とある外道の少年探偵   作:過労死志願

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44話・終る闘争

 朝倉からの超の位置情報を聞いたネギは即座に杖を使い上空へと登った。

 

 だが、

 

「くっ!! こんな時に!?」

 

 当然、そうやすやすと超のところへはたどり着けない。すさまじい速度で上昇するネギだったが、突如背中に走った悪寒を敏感に感じ取った彼は、即座に杖を急停止、

 

光の精霊(セブテントリーギンタ)97柱(スピーリトゥス・ルーキス)!! 集い来たりて(コエウンテース) 敵を射て(サギテント・イニミクム)!! 魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾(セリエス)光の97矢(ルーキス)!!」

 

 悪寒を感じる方向へ、光の雨を叩き込む!!

 

「「「っ!!」」」

 

 着弾。轟音。ネギの攻撃は確かな成果を上げた。だが、

 

「茶々丸さんの姉妹機ですか!?」

 

 敵はその程度では沈まなかった。茶々丸よりわずかに小柄なバーナーが噴き出す翼を付けた少女型アンドロイドたちが、漆黒の繭を生み出す特殊弾頭を手にもつミニミから射出し、ネギが叩き込んだ光を迎撃。瞬時にかき消す。

 

「ここから先は通しません」

 

「落とさせていただきます」

 

「事ここに至っておきながら、今更やってきてお説教など、ずいぶんとのんびりとした教師と判断できます――以上」

 

「相変わらず一人だけ危ないのがいますね!?」

 

 さくっと人の心をぶっ刺していくのやめてくださいよ!? と、ちょっとだけ口が悪い茶々丸姉妹機に閉口しつつネギは、今度は無詠唱で叩き込める限界数まで展開した魔法の射手を発動しようとするが、

 

「いつから……空の敵が私たちだけだと勘違いしていた?」

 

「なん……だと!?」

 

 ネギが愕然とした瞬間、空を漆黒の津波が覆った。

 

 その正体は、

 

「田中さん!?」

 

『どうも、田中バーナードです』

 

「バーナーがついているからですか!?」

 

 じゃぁ、姉妹機は茶々丸バーナードですか!? と、驚くネギを放置し、

 

「私たちまでダサい名前で呼ばれてしまったではないですか!!――以上」

 

『ぎゃぁああああああああああああ!?』

 

 なぜか同士討ちを始める超機械兵たち。突っ込みどころ満載すぎる光景に、ネギのSAN値はがりがり削られていく。

 

「はっ!? これはまさか超さんの作戦!?」

 

「いいえ、多分違うと思うんですが……」

 

「!?」

 

 ネギがそのことにようやく気付いた瞬間、彼の眼前を白い何かが横切り、

 

「っ!?」

 

「沈め……神明流奥義・百烈桜花斬!!」

 

 無数の花弁となって散る百の連撃が、上空でネギの上昇を邪魔していた田中たちをわずかながらに蹴散らしてくれる!

 

「刹那さん!!」

 

「先ほどの借り、これで少しは返せましたかネギ先生?」

 

「私もいるわよ!」

 

 その言葉とともに落ちてきたのは、鎧姿の少女剣士――明日菜だ!

 

 彼女は一刀のもと近くにいた田中を一体両断し、

 

「も、もうちょっと右!」

 

「わ、わかってるって!?」

 

 おそらく彼女を運んできたのだと思われる、ネギの生徒――春日美空が騎乗する箒の上へと降り立った。そして、

 

「あ、ちょ……落ちる落ちる!? ちょ、明日菜やっぱり降りて!? あんたが乗ると箒の調子がすっごい悪い!!」

 

「この高さで降りられるわけないでしょ!? 根性見せなさい根性!!」

 

「箒に無茶言わないでよ!?」

 

 ……なんだかもめていた。

 

 あ、明日菜さん……。助けに来てもらえたのはありがたいんですがもうちょっと後先考えましょうよ……。と、内心で思ってしまうネギ。というか、しばらく前に刹那と模擬戦をしていた彼女はかなりの高さまで飛んでいたような気がするのだが……。

 

 まぁ、今はそのことはいい。問題なのは、

 

「きたったでネギ!! って、俺出番これだ――!?」

 

 小太郎まで上空の戦いに参戦したのに、いまだに機械の壁が厚く超へと続く上空を封鎖していることが問題だった。

 

「いったい……何体いるんだ!?」

 

「一匹見かけたらたくさんいる感じの黒い虫ぐらいの数です」

 

「それもう無限に等しいと思うんですが!?」

 

 生きる化石扱い!? と、驚くネギをしり目に三体いた茶々丸の姉妹機のうち一体が、こちらにミニミを再び向けながら、

 

「降伏してくださいネギ先生。悪いようにはしません」

 

「くっ……」

 

 手詰まりとなったネギパーティたちに降伏を進めてくる。

 

 ほかの仲間たちはまだ諦めず戦ってくれていた。だがしかし、この状況では圧倒的に火力が足りない。ネギにはそれがわかっていた。

 

