とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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31話・なんか最近僕……影が薄い気がするんですが?

 激闘に次ぐ激闘で(まぁ、いまはとある選手の自主脱落によってかなり冷え込んでいるが)かつてないほどの熱気に包まれる麻帆良武闘大会。

 

 そのチケットを握って会場へひた走る二人の少年がいた。

 

「くそっ……犬神君のやつ。俺かて大会でたかったのに!」

 

「明らかに事前調査をおこたった君のミスだろうに……いつまで文句言っているんだい?」

 

「あほっ!! 俺のスタイルはな『調査なんて不要! すべては力で押しとおる』なんや!!」

 

「だったら力だけじゃどうにもならないことが分かっていい経験になったね」

 

 片方は怪盗スタイルではなく学生スタイルのスパルタンⅥこと六重トウジ。もう一人は三白眼になって後悔をいつまでもやめないトウジを睨みつける猫谷コースケだった。

 

 実はこの二人も本当なら麻帆良武闘大会へと参加する予定だったのだが、『お前らと戦うとなると無制限一本勝負でめんどくさい』と考えた犬神の画策により、大会予選が行われる際のクラスの出し物の当番を押し付けられてしまったのだ……。

 

 先ほど言ったように事前調査を怠ったⅥはあっさりとだまされ、猫谷は騙されなかったがクラレンスの分身に足止めを食らってしまいあえなく不戦敗。こうして男子中等部最強と目される二人はずいぶんと残念な事情で予選突破を果たせなかった……。

 

「とはいえ、このカードを見逃すのは俺としても我慢できひんしな!」

 

「僕もちょっとこの大会には用があってね……。この期間中なら師匠が下から出てくるはずだから、十中八九参加していると思うんだけどね……」

 

 二人はそう言いながら麻帆良武闘大会の会場へと入りこんだ。そして、次の試合の選手たちを告げる電子掲示板を見てⅥは不敵な笑みを、コースケは「名前ないんだけど?」と、おそらく偽名を使っていると思われる師匠をひきつった笑みを浮かべながら必死に探す。

 

 電子掲示板には勝ち残った人の名前が記されたトーナメント票。その下に記された次の試合のマッチングの名前は、

 

 ネギ・スプリングフィールド VS 高畑・T・タカミチ

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 戦いの舞台へと登ったネギは、周囲からの爆音のような歓声をきいた。

 

 もりあがっているな~と、はたから見ればのんきな感想を抱くネギ。しかし、彼の内心はそんなに余裕があるものではなかった。

 

「さぁ、ネギくん……始めようか」

 

 なぜなら眼前でポケットに両手を突っ込んでいるタカミチが、やたらとやる気溢れる声でそう言ってきたから……。

 

 いやいやタカミチ? なに? なんでそんなに本気なの? え? 僕何か悪いことした? と、割と本気でおびえるネギ……。犬神と暮らすうちに絶対強者には無条件でおびえてしまうということを細胞単位で刻みつけられてしまっていた……。

 

 そんな哀れな少年ネギの内心などつゆ知らず、タカミチは穏やかな笑みを浮かべながら一言。

 

「仮にも六重君に鍛えられたんだ。奮戦を期待するよ」

 

 瞬間、解説を終えた朝倉が元気よく「始め!!」と手を振りおろした。

 

 瞬間、ネギの背筋につららでも突っ込まれたかのような悪寒がほとばしった。

 

 そして同時に彼の耳がとらえる、何かが飛来する空気を切り裂く音。ネギはその音の方向に向かってⅥとともに鍛え上げた直蹴りをたたきこむ。

 

だが、

 

「っ!? 押し返される……!?」

 

 見えない何かはしっかりとネギの蹴りに迎撃されながらも、その威力を殺すことなくネギのけりを弾き飛ばした。あわてて瞬動し回避するネギ。

 

 しかし、ネギが瞬動を行った先にはまるで予想していたといわんばかりに、すでに不可視の攻撃が飛来している。

 

「こんどこそっ!」

 

 だが、ネギも伊達にⅥに鍛えられていたわけではなかった。瞬動に使った魔力の残り香を強制的にかき集め、無詠唱を発動。雷属性の魔法の射手を両足に装填し、

 

雷纏前撃(フードゥル・シャッセフロンタル)!!」

 

 サバットの基礎技。大したこともない前蹴りだ。だがしかし、そこにはふんだんな魔力を注ぎこまれた雷の射手が装填されており威力は先ほどのけりの比ではない。

 

