とある外道の少年探偵   作:過労死志願

29 / 53
24話・爆走? 疾走? 大暴走? 逢魔が時の幽霊レース

「なななな、なんでこっちくんのよぉおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

「なななな、なんで逃げるんですかぁああああああああああああああ!?」

 

「幽霊に追いかけられたらそりゃ逃げるでしょ!!」

 

「だったら私も連れて行ってくださぃいいいいいいいいいい!! 私も追いかけられているんですぅうううううううう!!」

 

「あんたどう見ても後ろの連中の御同輩でしょうがっ!?」

 

 幽霊学校にネギたちをつけて侵入を果たした朝倉和美は、現在……絶賛逃走中だった。

 

 なぜなら彼女の背後には、

 

「まてぇええ」

「なんでにげるのぉおお」

「こっちへおいでよぉお」

 

「めちゃくちゃ悪霊じゃないあんなもん!?」

 

「わ、私は違いますよっ!! 私はただの地縛霊なんです!!」

 

「霊って時点でただのはついちゃいけない!!」

 

 落ち武者やら白衣を着た首をくくった男やらが……半透明な姿で追いかけてきていたからだ。

 

「そ、そんな!? そうだ!! 実は私あなたのスタンドなんですよ!!」

 

「だったらなんとかしなさいよ!? クレイジーダイヤモンドでもキングクリムゾンでいいからそれっぽい力使ってあいつら蹴散らしてよ!!」

 

「意外と要望がクレイジー!? そんなすごい能力使えるわけないじゃないですか!!」

 

 そして朝倉は、ギャーギャー言い合いながらなんやかんやで成り行き上一緒に逃げることになってしまった、幽霊少女――相坂さよをじっと見つめて一言。

 

「って、あれっ!? あんたうちのクラスの幽霊ちゃんじゃない!! なんでこんなところにいるのよ!?」

 

「いま!? 今気づいたんですか!?」

 

「いや……何となくわかっただけだし。あんたこの前姿を見せた写真かなり映り悪かったし……」

 

「うっ。し、仕方ないじゃないですか。幽霊になった時、よほどの技術を持たない人じゃないとあんな感じに映っちゃう特典がついちゃったんですから」

 

「特典っていうか呪いよね、それ」

 

「うぅ……人がせっかくオブラートに包んで言ったのに!!」

 

 あやまって!! 割と真剣により良い土下座を追求しつつ謝ってください!! とキャンキャン吠えるさよに若干和むことによって、朝倉の記者としての冷静な判断力がだんだん戻ってきた。

 

「それにしてもあんたなんで追いかけられたりしていたの? 縄張り荒らしたから怒られたとか?」

 

「そんな原始時代のお猿さんみたいな理由で襲われたりしませんよ」

 

 そして、現代社会のヤクザや警察を、全員を敵に回しかねない発言をするさよに(割と縄張り意識が強いイメージがある職種を上げただけで他意はありません)、思わず顔をひきつらせもした。

 

「私しばらく前までは仲間として歓迎されていなんですけど、あの人たちが『ちょうど人間が入ってきたからとり殺して仲間にしようぜっ!!』とか言っているのを聞いて、あわてて危機を知らせようと……」

 

「へぇ……」

 

 この子、意外といい子じゃない。朝倉はさよの発言を聞き彼女の評価を上方向へと上昇させる。

 

写真写りやらクラスで起こしたポルターガイストやらで彼女のことは悪霊か何かだと思っていたが、どうやらそういうことでもないらしい。

 

「まぁ、あなたが出した血文字やら宙を舞い飛ぶ机やらでうちのクラスはパニックだけどね」

 

「あぅ……。すいません、何とか誤解を解こうとして力んだらあんなことに」

 

 力んだだけであれか……。と、朝倉は思わず冷や汗を流した。一瞬ネギたちのような魔法使いの仕業かと思ってネギ先生にも話を聞きに行ったのだが、学生用の軽い机とはいえあれほどの数を一気に飛びまわらせるのはかなりの魔力が必要と言っていた。

 

 もしかしてかなり霊格とか高い子なのかしら、とにわか知識でさよの力について予想を立てつつ朝倉はとりあえずとつぶやく、

 

「あれ……どうすんの?」

 

