とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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37話・魔法少女(?)になってよ!!

『僕と契約して魔法少女になってよ?』

 

「くどい! ならないと言っているでしょう!?」

 

 魔力だまりにて無数の閃光がひらめく中、その閃光よりも早く激突する二つの影が戦っていた。

 

 “ひとつは胡散臭い目と口と耳を装備している《QB》田中。その体からはどことなく胡散臭い悪役チックな空気が流れだしている。”

 

 “もう一人は長大な野太刀を構え斬りかかる妙齢の美女――葛葉刀子。こう見えてバツイチである。”

 

「何ですかこの余計なこと言っているテロップは!?」

 

『願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、謎テロップは呪いから産まれた存在なんだ』

 

「そんな物騒なものなんですかこれ!?」

 

 空中に浮かぶ青い枠で囲まれた文字群に激怒する刀子に、意味不明なことをいうQB田中。

 

 しかし、二人の手が止まることは一切ない。

 

 岩をも断ち切る剣戟で刀子が切りかかれば、QB田中は鋼の手で応戦。断ち切られるか断ち切られないかというぎりぎりの力加減で、斜めに構えた腕の上に刀を滑らせその斬撃を受け流し、

 

 気を雷に変換した斬撃を刀子が飛ばせば、近くにいたノーマル田中を投げつけ雷にぶつけ相殺する!

 

「って、仲間じゃないんですか!?」

 

『もちろん、無駄な犠牲だったら止めただろうさ。でも今回、田中の脱落には、大きな意味があったからね』

 

「つくづく腐ってますね!?」

 

“このQB田中のOSはネームド田中の中でも屈指の外道っぷりを発揮するようインプットされています”

 

「そしていらないですよこの無駄解説!?」

 

 どちらにしろ斬りますし。と刀子は刀を構え再び一気呵成に斬りかかる。

 

 先ほどの攻撃から、やはりこの田中もほかの田中と同じように主要部分は機械でできている、と刀子は考察する。なぜなら、刀子の雷の斬撃を彼はよけるでも受け流すでもなく、味方を投げつけての相殺によって回避したからだ。

 

 おそらく直撃どころか、かすることすら危ぶまれるのだろう。何せ相手は、

 

「機械なんですから!」

 

 機械……それも精密機械の塊であるロボットは、いくら魔法で動いているといっても必ずどこかで電気的処理を行っている。

 

 それに高圧の雷撃に匹敵する刀子の雷鳴剣を叩き込めれば、このロボットは必ず落ちる!

 

 先ほどまでの闘いから、素早くそう判断した刀子は、瞬動によって瞬時にQB田中の背後にまわり、

 

『なっ!』

 

「沈みなさい」

 

 背後からの斬撃。QB田中は反応が遅れ防御が間に合わない。

 

 つまりのその胴はガラ空き。刀子はそこに、

 

「雷鳴剣!」

 

 稲妻をまとった斬撃を叩き込んだ!

 

『っ――――』

 

 悲鳴も上げられず、体にめり込んだ刀の切っ先から膨大な電流を流しこまれ打ち震えるQB田中。それはしばらく抵抗するかのように刀子に手を伸ばそうとしたが、

 

「ふん」

 

 刀子が剣を引き抜き、斬岩剣によって手を切り飛ばすことにより無力化される。

 

 そして、

 

『まったく……ひどいことをするね』

 

 最後にQB田中はそれだけを絞り出して、倒れ沈黙した。

 

「く、苦しい戦いでした……」

 

 主に精神的に……。と、刀子は思わず嘆息をもらしながら刀を鞘に納める。

 

 主戦力をつぶしたからには、再び生徒たちの援護に戻らないといけない。だが、今だけは少しだけ休みたい気分だと彼女は思った。

 

「まったく……悪ふざけにもほどがありますよ」

 

 それとも、祭りならばあのくらいのテンションでいなければいけないのでしょうか? と、ちょっとだけ若い超のテンションについていけないな~と、刀子が苦笑を浮かべる。

 

 そして、

 

「ま、まちなさい! 落ち着きなさい私!! 大丈夫、私だってまだまだ十分若いはずです!!」

 

 脳裏をかすめた「年には勝てない……」という言葉を必死に否定しながら、刀子は勢い良く首を振る。その時だった、

 

 彼女がそれを目撃したのは。

 

「っ!?」

 

 突如街に落ちる影からにじみ出るように出現した、無数のQB田中の姿を!