 こんどこそ、不可視の攻撃は消し飛ばされた。

 

 そしてその瞬間、

 

「戦いの歌!!」

 

 ネギの遅延呪文が発動し、ネギの全身をつつみこんだ。

 

 それと同時に足をおろしたネギは瞬動を開始。タカミチの眼前に出現し、

 

「驚いた、まさかここまで成長しているとは」

 

 だがまだ遅い、と、ネギに向かって再び不可視の攻撃が襲いかかった。だがそれはネギも織り込み済み、

 

「多連瞬動!!」

 

「なっ!?」

 

 一度目の瞬動で鮮やかに天を舞い不可視の攻撃をかわすネギ。そして二度目に行った虚空瞬動で天を仰いだタカミチの死角に回り込む!

 

雷纏旋撃(フードゥル・フゥェテ)!!」

 

 当然死角に回り込まれたため反応が遅れてしまうタカミチ、そのすきを狙った雷光を伴うまわし蹴りがタカミチの懐に突き刺さる!!

 

 しかし、

 

「いや……さすがに驚いた。あれほどおびえていたのに、よくもまぁこれだけの動きができるものだ」

 

 さすがはナギさんの息子だね。と、嬉しそうにほほ笑むタカミチとは対照的にネギは盛大に顔をひきつらせていて、

 

「そ、そういうタカミチは何で無事なの?」

 

 そう、タカミチはあれほどの蹴りをくらってな小揺るぎ一つしていなかったから……。

 

「ん? なに、人よりちょっと頑丈なだけさ」

 

 そううそぶくタカミチの体からは、魔力とも気ともとることができないあいまいで――しかし膨大な力があふれ出していた。タカミチの両手はすでにポケットから出され、胸の前であわされている。

 

 咸卦法――究極技法と呼ばれる、最強の身体強化。

 

「さぁて、第二ラウンドだ。初撃は手加減してあげようネギ君。よけろよ?」

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「いや~。再び凄まじい攻防が展開されていますね! 本当に解説になってよかった!」

 

「ところで豪徳寺さん。先ほどタカミチ先生が使っていたあれはいったい?」

 

 タカミチの不可視の攻撃を軽やかにかわすネギを見て興奮した様子の豪徳寺に、茶々丸は「仕事しろよ」と言わんばかりの質問をぶつけた。

 

 だが、その質問に答えたのは豪徳寺ではなく、

 

「居合拳。無音拳とも呼ばれる超高速のパンチやな」

 

 横にできていた人込みをかき分け現れたⅥだった。

 

「六重君!? こんなところで何しとんの!?」

 

「何だマリー? 知り合いか?」

 

 当然そんな突然の闖入者に驚きを漏らす観客たち。一番近くにいた顔見知りであるマリーがツッコミを入れるが、Ⅵは気にしないとばかりに解説を始めた。

 

「居合拳いうんは要するにズボンのポケットを刀の鞘に見立てた抜刀術や。そのため弾丸のような速さで拳打を打つことが可能になり、その勢いで敵に向かって拳圧を飛ばすことができる」

 

 そこで六重は言葉を切り、

 

「厄介な技やで……。相手が飛ばしとるんは遠当てみたいな気とは違う、単純な物理現象である拳圧。感知が非常に難しいうえにかなりの速度で飛んで来よる。見切るのは至難の技やで」

 

 その点俺の弟子はよーやってるな。と、Ⅵが自慢げに語った時だった。

 

 ゴッ!! という衝撃とともに、会場一帯が揺れ動き、

 

「「「「「は?」」」」」

 

 タカミチとネギの戦いを見ていた観客たちは、舞台で起こった余りの光景に思わず絶句する。

 

 陥没したのだ。まるで巨大な隕石の直撃でも食らったかのように舞台の床に、人間二人分ぐらいの巨大なクレーターができていた。

 

 その近くでは、ネギがへたれこんでいて……。

 

「豪殺・居合拳!!」

 

 だらだら冷や汗を流しながら、以前犬神が見せたあの対艦砲撃クラスの拳圧を思い出した。

 

 

 

………†…†…………†…†…

 

 

 

 ドンドンドンっ!! 背後から迫る衝撃を足音に、ネギは必死に瞬動を繰り返し、回避を続ける。

 

 その背後に回るのは、ネギを追いかけるように斜め下に向かっての攻撃を繰り返したタカミチ。

 

