とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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番外・メリークリスマス!! 外道サンタクロースが行く!!

 これはもしかしたらあったかもしれない日常。時系列なんて完全無視した、とある日々の物語。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 それはとある冬の日だった。

 

「いや~、さむいな~」

 

 マフラーとコートを装備したマリーが犬神アンダーグラウンドサーチに帰還すると、玄関で、

 

「あ、お帰りなさいマリーさん!」

 

「マリーお帰り」

 

「ただいま~。って、お? そういうたら今日はイブやったな~」

 

 仲良くクリスマスツリーに飾り付けをしているネギとヒメの姿があった。

 

「にしてもこの事務所ツリーなんてあったんやな……。犬神君のことやからてっきり持ってへんもんやとおもてたのに」

 

 驚くマリーの言葉に飾りつけをしていた二人は全く同時にうなづいた。

 

「僕たちも物置でこれ見つけた時はびっくりしましたよ。まぁ、せっかくあるんで飾り付けしようかって話になってこうして引っ張り出したんですが」

 

「……」

 

「……ヒメちゃん。お願いだからナイフつるすのやめて」

 

「……ネギが言ったようにキラキラしているものだよ?」

 

「うん。でも増すのはクリスマスっぽさじゃなくて物騒さだから真剣にやめて」

 

 どうやら飾るものまでは見つからなかったらしく、代替の飾りはネギとヒメの自前のもののようだ。

 

 そんな微笑ましい二人の様子にほっこりしながら、マリーはとりあえず事務所へと上がり、

 

「いや~にしても盛り上がってきたな~。親父とおったときはクリスマス中もヤクザ相手に逃走劇繰り広げとったから、まともに祝ったためしないし……。ちょっと豪華な料理でも作って……」

 

 プチパーティでもみんなでやろか? マリーがそう言いかけた時だった。

 

「仕事だ安川」

 

 事務所に入ったマリーに対して、犬神の容赦ない一言が突き刺さった……。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「プレゼント配達!?」

 

「あぁ、今夜の依頼は全国サンタ連盟から入った特別依頼でな」

 

「というか、サンタって実在するんかいな!?」

 

 時刻は深夜。白い雪がちらちら降ってくる夜の中、深紅の衣装に身を包んだ5人の人間が時計塔の屋根に立っていた。

 

 いうまでもないと思うが、犬神アンダーグラウンドサーチの面々だった。

 

「無論実在するにきまっているだろう? ほら、よくニュースでやっているだろう? フィンランドから来日したサンタクロースが……」

 

「あれって絶対――規制されました――やろ?」

 

「安川……貴様いくらなんでも夢がなさすぎるぞ?」

 

「君にだけは言われたくないわ!?」

 

 ぎりぎりの所でサンタの秘密が守られながら、犬神と安川の危険な会話が続いていく。

 

「だが、うちの担当のサンタクロースもそろそろ歳でな。毎年この季節になると持病のぎっくり腰が発症してしまい仕事ができないそうなんだ。というわけでここ数年の麻帆良地区のプレゼント配達はすべて僕が請け負っている」

 

「……ねぇ、犬神さん。それってもしかしてサンタとちがって、ただの仕事さぼりたいだけのおっさんでは?」

 

 何となくネギの脳裏には安楽椅子に座ってゲハハハハハハまたさぼってやったぜ! と笑いながら、のんびり過ごしている白いおひげのあくどそうなおっさんの姿が思い浮かんでしまって……。

 

 だがそんなネギの疑問に犬神はきらりとメガネを光らせた。

 

「野菜……実は僕にとっては、依頼をしてきたサンタクロースがパチモンだろうが本物だろうが、そこは重要なことではない」

 

「え、そうなん?」

 

「あぁ。僕にとって重要なのは」

 

 そして犬神はいつものように、

 

「その偽物だか本物だかわからないサンタクロースが、僕がプレゼントを配ればきちんと金を払うということだ」

 

「「初めから論点が違った!?」」

 

 て言うかサンタクロースからも金取ってんの!? サンタから金もらう子どもなんて聞いたことありませんよ!? とギャーギャーわめく二人を無視して、犬神はさっさと時計塔から飛び降りる。

 

「では行くか。麻帆良は広いから二手に分かれるぞ。クラレンスと助手の助手は向こうのほうを。野菜と安川は僕についてこい」

 

