とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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39話・オール・ハイル・ルルーシュ!!

『弾けろっ……ブリタニア!!』

 

「御免こうむる!?」

 

 真紅にカラーリングされた真紅の田中が、明らかにヤバそうな音を立てる右腕でアイアンクローをかまそうとしてくる。

 

 Ⅵはそれを長年の戦闘経験の勘で「くらったらやばい!?」と悟り、瞬時に瞬動。真紅の田中から距離をとり、

 

「Ⅵインパクト!!」

 

 右手に装填した巨大な気の塊を、腕を振るうことによって射出する!

 

 だが、

 

『輻射波動!!』

 

「なん……だと!?」

 

 その真紅の田中はそのままⅥの気力砲へと手をかざし、右手に機能を立ち上げた!

 

 瞬間、その右手から空気をゆがめる半透明上のエネルギーフィールドが発生し、見事にⅥの砲撃を止め切る!

 

「んなあほな!?」

 

『負けない……私の、紅蓮弍式なら!!』

 

「中に誰か乗ってるんか!?」

 

 中には巨乳の小人でもおるんか!? と、とちょっとだけ攻撃することをためらいつつⅥはわずかに視線を周囲へと走らせる。

 

 そこは阿鼻叫喚の地獄と化していた。

 

『ニホンポポポポニッポンポン!! 合衆国にっぽんぽん!!』

 

 何やらどこかの動画で見たような気がする歌を歌いながら、全力全開で腰を横振りする仮面の田中が乗った多脚戦車を中央に置き、

 

『四聖剣は偽名に非ず!』

 

“この剣は安心安全の非殺傷設計となっております”と、謎テロップによる謎の技術設定を伴いながら暴れる四人の剣士型田中。

 

『許せない、皆の気持ちを踏みにじって……ユーフェミアっ!』

 

 と、なんかパッとしないどこかの組織のリーダーを思わせる声の田中が絶叫して、生徒に返り討ちにあっていたり……。

 

 最後のはともかくほかにも何体かいる黒のバイザーをつけた田中たちはほかの田中たちとは一線を画する力を持っており、だんだんと生徒とⅥたちによる世界樹防衛戦線を後ろへと押し込み始めていた!

 

「なんなんやこいつら!?」

 

「超鈴音がいっていたスペシャルユニットたちだろ!! くるってわかっていたんだ……いまさら慌てる必要はない!!」

 

「そう言われてもやな……」

 

 おれは集団戦苦手なんやで? と、猫谷にⅥは思わずつぶやきながら、苦笑交じりにコブシを構えた。

 

 もとより彼の戦闘スタイルは素手による近接格闘。多人数を相手にした集団戦ではあまり力を発揮しないスタイルだ。

 

 気力砲撃による大規模範囲攻撃ができないわけではないが、あれも師匠やソコソコ魔力が高い魔法使いたちに比べると、いささか攻撃範囲は劣る。

 

 しかも、Ⅵが現在最高威力とするⅥインパクトを防ぎきる個体がいるとなると、

 

「やばいな……守りきれへんぞ!」

 

 Ⅵのその言は、すぐさま現実となり、

 

「っ!?」

 

「なんだ!?」

 

 Ⅵたちの周りで戦っていた生徒たちに襲い掛かった。

 

 漆黒のバイザー田中たちが銃を構え乱射を開始する。

 

 そして、その弾丸は生徒たちに着弾すると同時に真っ黒な球体に変貌し生徒たちを包み込む!

 

「あれは!?」

 

「なんや!?」

 

 驚くⅥと猫たちの眼前に謎テロップと、リリィからの通信が同時にⅥたちにその正体を教える。

 

“あれは失格弾――弾丸が着弾した生徒を法律(ルール)上の死亡扱いとし、強制的に失格部屋へと叩き込みます”

 

『さっき、脱落間際のタカミチさんから連絡入ったわよアンタたち。その弾丸の正体は時間跳躍弾。くらわないでね? 喰らったら学際が終わる三時間後にタイムスリップよ』

 

「くっ!? なんてことだ……ここにきてさらに奥の手を切るのか!!」

 

 苦手な戦場。くらえば即失格の弾丸。押され始めた生徒たち。

 