 

『『『『無駄な事だって知ってるくせに。懲りないんだなあ、君も。代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね。勿体ないじゃないか』』』』

 

「なん……ですかこれは!?」

 

 突如出現した異常事態に、刀子が思わず固まる中、突如出現したQB田中達は、

 

『『『『まったく、後処理するこっちの身にもなってくれよ』』』』

 

「なっ!?」

 

 突如、倒れ伏したQB田中に群がりその体を分割解体――その後、むしゃむしゃと食べ始めた。

 

 そのあまりの光景に、刀子どころか戦場の空気が一瞬固まる。

 

 そんな中、平然と仲間を食べ終え、

 

『『『『きゅっぷい』』』』

 

 と光景に似合わないかわいらしい声を上げるQB田中達の頭上に謎テロップが出現した。

 

“このQB田中達は特別な訓練を行った後、専門家の指導のもと共食いを行っています”

 

「どんな専門家!?」

 

 後ろに本物がいるような気がしてならないテロップの文字に学生たちは戦慄するが、特にアニメをたしなまない刀子は素直にツッコミを入れた。

 

 だが、そんな余裕がある光景はここまでだ。

 

『『『『さて――僕と契約して魔法熟女になってよ!!』』』』

 

「っ――!!」

 

 怒りの沸点を一気に越えかける刀子だったが、ここでキレるわけにはいかないと必死に自らを抑え込む。

 

 なぜなら、このQB田中の実力は単体でならはるかに刀子に及ばないものの、数がそろったというのならかなりの脅威になるくらいあったからだ。

 

 現在出現しているQB田中の数は約20。数の暴力で押し込まれれば、さすがの刀子もかなり危険な数。おまけに彼らの頭上には、

 

“このQB田中達はミサカネットワーク(本当は普通の電磁ネットワーク)によってつながっています、とミサカ10345号は、なんでこんなめんどくさいことをしないといけないんだ? という内心を必死に押し隠し仕事に邁進します”

 

“故にこのQB田中達はすべての感覚を共有し、あらゆるフォーメーション攻撃、20体によるすきのない視覚、同時ジェットストリームアタックが可能です。と、ミサカは12387号はミサカにはない機能の数に驚愕をしつつ仕事を遂行します”

 

 と、わけのわからないテロップが出ていて、

 

「つまり――あなたたちは初めからそうやって――徒党を組んで戦うようにできていたんですね!!」

 

 こうなると厄介どころの騒ぎではなくなる。たとえ刀子が彼らの弱点である稲妻の剣を振るえるといっても、それはあくまで単体攻撃。

 

 ここで広域範囲を砲撃する決戦奥義を使えばあるいは? ということも考えられるが、それをしてしまうと周囲にいる生徒たちを巻き込んでしまう。

 

「やるしか……ないんですね」

 

 だから刀子は覚悟を決め、刀を構えた。

 

 行うことはいたって単純。広範囲攻撃を使わずに、QB田中を一体ずつ斬り捨てる。

 

 今の刀子にそれ以外の手段はとれない。だから刀子は必死にタイミングをはかった。

 

 一瞬の隙が敗北につながる。彼女はそれを理解していたから、剣士としての感覚を、鋭く、細く……鋭敏に研ぎ澄ましていき、まずは一体、確実に屠れるタイミングを計り、

 

『僕と契約して魔法少……魔熟女になってよ。ぷっ』

 

「死にたいのか貴様ぁあああああああああああああ!!」

 

 先頭に来ていた一体の言葉が一気に彼女の冷静さを奪い、思わず力任せに斬りかからせてしまった。

 

 当然刀を振るわれたQB田中は待ってましたと言わんばかりに右腕を突き出し、それを斜めに構えて剣戟を滑らせる。

 

「しまっ!?」

 

『この国では、成長した女性のことを、熟女って呼ぶんだろう? だったら、もはや少女ではない君のことは、魔熟女と呼ぶべきだよね』

 

 そういったあと、見事に刀子の剣戟をパリィしたQB田中はほかのQB田中と示し合わせ一斉に刀子に向ってコブシを突き出す。

 

 そのコブシに握られているのは、漆黒の弾丸がはめ込まれた薬莢!