 こうして……犬神アンダーグラウンドサーチの長いクリスマスイブが始まった。

 

 

 

――明石裕奈の場合の場合――

 

 

 

「あれ? これって裕奈の名前やんか?」

 

「あ、ほんとだ。明石さんのプレゼントですね?」

 

「何だ知り合いか?」

 

「「クラスメイト(教え子)だって、前に言ったやろ(でしょ)!?」」

 

 相変わらず人の名前を覚えない犬神に抗議をしつつ、マリーとネギは女子寮の明石裕奈部屋の前に立った。

 

「にしてもそのプレゼントえらい大きない? 一体裕奈何頼んだんよ?」

 

 部屋にたどりついたときに犬神が白い袋からとりだした巨大なプレゼントに、マリーは少しだけ顔をひきつらせながら、正体が気になったのか聞いてみる。

 

「ん? 確かこいつのプレゼント依頼は……」

 

 犬神がそう言って一枚の紙を袋から取り出しマリーとネギに渡した。

 

「なぁ……犬神クン。その袋って……」

 

「子供たちの夢や希望が詰まっているのであって、断じて四次元につながっていたりしないからな?」

 

「もう認めてるようなもんやと思うねんけど……」

 

「もしかりにつながっているとしてもそれは四次元ではなく、英雄王の蔵の中だ」

 

「前のネタまだひっぱんの!?」

 

 先ほどからどれだけプレゼントを取り出しても、微塵も形を変えない丸い袋の正体にマリーが気付きかけていた時だった。

 

「……」

 

「ん? どないしたんネギくん?」

 

 なぜかとっても微妙そうな顔をして紙を見つめているネギに気付き、マリーも裕奈の願いが書かれている紙へと視線をむけなおした。

 

 そこにはかわいらしい文字で、

 

『お父さん♡』

 

 と書かれていて……。

 

「ファザコンここに極まれりやな……」

 

「い、いや! 普通! 普通のことですってこれっ!!」

 

「黙れ同類(ファザコン)

 

 ぐはっ……。と、割と切実に同じ願いをかこうかどうしようか迷っていたネギが喀血しながらぶっ倒れる。そんなネギを完全無視する形でマリーはこのプレゼントに対する疑問を続けた。

 

「それにしても犬神クン? これ一体どないするん? まさか本気で明石教授を連れてくるわけにもいかへんやろ?」

 

 マリーが言うように、明石裕奈の父――明石教授は麻帆良の大学教授にして裏の社会ではかなりの実力を持つ魔法先生だ。

 

 普段は情報操作や、情報統括など裏方仕事が多いが、少なくともタカミチとともに前線に出られる程度の実力は持っているとかいないとか……。

 

 流石にそんな相手を、娘のお願いだからといって誘拐まがいのまねをして連れだせるわけもない……ので。

 

「安心しろ安川。そちらはすでにフォロー済みだ」

 

「?」

 

 首をかしげるマリーをしり目に、犬神はそのプレゼントの包装を解く。すると中から現れたのはっ!

 

「あ、明石教授!?」

 

 なんと先ほど話題にあげた明石教授本人だった!

 

「マジで!? マジで誘拐してきたん!?」

 

 とうとう犬神くん犯罪者!? とマリーが慌てるのをしり目に、犬神は呆れたように溜息をもらし、

 

「安川……よく見てみろ」

 

「え? あ!? これ偽物やんか!?」

 

 そこまで言われてようやく明石教授が微動だにしていないことに気付いたマリーはそれが本物と見まがわんばかりの完成度で作られた、偽物だということに気付いた。

 

「クラレンス自信作――等身大明石教授抱き枕だ」

 

「この形で!?」

 

「ちなみにこの抱き枕は、本物の抱き心地と体温すべてが完璧に本物と同じだ」

 

「うわっ、ほんまや何これ!? 人造人間(ホムンクルス)のほうが近ない!?」

 

「というかここまで本物に近いと逆に猟奇的じゃないですか?」

 

 割と真剣にひと肌の温度を感じる明石教授抱き枕にマリーは思わず戦慄し、ネギは思わずドン引きする。

 

 そんな二人をしり目に犬神はその抱き枕を部屋の前に放置するとさっさと歩きだした。

 

「さぁ、さっさと次へ行くぞ安川。まだこの抱き枕はあと数件に配らないといけないからな」

 

「あと数件って?」

 

 マリーがそういうと同時に犬神が袋から取り出したのは、

 

