とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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36話・黒い歴史と超の努力

 麻帆良学園都市上空にて、

 

『雷の暴風(に似たレーザー)!!』

 

「豪殺・居合拳!!」

 

 どこかの有名人たちを足して五で割ったようなスペシャル田中と、スーツを翻し、天を舞う高畑先生が激闘を繰り広げていた!

 

「お、デス眼鏡!!」

 

「デス眼鏡もヒーローユニットだったか!?」

 

「すげー!! あれ、格闘大会でやってた居合拳だろ!? どうやってあそこまで威力だしてんだ!?」

 

 下でそれを観戦していた生徒たちは、普段自分たちの脅威となる広域指導員が本気で戦う姿を興奮気味に応援している。

 

 それはそうだろう。何せここでタカミチが田中を倒してくれないと、次にあの田中の餌食になるのは自分たちかもしれない。ここでタカミチに勝ってもらわないと彼らとしても困るのだった。

 

 だが、内心で生徒たちが割とシリアスな理由でタカミチを応援する中、上空で激突する二人のうち片方の内心はとても穏やかではなかった。

 

『おれは……素手のがつえーんだぜ?』

 

「だったらその剣と杖はなせぇえええええええええええ!?」

 

『あぁ? 俺を誰だと思ってんだ? 赤き翼のリーダーにして最強の魔法使い――ナギ・スプリングフィールドだ!! 魔法学校も中退だこらっ!!』

 

「おまえは全然違うだろぉおおおおおおおおおお!! あと、魔法世界の恥積極的にさらすなぁああああああああ!?」

 

 タカミチは――なんかもういろいろ疲れていた。

 

 声が響くたびに聞こえる癇に障る声と、あの人たちのセリフ。

 

 あの人たちの言葉が別に悪いとは言わないが、それを別にもの(しかも明らかに機械)がしゃべるのが癪に障った。

 

 先ほどからの激突で、この田中の実力は見切れた。おそらく、いろいろ赤き翼メンバーの技を再現しようとして無理をしてしまったのか、スペック自体はさほどではない。せいぜいノーマル田中よりちょっと強い程度だ。

 

 だからタカミチは判断を下す。

 

 この戦い……彼の精神衛生上の安全を守るために、

 

『いいじゃんか、今日のとこはさ……』

 

 可及的速やかに、勝負をつけることにする!

 

『ハッピーエンドってコトで?』

 

「だ・ま・れ!!」

 

 七条大槍無音拳!!

 

 スペック自体はさほど高くない田中はそれをよけることはできない。

 

 だから田中は、

 

『すっ……』

 

「!?」

 

 あえて目を閉じた。

 

 なんだ!? 何かの罠か!? と高畑が警戒する中、田中はぼそりと一言、

 

『落ち着け、落ち着くんだ詠春!! 心頭滅却すれば火もまた涼し―――ぶっ!?』

 

「………………」

 

 そんな戯言を吐きながらあっさり居合拳の濁流にのまれ、路地裏に墜落していく田中の姿に高畑は思わず無言になる。そして、

 

 え、詠春さん……なんか、ごめんなさい。と在りし日の詠春の姿を完全にネタにした田中に、思わず戦慄を覚えながらとりあえず西に座する最強の剣士どのに頭を下げておいた。

 

 だが、それでも田中は自重しない!!

 

 七条大槍をくらっても何とか無事だったのか、ぼろぼろになった田中はふらふらと煙の中から立ち上がり、

 

『今死ぬのだと知ろうとも――あきらめねぇのが人間ってモンだろうがッ!!』

 

「……いや、おまえ人間じゃないし」

 

 その姿を見てなんだか切なくなったのか、先ほどまでの怒りは鳴りをひそめた、何とも言えない顔でそう突っ込みを入れるタカミチ。

 

 そうこうしているうちに、田中はなんと――。

 

『誓ったんだ』

 

「なにを……」

 

『おれの翼と杖は……あの人に預けるって!!』

 

「!?」

 

 あのシーンすら汚

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「ナギ・スプリングフィールド。私の騎士となり……この戦争を止めて――

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「うっさいわ」

 

『ぎゃぴ!?』

 

 されそうになったので瞬動で近づいたタカミチは、胸の装甲をパカッと開け中から出てきたモニターにとんでもないものを映そうとした田中を豪殺居合拳で粉砕する。

 

『ふっ……幸せになりな、嬢ちゃん』

 

「ほんとうっさいわ。ぼくは嬢ちゃんじゃないし」

 

 さらに二撃三撃と叩き込む! これでようやく田中がしゃべらなくなるのを確認し、タカミチは一息つくことに成功した。

 

 これで個人のプライバシーは守られた! とタカミチは安堵の息をつきながら、胸ポケットから煙草を取り出し一服。

 

「まったく……超君は。たとえ知っていたとしてももう少し自重してくれよ」

 

「そんな私が――後ろから撃つ」

 

「っ!?」

 

 しかし、その油断した瞬間を突かれてしまった!