「もうやめて!? 龍宮神社の地盤のライフはもう0よ!?」

 

「まだだ、うちの神社はまだ終わらんよ!」

 

「たつみー!? いったいどこからわいて出たの!?」

 

 なんてやり取りが朝倉といつの間にか舞台に巫女装束になって舞台に上がっていた龍宮が交わしていたが、かまっている余裕はネギにはなかった。

 

「どうしたネギ君? 逃げてばかりでは勝てはしないぞ!!」

 

「タカミチどうしたの!? ホント今悪役にしか見えないよ!?」

 

「僕は気づいたんだネギ君……あぁ、あれだけはしゃいでも大丈夫なのか、と」

 

「絶対だれか参考にしちゃいけない人参考にしちゃったよね!? だれ!? だれなの!? 犬神さん!? それともⅥ師匠!?」 

 

 なんかタカミチがしばらく会わない間に歪んでしまっている気がしないでもないネギ……。そういえば最近前髪の生え際がだんだん後退してきたような?

 

 ネギが現実逃避交じりにそう考えた時だった、

 

 ゴッッッ!!

 

「なにか言ったかなネギ君?」

 

「な、何も言っていないですサー!!」

 

 なんか居合拳の威力が三割増しあがった気がした……。

 

 

 

「あ、あかんってエヴァちゃん!? あれネギ君死んでまう!? 死んでまうって!?」

 

 当然あの威力を知っているマリーは慌てふためき、選手控室へと突撃。この試合を止めてくれそうな(犬神は「かまわん、()れっ」とヒメに言った前科があるので除外)エヴァの元へと走ったのだが、

 

「安心しろマリー。友人の息子と戦えてずいぶんとはしゃいでいるようだが、タカミチもきちんと手加減している。その証拠に見ろ、あいつはいまだに横方向にあの拳打を打っていない」

 

「どういうこと?」

 

「言葉そのままの意味だ安川」

 

 解説をしてくれたエヴァには悪いが、マリーの頭は割と残念な感じだった……。そんなマリーにいつの間にか補足説明を入れてくれたのは、

 

「って、犬神君!?」

 

「高畑教諭は観客に気を使って斜め下のうちおろしでしか居合拳を使っていないんだよ。万が一にも観客に被害が出ないようにな。つまり、それだけの気遣いができる程度の冷静さは残しているというわけだ」

 

「な、なるほど!!」

 

 ほな安心やね! とマリーが一心地着いた瞬間、

 

「「まぁ、といっても威力が落ちているわけではないから食らったら即死だがな」」

 

「全然あかんやないか!?」

 

 二人が同時に告げた真実に、マリーは思わずツッコミを入れた。

 

 

 

 当然舞台を飛び回っている間にそんな話を聞いたネギはたまったものじゃない。顔が先ほどよりもさらにひきつっており、もうピカソの絵画に出てきそうな感じまで歪んでいた。

 

「ゲルニカっ!?」

 

「こわっ!?」

 

 その顔を見て思わずビビるタカミチだが攻撃の手は緩めない。まるで大砲のような轟音とともに射出される巨大拳圧。ネギは再び紙一重でかわし、瞬動を使い距離を取ろうとするが、

 

「ぐっ!?」

 

 突如飛来した拳大の拳圧に打ちすえられ、思わず瞬動を止めてしまった。

 

「しまった!?」

 

 気付いた時にはもう遅い。まるで弾幕のような拳大の居合拳の連打がネギの体に叩き込まれる。

 

「ぐぁっ!?」

 

「ネギ君!?」

 

 吹き飛ぶネギに朝倉の悲鳴が聞こえる。そんな生徒の心配そうな声に、ネギは必死に足に力を込め何とか場外を免れるが、

 

「終わりだよ、ネギ君」

 

 瞬動を使いネギの眼前に現れたタカミチから、シュッという衣擦れの音が響き渡り、

 

 ゴウッ!! と、空気を切り裂き、不可視の砲弾がネギの体を打ちすえた。

 

「がぁ!?」

 

 会場にたたきつけられ、クレーターに埋まるネギ。

 

 呼吸とともに意識が一瞬だけ飛び、ネギの体から活力を奪う。

 

 ネギはもう……立ち上がれなかった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 タカミチは彼の元教え子である朝倉がタカミチを睨みつけながら勝敗判定を下そうとしているのを黙ってみていた。

 

