とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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33話・始まる終わり――文化祭最終日!!

 文化祭最終日である三日目の朝。

 

 犬神アンダーグラウンドサーチは今日も今日とて通常営業。依頼を受けた迷子猫の捜索をしていた。

 

 そして、

 

作戦完了(ミッションコンプリート)だ」

 

「はぁ~疲れた……」

 

 とある建物のバルコニーにて、何とか捕獲することに成功した。

 

「なぁ、犬神君……。私ら何でこんなことしてんの?」

 

「ん? 仕事だからに決まっているだろうが」

 

「そうやのうて……なんで学生のお祭りである文化祭期間中も仕事してんねんと聞きたいんや、こらぁああああああああああああああああ!?」

 

 マリーの怒声ももっともで、眼下通りでは学園祭期間中はずっと行われているロボットや仮装衣装のパレードが続いており、それを楽しそうに見る観光客や学生たちが出店の料理を片手にお祭りを楽しんでいる。

 

 そんなみんなが楽しそうな中、マリーは汗だくになって猫を探していたわけで、

 

「まちがっとるやん!? 明らかに何か間違えてるやん!?」

 

「何を言う安川。仕事に祭りもくそも関係ない。関係あるのはそう……祭り期間中は客から特別手当が取れるという一点に尽きる!!」

 

「また金の話かい!?」

 

 君ホンマ学生としてまちがっとんで!! と怒声を上げるマリーをしり目に犬神は悠々と片手に捕まえた猫を揺らしながら、さっさと事務所に向かって歩き出す。

 

「まぁ、学際期間中はその分依頼が減るがな。おかげでもう学際期間中に頼まれた依頼がなくなった。午後からはフリーだぞ?」

 

「ほんま!?」

 

「ここでウソをついて僕に何の得がある?」

 

 特にないので犬神の言葉が事実だと悟るマリー。そして、

 

「よっしゃぁあああああああああああああああああ!! これでまた学祭楽しめるぅううううううううううううううううう!!」

 

 それがよっぽど嬉しかったのか、歓喜の涙を流しながらガッツポーズをする。そんな大げさな態度をとり、天を仰いだマリーは、

 

「……なぁ犬神君」

 

「何だ安川」

 

「空からネギ君が降ってくんねんけど?」

 

「なに?」

 

 マリーの言葉にほんの少しだけ興味を覚えたのか、犬神は猫をがっしり捕まえたまま空を見上げた。

 

「きゃぁあああああああああああああああああああああああ!?」

 

「おいおいおいおい、まじかよぉおおおおおおおおおおおお!?」

 

「うっひょぉおおおおおおお!! リアルパラシュートなしスカイダイビング!!」

 

「はしゃいでいる場合ですかパルぅううううううううう!?」

 

「にんにん」

 

「こんなときでも平常運航やな~楓」

 

「お嬢様ももうちょっと慌ててくださいぃいいいいい!?」

 

「あれ……何でしょう。長距離時間跳躍したせいか、なんか……気持ち悪い」

 

「ちょ、しっかりしなさいネギ!? って、あそこにいるの犬神じゃない!? ちょ、助けなさい犬神ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいイ!!」

 

 のどか・千雨・パル・夕映・楓・木乃香・刹那・ネギ・明日菜といった3-Aパーティーが上げる悲鳴が空にたなびく。

 

 そしてその最後あたりに自分の名前が載せられるのを聞き、犬神はしばらく考え込んだ後、

 

「さて安川。依頼人の元へ行くぞ?」

 

「え、あの……助けへんの?」

 

「あのメンバーは最近エターナルロリに鍛えられて、やたらと耐久度増したからあの程度の高さから落ちた程度では死なんだろう。というか、野菜さえ無事なら後は割とどうでもいい」

 

「ひどないっ!?」

 

「それよりも僕にとって大切なのはこの猫を引き渡すことによって発生する料金だ」

 

「君はホンマにブレへんなぁ!?」

 

