とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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27話・学際前日の一悶着

 ネギはしばらくの間その少年を見つめ続け、

 

「…………………………………………………………」

 

「ん?」

 

「な、なんやネギ?」

 

「……………………………………………あっ、こ、小太郎君じゃないか!! どうしたのこんなところで? 元気してた?」

 

「おま、忘れてたやろ!? 俺のこと絶対忘れてたやろ!?」

 

 ようやく何かを思い出したという顔をして盛大に目を泳がせながら挨拶してくるネギを見て、小太郎は思わず食って掛かった。

 

「おまえはホンマに……ホンマにアレやな!? 俺になんか恨みでもあるんか!?」

 

「いや、関西で僕たちの敵に回った君がそれを言うの……」

 

「んなちっさいこと、いつまでもネチネチ根にもっとるんちゃうわ!」

 

 ちっさいことかな~? と、割と真剣に死にかけた修学旅行を思い出しながら首をかしげるネギを放置し、小太郎は涙を流しながらこぶしを握り締める。

 

「大変やったんやぞ? ホンマ大変やったんやぞっ!!」

 

「いったい何が?」

 

「何がって全部やボケぇ!!」

 

 怒声を上げていきり立つ小太郎は一気呵成に今までの苦労話をしてくれた。

 

「なんや関西でおとなしく捕まっとったらあの白髪のガキがまた現れて『ネギ・スプリングフィールドを暗殺したいんだが力を貸してくれないか?』いいよるし。俺が『コブシ交わした人間をそんな汚い殺し方したないっ』て、それ断ったら変な悪魔のおっさんけしかけてきて半殺しにされて……。それでもおまえに危機知らせようとして何とか子犬に変化して麻帆良にもぐりこんだはいいものの、嵐に巻き込まれてあっさり気絶。目ぇ覚ました時は一般人の千鶴姉に拾われてワンちゃん扱いされとるし、回復がてらに様子見して悪魔襲来を警戒してたはいいものの、いつまでたっても悪魔こーへんしっ!! その間に千鶴ねーちゃんや夏美ねーちゃんに正体ばれてもうてまた一悶着あるし!! 結局魔法使いに保護されて懲役がてらここの生徒になったはイイもののやっぱり悪魔はこーへんしっ!! もうどうなっとんのやこの学園都市はっ!?」

 

 悪魔? 小太郎の言葉に本当に何のことかわからないネギは盛大に首をかしげるが、

 

 いろいろとクラレンスから聞いている犬神は「フンっ」と鼻を鳴らし軽く流し、張本人のクラレンスはいつも通りのポーカーフェイスで沈黙を貫く。そんな犬神たちの態度を見て長い付き合いのマリーは「あっ、こらなんか犬神君たちがしたんやな……」と直感で悟り、ヒメは元より興味がないのかマリーに肩車をされながら世界樹広場を飛んでいた小鳥を「食える?」と言いつつじーっと眺めていた。

 

 当然魔法先生たちも麻帆良結界の外で爵位級悪魔が何者かに粉砕されていたことは知っているので、犬神メンバーズの態度を見てだいたい何が起こったか悟るが、

 

「さて、旧交を温めることはもう済んだかの小太郎君? もうそろそろきみたちに頼む仕事につて話したいのじゃがの?」

 

 誰かが犬神の被害にあうのはもういつものことすぎるので軽く流して、話を進めた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「え~っと、つまりどういうこと?」

 

「クラレンス。今北産業」

 

「学際期間中世界樹魔力めっちゃぱねぇ。

 そのせいで、世界樹周辺に常時惚れ薬魔法発動中。

 このままじゃ生徒の青春やばいから、告白ブレイクして青春ブレイクしようぜ。

 今ここ」

 

「四行やん。しかも本末転倒やし……」

 

「いや、そうなったのはクラレンス殿の説明が悪かっただけじゃしな!?」

 

 クラレンスの説明を聞き、マリーは思わず三白眼になって学園長を睨み付ける。そんなマリーの視線に学園長はあわてた様子で手をブルブルとふるい否定の意を示した。

 

「とにかくじゃ! 学際期間中は世界樹周辺で起こる告白沙汰に警戒をしてほしいのじゃ!! マリー君も嫌じゃろう? もし万が一にも犬神君に冗談交じりの告白をされて、犬神君にガチボレしてしまったら」

 

「魔法先生に魔法生徒のみなさん! 頑張ってこの仕事全うしましょう!! 生徒の青春がかかっとるしな!!」

 