 そのすべてがⅥたちに対して不利な状況を提示してくる。

 

 この場所の世界樹防衛戦線は、通常ならもう持たない――確実な敗戦へと空気の流れが傾き始めていた。

 

 だが、

 

「はっ……。オモロイやないか」

 

 そんな状況にもかかわらず、Ⅵは不敵な笑みを浮かべた。

 

「Ⅵ?」

 

「コースケ。大規模破壊用の上級呪文や。いけるな?」

 

「あ、あぁ!! だが、周囲を巻き込まない破壊となると、《燃える天空》ではない、まだ慣れていない重力魔法での上級呪文になるし、詠唱も長く」

 

「かまわへん」

 

 不確定要素を不安そうに述べる猫谷を、Ⅵは笑いながら一蹴する。

 

「俺を誰やと思てんねん?」

 

 瞬間、Ⅵは勢いよく地面を踏みつけ、

 

「喀っ!!」

 

『『『『!?』』』』

 

 震脚による衝撃と路面破壊。そして、裂帛の気合いによって発動された衝撃によって、強制的に田中たちのセンサーをマヒ。その行動を一時的に中断させる。

 

「お前ら……下がれ」

 

「なっ! だが六重……」

 

 そして、彼はそれによって何とか田中の猛攻から逃れることができた学生たちに、後ろ下がるように親指を立てながら示す。

 

 当然、共に戦ってきた生徒たちは抗議の声を上げた。

 

 Ⅵの独壇場になることを――ではない。

 

 あれほど強力な田中全てを、Ⅵ一人が引き受けるということ悟ったが故の、警告交じりの抗議。

 

 一人では、絶対どうにもならないと。

 

 だが、

 

「おいおい、みくびんなやお前ら」

 

 Ⅵは笑った。

 

「俺は麻帆良最強――」

 

 になる予定の男……。と、ボソリと付けたしながら、Ⅵは笑う。

 

「大怪盗――スパルタンⅥやで?」

 

 瞬間、戦車の上に載っていた仮面の田中が哄笑を上げた。

 

『ふははははははははは!! 愚かな――戦術(こじん)戦略(しゅうだん)に勝てるものか!!』

 

 そんな田中のセリフに、

 

「おいおい、お前――」

 

 それ死亡フラグやで? と、凶悪な笑みを浮かべながら、Ⅵは仮面た中田騎乗する戦車に向かって疾走を開始する!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「行きましょう!!」

 

 そう言って飛び出したネギたちは、超の調査網にひっかからないよう裏路地や物陰に隠れながら疾走する。

 

 学園結界の復活に関しては千雨に一任している。仮にも彼女も麻帆良が誇るハイスペック少女の一人だ。何とかしてくれるだろうと、ネギは全幅の信頼を千雨に預けた。

 

 だから、彼はほかの武闘派の生徒や、軍師派の生徒をひきつれて荒ぶる麻帆良祭へと歩み出したのだが、

 

「え?」

 

 何度もぐりこんだだろうか……。

 

 明日菜たちが防衛する魔力だまりに直通する裏路地に入り込んだネギたちは、

 

「あら……遅かったわね。英雄の息子さん」

 

 その裏路地の壁に、四肢をナイフで貫かれ、サイケデリックな模様を壁に描きながら縫い付けられ、気を失っている姫と、

 

「あなたが遅いから――姫様、負けちゃったじゃない」

 

 それをなしたと思われる、ゆびの間にナイフを挟み込んだ黒く長い髪を持った美女が、凶悪に笑いながら待ち構えていた。

 

「あっ……」

 

 なんだ? と、ネギは思わず絶句する。

 

 先ほどまで一緒にいた姫が。麻帆良祭を一緒に楽しんでいた姫が。綿あめを食べてそのおいしさに絶句していた姫が――ネギの脳裏に浮かんでは消え、

 

「何をしている」

 

「ん? なにって?」

 

 戦争だけど? と、美女が答える前にネギは瞬動を使い飛び出す、

 

「ヒメちゃんに――何をしているんだぁあああああああああああ!!」

 

 許さない! 久しぶりに怒りに染め上げられた思考の中で、はっきりと相手に対する殺意を抱きながら魔力を放出するネギ。

 

 敵はその魔力にわずかに顔をゆがめつつも、

 

「残念。計算通りよ?」

 

「っ!?」

 

 まるでそれを待ち構えていたといわんばかりに、右手をふるう。

 

 はさまれていたナイフにはすべて気が通っており、鉄すら裁断する切れ味を誇っている。

 

 喰らえば命はない。ネギの冷静な部分がそう判断を下し、彼の前進から冷や汗を噴出させた瞬間、

 

「ネギ坊主!」

 

 クリーム色の布の槍が、そのナイフたちを迎撃しネギを刻む軌道上から弾き飛ばした!

