とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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閑話・第四次図書館島戦争

 麻帆良学園都市の特徴的な施設の一つである図書館島。

 

 そこには戦前に集められた古今東西の古書・貴書・珍書が集められているとされている、国会図書館にも匹敵する巨大図書館。

 

 だがそれは実は表向きの話。

 

 図書館島のさらに深いところでは、表には出せない魔がかかわる書物――いわゆる魔導書が収蔵されているのだ。

 

 その魔導書たちを防衛するため。そして、一般人が誤ってそんな危険な書物が収蔵されている場所に迷い込まないようにするために、図書館島には危険なトラップの群れが幾重にも設置され、人々の進入を拒んでいた。

 

 そんな危険な図書館島最深部を、一人の少年が駆け抜けていた。

 

 漆黒の体に張りつくような特徴的な衣に、まるで人の骸骨を模したかのような不気味な仮面をまるで祭りのお面のように斜めにかぶったその少年は、図書館島の罠たちを鮮やかにかわし、ただ一直線に目的へと向かって駆け抜ける。

 

 少年の脳裏に浮かぶのは、数時間前にかわした自分の依頼主との会話。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 その人物は明るくライトアップされた世界樹広場にたたずみ、明るい街灯に照らされた麻帆良学園都市を見下ろしていた。

 

「きたか……。さて、来てもらって早速だが、君には図書館島へと向かってもらう」

 

「というと?」

 

 できるだけ気配を殺して背後に立ったにもかかわらず、あっさりと自分の接近を察知したその男に少年は不敵な笑みを浮かべながら、依頼者の真意を問う。

 

「君ならあの図書館島の要塞のようなトラップ群もおそるるに足りないだろう?」

 

「くくっ……ええんか? 確か麻帆良学園都市とは主従関係を結んでいたはずやけど?」

 

 少年の問いに今度は男が不敵な笑みを浮かべた。

 

 男はクリーム色のスーツの胸ポケットから煙草を取り出し、火を付け口に咥える。それと同時にメガネを押し上げ位置を直し、

 

「それは考慮しなくていい。速やかに『メルキセデクの書』を簒奪せよ。たとえあの少年と戦うことになっても、恐れる必要はない」

 

「あの英雄に匹敵するあいつを恐れる必要はないっていうとはな……」

 

 あんたホンマに最高やで。と、少年は依頼主にそれだけ告げて消える。

 

 だから少年は気付かなかった。男――高畑・T・タカミチの口元に凶悪な笑みが浮かんでいることに。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 図書館島最深部へと少年が到達して数時間後。少年はとうとう目的のものを見つける。

 

 ガラスケースに封じられ飾られた強大な力を持つ魔導書。

 

 しかし、その周囲には、

 

「ふん。ここにきて魔法結界か」

 

 四方に配置された巨大な宝石が設置された四つの台座。さらに中央にある魔導書を飾る台座の前には、結界の最終的な起点となる真紅の宝石。

 

 それらすべてが圧倒的な魔力を放っており、常人なら近づくだけで気を失いかねない威圧感を発している。だが、

 

「ふん。ちゃっちいしかけやな図書館島!」

 

 この程度で、このハサン・シックースを止められるとおもたんか!

 

 少年は内心でそう嗤うと、駆け抜けていた巨大な書棚から跳躍! 一気に結界の上空へと躍り出た!

 

 それと同時に彼の右手から何かをはじくような音が響く。それは小さな小石。何の変哲もない只の小石だった。

 

 しかし、少年の卓越した技量から放たれたその小石の一撃は、まるで弾丸のような速度と破壊力を小石に与え、

 

「ふっ!」

 

 狙いたがわず、四方に配置された結界の起点となる宝石を粉砕する!

 

 その数秒後、少年は鮮やかに魔導書が安置された部屋へ降り立ち結界の起点となっている最後の巨大宝石を打ち崩さんとした。

 

 まずは結界の強度を試すために、先ほどと同じように小石を放つ。

 

 しかし、今度の結界は見事に小石の一撃を弾き飛ばし、攻撃を感知したためしかけを発動させる。

 

 結界の方式はいわゆるセンサー型だった。まるで宝石と魔導書を囲い込むように発動したそれは円弧状の魔力帯を無数に生成し、それにぐるぐると不規則な回転運動をさせ侵入者の接近を阻む。

 

 ただのセンサーと侮るなかれ。その魔力帯には物理的な破壊力も与えられており、侵入者がその帯に触れてしまうと、刃物のように鋭くとがれた魔力帯が侵入者の体を輪切りにする。

 

 だが、少年――ハサン・シックースはそんな魔力の絶対防壁を見てもなお不敵な笑みを崩さなかった。

 

「さて、仕事にかかろか」

 

 シックースはそういうと、斬撃があふれかえる死の檻の中へと無造作に足を踏み入れた。

 

 当然のごとく乱回転する帯が少年に向かって襲いかかるが、

 

「はっ!」

 

 かわす、よける、回避する!!

