とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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38話・眠り姫だな、ガン○○

 とある麻帆良学園都市の裏路地にて、

 

「くっ……」

 

 ガンドルフィーニは魔法先生のなかで初めての敗戦、逃走をしてしまっていた。

 

 だが彼を責めることはできない。何しろ彼が相手をしているのは、超が作ったネームド田中のなかでトップスリーの性能を誇る田中。

 

 その名も、

 

『私の名は、グラハム・エーカー』

 

「!?」

 

『君の存在に心奪われた男だ!!』

 

 相手の索敵に引っ掛かってしまったのか、再び目の前に姿を現す鬼面の田中。ガンドルフィーニはそんな彼の支離滅裂な言葉に舌打ちをもらしながら、

 

「くるなら……こいっ!!」

 

 迎撃の体制をとった!

 

 敵が片手に出現させた銃を構えこちらの額をカーソルしてくる。

 

 当然食らうわけにはいかない。こちらも片手に持った銃の銃口を向けその攻撃に応戦する。

 

『人呼んで――グラハムスペシャル!!』

 

「なめるなぁああああああああああああ!!」

 

 そして先ほどから苦しめられている信じられない高速変態機動によって、裏路地を縦横無尽に飛び回りながら正確にガンドルフィーニを狙ってくる敵に対して、彼も己の銃とナイフを使い次々と弾丸を迎撃し、発動し、次々に空間を飲み込む漆黒の時間転移魔法をかろうじてよける。

 

 このようなやり取りをしてもう何時間経っただろうか……。と、ただでさえ集中力を必要とする敵と戦っていたため、擦り切れ始めた神経を感じながらガンドルフィーニは思わずそう考えた。

 

 この敵に対して神経がすり減るのは、何も彼の高速駆動についていくためだけではない。

 

 そう、理由はそれのほかにも、

 

『身持ちが堅いな、ガンダム!!』

 

「……気持ち悪いことを言うんじゃない!!」

 

 先ほどからこの田中が告げる意味不明な言葉が原因だった。

 

「大体誰なんだこのセリフを言っているのは!? 思いっきり男の声だぞ! それに私は既婚者だぞ!?」

 

“A:人呼んで……グラハム・エーカー!!”

 

「鬱陶しいわ!!」

 

 突然空中に現れた青枠のテロップを怒声交じりの銃撃でかち割るガンドルフィーニ。普段の彼なら決して見せない、戦いでは致命的なスキなのだが、どうやらそんな事が気にならないくらいに怒り狂っているらしい。

 

「くそっ……。なんで私がこんな奴と戦わねばならんのだ」

 

 家で待ってくれている妻と娘の顔を思い出しながら、早急にこの変態田中から離れたいと願うガンドル。だが、

 

『軍人に戦いの意味を問うとは、ナンセンスだなぁっ!!』

 

「……」

 

 ブチィッ!! とガンドルフィーニの中で何かが切れる。

 

「お前が言うなぁあああああああああああああああああ!!」

 

 怒りのあまり体内の魔力を全力放出するガンドルフィーニ。後先考えていない冷静な彼らしくない光景だが、暴走状態の魔法使いは限界を超え大幅な実力の拡張が行われる。

 

 その際ちょっと魔力が金色になったり、放出された魔力が炎のようにみえたりしたので、

 

「すわっ!? ガンドルフィーニがスーパーサイ○人に!?」と勘違いされ、学園祭終了後彼は小学生たちに「「やってやって! スーパーサ○ヤ人やって!!」」せがまれることになるが、今の彼は関係ない。

 

 ガンドルフィーニは拡張された魔力によって、身体強化を究極になるまで施し、

 

「しねッ!!」

 

『っ!?』

 

 瞬動をはるかに超える速度でグラハム田中に襲いかかる!

 

 しかし敵もさる者。その高速の攻撃に見事反応したグラハム田中は、

 

『好意を抱くよ。興味以上の対象だということさっ!!』

 

「だから気持ち悪いと言っているだろうがあぁああああああああああああ!!」

 

 即座に反応し、腕の中に変形格納されていたブレードを出現させ、ガンドルフィーニのナイフの一撃を受け止める。

 

 しかし、ガンドルフィーニも負けてはいない。ナイフとブレードがぶつかった場所を支点に大きく回転するかのように身をひるがえしたガンドルフィーニの蹴りが、グラハム田中の後頭部を狙う!