 

「っ!?」

 

 驚く女性の眼前には、褐色の肌をした小柄な女子生徒――古菲。そして、

 

「落ち着くでござるネギ坊主。致命傷は避けられている。多少血の気はひいてござるが――命に別状はない」

 

 姫を救出し、分身に預け木乃香のもとへと送らせた楓がいた。

 

「それにこの女はきちんと超殿から言い含められているはずでござるよ。殺しは厳禁――と」

 

「ふん。そうよ。いい囮になると思ったからやっただけで、本当ならあそこまでやる必要なはいのよ」

 

 女に殺されかけ、一周回って冷静になったネギの耳には、先ほどの鬼気迫る声ではない、若干疲れがにじみ出た女のあっけらかんとしたため息交じりの肯定だった。

 

 え? なに? なんでこんなに空気激変してるんですか!? と、ちょっとだけその変化についていけないネギが目を白黒させているうちに事態は進む。

 

「まぁ、登場は何事もインパクトっていうし? 依頼主が言うにはその子供だけが依頼主に勝てるやつだっていう話だし? ここはちょっと無理してでも止めた方がいいかなって思って、姫様痛めつけちゃったんだけど――」

 

 なんでかな……。さっきからジルドレに斬られた傷がうずくのよね……。と、ちょっとだけ後悔したような顔で独白する女をしり目に、楓と古菲は背後にかばう文系連中とネギに告げた。

 

「いくアル!」

 

「行くでござる」

 

「で、でも!!」

 

 あんな凶悪な人、任せるわけには――! と、ネギは教師としての責務を果たそうとするが、

 

「ネギ坊主――大局を見失ってはいけないでござる」

 

「超のことよろしく頼む――ネギ坊主にはそういったはずアル!」

 

 っ――! と、二人の生徒に諭されたネギは、思わず息を飲み、

 

「必ず――勝ってください」

 

「「当然!」」

 

 力強く返事を返してくれた二人を信じ、彼は杖にのり空へと飛び立った。

 

 そして、

 

「甲賀中忍――長瀬楓」

 

(クー)家、第126代目が娘――古菲アル」

 

暗殺者(こっち)には名乗の習慣がないんだけど」

 

 依頼人からは盛り上げろって言われているしね。と、幹部(ヒール)ユニットと英雄(ヒーロー)ユニットの戦いを映すためにやってきた、超お手製の宙を飛ぶカメラに気付いた女はため息交じりに肩をすくめながら名乗りを上げる。

 

「《元・帝国》所属。最高の暗殺者《SMブラザーズ》の妹――ノゾミよ」

 

 マゾミって言ったら殺すからそのつもりで。と、最後にそうつぶやきながら、

 

「シっ!!」

 

「吧っ!!」

 

 楓が投げてきた手裏剣を投げナイフによって弾き飛ばし、その隙に接近してきた古菲に強烈なけりを叩き込み吹き飛ばす。

 

「二人がかりいい判断だと思うけど」

 

 最高の称号はだてじゃないのよ? と、凶悪に笑った。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「うらぁ!!」

 

 怒声のような裂ぱくの気合いと共に、漆黒の体に一本の剣を携えた田中の頭に、Ⅵの強烈なけりが叩き込まれる。

 

 だが、田中も負けてはいない。

 

 黒い田中ともみ合うⅥの周囲には既に四体の田中が配置についており、

 

『行くぞ四聖剣!!』

 

『『『『旋回活殺自在陣!!』』』』

 

 瞬間、Ⅵの周りを取り囲んでいた四人の剣士型田中は、凄まじい速度でその周囲を旋回しはじめ、まるで針の穴に糸を通しでもするかのような速度で、黒い田中だけを見事によけ、その剣の斬撃をⅥに叩き込もうとする!