 初めはネギ君がどの程度成長したのか見たいだけだった。

 

 だが、ネギは変わってしまっていた。

 

 元気ではあった、楽しそうではあった……。だがしかし、彼は致命的なものを失っていた。

 

 それは、強者には向かう牙と、上位のものと戦う時には必須な折れない心。

 

 父を捜す。その一念を胸に一心に強さを追求していた少年の姿はそこにはなく、そこには強い人間の暴力におびえる一人の少年が残されていた。

 

 そう……犬神は教育を間違えいていた。

 

 確かに自身の強さを知るのは大切なことだ。負けるとわかっている戦いに撤退する勇気も時には必要だろう。

 

 だが、今のネギ君はそれすらできていなかった。ただおびえ、勝てないとわかるとすぐに諦め、すぐに絶望した。

 

 あまりに絶対的すぎる犬神の存在がまだ発展途上のネギの「もっと上へ」という向上心を摘み取ってしまったのだ。

 

 犬神の言ったとおりだった……と、タカミチは試合前待合室で犬神が話した自分の過ちを思い出していた。

 

『僕は少し厳しくしすぎた。もとよりああいった奴を育てるのにふさわしい人格をしていないことは承知の上だったが、それは言い訳にならん。プロとして本当に反省している』

 

 ネギを正しく導けなかったことに、ネギを正しく育てられなかったことに、あの神をも恐れぬ傲岸不遜名少年が初めてタカミチに頭を下げた。

 

『だが今更僕はこのスタイルを変えるつもりはない。だからこそタカミチ……お前に協力を申し込みたい』

 

 そして彼はそう告げると、この試合でタカミチがネギに対してするべきことを教えてくれた。

 

 タカミチはその言葉を思い出しほんの少し苦笑を浮かべる。

 

 犬神君……君は自分のことをけなしていたが、僕は思うよ。

 

 君は立派な、教育者だ……と。

 

「ネギ君……この程度かい?」

 

 そう思いながら、タカミチは倒れ伏したまま動こうとしないネギに話しかけた。

 

「君が目指した父という壁は、君がたどり着きたい父親という男の影は、こんなところで敗れてしまってもいいものだったのかい?」

 

 瞬間、ネギの体がピクリと動き、

 

「っああああああああああああああああああああああ!!」

 

 普段はめったに上げない怒声交じりの絶叫を上げ、軽やかに立ち上がった。

 

 驚く朝倉に、満足げなタカミチ。

 

 立ち上がったネギはそんな彼らを見て、一言。

 

「タカミチ……結着をつけよう」

 

 今まで見たことがないほど、精悍な顔つきをしてそう宣言した!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 この程度なのか?

 

 タカミチにそう問われて、ネギは内心で必死に首を振った。

 

 違う……でも仕方がないじゃないか。タカミチは本国格付けではAAAの猛者。もとより格なんてつけることすらおこがましい新米魔法使いの自分では勝てるわけがないじゃないか。

 

 犬神との生活で身にしみた、絶対強者に対する無意識の服従。ネギはその弱気な自分に気づかず……まだ動けるはずの体を黙って動かさないでいた。だが、

 

「君が目指した父という壁は、君がたどり着きたい父親という男の影は、こんなところで敗れてしまってもいいものだったのかい?」

 

 タカミチがもたらしたその言葉を聞き、ネギは思わず思い出した。

 

 あの雪の日……悪魔たちを、杖を片手に撃退した父の姿を。

 

 あるいは投げ、あるいは殴り、あるいは焼き、あるいは滅した。圧倒的な魔法使い――史上最強と謳われた、彼の父の背中を。

 

 その時だった。ネギの体がピクリと動く。

 

 そのことにネギは驚いた。すっかり諦め癖がついたと思っていた彼の体が、父親のことを思い出した瞬間に『まだ戦える』と言わんばかりに動いたのだ。

 

 ネギはそのことに苦笑を浮かべ、そのことにあきれ……そして、まだ動いてくれる体に感謝した。

 

 もう脱力は抜けている。体に残ったダメージはすごいが、だが、

 

「っああああああああああああああああああああああ!!」

 

 足を動かし、跳ね上がるように立ち上がったネギの体は、

 

「タカミチ……」

 

 今までにないほどに、

 

「結着をつけよう」

 

 絶好調だ。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 まずはじめに起こった変化に気づいたのは、彼の修行にいつも付き合っていたⅥだった。

 

「ん? なんや?」

 