 

 まさしく歴戦の猛者――麻帆良の魔法先生の名にふさわしい鮮やかな攻撃。先ほどまでの田中なら、決して反応できる速度ではない。

 

 だが、

 

『そんな道理、私の無理でこじ開ける!!』

 

「なっ!?」

 

 田中は突然首をもぎとり、自分の手に抱えることによってあっさりガンドルフィーニのけりを躱した。

 

「そんなのありかぁああああああ!?」

 

『人呼んで、グラハムスペシャル!!』

 

「頭もいだだけだろうがぁああああああ!?」

 

 何やらドヤ顔で偉そうなことを言ってくるグラハム田中に叫ぶガンドルフィーニ。

 

 しかし、田中の猛攻はまだ続く!

 

『どれほどの性能差であろうと! 今日の私は阿修羅すら凌駕する存在だ!!』

 

「なっ!?」

 

 頭を再び元の位置に戻したグラハム田中は、片手のブレードとライフルをフルに使い、ガンドルフィーニに間断ない連撃を加え始める!

 

 銃弾がナイフで切られれば接近し、ブレードで切り付け、

 

 猛攻に耐えられなくなったガンドルフィーニが距離をとれば、信じられない連射性能の精密射撃を実現したライフルによって、ハチの巣にする!

 

「舐めるなぁああああああああ!!」

 

 しかし、ガンドルフィーニも普段と比べて大幅な実力アップがなされている。グラハム田中の猛攻を受けながらも彼は必死にそれに応戦し、隙を見て自らの魔法や弾丸斬撃を叩き込み続ける。

 

 もはや常人の目では負えないほどの速度で行われる戦闘。

 

 目撃者たちはこの光景を見て、

 

「いつからおれたちはDBの世界に紛れ込んだんだ!?」

 

 と、驚いたようだが、そんなこと知らない二人は自らのしのぎを削りあいながら敵との交戦を続けていく。

 

『やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ! そうだ、私と君は戦う運命にあった!!』

 

 その戦いのさなか、突如何かを言いだしたグラハム田中に舌打ちをもらしながら、

 

「なにを!」

 

 言っている!? と言いつつ、絶対聞く気がないガンドルフィーニはその顔面に向かって銃弾を叩き込むが。これまたあっさりふせがれてしまう。

 

『ようやく理解した! 君の圧倒的な性能に、私は心奪われた! この気持ち…まさしく愛だ!!』

 

「あ、愛ぃ!?」

 

 突然の告白に度肝を抜かれるガンドルフィーニ。しかし、そんな告白を無視してグラハム田中は告白を続けた。

 

『だが愛を超越すれば、それは憎しみとなる! 行き過ぎた信仰が内紛を誘発するように!!』

 

「今それ関係あるのか!?」

 

『そうしたのは君だ、ガンダムという存在だ! だから私は君を倒す。世界などどうでもいい…己の意思で!』

 

「このっ!!」

 

 自分のツッコミをあっさり無視して独白を続けるグラハム田中に、ガンドルフィーニは明確な殺意を覚える。

 

『とくと見るがいい…盟友が造りし、我がマスラオの奥義を!』

 

 だがしかし、次の瞬間に起こったことはその殺意以上にガンドルフィーニに驚きを与えた。

 

「なっ!?」

 

 突如、グラハム田中の背中から深紅の粒子が飛び散り、彼の体を赤く染め上げたのだ!

 

『トランザム!!』

 

 そう叫んだ瞬間、グラハム田中の移動速度が残像を残すほどの速度へと変貌する!