 

「気合い防御!!」

 

 しかし、Ⅵはその斬撃に一切避けるそぶりを見せなかった。

 

 自身の体に宿る気を全力で放出し、瞬間的に漆黒田中諸共四体の田中を弾き飛ばし、

 

「回天!!」

 

『『『『『なっ!? バカなっ!? 貴様は恐れを知らんのか(いろいろな意味で)!?』』』』』

 

 某忍者漫画の絶対防御風に体を高速回転。さらにその田中たちを弾き飛ばし、

 

「Ⅵ――万烈拳!!」

 

『『『ぐぅ!?』』』

 

 Ⅵがその後隊と戦っているうちに、後ろに下がり再び陣形を立て直している生徒たちや、詠唱を続けている猫谷に襲い掛かろうとした田中たちに向かい、鋭い気弾の弾幕を張る。

 

『ニッポンニッポンニッポンポン!! なかなかやるな! ニッポンポン!!』

 

「なぁ、思うんだがあの機体だけ絶対壊れてないか!?」

 

「あほコースケ! そんなツッコミしてる暇があるんやったらさっさと呪文おわらせぇ!!」

 

 いまだに戦車の上で踊りを止めることがない仮面田中に、猫谷の絶叫がぶつけられるが、一応劣勢のⅥはそんなことにかまっている余裕はない。

 

 啖呵きるんはかっこよくいけたんやけど……やっぱりちょっと無理あったかいな? と、Ⅵは今の状態にわずかながらに彼らしくもない後悔の念を浮かべた。

 

 この四聖剣とそのリーダー。紅蓮弐式に比べるといささかスペックは劣るが、それでもこれだけの数がそろえば十分Ⅵと渡り合える性能だ。しかも、リーダー機によって出される指示は常に的確なうえに、変幻自在の連携攻撃まで取ってくる始末。

 

 この上なくⅥにとっては戦いにくい相手だ。

 

 それに、

 

『紅蓮を、なめるな!!』

 

「なめてへんやろうが!!」

 

 その攻撃が終わった瞬間、後詰めとして襲い掛かってくるこの真紅の機体に至ってはⅥにはやや劣るとはいえ、チームプレイの連携交じりとなるとⅥに匹敵する戦闘能力を発揮していた。

 

 そしてその強さを支える要因は、

 

『扇! 次はB4に移動! 紅蓮を全力で援護射撃!! タスケテータスケテー!!』

 

『了解した!』

 

 地味に指示を出しているあの仮面田中のせいだ。あの田中――ふざけたダンスだけをしているように見えで、地味に先ほどから細やかな指示を出してバイザー田中たちの統制をとっている。

 

 その指示の一つ一つが、Ⅵのすきや油断をつく的確かついやらしいものばかりでっ!!

 

「あぁ……鬱陶しいわぁああああああ!!」

 

 斜め後ろから放たれる時間跳躍弾の連続攻撃を虚空瞬動で何とかかわしたⅥは、天へと上り、

 

「潰れろっ!!」

 

『っ!?』

 

 後方で指揮を執っている仮面田中に向かい、気が装填された左手をふるおうとして、

 

『おはようございました』

 

「っ!?」

 

 天から降り注ぐ、オレンジ色の塊に押しつぶされた!

 

「なっ……オレンジぃ!?」

 

『オレンジじゃないんです……ゼロぉおおおおおおお!!』

 

 それはオレンジ色の球体装甲に身を包んだ、巨大な田中!!

 

『受けよ忠義の嵐!!』

 

「くっ!!」

 

 上方からの落下打撃により、Ⅵを見事地面にたたきつけたその機体はさらに追い打ちをかけるべく、高速回転しながら地面に倒れ伏したⅥに襲い掛かる。

 

『記憶せよ、ジェレミア・ゴッドバルドを! お前に敗北をもたらした、記念すべき男の名だ!!』

 

「残念やけど――」

 

 すでに先約が入ってんねん!! と、Ⅵはその攻撃はすでに予想していたⅥは、今度は腕に装填していた気を放出。足の代わりに両手を使った瞬動で、鮮やかに宙を舞い、

 