「どうしましょう……。結界張ったとかいっていましたしもう外には逃げられ」

 

 さよととりあえず今後の相談をしながら、廊下の角をまがった時だった。

 

「「げぇっ!?」」

 

 二人は同時に女子生徒らしくない悲鳴を上げあわてて足をとめた。なぜならその廊下は行きどどまり。階段も渡り廊下もない完全な袋小路だったからだ。

 

「そんな!? 建築法ちゃんと仕事してよ!! 非常時用の非常口ぐらい残しておいてよ!!」

 

「廃校にそんなことを求められても困るでござる」

 

「「っ!!」」

 

 朝倉がそんな悲鳴交じりの抗議をあえても状況は変わらない。彼女たちは後ろから聞こえてきた声に、だらだらと冷や汗を流しながらゆっくりと振り向く。

 

「え、えっと……イバさん。見逃してくれたらうれしいかもです?」

 

「おねが~い、イケメンの落ち武者のお兄ちゃん」

 

「ふむ。そんな風にほめられたのは初めてでござる。これはますますお二人を我々の仲間に入れて拙者のハーレム要員に」

 

「「だめだこいつ。早くなんとかしないと……」」

 

 何やらトチ狂ったことを吐き散らす対拝み屋用戦闘員・落ち武者IBA!! の発言を聞き、白い目でイバを見つめる麻帆良の女子中学生二名。

 

 彼女たちの刺すような視線と、周りの幽霊たちの白けきった視線に耐えきれなくなったのか、血色の悪い顔を真っ赤に染めながらイバは腰に下げた刀を抜刀する。

 

「せ、拙者のころは、一夫多妻制は普通だったもん!! 拙者悪くないもん!!」

 

 なんか泣きながら突撃してくるイバ。だが、その切っ先を向けられた朝倉たちはその突撃をとめるすべがない。

 

「さよちゃん!!」

 

 何か打開策はない!? と、朝倉は全身全霊を込めてさよにそう尋ねるが、

 

「朝倉さんっ!! 死んだら一緒に麻帆良回りましょうね!」

 

「あきらめないでよっ!? もっと熱くなってよ!!」

 

 どうやら幽霊と生者の文化の壁は厚かったらしい……。

 

もうだめだっ!! と朝倉は思わず目を閉じた、その時、

 

「うぼふぁ!? って、どうしたでござる西村くん!?」

 

「「え?」」

 

 突如下の階から半透明の男が飛び出し、イバの顎を強打。その突撃をとめさせた。

 

 突然の不意打ちにさすがに驚いた顔をしたイバだったが、その攻撃に使われたものの正体が同僚の悪霊だと知ると目を大きく見開き、何が起こったのか尋ねる。

 

「いや……それがイバさん。僕たち小さい方を先に落とすために大きいほうが合流しないよう時間稼ぎしていたんだけど。ごめん……」

 

 そして、イバの問いかけに答えるべく振り向いた西村の顔は、

 

「ひぃ!?」

 

「彼……とめらんない」

 

 幽霊であるイバですらビビる凄惨な顔をしていた……。

 

 その瞬間、廊下の床がまるで砲弾にぶち破られたかのように爆散し、辺り一帯に土煙をまき散らした!!

 

「うぐぁ!?」

 

 何が起こったのか分からないイバは、生前の癖でつい自分の顔をかばうように腕を突き出してしまう。

 

 そして土煙が収まり、イバがあわてて腕を下げ、手に持った刀で土煙を切り払うと、そこには、

 

「ふん。知らないうちにパパラッチがメンバーとして増えてるな?」

 

「あ、あれ? 朝倉さんだけ? も、もしかして私も抹殺対象にはいっていたりしません!?」

 

 朝倉にかばわれるように抱きしめられたさよに、恐怖と畏怖の視線がこもった目でみあげられる、

 

「さて貴様ら。除霊のお時間だ」

 

 幽霊(・・)の西村にアイアンクローをして「イダダダダダダダ!?」と悲鳴を上げさせている大きい方の侵入者、

 

「僕のおいしい金づるとなるがいい」

 

 犬神ゲルが立っていた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「はぁはぁ……わ、割としんどい」

 