 マリーはクククククと不気味な笑みを浮かべる犬神にどん引きしつつ、犬神に反抗して3-Aパーティーを助けようとするが、

 

「何をしている?」

 

「ぶっ!?」

 

 どういうわけかそれを犬神に止められ、腹パンを一撃くらい気絶してしまった。

 

「貴様がいる、いないとでは特別手当の額が違うのだ。この後助手の助手とも合流するからさっさと来い」

 

「……」

 

 割とやばい感じに沈黙しているマリー。真剣に死体にしか見えないそれをよっこいしょと担いだ後犬神はさっさとバルコニーから姿を消した。

 

 ……今も落下を続ける、3-Aパーティーを放置して。

 

「あんの外道!? いつかほんとに殺すぅうううううううううううううううう!」

 

「あ、明日菜さん落ち付いて、僕が何とか出来ますから……うぷっ」

 

「あ、ちょ、ネギ先生!? さすがにスカイダイビング中の嘔吐はぁあああああああああああああああああ!?」

 

「オボロロロロロロロロ...」

 

「「「「「「「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」」」」

 

「おろろ~」

 

 そんな悲鳴が麻帆良の空に響き渡るが、やっぱり犬神は振り返ることをしなかったという。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「で……いったい何なんですか~? ぬらりひょん先生ぃ~?」

 

「なんじゃろう犬神君……安川君の態度がやたら悪いんじゃが」

 

「いろいろあるんですよ学園長(クライアント)。少々お待ちください。今更生(物理)させませんで」

 

「いらん!? いらんから!?」

 

「マジすいませんでしたぁあああああああああああああああああ!?」

 

 それから数時間後。祭りを全力で楽しむために街へ繰り出そうとしていたところで学園長の呼び出しをくらったマリーは、不機嫌全開で学園長に無言の抗議を行っていたが、犬神がゴキゴキと手を鳴らし始めたのをみて顔から血の気を引かせながらジャンピング土下座する。

 

「それで、今回の依頼は何ですかクライアント?」

 

「うむ……とうとう超鈴音(チャオリンシェン)が動き出したらしい。彼女の目的は学園都市全土を魔法陣に見立てて発動する認識阻害とは全く逆の魔法――全世界に対して行う《強制魔法認識魔法》ということが判明した」

 

「っ!? それって……」

 

「魔法を全世界にばらす……ということですか」

 

 学園長が告げた超の目的に、マリーは息をのみ犬神は冷静に考察を口にする。

 

「でも、そんな大規模な魔法、いったいどうやって発動させるつもりなのです? 確かに魔力と方陣の下地は麻帆良の土地を使えば代用可能ですが、それを使うにしてもそれ相応の依り代(ざいりょう)が必要では?」

 

「おそらくタカミチ君が調査しておった麻帆良地下に封印されておった鬼神を機械制御して操り、術式の素体にするものと思われておる。鬼神の数は最低でも六体。さらにそれを補助する目的で造られたと思われる機械の兵団が約2500体ほど確認されておる」

 

「かなりの戦力になるますね。麻帆良に存在する戦力で防ぎきれますか?」

 

「そこで、わしはとある策を弄しようと思うておる」

 

「策?」

 

 何やら複雑な話を始めた犬神と学園長をマリーはぽかんと見つめている。何気に馬鹿レンジャー予備軍のマリー。ボケには鋭い反応を返せるが、ちょっと複雑な話になると付いていけなってしまう。

 

 つまり、現状マリーは超退屈だった。

 

 というわけで手持無沙汰になったマリーはのんびりとした様子であたりを見回し、

 

「ん?」

 

「ちょっと……ちょっとこっち来い!!」

 

 何やらすごい形相で学園長室の扉の隙間から中を覗き込みマリーを手招きする千雨の姿を確認し、マリーは思わず顔を引きつらせる。

 

 そういえばさっきスルーしてもうたけど、さっきのメンバーの中にチゥがいたということは、それはもうチゥにがっつり魔法がばれてしもうたいうことやん……。

 

