とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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26話・学園祭前日!!

 深夜、麻帆良学園女子中等部。本来ならだれもいないはず(中略)。

 

 女子生徒たちが集っていた!

 

「そこっ!! もっと静かにやって!!」

「あ、やばっ。ペンキ切れた」

「今から買い出しできる!?」

「こんな時間に空いてる店なんてないって~」

「コンビニは!?」

「ペンキなんて売ってるの?」

「学園祭特別セールってことで出店に必要なものはたいてい揃っているらしいよ?」

「ちょ、だれか行ってきて!!」

「私と美空ちゃんが行ってくるわ! そっちのほうが早いでしょ!!」

「あすな~新田先生に見つからんようにな~」

「うぅ……なんでぼくまで」

 

というか、追い込まれていた。

 

学園祭前日。3-Aの出し物であるお化け屋敷はいまだに完成の目を見ていなかった……。

 

「ったく!! だから言ったんだよいつまでものんびりしてないでさっさと作れって!!」

 

「まぁまぁ、そう言わんとってぇや千雨。それに抗して夜中に学校にもぐりこんで作業すんのも学園祭のだいご味やんか」

 

「おかげで私は明日寝不足だけどな!!」

 

 そんなクラスメイト達の騒ぎの端では、お化け衣装制作のため必死にコスプレ衣装を作っている千雨とマリーの姿があって。

 

「はい、委員長の分の型紙」

 

「ちっ……くそっ。あいつなんでこんなスタイルいいんだよ」

 

「それ千雨が言う?」

 

 型紙を見て忌々しげに舌打ちする千雨の胸部あたりと、自分の胸部を比べて見事にへこむマリー。その傾斜にはエベレストと平原位の差があった。

 

「くぅ……私か手まだ成長期やし」

 

 ちょっとだけ泣きそうになりながら、暗闇の中型紙を渡すマリー。そのとき、

 

「新田が見回りに来たよっ!!」

 

 ともに深夜の学校に侵入し出し物の制作にあたっていた3-Bの生徒がひっそりとドアを開け報告してきた。

 

「「「「っ!」」」」

 

「ありがとうございます! みなさん!! 隠密シフトCパターンで」

 

「「「「サー! イエッサー!!」」」」

 

 まるで軍隊のような統一された行動を見せ、瞬く間に出しのものセットの裏に隠れるクラスメイト達。用意を一日ほど放り出して楓に訓練してもらった成果が表れている(のちにこの話を聞いたネギが「本末転倒では?」とあきれていた)。

 

「……だれも、おらんようだな」

 

 懐中電灯を片手にやってきた新田が教室中を照らす。セットの裏に隠れたメンバーたちはその光にあたらないようさらに自分たちの体を密着させる。

 

 千雨とマリーも例外ではなく、二人がぎりぎりは入れる小さなセットの身を縮ませなんとかその懐中電灯(サーチライト)をやりすごした。だが、

 

「「……………」」

 

 隣のセットに隠れていたネギが、一緒に隠れていた宮崎の胸へと盛大にダイブする光景を見て、割と真剣に痴漢がいると新田に告げるべきかどうか悩んだらしい……。

 

 そして新田が過ぎ去った時、

 

「宮崎さんなんてウラヤマ……もとい、破廉恥なまねを!? わたくしが変わってほしいですわ!!」

 

「委員長! 委員長!! 漏れてる、本音ダダ漏れている!!」

 

「あらあらあやかったら、もうそろそろ犯罪の領域よ?」

 

「千鶴ねぇ……あれもうどっちかっていうと犯罪じゃんないかな?」

 

「どうでもいいから、お前ら仕事しろぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ワイワイギャーギャー騒がしく(それでもばれないようにボリュームを下げて)、麻帆良女子中等部の夜は更けていく。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「3-Aお化け屋敷……かんせぇええええええええええいい!!」

 

 そして夜が更け早朝。女子中等部の目の前で3-Aの生徒たちが歓声を上げていた。そこには見事な洋風の装飾がなされたお化け屋敷がたたずんでいて、

 

「まだ外側だけですけどね……」

 

「ゆえゆえ!? それは言わない約束でしょ!!」

 

 とまぁ、そんな歓声を上げたところでやっぱり完成はできなかったわけで……お化け屋敷の中ではいまだに3-A生徒たちが泣きながらトテカンと作業を行っていた。

 