「Ⅵインパクトっ!!」

 

『爆散!?』

 

 その一撃をわりとあさりくらったオレンジ。だがしかし、その機体はいまだに健在。高速回転しながら多脚戦車の前へと降り立ち、

 

『ぜろぉ!!』

 

『ほう、久しぶりですね、まだ軍におられたのですか。しかし、今あなたに関わっている時間はないんですよ、オレンジくん』

 

『オ、オ、オォォォォォオレンジだとぉ!? 死いねぇ!!』

 

「なかよくせーや!?」

 

 何かもめだした仮面田中とオレンジ田中に思わずツッコミを入れてしまう。

 

 そして、それがⅥの致命的なミス。

 

『『『『『すべては――合衆国ニッポンポンのために!!』』』』』

 

「っ!?」

 

 Ⅵがツッコミを入れたすきを突くために、一斉に攻撃を仕掛けてくるバイザー田中たち。

 

「おいおいおいおい! なんツーことすんねん!? 相手が突っ込みいれてるときは攻撃したらアカンゆう法律(ルール)を知らんのか!? 変身中のヒーロー攻撃するようなメンタリティを恥じろ!!」

 

『ふはははははは! 撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ!!』

 

「お前は撃ってへんやろ!? 撃ってんのバイザー達やんけ!?」

 

『そう、そしてそのバイザー達を散々使いつぶしてぼろ雑巾のように捨ててやる!!』

 

「おい、あいつあんなこと言ってるけど!?」

 

『ニッポンポンポンニッポンポン!!』

 

「きけやっ!?」

 

 そんなネタ発言は一切考慮された様子はなく、バイザー田中たちは一直線にⅥに向かって襲い掛かってくる。

 

 だが、猫谷の詠唱はまだ続いている。

 

 Ⅵはあと少しだけ、時間を稼がなくてはならない。

 

 だから、

 

「はっ……。これは今度犬神君と戦うときのために取っときたかったんやけどな……」

 

 祈るように、手を……合わせた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 麻帆良上空を凄まじい速度で飛来する弾丸たち。その弾丸たちは宙でぶつかり合い、火花と漆黒の球体を咲かせ、鮮やかに紅色に染まり始めた空を彩っていた。

 

『ずいぶんといい射撃をするようになりましたね……アルカナ』

 

「敵を褒めている暇があるんですか?」

 

 それに、今の状態で言われても嫌味にしか聞こえない!! と、龍宮真名――いや、いまだけはマナ・アルカナとして戦場に立つべきか――と思い直した、アルカナは不敵な笑みを浮かべてボルトアクション式鬼の銃を操作。薬莢を手動排出する。

 

 しかし、その間に敵の攻撃は三度飛来してきた。アルカナは必死足を動かしその銃撃を回避。

 

 何とか装填が済んだライフルを片手に、先ほどの銃撃から割り出した敵の位置情報を参照し、跳弾を使っても角度的に狙撃不能な物陰へと姿を隠す。

 

「同じ銃を使っているはずなのに……ここまで差が出るか!」

 

 アルカナが今使っている銃は、彼女―—13番(サーティーン)が現役時代「これじゃないとあたらないのよね……」といって、愛用していた銃と全く同じものだ。

 

 おそらく13番(サーティーン)もこれを使っている。龍宮が持つ狙撃手独特の直感が、そのことをはっきりと教えてくれていた。

 

 だがしかし、13番(サーティーン)はアルカナが弾丸を一発装填する間に三度――アルカナと同じ銃を使い弾丸を放った。

 

 それは、アルカナと13番(サーティーン)の間には筆舌に尽くしがたい絶対的な実力の壁があることが示している。

 

 だが、

 

「負けるわけにはいかないんだよ」

 

 ニヒルでクールな笑みを浮かべながら、アルカナはそれでも銃を構える。

 

 この機会を逃せば、彼女はもう二度と13番(サーティーン)として自分の前に現れることはないだろう。

 

 彼女の弟子として、彼女の友人として、彼女の恋敵として――長年彼女を追い続けていたアルカナだからわかる、そのことにほぞをかみながら、

 

「負けるわけには……いかないんだよっ!!」

 

 アルカナは物陰から飛び出し、銃を構え、

 

 引き金を、引く!!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 瞬間、Ⅵの眼前にまるで疾風のように突撃してきたバイザー田中たちは、

 

『っ!?』

 

 まるで見えない壁にぶつかったかのように、ほぼ同時にふきとんだ!