 辺り一帯に焦げ臭いにおいが漂い始めたのに気付いた彼は、辺り一帯を見回し確認をして、

 

「なっ!?」

 

 ネギの両足が、赤く発熱していることに気付いた。

 

「なんや、あれは!?」

 

 

 

 対して、全く驚いていないのは選手席に控えていたエヴァのほうだった。

 

「ふははははははは! よくやったボーヤ!! 修業の成果が表れたらしいな!!」

 

「修業?」

 

「あぁ、修学旅行から帰ってから定期的に魔法の面倒を見てやっていたんだよ。お前たちでは魔法についてはそれほど学べないからとな」

 

「ちょ、きーてへんねんけど!?」

 

 何やら重要なことを軽々と流されていたと知ったマリーがあわてて事情を聞こうと食ってかかるが、

 

「なんか犬神にひと泡吹かせてやりたかったらしいぞ?」

 

「ほう……」

 

 エヴァのその言葉に反応した犬神がぞっとするような声音でそう漏らすのを聞き、思わず口を閉じてしまう。

 

 凍りつくマリーとエヴァをしり目に、犬神は温度を感じさせない声で呟きを洩らした。

 

「なるほどなるほど、最近定期的にいなくなると思ったらそれが原因か。どうやら後で話を聞く必要がありそうだな……野菜ぃ……」

 

 この瞬間、ネギの命日が決まったとエヴァとマリーは悟ったという……。

 

 

 

 そんな意外なところで自分の命が風前のともしびになっていることなどつゆ知らず、ネギは着実に自身の両足に魔力をチャージしていた。

 

 雷精7:風精3の割合で込められた両足は、雷が放つ熱によって赤く発熱していく。

 

「ネギ君……それは」

 

「エヴァンジェリンさんに教えてもらったんだ。これが僕の全力全壊!!」

 

 そう言ってネギは駈け出す。瞬動を行うと同時に漏れ出す雷光と膨大な熱量。それが舞台を焼き、ネギが駆け抜けた後に深紅の炎の道を作り出す、

 

悪魔風脚(ディアブル・ジャンブ)!!」

 

「アウトォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」というマリーの悲鳴が聞こえた気がしたが多分気のせいと割り切る。今はそれよりタカミチだ!

 

 ネギはそう言い聞かせ、攻撃動作に入ったタカミチに向かって一直線に駆け抜けた!

 

悪魔・飛翔撃(アンフェール・シャッセソテ)!!」

 

 飛び上がり、強力なけりを放つネギ。

 

「ライダーキック……やと!?」といつの間にか観客席にいた小太郎が目を輝かせているのが見えたが、とりあえず無視!

 

しかし、攻撃の発動はタカミチのほうが早い!

 

「豪殺・居合拳!」

 

 しかし、ネギの攻撃が到達する前にタカミチの攻撃が発動した。

 

 轟音を立て、唸りを上げ、再びネギに襲いかかる対空ミサイルのようなタカミチの攻撃。 ネギはそれを、

 

「うわぁあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 真っ向から迎え撃った!

 

 空中で激突するネギと拳圧。それは一瞬の拮抗を見せたが、

 

「っ!?」

 

 ネギの蹴りが、タカミチの拳圧を食い破りタカミチの元へと襲いかかった!

 

 着弾! そして轟音!!

 

 今度こそ土台が真っ二つになった舞台が音を立てて崩れさり、見ていた麻帆良土木研究会が号泣する。

 

 そんな中、爆音と同時に上がった土煙の中から出てきたのは、

 

「しょ、勝者! ネギ先生!! ネギ先生が勝ちました!!」

 

 埃だらけになりながらもしっかりと解説の仕事を全うした朝倉と、ぼろぼろになりながらも嬉しそうなネギ。そして、どこか満足げな表情をして舞台上に倒れているタカミチだった。

 

「う、「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」

 

 熱いバトルを制したネギに、観客たちから惜しみない拍手が送られる。

 

 そんななか、解説の仕事を思い出した豪徳寺に対し茶々丸が質問をした、

 

「先ほどの勝負、いったい何がネギ先生の勝因だったと思われますか? 豪徳寺さん」

 

そうですね~と、豪徳寺はしばらく考えたが、

 

「ライダーキックは少年のロマンですから。ここで負けるわけがないでしょう」

 

 この意味不明な解説に、なぜか多くの男子生徒が首肯を示したという……。

 

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