「これは怒るべきところか?」

 

「いえ、当然のことだと思いますけど?」

 

「まぁそうだな。僕もあいつが変な感じになったらツッコミがいなくなって困る」

 

「困るのそんな理由なんですか!?」

 

「だがとりあえず野菜はうちの地下で人に厳しいエコ発電な?」

 

「そして理不尽な八つ当たりされた!?」

 

 ひどいです~。おさきまっくらです~、と悲鳴を上げるネギを無視して、犬神は学園長に肝心な話を持ちかける。

 

「さてクライアント。この依頼の報酬についてですが」

 

「……ボランティアではだめかの」

 

「帰るぞ、安川、野菜、助手の助手、クラレンス」

 

「わぁ!? まったまった!! 冗談!! 冗談じゃから!!」

 

 割と切実に犬神やⅥが出した被害のせいで財政難の麻帆良だったが、近衛門は涙をのんで先ほどの発言を冗談だったことにする。

 

「では、まずは詳しい契約内容のほうを……」

 

 その言葉を聞き即座に戻ってくる犬神の姿に麻帆良の魔法教師たちは若干呆れながら、

 

「ん」

 

 グラサンと髭が特徴的な魔法教師――神多羅木が指をパチンと打ち鳴らす。

 

 瞬間、彼の手元から見えない疾風の刃が飛び出し、虚空にいた何かを切り裂いた!

 

「っ!? 無詠唱!!」

 

「あぁ、そういえば野菜はまだ習得していなかったな。よく見ておけ、ここの教師たち最近はやたら役立たずだったが、魔法の腕だけは超一流だ」

 

「一言余計だぞ、犬神」

 

 男子中等部で歴史教師をしている神多羅木は苦笑を浮かべながら、犬神にいつものように注意をする。

 

「それにしても人払いの結界を抜いてくる生徒がいるとはな? 手ごたえからして機械っぽかったが?」

 

「うちの生徒は優秀なのが多いからね~」

 

「追いましょうか?」

 

「任せる。ブラックリストに載っておる生徒なら適当にわしのところに連れてきてくれ」

 

 了解しました。と学園長の言葉に返答した一人の魔法教師と、二人の魔法生徒がその場から姿を消す。その振る舞いに犬神が言ったようにかなりの手練れだと感じ取ったネギは、感嘆の息を思わず漏らした。

 

 僕が知らないことはまだまだたくさんあるんですね……。と、内心でそうため息をつきながら。

 

 それはともかく、

 

「では皆の者。今日は解散としよう。詳しい警備のシフトはまた追って伝える」

 

「そうですね、ではクライアント」

 

「ん?」

 

「契約内容と報酬の話は、これからあなたの部屋ですることにしましょう」

 

「………………」

 

 近右衛門は犬神に支払う報酬の話を流し損ねた……。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「それにしてもすごいですねこのお祭り……」

 

「毎年毎年派手になっていますね」

 

「麻帆良祭の時は学園都市やゆうても街一つがお祭り騒ぎになるわけやしな。そこいらの学校の学園祭とは規模が違うんよ」

 

 結局クラレンスを伴い交渉に向かって犬神と別れ、ネギ、刹那、マリー、ヒメ、小太郎の五人は学園祭準備の風景を眺めながら各々のクラスへと帰ろうとしていた。

 

 もっとも、この中で唯一の教師であるネギはこのあと一度職員室による必要があるが……。

 

「それにしてもあいつら、犬神のにーちゃんが一流やゆうからどの程度かとおもてたら、ほとんどやったらたいしたことない奴らやで。やっぱり西洋魔法使いはあかんな~」

 

「小太郎君は相変わらずバトルジャンキー治ってないんだね……」

 

 師匠と気が合いそうだな~と、内心であの目立ちたがりな怪盗の顔を思い出しつつ、ネギはため息交じりに学園祭期間中の予定表を開く。

 

「それにしてもどうしよう……予定が」

 

「あぁ、そういえばネギ先生クラスの人たちともけっこう約束していましたっけ?」

 

「律儀やな~ネギ君は。去年の高畑先生なんて広域指導員の仕事で忙しいから、時間が空いたらふらっとやってくる程度やったで?」

 

 マリーと刹那はネギの態度に感心したような雰囲気で話しかけながら、ネギが開いた予定表を見る。

 

「「……………………………」」

 

 そして、そのほとんどが女子との予定と埋まっているのを見た瞬間何とも言えない顔になって、

 

「たらし?」

 

「いえ、女子中学の先生なのですからある程度は仕方ないかと……」

 