 

『なんだあの化物は!? 白兜か!?』

 

「いや、どっからどう見てみ金髪やんけ……」

 

 驚き慄く仮面田中に呆れつつ、Ⅵは合掌の体勢から微動だにしない。

 

 だがしかし、同じ階梯の強さにある猫谷には、Ⅵが何をしたのか認識できていた。

 

 それは、

 

「お、おまえ……なんてことを!?」

 

「コースケ。言いたいことは分かるんや……だが、あえて言わせてくれ」

 

 そこでⅥは何か悟りを開いたような表情で猫谷の方を振り向き、

 

「強くなれるんやったら……たとえパクリであろうとやってみるべきやと思うねん?」

 

「ホントダメ人間だなお前!?」

 

 コースケの抗議の声を『あ~あ~。聞こえないぃいいいいいいい……』とわざとらしく躱しながら、

 

「ほい」

 

『っ!?』

 

 再び襲いかかってきたバイザー田中を、Ⅵは瞬時に打撃(・・)する!!

 

「犬神君はリアルの格闘技の境地を見せてくれよったけど……。それやったらおれはフィクションの格闘技の境地を見せなあかんよな?」

 

 何せ俺はあいつのライバルなわけやし? とうそぶきながら、Ⅵはひたすら打撃する。

 

 紅蓮弐式を、四聖剣を、さえないリーダー機を、オレンジを、見えないほどの速度で打撃する!!

 

 合掌から、伸び上がるように放たれる一切無駄のない拳打。あらゆる筋肉の動きから無駄がそぎ落とされ、ただ敵を打撃するためだけの一撃! 犬神に敗北したときから――いや。魔法世界(ムンドゥス・マギクス)から旅立つ際に、師匠と行った模擬戦で敗北してしまい、師匠に気持ち良く見送りさせてあげられなかった時から、鍛え上げられた一撃。

 

 あるマンガから得た修行法をつづけ、最近ようやく10発に一回は音を引き裂けるようになり始めたそれは、この戦闘によってようやく形となり実を結ぶ。

 

 背後には無数の腕を持つ観音像。

 

 もうお分かりだろう。

 

 そう、この技はジャンプ愛好家であるⅥが最も格闘技の完成系に近いと評したあの老人の技。

 

 たとえ犬神であろうとも、そうやすやすと複製できないであろう長年の研鑽がものをいう必殺技!

 

 その名も!!

 

「百式観音!!」

 

 原作通り念能力ではないため観音自体は動かない。単なるこけおどしではあるが、こういう技は気分が大事だからと自己完結。

 

 そう思っている間にも、Ⅵの体は無意識のうちに打撃を続ける。

 

 長年、祈りをささげ気で強化されていないコブシで岩を打撃し、祈りの体制に戻り、又殴る。

 

 ひたすらそれを続けたⅥの体は、もはや対象を殴りつけるに至るまでの動作が反射といっていい速度で身についており、そこには一切のタイムラグも存在しない。

 

 音を引き裂く拳。

 

 音を置き去りにする拳。

 

 そんな速度で放たれる、不可避の強力な拳打の嵐に、田中たちはなすすべもなく吹き飛ばされていく。

 

『バカなっ!? 戦略が戦術に負けるなど!?』

 

「はっ……小難しいことばっかり考えとるから足元掬われるんやで?」

 

『スペックではまさっているはずなのに!!』

 

「いや……それはどうやろう?」

 

 あと、こいつもしかしたらいうほどもの考えてない? と、いまさらながらそのことに気付いたⅥだったが、

 

『だがしかし、貴様が私を傷つけることはできない!!』

 

「っ!?」

 

 取り巻きを吹き飛ばし、無防備になった仮面田中に向かって百式観音を叩き込んだ時に、突然出現したうす紫色の障壁に防がれるのを見て愕然とする!