「ち、千雨……大丈夫なん?」

 

「ふふふふ……これが大丈夫に見えんのかよ……っておらぁあああ!? とっとと服の採寸出せって言ってるだろうが鳴滝姉妹!!」

 

「「ひ~ん!! ごめんなさぁいいいいいいいいいいいい!?」」

 

「ふむふむ。あの子からは私と同じにおいを感じる……そう、締め切りに追われた芸術家のにおいが」

 

「何を言っているのですかパル? 徹夜明けでとうとう頭がおかしく……」

 

「何ってんのよ夕映~。私が徹夜程度でどうこうなるとでも? こんなもん昔の〆切守るためにやった一週間不眠のDEATHハイクと比べたら……」

 

「あぁ、そうでした。あなた元から頭おかしかったですね……」

 

 そんな中、自分たちの部活の用意もしないといけない面々があわてて荷づくりを開始し教室を飛び出していく。

 

「じゃぁ、私たちはそろそろ行くね!!」

 

「私も早く絵を完成させないと……」

 

「時間ができたら帰ってくるから!!」

 

「で、できるだけ早く帰ってきてくださいね!?」

 

 さすがの委員長もこれを止めることはできなかったのか、若干涙目になりながらそのメンバーを見送る。

 

 その中にはマリーとネギ、そしてアスナと刹那、木乃香の姿もあって、

 

「ほな、委員長! 三時間ぐらいしたら戻るし!!」

 

「また様子を見に来ますね~」

 

「わかりましたわ! みなさん、お気をつけて!!」

 

 委員長の見送りの声を背後に受けつつ、5人はほんの少しだけ魔法や気で脚力を強化し中等部校舎の廊下を疾走した。

 

「それにしても犬神さんを含んだ裏関係者全員に招集とは珍しいですね?」

 

「なんやよっぽどでかい事件でもあるんやろうか?」

 

「なに? 裏関係者全員召集ってそんな珍しいん?」

 

「まぁ、普段はよっぽどのことがない限りシフト製で麻帆良の魔法関係者が全員集まることはめったにありませんから」

 

「へ~。じゃぁ、もしかして今麻帆良にいる魔法使いの正確な人数って刹那さん知らなかったりするの?」

 

「少し数が多いですからね。学生も含めればそれこそ数百人単位ですし」

 

「……ほんと、なんでそんな状況なのに私魔法に気付けなかったのかしら……」

 

 明日菜が首をかしげ、ネギたち関係者が苦笑しながら通り過ぎた掲示板には一枚の紙が貼ってある。

 

 麻帆良スポーツ新聞。そう名付けられたその紙にはこんな一文が記されていた。

 

『世界樹発光早まる!? 22年に一度のダイスぺクタクル!!』

『この想い、君に届け♡ 世界樹が起こす奇跡!!』

 

 まさかこの記事が、この学園祭中にマリーやネギ……犬神アンダーグラウンドサーチを巻き込むある事件に発展するなど、今の彼らは想像もしていなかった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 学園祭ということで浮かれ騒いでいる麻帆良学園都市。その中央に座す世界樹の巨大な枝の一本に、二人の少年少女がたたずんでいた。

 

「いや~学園祭か~。俺ら学生生活してないからよくわからないけど、いったいどんなことするんだろうね、マゾミちゃん」

 

「ノゾミだっつてんでしょうが、バカお兄様が」

 

 軽~い声音でそういった少年の後頭部を、割とシャレにならない速度で打ち放たれた少女の回し蹴りがとらえる。

 

 通常の人間なら即死に至るほどの殺人蹴撃。しかし、少年はその蹴りをもろに後頭部にくらいポ~ンと言う軽い音ともに吹き飛んだ。

 

 そして、

 

「ぎゃ~。ちょ~いた~い」

 

 なんて軽い声とともに、右手に持った先端が折れ曲がった金属バットを世界樹の枝にたたきつけるように突き刺した。それによってあっさり落下を免れた彼は、まるで軽業師のようにバットを支点に体を回転。あっさりと枝の上へと体を戻す。

 

「んで? 依頼者殿はいつになったら姿を現してくれるのかな?」

 

「いつまでも私たちを監視したところで、それほど興味深い結果が出るとは思わないのだけれど?」

 