「いや、でも割とネギ君狙っている奴らがおるのがたち悪いな」

 

「委員長さんとか大丈夫でしょうか?」

 

 ぼそぼそとかなり失礼な会話をするマリーと刹那に、ネギは思わずズドンと落ち込み、小太郎は鼻を鳴らして吐き捨てた。

 

「女との約束ばっかりやないか。見損なうでほんま」

 

「なっ!? 仕方ないじゃないか!! 僕女子中学の先生なんだから!!」

 

 そんな小太郎にいい加減限界が来ていたネギが食ってかかり、そのまま子供の喧嘩へと発展しかけた時だった。

 

 ドカッ!! という、轟音とともに一人のローブを着た少女がネギたちのすぐ近くに立っていた屋台に突っ込んできた!!

 

「なっ!?」

 

「なんや!?」

 

 驚くネギと小太郎。しかし、刹那とマリーはフードから覗いた顔でその人物がだれなのかいち早く察したようで、小さく首をかしげながら疑問をぶつける。

 

「あれ? (チャオ)? なにしとんのこんなとこで? 工学研のロボットでも暴走したん?」

 

「それ割とシャレにならないから、冗談でも言うのはやめて欲しいネ」

 

 マリーが声をかけたとおりの顔が、少女がフードを取り払うことで表れるのを見てネギも驚きの声を上げた。

 

「超さん!?」

 

「やぁネギ坊主に、刹那さんマリー。たすかたネ。ちょと助けて欲しいネ。怪しい奴らに追われてるよ!!」

 

「えぇ!?」

 

 超が信じられない言葉を告げると同時に、ネギたちの周りに漆黒の影たちがおりたった!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「お?」

 

「ん? どうしたんマゾミちゃん」

 

 屋台からタコ焼きを買ってきた少年は、突然空を見上げて声を漏らした妹に首をかしげながらその視線の先へと目を向ける。

 

「どうもクライアントがピンチっぽいわね」

 

「え? ほな助けたほうがええんかいな?」

 

「いや、それがどうも」

 

 瞬間、二人のそばに立っていた鉄製の手すりが衝撃とともに大きくゆがむ。

 

 それを魔法や気による高速移動の反動によるものだと瞬時に看破した二人は、常人では見えないほどの速度で逃走・追跡をしている集団にしっかりと視線を合わせた。

 

「どうもヒメが一緒にいるみたい。ここで変な接触は控えたほうがよさそうよ?」

 

「まじで? 結局残ったんやな~ヒメ」

 

 二人は結構のんきな声でそんな相談をかわしつつ、仲良くタコ焼きを半分で分けた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 ガンガンガン! と、いくつかの鉄製の手すりや、街灯ををゆがめてしまうのを申し訳なく思いながら、ネギは自分の後ろにピタリと張り付き追跡の手を止めない白い仮面をかぶった黒い影たち……小太郎が言うには自分の狗神と同じ使い魔の類とのこと……を見て、舌打ちを漏らした。

 

 使い魔のくせにかなり早い。軽々と自動車を追い抜けるほどの速度で走る自分たちに追従してきている。おそらくこの使い魔の使い手はかなりの手練れだと思われた。

 

「このまま撒くのは難しそうですね」

 

「どうする? ネギ。このままじゃジリビン」

 

 超をかかえて疾走を続ける刹那と、マリーに肩車されながら時々襲い掛かってくる影たちを撃ち落としていたヒメがいいかげんに迎撃することを勧めてくる。

 

「仕方ない。やるよ」

 

「おっしゃまっとったで!!」

 

 ネギはほんの一瞬葛藤するような表情を見せたが、最後に覚悟を決めたのか目つきを鋭くしつつ杖を構える。それを見た小太郎は歓喜の声を上げ自分の手に気を装填した。

 

「うらっ!」

 

 そして気合の一喝とともに、気が装填されたコブシで使い魔を力任せに殴りつける。

 

 その一撃によってきれいに上半身が消し飛ぶ使い魔。「すごい」と、その光景に小太郎の強さを改めて再確認しつつネギは呪文の詠唱を開始する。

 

「「「「!?」」」」

 

 使い魔たちもそれに気付いたのか、とたんに超へと向けていた狙いを、ネギへと変え襲い掛かってくる。砲台役をつぶすのは戦闘の基礎だ。だが、

 

「なんでやね~ん!!」

 

「斬空閃!!」

 