 それを察したマリーは恐る恐る学園長室の外に出て、

 

「……正座」

 

「はい……」

 

 絶対零度の声で千雨に命じられたことを、甘んじて実行した。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 何やら今まで自分に隠し事をしていたマリーに千雨がガチギレした後、結局仲直りなどという青春イベントフラグが立っている傍ら――麻帆良上空では。

 

「オォ!? 動ケルゼ、ゴ主人」

 

「それはよかった。まぁ、学園内の魔力がかなり濃密になっているからな……私の魔力自体も封印をかけられたうえで全盛期状態に達しつつある」

 

 全く世界樹さまさまだよ。と、箒にまたがったエヴァンジェリンはそう呟きながら、片手に持ったワインを、瓶から片手に持ったグラスに移した後、口に含む。

 

 そして、彼女は酒で上気した頬を空の冷たい空気で冷やしながら、浮かれ騒ぐ学園都市へと視線を向けた。

 

 その中には大量生産された簡易結界ローブや、魔法具を配り歩きながら最終日のイベントの宣伝をする3-Aクラスメイト達の姿が確認できた。

 

「ほう……坊やの方も動き出したようだな」

 

「ゴ主人、茶々丸貸シ出シタッテコトハ超トカイウ奴ノ味方ナンダロ? イイノカ? 邪魔シナクテ?」

 

「構わんさ。私はどちらの味方というわけではない。ただの中立……」

 

 そして、彼女は全盛期のころによく浮かべていた愉悦の笑みを口元に張り付け、これから起こるバカ騒ぎの舞台を睥睨する。

 

「このお祭り騒ぎの締めにふさわしい大イベントを、特等席で眺めさせてもらうさ」

 

 誰もが恐れる吸血姫は、どちらについても戦局をひっくりかえせる力を内包しつつも、誰よりも平等にこの騒ぎの結末を傍観していた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 そして、さらに上空に位置する空を飛ぶ、とある飛行船の内部にて、

 

「時は満ちた!」

 

 今回のイベントにて悪役となる、超一味が集っていた。

 

「諸君、私は戦争が好きだ

諸君、私は戦争が好きだ

諸君 私は戦争が大好きだ

 

殲滅戦が好きだ

電撃戦が好きだ

打撃戦が好きだ

防衛戦が好きだ

包囲戦が好きだ

突破戦が好きだ

退却戦が好きだ

掃討戦が好きだ

撤退戦が好きだ

 

平原で 街道で

塹壕で 草原で

凍土で 砂漠で

海上で 空中で

泥中で 湿原で

 

この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ

 

戦列をならべた機械兵の一斉発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ

空中高く放り上げられた敵兵が効力射でばらばらになった時など心がおどる

戦車兵の操るティーゲルの88mmが敵戦車を撃破するのが好きだ

悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

 

銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ

恐慌状態の新兵が既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える

 

敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない

泣き叫ぶ捕虜達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ

 

哀れな抵抗者達が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを80cm列車砲の4.8t榴爆弾が都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

 

露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ

必死に守るはずだった村々が蹂躙され女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ

英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ

英米攻撃機に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

 

諸君 私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる

諸君 私に付き従う大隊戦友諸君

君達は一体何を望んでいる?

 

更なる戦争を望むか?

情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?

鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」

 

「戦争! 戦争!! 戦争!!!」

 

「よろしい ならば戦争だ」

 

 それらを一息に言いきった後、満足げに頷いた超は、

 

「こんな感じに楽しんでいこうと思うのでそこのところよろしくネ!」

 

「つーかよくあんな長い演説文覚えたな」

 

「お兄様よく見て? 演説中長がちょっとだけ消えたりしていたわよ。あれきっと時間跳躍してカンペ見に行っていたんだわ」

 

 超は意外とよく見ていたSMブラザーズにさすがネ、と感心の声を漏らし、

 