『あいや~。これはまいったネ。いやいや違うんだ。ちょっとこちらでも用事が出来てしまってネ。そちらに迎えに行けないから代わりの者を使わせただけネ』

 

 そう言って世界樹の枝に降り立ったのは、漆黒のボディを持つグラサン装備のいかついアンドロイド。ロボット研が生み出したロボット兵器T-ANK-α3。通称田中さんとして慕われている、脱げビームを放つ欠陥兵器さんだ。

 

『さてさて、君たちがここにきてくれたことを考えると、《新生・帝国》は私の計画に協力してくれると踏んでいいのかナ?』

 

「協力? 違う違う。俺らはあくまで金払われたから派遣されてきただけ。給料分の仕事はしなってな」

 

「もともと帝国はそういう組織よ? 依頼は選ぶな、殺す対象を選ぶな、依頼されたなら何も考えず、ただただそれを遂行し人を殺す機械となれ」

 

『……なるほど。偉大なる帝国暗殺者の父、《処刑人》ジルドレの教えが根付いているわけネ』

 

 田中越しに聞こえてくる声は、二人の返答に若干の苦笑をにじませながら一枚の紙を二人に渡した。

 

『だがまぁ、こちらでの殺しは厳禁だ。それに計画発動まで行動は控えてもらいたい。ばれたらいろいろと面倒だからネ』

 

 二人がのぞきこんだ紙には今後の予定と計画が書かれていて、

 

『では私は行くよ。計画発動までは、せいぜい学園祭を楽しんでいってくれネ』

 

 田中は二人がそれを一瞬で暗記し、紙を解読不能なランクまでに引き裂くのを確認した後、さっと世界樹から飛び降りた。

 

 突然世界樹からアンドロイドが降ってくるのを見て驚く一般人たちを見降ろし、枝の上にたった二人はのんびりと学園祭の熱気に包まれる麻帆良を見つめる。

 

「といわれてもね~」

 

「どうするの兄貴?」

 

「ん~。とりあえず……」

 

 少年は少女の疑問に応えるべく、風に乗って飛んできた一枚の屋台のチラシをつかみ取りこういった。

 

「たこ焼きでも食べに行くか? マゾミちゃん」

 

「私の名前はノゾミよ、サディスト兄様」

 

 再び世界樹からけりだされた少年――サディストはへらへら笑いながら今度は何の抵抗も見せずあっさりと地面へと落ち、

 

「よっと」

 

 百メートル近い高さを落下したにもかかわらず、危なげなど微塵も見せないまま、軽やかに地面に着地した。

 

 現在最高の暗殺者として目されている、元帝国出身の双子の暗殺者《S・Mブラザーズ》。

 

 麻帆良の学園祭に不吉な風が吹き込んできた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「流石に学園祭前日ということもあってへんなのが多いですね」

 

「というか、肉体構造的に明らかに本物がおるんやけど、魔法使いが変なもん輸入してへんやろうな?」

 

「はははは、さ、さすがにそれはないかと……」

 

 辺りに設置された巨大なモニュメントや、出し物用の動く模型やロボットを眺めながら明日菜、木乃香、刹那、ネギ、マリーは早朝の学園都市を駆け抜けていく。

 

 アスナは美術部へ、木乃香は図書館探検部。ほかのメンバーは魔法使いの召集に駆り出されている。

 

「そういえば明日菜さん、タカミチとのデートの件、どうなったんですか?」

 

「おぉ、そうやった!!」

 

「うまくいったんですか?」

 

 数日前明日菜が話していた、憧れのタカミチとのデート計画を思い出したネギが明日菜にそう尋ねる。それに乗っかるように目を輝かせたマリーと刹那がその話題に食いつき、木乃香はやや心配そうな顔で明日菜を見つめた。

 

 そんな四人を振り返り、アスナはほんの少し顔を赤らめた後、

 

「えへへへへ。○」

 

 右手でオッケ―マークを作った。

 

「やったじゃないですか!!」

 

「いや~心配してたんやで?」

 

「アスナ今年も誘われへんかったらどうしよ思たわ~」

 

「よかったですね明日菜さん」

 

 口々にお祝いの言葉を告げてくるメンバーたちに、アスナはほんの少しだけ顔を赤らめた。その直後、

 