 

 ここまでか!? と、刀子は思わず目をつぶる。

 

 そして、

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「ディグ・ディル・ディリック・ヴォルホール」

 

 聞き覚えのある声とともに、

 

『『『『うわぁああああああああああああああああ!?』』』』

 

 QB田中達が吹き飛ばされる音と、逆巻く暴風の音が聞こえてきて、

 

「え?」

 

 刀子は思わず目を開く。

 

 そしてそこにいたのは、

 

「よう、葛葉――危なかったな」

 

 突風の障壁を展開し、刀子を守ってくれた人物がいた。口元にくわえた煙草から紫煙をくすぶらせながら立つ男は、漆黒のスーツとグラサンをかけた渋い男性――それは、

 

「か、神多羅木先生!?」

 

「立てるか?」

 

「っ!? そ、そこまで世話を焼いていただかなくて結構です!」

 

「そうか? それはすまない」

 

 いつの間にかへたり込んでいた自分の姿を指摘され、成人としては結構恥ずかしかった刀子は照れ隠しに怒鳴りながら、あわてて立ち上がり足などについた土を払う。

 

 そんな刀子の態度に神多羅木は苦笑を浮かべつつ、風の防壁の向こうでこちらを睨みつけているQB田中達を見つめる。

 

「さて、いろいろめんどくさそうだが……他の場所も心配だ。さっさと片付けるぞ」

 

「言われなくても!」

 

 そして、神多羅木がフィンガースナップの構えととると同時に、刀子もしっかりと自身の刀を構えなおし、その切っ先をQB田中達に向けた。

 

 Ⅵ追撃戦や、学園防衛のときはよくこの二人はペアとなって戦っていた。

 

 近距離戦闘のエキスパートである刀子と、無詠唱風魔法の達人である神多羅木は戦闘における相性非常に高く、二人でペアを組めばタカミチにすら引けを取らない戦果をあげることすらある――麻帆良裏の名物コンビの一つ(ちなみに名物コンビはいくつかあるがその中には『ジョニー&レイジー』がいたりするのでその色物性は推して知るべし)。

 

 いつも背中を預けている温かみを感じ、刀子が内心で感じていた先ほどまでの悲壮感はどこかへ消えてしまっていた。

 

 神多羅木と一緒なら、どのような状況でも切り抜けられる。今までの経験から刀子はそう確信している。

 

「ちくしょー!! 何だあのグラヒゲっ!! かっこいいじゃねーか!!」

 

「カップル気取りかチクショー!! いいなぁ、ヒーローユニット本気でいいなぁ!!」

 

「に、憎しみで人を殺せたら……」

 

「かわれ! 刀子女史の隣、代わってくれ!! お願いします、土下座でも何でもしますから!!」

 

「……」

 

 な、なんだか周りが騒がしい気がしますが……カップルとかそういうのではありませんよ!? あくまで仕事仲間としてベストなパートナーというだけであって、恋愛感情とかそういうのは、

 

「? どうした刀子? 顔が赤いぞ?」

 

「え? な、なんでもありません!?」

 

 そんな風に周りの生徒たちにあおられ若干混乱する刀子に首をかしげながら、神多羅木は後ろを振り返りこちらにヤジを飛ばす生徒たちに一言。

 

「悪いな餓鬼ども。刀子の隣(ここ)は大人の特権だ。もう少しでかくなってから出直すんだな」

 

「「「「ちくしょぉおおおおおおおおおおおお!!」」」」

 

「ちょ!? 何言っているんですか神多羅木先生!?」

 

「なに、学園祭だ。このくらいのノリでいかないとな。それにお前、また彼氏に逃げられたんだって? 二日目に大分荒れていたとシスター・シャークティーから聞いたぞ? だったら今恋愛話はご法度だろ?」

 

「ぐぅ……。あ、ありがとうございます……」

 