 

 突如虚空から現れた機械の鎧に身を包んだ超がコブシを――それにもたれた指の間に挟まれるように装着された漆黒の弾丸をタカミチに叩き込んだ!

 

 なんだ、これは!? とタカミチが驚く中タカミチの周囲の景色が激変する。

 

「これはっ!?」

 

 自分の周囲に突如として出現する漆黒の繭のような壁。タカミチがそれに困惑する中、超の解説が始まる。

 

「その弾丸は強制時間跳躍弾=B・C・T・Lという弾丸でネ。直撃した人間を三時間先の未来へと飛ばす」

 

「なっ!?」

 

 そんなことをされてしまっては、この学園祭のラストイベントが終わってしまう。と、タカミチがあわてる中、超は不敵な笑みを崩さなかった。

 

「無駄だヨ高畑先生。一度のその時間の檻に捕らえられてしまってはいかなる存在であろうとも脱出は不可能。せいぜい油断したことと――」

 

 そこで超は目を伏せ、

 

「わ、私の力作を見ずに粉砕したことを後悔するがいいネぇええええええええええ。うわぁあああああああああん!! せっかく時間作って魔法世界までいって撮った力作だったのにぃいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 と、超は超泣きながらどこかへ行ってしまう。

 

 それをたまたまみていた学園生徒たちが、黒い繭に包まれた高畑を突き刺すような視線で睨みつけていて、

 

「え? なに? なんでぼくが悪いみたいになっているんだい……」

 

と、ちょっとだけタカミチが泣きかけた瞬間、彼は学園都市から姿を消した。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 学園都市の生徒が一人としていない裏路地。

 

 そこを高速で動く二つの影があった。

 

「ふむ……」

 

 ひとつは壁を交互にけりまるで鳥のように地面に降り立つことなく、狭い裏路地を駆け抜けるクラレンス。

 

 もう一人は、

 

『ヲォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』

 

 絶叫を上げ赤い歯をむき出しにしてクラレンスを追走する、グロテスクな田中だった。

 

「ふむ……ビジュアル的にはエヴァンゲ○オン初号機ですかな? なかなか凝ったことをなさる」

 

 あのアニメのように獣のような低姿勢で滑らかに走るその田中に、感心したような吐息を洩らしながら、クラレンスは袖口から棒手裏剣を取り出しそれを投擲。

 

 一本二本とエヴァへと襲いかかるそれは、

 

「ほう……」

 

 バシッ! バシッ!! と、硬質な音を立て突然虚空に出現した六角形の半透明な障壁によって防がれた!

 

『A・Tフィールド!?』

 

 それと同時に田中の胸の装甲を開け出てくる薄型モニターが、驚いた顔をしている、先ほどエヴァンジェリオンが発進したときの映像の舞台になった場所で待機していた超たちを映し出した。

 

「むふ」

 

 その画面に気付いたクラレンス。彼は少しうなづいた後、手裏剣での攻撃を二回三回と繰り返してみる。

 

 そして当然と言わんばかりに、A・Tフィールドのはじかれる手裏剣。それとともに声を上げるモニター。

 

『無駄よ。A・Tフィールドがある限り』

 

『使徒には……届かない』

 

 再び画面に現れる超と葉加瀬に「芸細かいですな」と感心した風にもらしながら、クラレンスはほかにどんな反応が返ってくるのか試してみることにした。

 

 

・パターンその1

 

 

 忍具を使った爆発でエヴァ田中を包みこんでみる。

 

 だが田中はさすがにA・Tフィールド(もどき)持ち。この程度ではびくともしないのか、炎の中から悠然と姿を現す。

 

 だがモニターに映っていたのは、

 

『エヴァ、再起動』

『そんな……動けるはずありません』

『まさか……』

『暴走……』

『勝ちましたね』

『あぁ……』

 