「よかないわよぉおおおおおおおおおおおお!? 当日どんな顔して会えばいいの!? オッケーもらってから六の食べ物も喉を通らないしぃいいいいいいい!!」

 

「あわわわ……」

 

「てんぱってますね……」

 

「肝心なところで明日菜はヘタレやしなぁ……」

 

「本人の前でその評価ってどうなんよ木乃香……」

 

 目をぐるぐるまわし意味もなくじたばたともだえる明日菜の姿を見て、各々苦笑を浮かべるメンバーたち。そんな五人に向かって、

 

「何をしている貴様ら。早く集合場所に行くぞ」

 

「おはようございます、皆様がた」

 

「「「「「あ!!」」」」」

 

 街頭にもたれかかるように立っていた犬神と、その隣に極限まで気配を薄め佇んでいたクラレンスがでむかえてくれた。

 

「ちょっとゲル! またネギを変なことに巻き込む気じゃないでしょうね!!」

 

「それに関してなら安心しろ、今回こいつを事件に巻き込むのは僕じゃなくて学園長だ」

 

「全然安心できないんだけどっ!?」

 

 シレッと告げられた「巻き込むけど何か?」宣言に食って掛かる明日菜を、木乃香はにこにこ笑いながら止める。彼女の祖父に対する絶対的な信頼があってこその行動だろう。

 

「おはよ~犬神君、クラレンスさん。こんな朝早くに大変やね?」

 

「なに、大したことではありませんよクライアントの娘さん。これも仕事ですので」

 

「い、犬神さんが丁寧語使っている!?」

 

「そらまぁ、木乃香は金落としてくれる相手の親族やし……」

 

「うしろ。少し黙れ」

 

 そしてありえないものを見たと戦慄するマリーとネギの発言を聞き、犬神は人殺しの視線で二人を黙らせた。

 

「ほな、わたし等はここで~」

 

「あんま無理しないようにね~!!」

 

「は~い!!」

 

 そして、自分たちの部活へと向かう木乃香とアスナを見送った後ネギたちは世界樹前広場へと足を向けた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 ネギたちが世界樹前広場にたどり着くと、そこには誰もいなかった。

 

「あれ?」

 

「ひと……少ないですね? 学園祭前でこんなに人がいない場所なんてそんなにないはずなのに」

 

「人払いの結界が張ってあるからだな」

 

 首を傾げるネギと刹那に対して、犬神は平然とした様子で石段前にはられた五芒星の札を発見した。

 

「おぉ~ネギ君。まっておったぞ」

 

「へ?」

 

 声が聞こえた来た方へネギが目を向けると、そこは階段で構成された広場の中央に位置する踊り場。そこにはエヴァンジェリンとの決闘の際、観戦に来ていた人々が立っていて、

 

「あ、お、おはようございます!! 正式な挨拶が遅れてしまって……去年麻帆良に着任した魔法教師の……」

 

「ネギ・スプリングフィールドですね」

 

「話はいろいろと聞いているよ。エヴァンジェリン戦のときは……その、災難だったね」

 

 比較的好意的な挨拶と、犬神のもとにいることに対しての同情が含まれた視線を向けられネギは思わず顔を引きつらせる。

 

「さて、クライアント前置きはあとにして今回ぼくたちを呼びだした理由をお聞きしたいのですが」

 

「まぁ、そう急ぐでないよ犬神君。今日は君たちに紹介したい人物もおるしな」

 

「?」

 

 学園長はそういうと、早急にお金の話に移りたい犬神を制し後ろの方を手で示す。

 

「本日づけで着任した新しい魔法生徒じゃ。君たちのよく知っている少年じゃぞ?」

 

 瞬間、階段で構成された広場の頂上に位置する広場から一人の少年が飛び降りてきた!

 

「とうっ!!」

 

「うわっ!?」

 

「なかなか凝った演出ですね」

 

「わざわざ空中三回転ひねりを決める理由がわからんねんけど……」

 

 空中でアクロバティックな動きをする黒い影の出現に驚くネギと、目を見開く刹那、そして呆れるマリーという三段落ちが決まった後、飛び降りてきた人影は中央踊り場に降り立ち一言、

 

「よぉ、久しぶりやなネギ……俺っ! 参上!!」

 

 ピコピコ動く犬耳となびく漆黒の学ランをはおり、犬上小太郎……再び参上!!

 

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