 細やかな気づかいもできるし、仕事仲間としては文句ないですし、性格はマイペースだけど誠実だし。ほんと……何で結婚しないんでしょうねこの人は。と、刀子は内心首をかしげながら、突風の壁が解除されると同時に、

 

「斬岩剣!!」

 

『『『『っ!?』』』』

 

 一刀のもと、QB田中の一体を切り捨てる。

 

 他のQB田中達もあわてて応戦しようとするが、

 

「遅い」

 

 刀子に襲いかかろうとしたQB田中達は後方に控える神多羅木からの正確無比な風の斬撃による援護攻撃によって見事に両断された。その間にも刀子はすでに別のQB田中へと向かっており、剣を受け止めようとしたQB田中に、

 

「雷鳴剣!」

 

『っ!?』

 

 稲妻の切っ先をぶつけ雷を流し込み沈黙させる。

 

「頼もしいな」

 

「どっちがですか?」

 

 二人はそう言葉を交わしながら、次の獲物を切り捨てに行く。

 

 その二人の背中は、まるで長年連れ添った恋人のように自然と寄り添っているように見えた。

 

 後日――学園祭が終わった後発表された麻帆良新聞で《もう付き合っちゃえよ馬鹿共ランキング》で1位を獲得してしまい、刀子がもだえ苦しみ神多羅木は苦笑を浮かべることになるが、それはまた別の話。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 息の合った剣士と魔法使いの魔法先生が『分裂』の特殊機能を持ったネームド田中を次々と粉砕していく。

 

 それを息をひそめながら眺める一人のスナイパーが、学園都市のとある建物の陰にいた。

 

「いやはや……さすがは麻帆良裏の名物コンビ。さすがにあの程度の田中では倒せないか」

 

 “龍宮真名(???) 狙撃手”

 

「あと、何で私だけコナン風テロップなんだ? やめてくれないか? 実際の年齢がばれる」

 

“仕様ですので。それに一応(???)にしておきました”

 

「三ケタの時点であまり気を使ってくれている気がしないんだが……」

 

“――――――――”

 

 テロップはどこか不満げな様子で沈黙を現す表示をした後、

 

“龍宮真名(7?) 狙撃ング”

 

「怒ったのか!? 自分の仕事にケチつけられて怒ったのか!?」

 

 本気で謝るから表示元に戻してくれ!! と、龍宮は小さく懇願しながら狙撃銃を構え、前線を切り開く女剣士に照準をあてる。

 

「悪く思わないでくれよ葛葉先生。これも仕事(・・)でね」

 

 いい思い出作りができそうなじれったい友人以上恋人未満の二人に詫びを入れつつ、龍宮は銃の引き金を引く。

 

 銃に走る火薬が爆発したときの衝撃。長年の経験からその感触に狙撃の成功を確信した龍宮。だがしかし、その視線を外すことは決してなかった。

 

 狙撃は成功するまでが攻撃だ。特に相手は飛び道具が通用しないと豪語する神鳴流。最後まで油断はできない。

 

 だがしかし、神多羅木が来たことで優位な立場に立てたこともあり、高揚しているのか刀子が狙撃に気付いた様子はない。

 

 いけるか? 龍宮がニヒルに笑いながらそう漏らしかけた時だった。

 

 パン! という軽いおとともに、何かが側面から龍宮の弾丸を打ち抜いた!

 

「っ!?」

 

 驚く龍宮に視界の中で、弾丸がその効果――時間跳躍減少を発動し、不発のまま消える。

 

 一体何が起こった!? と驚く龍宮。その時だった。長との連絡用に耳につけていたインカム。

 

『こんにちは、アルカナ』

 

「なっ!?」

 

 懐かしい声が響き渡った。

 

 

 この声は、間違いない……あの人だ!!

 

 

 それを確信したとたん、龍宮の体に鳥肌が走る。だが、それは恐怖によるものではない、

 

「やはり……あなたがそうだったんですね? モモ先生」

 

 彼女が抱いた途方もない、歓喜によるもの!!

 

『違うわ、アルカナ……今の私は13番(サーティーン)よ』

 

 麻帆良の舞台裏のさらに奥にて、最強とうたわれた狙撃手が姿を見せた。

 




 狙撃手組が完全に浮いている件――。
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