「せっかく私が時間をかけて作った渾身の力作なんですから、カンニングなんかに使わないで下さいよ!?」

 

「あはははははは! まぁ、かたいこと言うんじゃないネ、葉加瀬」

 

 にこにこ笑いながら、不満の声を漏らす葉加瀬の肩をたたきその声を軽く流す。そして、飛行船に設置されたスパコンに接続し意識をネットの海へと移した茶々丸に話しかけた。

 

「さて茶々丸。用意はいいかな?」

 

『jud. 率直に申しまして、絶好調と判断できます――以上』

 

「さすが博士と私の最高傑作!! ノリが良くてグッジョブネ」

 

 サムズアップして茶々丸をたたえる超に、スパコンにつながれた画面の中に顔を映し出した茶々丸はほんの少しだけ微笑む。

 

『それにしても超さん。あなたのほうこそどうされたのですか? 今になってずいぶんとはしゃいでおられるように見えますが?』

 

「……そう見えるカ?」

 

『ウィ。機械的に申し上げますと――そう判断できます』

 

「……あの後輩たち再登場の機会あるんだろうカ」

 

『そればかりは原作者様の気分しだいかと……』

 

 再び雑談に入りかけてしまうと話が進まないので、

 

「ふむ、なぜ私がはしゃいでいるか……カ」

 

 とりあえず超は軌道を修正しておく。

 

「なんというか、私もそれ相応のシリアスな態度をもってこの戦いに臨むつもりではあったんだヨ」

 

『そうなのですか?』

 

「そうなんだヨ。だがまぁ、麻帆良武闘会を見て少し気が変ってネ」

 

 超はそういうとほんの少しの間目を閉じ、何かを思い出すかのようにつぶやいた。

 

「この二年は本当に夢のような日々だった。友人ができて、日々を平和に過ごせた。資金集めのためのはじめた中華料理屋を、屋台から店にしてみたり、工学研と協力してロボット作ったり、軍事研の依頼受けてネタ兵器作ったり。まぁ、かなり充実した日々だったんだヨ」

 

 そんな中で、と呟く超の脳裏によぎるのはいつでもどこでも騒がしかった自分の友人であるクラスメイト達の顔だった。

 

「私は人生を生きる上で最も重要なことを学ばせてもらった……。そんな私が最後の最後で、しみったれたシリアスを演出するのははたしてどうなんだろうと……そう思っただけヨ」

 

『……その学んだこととは、いったい何なのですか?』

 

「決まっているだろう?」

 

 茶々丸の質問に、超は満面の笑みを浮かべて答える。

 

「何事をするにも――全力で楽しむ!!」

 

「クク……確かに。あのクラスではそれが真理だな」

 

 それに同意を返してくれたのはクラスメイトのとある狙撃手。彼女は自分の愛用ライフルを磨きながら、小さく苦笑を浮かべていた。

 

「さぁて、あちらの準備も整ったようだし――はじめようか」

 

 麻帆良湾岸線に続々と集まるローブ姿の学生たちを見て、超は集まった仲間たちに指示を飛ばす。

 

「SMブラザーズ。麻帆良高戦力部隊は相手にしなくていい。君たちは『犬神級』だけを相手にしてくれ」

 

「「了解」」

 

「マナ。代わりに君には麻帆良の高戦力部隊の掃討を行ってもらうが、構わないネ?」

 

「むしろ私が犬神君を落としてあげてもいいよ?」

 

「クク、期待はしないで待っておくヨ。茶々丸……学園結界のシャットダウンのタイミングは?」

 

『0.000000001秒単位のズレすらありません。完全に掌握しています』

 

「葉加瀬。田中さんや鬼神兵たち――そして秘密兵器の様子は?」

 

「オールグリーン。異状なしです!!」

 

「よし諸君……」

 

 そこで超は言葉を切り、

 

「最後の祭りの始まりだ!!」

 

 指揮者のように両手を振りおろす!!

 

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