 

「なっ!? なんやそれ!?」

 

『絶対守護領域――俺を守る王の領域さ』

 

 瞬間、仮面田中が乗っていた多脚戦車が、ぎょろりと瞳代わりのカメラを動かし、

 

『あっ……ピザ』

 

「って、C.Cそれぇえええええええええええ!?」

 

 思わずⅥが愕然とした表情でツッコミを入れた瞬間、

 

『触るなゲスが。腕立て伏せでもしていろ!!』

 

「っ!?」

 

 瞬間、仮面の一部がスライドし田中の瞳を晒す。そこに刻まれるの模様は羽ばたく鳥。

 

 ギアスの模様。

 

「って、んなあほなぁああああ!?」

 

 えぇええええええええ!? と、驚くⅥの眼前に謎テロップが出現する。

 

“この能力を複製するためだけに作られた超様謹製《無駄に洗練された無駄な魔改造シリーズその①》――強制ギアス。彼の瞳には考えられる限りの強制契約の魔法がかかっており、その瞳と目を合わせたものは一度だけ彼の言うことを聞かなければいけません。効果持続時間は30分です!!”

 

「ふざけんなぁああああああああ!?」

 

 Ⅵが思わずそう叫ぶももはや手遅れ。彼の体は自分の意志に反して素早く地面に両手をつき、

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 腕立て伏せを開始する。

 

 その姿はもう、隙とかそんな生易しい言葉では言い表せないほど隙だらけで……。

 

『お前の世界は俺が否定する……』

 

「くそ……」

 

 先ほど吹き飛ばされた田中たちも、続々と再集結し始めていて、

 

『消え失せろっ!!』

 

「くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 今のⅥにはもう……なすすべはなかった。

 

 

 

「あのさ……僕を忘れていないかな?」

 

 

 

 そう。Ⅵには(・・)

 

『っ!?』

 

 

 突然かけられた声に、仮面田中は慌てて振り向くがもう遅い!

 

「Ⅵ……盛大に巻き込むけど、まぁ、お前なら大丈夫だろ?」

 

「え、ちょ!? まっ……たすっ!?」

 

 燃える天空に匹敵する、千の雷に匹敵する、重力魔法の最上級呪文の詠唱を終えた猫谷は、すっかり忘れられていた憂さを晴らすがごとく、情け容赦なく手に持った杖をふるった!

 

「《飲み干す黒孔》!!」

 

 瞬間、仮面田中の中央に小さな黒い点が生み出され、

 

『ぐあぁああああああああああああ!? ナナリィイイイイイイイイイイイイイ!?』

 

『ルルーシュゥウウウウウウウウウウウウウウウ!?』

 

『ゼロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』

 

 多種多様な悲鳴を上げる田中たちを、その黒い点が見る見るうちに吸い込み粉砕していく!

 

 その姿はまさしく小型ブラックホール。その中央では急速圧縮され粉みじんに粉砕された、田中だったものたちが納められていることだろう。

 

 そして、当然それは至近にいたⅥまで巻き込みかけて……。

 

「ちょちょちょちょちょちょ!? 死ぬ死ぬしぬしぬしぬぅうううううう!? コースケ、コースケ!? もうええんちゃう!? もうええんちゃうん!?」

 

 仮面田中がいなくなったために、ギアスの効果がなくなったⅥは、必死といった様子で地面に指を突き立て抉り取り、必死に地面に縋り付いていた。

 

 そんな六重の姿を猫谷は一瞥した後、

 

「あぁ、もうちょっと待て。まだ全部吸い込み切れてないから。あと五分だけ……」

 

「ふざけんなぁあああああああああああああ!? あっ」

 

 瞬間。運悪く、重力に耐えきれなかったⅥが縋り付いていた地面が地球から剥がれ落ち、Ⅵ諸共漆黒の点へと飲み込まれた。

 

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

 そんな切ない悲鳴を上げて消えてなくなるⅥの姿に、そばで観戦していた麻帆良生徒たちは得体のしれない悪寒を感じたという……。

 

 

 その後の麻帆良祭期間中、Ⅵを見た者はいない。

 

 そして、この祭りが終わった数日後、どういうわけだか猫谷に麻帆良から金一封が送られていたりするが、それはいろいろな意味で蛇足なので詳しくは書かないでおこう。

 




よゆうができたので久々の更新。

 だというのに、ネタが少ない……だと!?
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