 マリーの豪気功で強化されたアーティファクト(はりせん)と、刹那の神鳴流剣技が使い魔たちへと襲い掛かり、ネギに襲いかかろうとしていた使い魔たちを殲滅した。

 

 だが敵もさる者。伏兵でも仕込まれていたのかネギの足元に落ちた影から一体の使い魔が姿を現し、

 

「巽・開。帝国式攻撃気弾《薄刃蜉蝣(ウスバカゲロウ)》」

 

 マリーと離れてネギの護衛に回っていたヒメの一撃によって、役目を果たすことなく消え去った。

 

 そして、ネギはその間に呪文の詠唱を締めくくり、

 

『って、兄貴やべぇ!! こんな真昼間に魔法を使うのは……』

 

「大丈夫だよカモ君」

 

 マリーの胸元から姿を現したカモの注意の声が飛ぶが、ネギは自信にあふれた声とともに魔力を放つ!

 

「魔法の射手・連弾・光の17矢!!」

 

「って、どっからでてきとんのやぁああああああああ!!」

 

『メメタァ!?』

 

 解き放たれた閃光の矢が瞬く間に空をかけ漆黒の使い魔たちとキレたマリーによって天高く投げられたカモを蹂躙する。

 

 割とシャレにならない悲鳴をカモが上げていた気がするが、セクハラしたことは確かなのでネギは黙って手を合わせるだけでカモの追悼を終わらせた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 ポンポンと上がる花火にまぎれて、自分の使い魔を打ち果たした魔法が爆発する。その光景を見てなかなかうまい策を考えるとほぞを噛みながら、使い魔の行使手は念話通信で仲間に先ほどの光景を伝えた。

 

『今のは』

 

『魔法の射手!?』

 

『どうやら敵にも西洋魔法使いがいるようだね……』

 

『17体の使い魔が一瞬でやられたところをみるとかなりの手だれのようですが?』

 

『ふむ。要注意生徒の補導だけだと思ったが、結構厄介なことになってきたなこれは』

 

 上司が漏らした困惑の声に、行使手は小さく頷きながらあらかじめ待機させておいた予備選力の使い魔四体に新しい指示を出しておく。そして、

 

『だが、だからと言って諦めるわけにもいかないからね。とりあえずもう一度仕掛けて様子を見るよ。遠距離攻撃シフトに切り替えてくれ。前衛は私と貴音君の使い魔。佐倉君は様子を見つつできそうなら捕縛魔法を頼む』

 

『『はい』』

 

 おおよそ予想通りの指示が出たのを聞き、使い魔四体は無言で行動を開始する。

 

 対象を速やかに捕縛するために。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「あいや~たすかたネ。恩にきるよネギ坊主」

 

 追跡を行っていた使い魔を撃退したことにより余裕が生まれたネギパーティーたちはとりあえず超に事情を聴くため小さな裏路地へと姿を隠していた。

 

「そんなことより超さん、いったい誰に追われているんですか? 学園結界のおかげでこの学園にはめったに敵対勢力は入ってこないのに」

 

「え、えっとそれは~」

 

 ネギの質問に若干目を泳がせる超。その態度を不審に思ったネギがさらに質問をぶつけようとしたとき、

 

「しっ。ネギ先生。どうやら敵に捕捉されたようです。手だれの気配が三つほど、こちらに近づいてきます」

 

 刹那が何かに気付いた様子でネギの質問を中断させる。どうやら直感的に敵の接近を悟ったようだ(後ろでマリーが「ニュータイプ!?」と驚いているが今は放っておく)。

 

 そのあとに続くように暗殺者として鍛えられた感覚を持つヒメと、人間とは比べ物にならない鋭さをもつ、獣の五感の小太郎が補足した。

 

「距離は右から50・80・70や」

 

「足音からして二人は中高生程度の女性。もう一人はかなり鍛えられている成人男性。足運びからして男性のほうはたぶん近接型魔法使い。あと、空気の流れから足音を立てていない人型の何かが四体。たぶんさっきの使い魔と同じ型の使い魔」

 

「もうあんたらそれで飯食っていけるんとちゃうん……」

 

 割と人外じみたスペックを披露する二人にあきれるマリーだったが、今のネギたちのとってはありがたい情報だ。

 

 とりあえず敵が近づいてくるというのなら、

 

「先手必勝。雑踏にまぎれて瞬時に決めるよ」

 

「おっしゃ、任せとけ」

 

「近接型のほうは私に」

 

「屋根の上。念のため私も登る」

 

「マリーさんは超さんの護衛をお願いします」

 

「了解」

 