 時間は少しさかのぼり、ところ変わってネギがいる場所。とても不幸なことに、彼は魍魎軍団に出会ってからかなりの怪奇現象を経験する羽目になっていた。

 

 まずはじめに、真夜中になりだす音楽室のグランドピアノ。別に真夜中というような時間ではなかった気がするが、そこらへんは非常事態ということで見逃す。

 

 ただ、演奏されていたのクラシカルな暗い曲ではなく、明るいポップなジャズ演奏だったのでそれほど恐怖は感じなかった。事情を聴いたところ「ジャズが好きなんだよ」とのこと。今度来た時はバンドメンバー集めてフルコーラスで聞かせてくれるらしい。

 

 次に出会った怪奇現象は音楽準備室の肖像画たち。ネギがその部屋に入ると彼らの目が突然寄り目になった。

 

 疲れません? と聞いたところ結構目がしんどいらしくもとの位置に戻ったが……。

 

 次に現れたのは廊下で全力疾走する人体模型たち。どうやら廊下でタイムを計っていたらしく、ネギ廊下に顔を出すと、どうやらタイム取りの邪魔をしてしまったようでものすごい罵声を浴びせられ小一時間ほど説教されてしまった。お詫びとしてネギはタイムを取るのに協力した。

 

「おかしい……なんか心霊現象に溶け込んでしまっている気がする」

 

 怖いうんぬん以前にここの幽霊はフレンドリーすぎる気がするんだ……。とネギは独白を漏らした。

 

「と、とにかくいろいろやって疲れちゃった……。とにかく今は休憩」

 

 ネギはそう漏らしながら、近場にあった教室の扉を開いた。

 

 そこに掛けられた【準備中】の看板に気づくことなく……。

 

 そして、

 

「え?」

 

「「「あ」」」

 

 ネギはそこで、幽霊らしい衣装に着替えている男性幽霊や墓石を移動させている女子バレー部の格好をした女性幽霊。お化け屋敷のようなセットを組むため忙しく働いているその他もろもろの幽霊たちを目撃した。

 

「え……えっと、幽霊? バイトの人とかではなく?」

 

 一応皆さん半透明の意志薄弱そうなっビジュアルだったが、彼らがやっていることがあまりに人間くさくて思わずそう尋ねてしまうネギ。

 

 次の瞬間!

 

「きゃぁああああああああああああああああああ!? 準備中って書いてあったのに!? 準備中って書いてあったのにぃいいいいいいい!?」

 

「え、えぇええええええええええええ!?」

 

 突然女子バレー部の幽霊が悲鳴を上げ、近場にあった骸骨をボール代わりに、ネギに向かってスパイクを打ち始めた!!

 

「ポルターガイスト! ポルターガイスト! ポルターガイスト!!」

 

「いたたた!? ちょ、いたいいたい!?」

 

「恥を知れ!! 恥を知れぇえええええええええ!! 変身中のヒーローを攻撃するようなメンタリティを恥じるがいい!!」

 

「何でそこまで言われないといけないんですか!?」

 

 手当たり次第に小道具をスパイクしてネギにぶつけてくる女子バレー部員に、ネギは思わず抗議の声をあげるが当然相手は聞いてはくれない。

 

 そして最後には、

 

「ポルタァアアアアアアアアアアアアアアガイストっ!!」

 

「鉄アレイ!?」

 

 いつの間にかもう一人やってきていた女子バレー部員がサーブした鉄アレイを、アタックナンバーワンも真っ青な美しいフォルムでのアタックでぶっ放した女子バレー部員。当然そんなものを食らったらネギもただでは済まないので、あわてて障壁を張ろうとした。が、

 

「も~。みんなせっかく来てくれた子を歓迎するのは当然だけど、やりすぎはだめよ?」

 

 突然ネギの体から半透明の腕が生えだし、その鉄アレイを受け止めた。

 

「え? え? てぇえええええええええええええええええええええ!?」

 

 自分の体からにょっきりと生えたてに混乱の極みに陥るネギ。しかし、手の持ち主はそんなこと知ったことではないのか、ネギの体を通り抜けるようにだんだんと姿をあらわにしてきた。

 

 それはおさげ髪の女子中学生だった。確か今の制服になる前の麻帆良女子中学の制服を着た彼女は、ゆらりゆらりと全身をネギから引き出し暴れまわっていた幽霊たちの前に立つ。