 なんか余裕たっぷりとした笑みを浮かべた超一行だった。

 

 クラレンスはそれを見て、

 

「では次に行きましょう……」

 

 何事もなかったかのように流す。

 

 

パターン2

 

 

 暴走状態にもかかわらず銃的な何かを取り出したエヴァが、クラレンスを狙うがクラレンスが逃げ回りそこから発射される弾丸――時間跳躍弾を平然と回避しまくっていた時だった。

 

 再び映像が入り、

 

『目標をセンターに入れてスイッチ……目標をセンターに入れてスイッチ……』

 

「それ当たらないフラグではありませんかな?」

 

 超が真面目腐った顔でカチャカチャ引き金を引く光景が流れ出したとか、いないとか……。

 

 

パターン3

 

 

 クラレンスが勝負を決めようとい、A・Tフィールド(もどき)を忍術で平然と切り裂き、田中に迫った時だった。

 

『逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだぁあああああああああ!!』

 

 どういうわけかカッターナイフみたいなものそ武装して、クラレンスにカウンターを決めようとする田中。

 

 しかし、クラレンスは歴戦の忍。

 

「申し訳ありませんが、遅すぎますぞ」

 

 彼はエヴァ田中の攻撃を平然とかわし、逆にカウンターをたたき込んでその首を刈り取る!!

 

 そのとたん再び電源が入ったモニターに悲痛な顔の葉加瀬の姿が映った。

 

『シグナルロスト……エヴァンゲ○オン初号機……完全に沈黙しました』

 

 こうして、エヴァン○リオン初号機は大した活躍もできないままクラレンスに倒されてしまった……。

 

 

 

ED

 

 

 

 だが、沈黙したエヴァ田中はそれだけでは終わらなかった。

 

 突然、モニターに電源が再び入り、何かの映像を映し出したのだ!

 

「っ!?」

 

 珍しくその光景に驚くクラレンス。そして、映し出された光景は、

 

「おめでとう……」

 

「おめでとう!」

 

「おめでとさん!!」

 

「めでたいですね!」

 

「おめでとう」

 

「お・め・で・と・う」

 

「「おめっとう~」」

 

「くぁ~くわっくわ!!」

 

「おめでとうでござる」

 

 龍宮が、葉加瀬が、マリーが、ネギが、犬神が、姫が、SMブラザーズが、超が、楓が――皆が口ぐちに祝福してくれる。

 

 クラレンスは思わずそれに涙を流し、

 

「あ、ありがとうございます」

 

 と、深くこうべをたれたあと、

 

「さて、では超殿を探すとしますか」

 

 紳士としてネタに付き合った彼は、その映像を最後まで見ることなくサッサと踵を返した。

 

 その背後の映像の締めは、変わった髭の執事だと彼自身が知っていたから……。

 

 

 

オマケ

 

 

 

 タカミチに渾身の力作をたたきつぶされ、ふてくされながら帰ってきた超は「もう一つの力作はどうなっている?」とクラレンスとエヴァ田中が戦っている路地の監視カメラをハッキングしその映像を見た。

 

「あ~やっぱり負けてしまたカ」

 

「あの二機は試作段階の機体でしたからね。ほかのネームドよりかははるかに機能も少ないし、ボディーも弱いですからしかないですよ」

 

 やはりといっていいのかなんというべきか、首を落とされ戦闘不能に陥っている田中の姿に、超は小さく嘆息した。

 

 だが、画面はきちんと残っており超の力作はちゃんと流れていた。

 

 このためだけにわざわざ犬神に金払ってスタッフを集めてもらったかいがあったというものだ! と、超はちょっとだけ得意げな顔をしながら監視カメラで胸の映像をクローズアップ。

 

 そして、

 

『おめでとうございます!』

 

「「………………」」

 

 この映像を撮影した時は別件の仕事でいなかったはずのクラレンスがトリを務めて映像が終わるのを見て、超と葉加瀬の二人は思わず沈黙した後、

 

「……あっ!? 超さん! ここにも! この映像にまで映っています!?」

 

「ちょ、魔法世界のモブにまぎれてるじゃないカ!? どうやって割り出したネ!?」

 

「ぬあぁ!? 全滅、全滅です超さん!! あの人が映っていない映像が一つもありません!」

 

「ひぃっ!?」

 

 ネタとして取って置いたすべての映像にクラレンスが映っていることを発見し、ちょっとだけあの老紳士が怖くなった超だった。

 

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