそう呟き、

 

「変質者とは失敬だな……」

 

 サングラスをかけた男はそう言いながら銃を構えた。

 

「僕たちは……ゆかい犯だ!!」

 

「No!! 兄貴、YUU()KAIHAN!!」

 

「ん? あれ、そうなの!!」

 

 そんなことを言いながら、拳銃を下げ部下たちにそう尋ねるグラサン。部下たちもいつものことと諦めているのか、力なくそれに返答を返している。どうやらかなりの天然のようだ。

 

「愉快犯でも誘拐犯でもどっちでもいええわ。私らに会ったんが運のつきやで!!」

 

「ばかやろー。ゆかい犯とゆうかい犯じゃイメージが違いすぎるだろうが!! イメージが違いすぎるだろうが!!」

 

 大事なことなので二回言ったようだ。

 

「そーか。伸ばすのか……」

 

 男たちが何か言ってくるがマリーの耳にはもう入っていない。彼女の頭の中には明日の一面トップを飾るであろう自分たちのヒーローインタビューのことしかなかった。

 

「さぁ、犬神君、出番や……」

 

 そして振り返ったマリーの眼に映るのは、

 

「ふー。やれやれ……」

 

 めんどくさそうに踵を返し、違う道から帰ろうとしている犬神の姿だった……。

 

「で……って、なに帰ろうとしとんねん!!」

 

「安川。僕はさっさと依頼者に猫を引き渡し、金をもらいたいのだ」

 

「のだって……ちゃうがな!! あの女の人助けなあかんやん!!」

 

 犬神は、あわてて引き留めようとしてくるマリーの手を鬱陶しそうに眺めながら、気絶した少女に視線を移す。

 

「おーい。そこの女……僕は全くどうでもいいんだが、依頼料を払うなら助けてやらんこともないがどうする?」

 

 当然気絶した少女から返事が聞けるはずもない。

 

「あの……犬神君?」

 

 まさかと思いつつ、信じたくないマリーが確認のため犬神の声をかけた瞬間、

 

「返事がない。ただの屍のようだ」

 

「気絶しとんのに返事ができるか!!」

 

 さわやかな笑顔でサムズアップした彼の頭を、マリーのハリセンが容赦なく一撃した。

 

「金の話なんて助けた後でも出来るやろ……君は少年探偵以前に人として改善せなあかん箇所がそこかしこに……」

 

 その時、

 

「なにこっち無視して漫才してんだよ、ガキどもが!」

 

 しびれを切らした目だし帽がポケットから拳銃を取り出し、犬神を撃った!!

 

 しかし、犬神はそれにいち早く反応しわずかに体をずらすことによって弾丸を回避。

 

 そして、

 

「あ…………………」

 

「あ…………………」

 

 その弾丸が猫を入れていたゲージを壊し、せっかく捕獲した猫に自由を与えてしまう。

 

 ニャー。と一声鳴きながらさっさと逃亡を開始する猫を、マリーと犬神は黙って見送ることしかできなかった。

 

「おれたちは無駄な殺しが好きじゃないが……見られたからには仕方がねぇ。おとなしく死んで……」

 

「ああ……。話してるところ悪んやけど、お兄ちゃん。ひとこと言わして」

 

「あぁ? なんだよ」

 

「そおのぉ……ご愁傷さま。殺されんとってや。違う意味で一面飾ってまいそうやし」

 

「おまえ、なにいってんだ!!」

 

 しかし、苛立つ強盗をしり目に、マリーは気で両足を強化。犬神の邪魔にならないように近くの家屋の屋根まで飛びあがり退避する。

 

「な!」

 

「おお! なんだ、あの子。ちょうすげー」

 

 ここ麻帆良ではこの程度のことはできる人間は多々いる。しかし、それに驚いているということは、彼らは外の人間なのだろう。

 

 だから彼らは知らないのだ……。ここには……決して喧嘩を売ってはいけない存在がいることを。

 

「まったく……。何のつもりだ、貴様ら」

 

 しばらくの間無言だった犬神は、数秒後眼鏡を押し上げ、

 

「何が不満だ? せっかく面倒だからお互い不干渉で済ませてやろうとしているのに……このバカどもが!!」

 

 瞬間。犬神は男たちのすぐ横に立っており、今まで発言しようとしなかった、もう拳銃を持っていない方の目だし帽の男を力いっぱいなぐりつけた。

 

 瞬間!!

 

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!! 出番これだけぇええええええええええええええええええ!?」

 

 殴り飛ばされた男がまるで砲弾のように吹き飛び、空の彼方に消えてしまう。仲間の男たちは呆然と見つめるしかなかった。

 

「僕の仕事を邪魔する奴は……僕に蹴られて死ぬがいい」

 

 一瞬だった。

 

 犬神は隣に立っていたもう一人の目だし帽の側頭に回し蹴りをたたきこみ地面に熱烈なキスをさせた後、地面から跳ね返ってくる途中の目だし帽の頭を足場に跳躍。あわてて拳銃を捨て降参のポーズをとるグラサンの脳天に、容赦ないかかと落としをたたきこんだ!!

 

「ケペ!!」

 

 ダサい悲鳴を上げ、まるで打ちつけられた杭のように地面に沈むグラサンを見て、白い目だし帽は震える声で屋根から下りてきたマリーに尋ねた。

 

「お、おい。何なんだよ、おまえたち!!」

 

「ああ。まぁ、あえて答えるなら、犬神君は少年探偵で……私はその助手なんやけど……」

 

「しょ、少年探偵!? 少年探偵っていうもんは、頭脳で勝負するもんなんじゃないのかよ!!」

 

「いや、私としてもそっちが理想なんやけどな……犬神君は……」

 

 そして、そこで言葉を切ったマリーは、女子高生をたたき起し依頼料の請求をしている犬神を見て大きくため息をついた。

 

「超絶武闘派の……化け物探偵やねん」

 

 犬神ゲル……無敵無双。

 

 麻帆良の裏においては、高畑・T・タカミチを抑え体術最強の称号を持つ怪物少年探偵である。

 

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