 

「ね♡」

 

 彼女がそう念押ししたとたん幽霊たちは静かになり、あわてて頭を下げ始めた。

 

「ごめんはなちゃん。私テンパっちゃって……」

 

「生き急いでしまったぜ花子」

 

 どうやら彼らのリーダー的存在らしい。ほかの幽霊たちの態度を見て何となくそれを悟ったネギは、若干腰が抜けかけている体を引きずり何とかこの場から逃げようとするが、

 

「逃げないで? 怖がらなくて大丈夫だから」

 

 まるでこちらを見ているかのような花子の発言に、ぴたりと足を止めるしかなかった。

 

「いや~ごめんね? 久しぶりに人間が来てくれたからみんなはしゃいじゃって。あ、私花子。よろしくね?」

 

「ず、ずいぶんフレンドリーな幽霊ですね」

 

「あぁ、あと『トイレの』はつけないでね? 違うから!!」

 

「言われると機嫌が悪くなるのだ」

 

 メンゴメンゴ~。と言いかけない軽さで話しかけてくる少女の幽霊に若干ひきながら、ネギはあわてて頭を下げる。

 

「こ、こんにちは。ネギ・スプリングフィールドと言います」

 

「かっこいい名前ね。外国の方?」

 

 にっこりと笑った花子の笑顔はとても無邪気で綺麗だった。

 

 だがなぜだろう? 自分の背中の悪寒が止まらない……。そう思ったネギは本能的にじりじりと花子から距離を取ろうと画策する。

 

「でねぇ、ネギ君。私あなたにひとつお願いがあるんだけど……」

 

「な、なんでしょう?」

 

 逃げる隙はないか、じっと観察を続けるネギに対して花子はほんの少し顔を赤らめた後、

 

「あの、わ、私と……と、友達になってください!!」

 

「はい?」

 

 突如出されたミョウチキリンなお願いに、ネギは思わず聞き返してしまうが、

 

「やったー!! はいだって!!」

 

「オメデトウ!!」

「オメデトウ!!」

「アリガトウ!!」

 

 どうやら聞き取り間違えられてしまったらしく、花子が仲間の幽霊たちをハイタッチを交わしてまわるのを見てネギはあわてて訂正を入れた。

 

「ち、ちがいますよ!? 今のは聞き返しただけですからっ!?」

 

「え? だめなの!?」

 

「涙と鼻水すごいですよっ!? だ、だめってわけでもないですけど!?」

 

 なんかもう顔じゅうから、洪水と勘違いしかねない量の液体を垂れ流す花子にどん引きしながら、ネギは流されるままにOKを出してしまい、

 

「やった!!」

 

「とうとうこれで99人目だぜ!!」

 

「くすだまわる? くすだま!!」

 

 幽霊たちがそんな風に心底楽しそうにはしゃぎまわる姿を見て、なぜか釈然としないネギ。とはいえ、喜んでいる人々に水を差すのもあれかと思い、彼らに近寄って一緒に祝おうとした瞬間だった。

 

「じゃぁ、ネギ君」

 

「え……………」

 

 先ほどまで喜びでいっぱいだった花子の雰囲気が突然激変するのを感じ取り、ネギは思わず自分の歩みを止める。

 

 そして、

 

「せっかく友達になったんだから」

 

 振り返った花子の顔を見て、ネギはため息をもらし自分のうかつさを呪った。

 

 なぜなら彼女の顔は、罠にはまった哀れな獲物を見つめる、狡猾な猟師の顔をしていたから……。

 

「自殺して、早く幽霊になってよ」

 

「ホント僕って馬鹿ですね……」

 

 幽霊がいた話は本当だった。だったら、そこに住んでいる幽霊たちが生者を次々と自殺へといざなう悪霊だということも、すべて事実ということだ!!

 

 花子の顔を見た瞬間、脱兎のごとく駆け出すネギに花子の声が追撃してくる。

 

「どこいくの? ネギ君……」

 

 せっかく友達になったのに? そんな声しか聞こえないがネギははっきりと理解していた。

 

 花子の顔が不気味な捕食者の笑みに変わっていることを。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。