――タカミチ抱き枕とナギ抱き枕。

 

「誰がお願いしたんか、透けて見えんな!?」

 

「というかエヴァさんまだ諦めてなかったんですね!?」

 

 その抱き枕を見た瞬間、マリーとネギは即座に二人の生徒の顔を思い浮かべたという……。

 

 

 

――近衛木乃香の場合――

 

 

 

「さて、実はこいつも抱き枕にしようと思ったんだが」

 

「そういうたら、セツナン抱き枕はなかったな?」

 

明日菜の部屋の前にタカミチ抱き枕を設置した後、同室の木乃香のプレゼントの話になったマリーとネギは、一体どうするんだ? と言わんばかりに犬神を見つめた。

 

 当然木乃香のお願いは『せっちゃん!』なのだが、

 

「ふむ、最近関係が改善されてきたせいかあいつからもこんなお願いがあってな」

 

 そう言って犬神がとりだしたのは一枚の紙。桜咲刹那のお願いだ。

 

 それをマリーとネギが覗き込むとそこには、

 

『お、お嬢様と仲良くなり……や、やっぱりいいです!』

 

「シャイすぎるやろ!?  お願いまでこんなんかいな!?」

 

「というかこれはり出した時点で結構隠す気ありませんよね!?」

 

 そんな風に二人が刹那に対してダメ出しをする中、犬神だけが冷静にこのプレゼントを用意する算段を付ける。

 

「というわけで、もう面倒なので本人同士をプレゼントにすることにした」

 

「「は??」」

 

 マリーとネギが首を傾げる中、犬神はごくごくわずかな量の殺気を部屋の中にいる木乃香へと向けた。

 

 常人なら気付かないどころか、達人ですら「気のせいか?」と無視してしまいそうな微弱な殺気。

 

 だが、

 

「お嬢様に何する気だ貴様ぁあああああああああああああああああああああ!!」

 

「「えぇええええええええええええええええ!?」」

 

 どんな感覚器官をもっているのか、それを敏感に察知した刹那が自分の部屋から飛び出しこちらに向かって走ってくるのを見てマリーとネギは思わず引く。

 

「も、もしかして常に木乃香さんの部屋の様子を探っているんじゃ……」

 

「ストーカーも真っ青な手口やな……。気配察知とか達人にしかできひんストーカー方法や」

 

「お前ら、あいつがストーカーだということはもう確定なんだな」

 

 三人がそんな会話を交わしている間に、もう悪鬼がごとく顔をゆがめた刹那が間近まで迫っていて、

 

「ふむ」

 

 犬神はその姿を見て「頃合いか」と、小さくつぶやくとその場から即座に瞬動。刹那の眼前に出現する、

 

「なっ!? サンタ……クロース!?」

 

 目の前に突然現れた珍妙な存在に刹那が度胆を抜かれるなか、

 

「メリークリスマス」

 

「ぶっ!?」

 

 犬神サンタは容赦なくコブシを振りぬき、刹那の鳩尾を一撃。一気にその意識を刈り取る。

 

 

「……よし、ミッションコンプリートだ」

 

「ここまで暴力的なサンタは初めて見ました」

 

「というかセツナン……全然メリークリスマスちゃうやろ……」

 

 殴られた衝撃で口からいろんなものを吹き出していた刹那にちょっとだけ同情するマリー。そんな彼らを無視して、犬神は気絶した刹那を包装紙とリボンで包み『私がプレゼントです♡』の張り紙をして部屋の前に放置する。

 

「さて、次へ行くか……」

 

 翌日。部屋の前に置かれたプレゼントに真っ先に気付いた明日菜が、勢い余って木乃香の分まで開けてしまい、中で結構悲惨な状態で気絶する刹那を発見した。そしてしばらくの間、明日菜は刹那にちょっとよそよそしくなり、刹那が仲の改善のために泣きながら奔走することになるが……そんなことはこの外道サンタにとっては知ったことではないので華麗に無視することにした。

 

 

 

――龍宮真名の場合――

 

 

 

『金』

 

 一文字だけ書かれた簡素なそのプレゼント要求に、マリーとネギは絶句する。

 

 そんな中、なぜか犬神だけは満足げな笑みを浮かべて、

 

「ふっ……。その実直さ、嫌いではないぞ」

 

 といって、袋から取り出された札束を、

 

「……」

 