 

 まるで舞踏のような滑らかな動きを披露し、時に身をそらせ、時に倒立し、時に地を這うように身を低くし、時に小石を飛ばし結界に自分の位置を勘違いさせ、少年は鮮やかに殺人結界をかわしてのける。

 

 そのすべてが紙一重。常人なら数度にわたり全身を切り刻まれているはずだが、シックースの身のこなしを見る限りそんな危なっかしさは微塵も感じられなかった。

 

 まさしく、踊るような回避術。潜入を生業とし、それを極めたものだけが披露できる芸術的な舞踏。

 

 某動画サイトに投稿すれば『シックースはダンスやっているからな!!』という弾幕が吹き荒れないほど、その舞踏は完成されていた。

 

\トショカントウナイトフィーバー/だ。

 

 そしてとうとう、シックースは結界の中央――魔力帯が通らない安全圏へと侵入を果たし、

 

「ふっ……他愛ない」

 

 ゆっくりと、結界を壊すために宝石へと手を伸ばした。

 

 だが、

 

「っ!?」

 

 瞬間だった。シックースが宝石へと触れた瞬間、不可視の砲撃がシックースの手を襲い宝石と台座もろともシックスの腕を粉砕した!

 

「ぐぁあああああああ!?」

 

 突然走った激痛に悲鳴を上げるシックース。そして、砲撃が飛んできた方向へと視線を向け、

 

「地を這う虫ケラ風情が。誰の許しを得て面を上げる?」

 

 ることすら許されず、次の衝撃がシックースに襲いかかった!

 

 それでも、死に際にシックースの鋭い視力が確かにその衝撃を放った敵を捕らえた。

 

 漆黒の髪を逆立て、冷酷な瞳を眼鏡の奥からのぞかせる少年の姿を!

 

 しかし、それはあまりに遅すぎた。いつの間にか数十近く放たれていた見えない衝撃は、風を切り裂きながらすでにシックースが回避不能なところまでに迫っていて、

 

「あれを……恐れる必要はない、やとっ!? ぐぁっ!?」

 

 シックースはあえなく衝撃に粉砕され、それと同時に突き立つ無数の衝撃たちが図書館島に激震を走らせ、シックースが立っていた場所に粉じんを巻き上げる!

 

 そして煙が晴れたころには――

 

「貴様は僕を見るに値わぬ」

 

 全身のあちこちをあり得ない方向に折り曲げ、無残な姿で倒れ伏すシックースの姿があった。その首は衝撃を放った少年が言うように、顔が大地に向くように強制的に折り曲げられていて……。

 

「虫ケラは虫ケラらしく、地だけを眺めながら――死ね」

 

 冷厳な瞳で少年は己が住みかに侵入した不届きものを見下ろした。

 

 少年の名は――英雄王・ゲルガメッシュ。この図書館島の主にして、この世のすべてを手にした王――。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「といったかんじに、図書館島には危険がいっぱいですので係員の誘導案内に従って、楽しい図書館島探検をしましょうね?」

 

「「「「は~い」」」」」

 

 そんなツッコミどころ満載の映像資料を提供しながら、図書館島見学にやってきた人々を案内するクラスメイト・パルこと早乙女ハルナの姿を目撃したマリーは、ギギギギギギと隣に立っている自分の雇い主を見て一言、

 

「なぁ……あれ」

 

「うむ。学園祭数日前にやってきてな。ギャラもよかったし受けておいた。なかなかいい出来だろ?」

 

「いや、それよりもあれ……アウトなんと」

 

「安川。基本的に学校内は治外法権だ。ほら、よくあるだろう? 参考資料として映画生徒にただで見せる先生。あれと変わらん」

 

「いや、変わりすぎやろ!? がっつり金とっとるやんか!!」

 

「ばかなことを言うな! おまえは著作権などというくだらない理由で、あの女の頑張りをすべて無に帰すつもりなの……」

 

「あ、犬神く~ん! あの動画大好評だよ!! ところでギャラはあの動画で上げた収益の10%でいいんだよね?」

 

「無論だ。きちんと払えよ?」

 

「なんや肩持つと思ったらやっぱりそんな理由かいぃいいいいいいい!!」

 

 図書館島に軽快なハリセンの音が響き渡ったことは言うまでもないだろう……。

 

 

 

ちなみに、

 

「あいたたたたた。犬神君のやつ本気で殴りよって……木乃香ちゃんに治してもらわへんかったら死んでたで」

 

「いや……というかあの惨状、普通に考えたら即死だろう」

 

 のちにこの映像を見に来た一人の男子生徒が、何かを思い出したのか幻痛を訴えたり、

 

 

「きゃー!! 高畑先生カッコイイ! きゃぁあああああああああああああ!!」

 

「あ、あの、明日菜くん……そんなはしゃがないで。恥ずかしい……恥ずかしいからっ!!」

 

 年甲斐もなくノリノリで役を演じてしまった成人男性が、顔を真っ赤にしてデート中の生徒を映像から引き離したりしていたらしい。

 




 悪ふざけ過ぎる産物ですww
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