 

「ばかなっ!? ここにきて……さらに戦力を上げた!?」

 

『驚いてくれたようだな――なんという僥倖!生き恥を晒した甲斐があったというものだ!!』

 

 グラハム田中の変化はその変色だけではない。武装はどういうわけかブレード一本に変わっておりそれ以外の余計な装備はすでに彼のもとから離れ地面に落下し打ち捨てられている。

 

『斬り捨て……御免!!』

 

「くっ!?」

 

 通常なら遠距離攻撃手段を失った戦力ダウンと取るべき行い。しかし、これほどの速度で斬撃を打ち込めるなら、むしろ対人戦闘での遠距離など彼にとっては敵が眼前にいるのと変わらない。

 

 武装を捨てたことによりさらに体が軽くなった彼は、もはや残像すら残さない速度でガンドルフィーニにきりかかり、

 

「馬鹿なッ!? 私のナイフがっ!!」

 

 ブレードを受け止めようとガンドルフィーニが構えたナイフごと、彼の体をたたき切る!

 

「くそっ!?」

 

 しかし、ガンドルフィーニはまだあきらめていなかった。斬られる前に身を浅くそらした彼はスーツを着られただけでダメージを免れることに成功し、あわてて予備のナイフを取り出し構えなおす。

 

 だが、

 

『これが私の望む道――修羅の道だ!!』

 

「っ!!」

 

 トランザムを使ったグラハム田中は、もはやガンドルフィーニに勝つ機会を与えることすらなかった。

 

『そうだとも。この戦いは――最早愛を超え、憎しみをも超越し…宿命となった!』

 

「ぐあぁあああああああああああああああああああ!?」

 

 ガンドルフィーニの前進に、深紅の軌跡を描いた神速の斬撃が無数に叩き込まれる。

 

“ちなみに剣には安心安全に非殺傷設定が組み込まれているのでご安心ください。あと、技が九頭龍閃に似ているかもしれませんが全く別物ですのであしからず。ミスターブシドーがそんなもの使うわけないじゃないですか”

 

『勝手にそう呼ぶ。迷惑千万だな』

 

 と、テロップとグラハム田中が何か変なやり取りをしてた気がしたが、もはやガンドルフィーニに気にしている余裕はない。

 

 彼はなんとか必死にその攻撃のダメージを減らそうと、身をよじりかけ、

 

『抱きしめたいな……ガンダム!!』

 

「ぶっ!?」

 

“無視すんなやゴラァアアアアアアアアアアアアアアア!!”

 

 最後にグラハム田中が決めてきた、ヘッドダイブが見事に鳩尾に決まり、彼の意識はあっさりと失われた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 気を失ったガンドルフィーニの頭をわしづかみにし、持ち上げたグラハム田中。

 

 彼はまるで感慨深いとでも言いたげな顔で、

 

『眠り姫だな……ガンドル(・・)

 

「が、ガンダムじゃないのか……」

 

 気を失ってもまだツッコミを入れてくるガンドルフィーニに『ふむ』と呟き、グラハム田中はその腹部に漆黒の弾丸を押し当てる。

 

 それと同時に発動した時間跳躍魔法がガンドルフィーニの体を包み込み、彼を三時間後の未来へと飛ばした。

 

 そして一人残った田中に、

 

“さぁさぁ、ミスターブシドー!! あなたの敵は倒せたのですし、今度は生き残った麻帆良の魔法先生たちを!!”

 

 と、謎テロップが次なる獲物に向かわせるため彼をけしかけようとするが、

 

『興が乗らん!!』

 

“へ?”

 

 グラハム田中はそう言い捨てると、どこかに向かって飛んで行った。

 

 途中ドップラー効果を伴ったグラハム田中の声で、

 

『ガンダムっ! ガンダムっ!! 私はガンダムっ!! グラハムガンダムっ!! 阿修羅……スペシャル!!』

 

と、どこかのニコニコする動画で上がっていたらしいネタが聞こえてきたしたが、

 

“……”

 

 期待を裏切られた謎テロップとしてはそんなことは意外とどうでもよく、

 

“ふっ……邪険にあしらわれるとは。ならば君の視線をくぎ付けにする! みるがいい、盟友が作りし謎テロップの奥義を!!”

 

 と、ちょっとだけ彼のセリフを言ってみたかった謎テロップはこれ幸いとばかりにその文字を表示した後、満足げに消えるのだった。

 




ネームド田中戦初めての敗北です。

 この後グラハム田中がどうなったのか……劇場版に、続く!!b
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