 自分の懐にしまい、

 

「ほら」

 

 部屋の中には自分の財布から一円玉だけを投げ入れた。

 

「さて、次だ」

 

「「……………………」」

 

 無論、マリーからの無言の一撃が、犬神のメガネを吹き飛ばしたことは言うまでもない。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 そのほかにもはっちゃけすぎな3-Aの世にも奇妙なプレゼント旅行は続いた。

 

 某マッドサイエンティストたちに頑丈な人体実験用サンプルを提供したり(Ⅵ)、某ショタコン委員長にネギの秘蔵写真を渡しお付きのちびサンタが号泣したり、女性下着を所望したオコジョが関西弁ミニスカサンタに再び三つに折りたたまれたりと――まぁ、まともなプレゼントは一つとしてなかったといっていいだろう。

 

 そんな中、女子寮から離れた場所に住んでいるエヴァにナギ抱き枕を渡しに来た時、

 

「ついでに茶々丸とやらのも置いていくか」

 

「茶々丸さんはどんな願いやったん?」

 

 犬神はマリーの質問に再び無言で紙を渡す。そこには、

 

『猫たちのおなかが減らないくらいの猫缶を……』

 

「「心洗われた!!」」

 

 なんだかふつうにアンドロイドのほうがいいお願いしている気がして泣けてくるマリーとネギ。だが、

 

「何を言う。これよりももっとすごいのがいるぞ?」

 

「え? そうなん?」

 

「これ以上に善行積める人がいるんですか!?」

 

 それはもう釈迦とかイエスとかそういった感じの人じゃないだろうか? と二人が首を傾げるさなか、犬神は最後のプレゼント配達へ向かうために足を動かす。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 そこは路面電車を改築した『超包子(チャオパイズ)』の屋台。そこはクリスマス営業として遅くまで営業を行っていたためか、まだ明かりがついていた。

 

 そんな屋台のカウンターに、

 

「……す~っ」

 

 と、小さな寝息を立てて布巾を片手にもたれかかって眠っている少女が一人。

 

 四葉五月(よつばさつき)。3-Aメンバーの一人にして、麻帆良最高の料理人。そして、麻帆良に彼女ほど信頼を置かれている人物はいないといわれる、《麻帆良随一の癒し系》少女だった。

 

「こいつの願いがこれなんだが……」

 

「「……」」

 

 マリーとネギは犬神が差し出した一枚のお願い用紙を見て絶句する。

 

 そこには五月らしい丸い文字で、

 

『みんなのお願いが叶いますように』と、率直に書かれていた。

 

「「……」」

 

 瞬間、マリーとネギの目から滝のような涙があふれ出す。

 

「そうやんなぁ……そうやんなぁ……。五月ちゃんはそういう子や」

 

「あれ? なんでだろ……涙が、止まらない」

 

 いろいろ外道すぎるお願いで疲れていたのか、なかなか胸の中の感動が去らない二人を放置し、犬神は五月の元へと近づく。

 

「ふん。お前は相変わらずだな……まぁ、だからこそ僕はお前を認めているわけだが」

 

「「え?」」

 

 何それ、新手のホラー? と言わんばかりに涙を一気にひっこめ驚く二人に「後で話があるからな?」と人殺しの視線を投げかけた後、犬神は懐から取り出した手帳を一ページ破り、そこにさらさらと文字を書き込む。

 

 そしてそれを五月の手元へ置き、袋から取り出した毛布を五月にかけた後、

 

「さて、作戦完了(ミッションコンプリート)だ。帰るぞ」

 

「「は~い」」

 

 何やら満足げな笑みを浮かべる犬神に苦笑を浮かべた二人は、元気良く返事を返し外道サンタにつき従い麻帆良の闇の中へと消えた。

 

 その数分後、何やら温かいことに気付き目を覚ました五月はいつの間にかかかっていた毛布に驚き、

 

……あぁ。毎年毎年ごくろうさまです。

 

 と、手元に置かれていた小さなメモ用紙を見て少し微笑む。

 

 そこには達筆で機械的な文字でこう書かれていた。

 

『プレゼント配達完了。メリークリスマス優しき料理人どの。

 Byサンタクロース一同』

 

 お仲間増えたんですね?

 

 いつもとは違うサンタクロースの後ろの文字に少し驚きながら、今年もいいクリスマスだったと、彼女は優しく笑うのだった。

 

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