 瞬く間に役割分担を終えた4人はこちらに向かってくる敵と相対するために行動を開始する。

 

 左右の壁を交互にけりつけ鮮やかに屋根へと登る刹那と、極限まで気配を殺し一気に壁を駆け上がるヒメ。

 

 小太郎はぎりぎりまで姿勢を低く保ちつつ疾走し、人ごみの中へとまぎれ、逆にネギは天高く舞い踊り敵の死角へと入りこむ。そして、

 

「『戦いの歌』!!」

 

 身体強化を瞬時に済ませると同時に、

 

「っ!?」

 

 使い魔を四体が離れていき、無防備になっている女性魔法使いに向かって、犬神は知らない最近無詠唱で行えるようになった魔法を発動させる!

 

「『風花・武装解除』!」

 

「ちっ!」

 

 杖を弾き飛ばされ舌打ちを漏らす女性。しかし、ネギがかなり加減をしたためか他の武器ははじかれていない(さすがに公衆の面前でいきなり裸にするのははばかられたのだろう)。ならばとばかりにポケットに手を突っ込み予備の杖を取り出した彼女は、同じように向詠唱で発動できる魔法を、ネギにお見舞いしようとした。

 

 ところで、

 

「え?」

 

「なっ!?」

 

 自分たちが戦っているのが、先ほど世界樹広場であった魔法先生と生徒だと分かりあわてて詠唱を中断し、唖然とした顔で互いを見つめた。

 

 当然その光景はほかの場所でも展開されており、

 

「って、女!? しかも、さっき世界樹広場におったやつやないか!?」

 

「いたたたたたた……」

 

 小太郎に思いっきり投げられて若干べそをかいている少女と、

 

「ん!?」

 

「え、あれ?」

 

「さっきいた……ガングロ」

 

「ガンドルフィーニだ……」

 

 刹那とヒメに挟まれ眉根を険しく寄せた黒人男性は大きくため息をついた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 時は移ろい、学園長室。

 

「ふぉ? ガンドルフィーニ先生かの? どうじゃった? 首尾のほうは」

 

『それが、ネギ君が途中で乱入してきまして……。要注意生徒のほうは彼の処断に任せることになりました』

 

「ふぉ? ネギ君が首を突っ込んでくるということは……あぁ、今回も超鈴音君だったか。よかろう、報告書はのちほどネギ君のほうに提出してもらうとしよう。手間をかけたのガンドルフィーニ君」

 

『いえいえ。私も将来優秀な魔法使いの実力を見れてよかったですよ。では』

 

 仕事を取られたというのにどことなくすがすがしい笑みで念話通信を切ったガンドルフィーニに苦笑を浮かべつつ、近衛門は先ほど契約のおまけとして犬神が提出してきた資料を一瞥した。

 

 そこには二人の双子の写真と、そのプロフィールが乗っており、

 

「……旧・《帝国》最高の暗殺者《処刑人》ジルドレを殺した新進気鋭の若手暗殺者。SMブラザーズか」

 

 二人とも麻帆良祭へと侵入してきており、現在はおとなしく露天巡りをしているそうだが……。

 

「今年の学園祭は……どうやら厄介なことになりそうじゃの」

 

 写真の向こうから不敵に微笑む二人の写真を見て、近右衛門は嵐の到来を感じつつあった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 その頃のネギは、

 

「にしてもこれ何なんでしょうか?」

 

「御守りみたいなもんやって超言ってたけど」

 

「うぅ……嫌な思い出しか思い出せません」

 

「あの時は頭すごい勢いでへこみましたからね……」

 

「どうやったらお守りとそんなスプラッタ現象が結びつくんか、わからへんねんけど?」

 

 超に渡された懐中時計のようなお守りに戦慄していたりした……。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 その頃の超は、

 

「で、超さん。どうでしたか? ネギ先生は」

 

「思った以上にいい奴だたネ……。仲間に引き込めればいいんだが」

 

 巨大な飛行船の上に乗る、五人の人影が麻帆良祭を見下ろしている。

 

 まがった特性金属バットを持つ金髪の少年と、黒く長い髪をなびかせる美しい少女。眼鏡をかけたマッドサイエンティストに、それに作られたアンドロイド。

 

 そして、

 

「さて、始めるヨ。ここから世界を変えていく」

 

 自称・未来から来た火星人。

 

 彼らがこの麻帆良祭に嵐を呼びこむ張本人たちになるとは、麻帆良の防衛をつかさどる魔法使いたちは知らなかった。

 

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