 だが、

 

「諦めるわけにはいかないんです……」

 

 ネギはつぶやく。

 

「生徒が間違ったことをしたのなら――正してあげるのが教師の仕事ですから!!」

 

 魔法使いとしてではなく、一人の教師として――ネギは超の行いを、許すわけにはいかなかった。そんなネギの返答を聞き、

 

「残念です……」

 

「っ!!」

 

 茶々丸姉妹機三体は手荷物機関銃の引き金を無造作に引き、

 

 

 

『――よく言った、ガンダムぅうううう!!』

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

 突如突っ込んできた、鎧武者のような姿をした漆黒の田中が放つ斬撃によって、姉妹機の一体が撃沈。

 

 引き金は、火薬に火をつける前に、止まった!

 

「何者!?」

 

『私の名はグラハム・エーカー。かつてガンダムを超えようと愚行を繰り返した男だ。そして、わが機体の名はマスラオ改め――スサノオ!!』

 

 そう告げた瞬間、その珍妙な田中はネギのほうへと振り返る。

 

「え、え!? ぼ、僕ですか!?」

 

 当然扱いに困るネギ……。敵が突然敵を攻撃した上に自分を守ったら、それは誰だって驚くだろう。

 

 というか、ガンダムってなんですか……。というネギの内心が田中には届かないため、その珍妙っぷりはさらに加速していく。

 

『未来への水先案内人はこのグラハム・エーカーが引き受けた! 行け、少年。生きて未来を切り開け!!!』

 

「え? えぇ……」

 

『何を躊躇している! 生きるために戦えと言ったのは、君のハズだ!! たとえ矛盾をはらんでも最後まで存在し続ける、それが、生きることだと!』

 

 いや言ってませんし……。というネギのツッコミはやはり届かない!!

 

 だが、

 

『トランザム!!』

 

 突如真紅に輝きだしたグラハム田中が、三倍の速度で動き周囲の田中や茶々丸姉妹機をとんでもない速度で蹴散らし始めたのを見て、ネギはとうとう覚悟を決めた。

 

「じゃぁ……ちょっと行ってきます!!」

 

「え、ちょっと待ってネギ!? あんな変なの私たちに任せていく気なの!?」

 

「せめて、せめて連れて行ってください!! 私たちではなくあのへんなのを!?」

 

「そうやでネ――(時間的諸事情によりカット)」

 

 必死にこちらを引き留めてくる教え子たちに(「ヲイこら!? 俺の扱いがぞんざいすぎるやろ!? なんや!? 俺のことそんな嫌いか!?」と小太郎の怒声が聞こえてくる気がするがきっと幻聴だとネギは自己完結する)、ネギは安心させるような笑みを浮かべ、

 

「つれていくのはいいが……別にあれ、倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「死亡フラグ!?」

 

「かまってください! かまってくださいよぅ!!」

 

 教え子たちの応援の言葉(どうやらネギの耳は御臨終してしまったらしい……)を背中に受け、ネギは空を駆け上る。

 

 そして天空に坐している、(ラスボス)の飛行船へとたどり着き、

 

「なんでグラハム田中があんなことになってるんですか!? さらにもう一段階下に鎧があるなんて聞いていませんし、最終的にこっちを裏切るなんて話も聞いてませんよ!?」

 

「だ、だて……だて、せっかくセカンドまで行ったんなら劇場版もしたいじゃなイカ!?」

 

 ラスボスは飛行船の上で葉加瀬(あくのかんぶ)正座させられた上、めちゃくちゃ怒られていた……。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「や、やぁネギ坊主! よくキタ。待ちかねていたヨ!!」

 

「ええ……。それはもう見た感じ痛いほどよくわかりますが」

 

 ネギが来たことによってようやく説教から解放された超は、満面の笑みを浮かべて飛行船の上でネギを出迎えた。背後で舌打ちをする葉加瀬がなかなか印象的だ。

 

「さて、ではネギ坊主……ここに来たからには、君がやるべきことはもうわかているナ?」

 

「僕は……」

 

 そして、ようやくシリアスタイムに入った超のセリフをきき、ネギは深呼吸をした後、

 

「あなたを止めます。超さん」

 

「……自分が何を言っているのかわかた上で言ているノカ? 君のその決断は少なくとも、私がこの世界を変えることによって救われる、数万数億人近い人間を不幸にする決断かも知れないヨ?」

 

「たとえそうだったとしても……超さん、いま生きる人の生活を、命を――犠牲にしかねないあなたの判断には、僕は到底賛成できません」

 

 だから。と、ネギはそこで言葉を切り、杖から飛び降り飛行船の上に降り立つ。

 

 その足にはすでに魔力が装填され、真っ赤に光り輝いている。

 

 悪魔風脚(ディアブルジャンブ)!!

 

「教師として、生活指導を実行します!」

 

「いい目をするようになたネ。ネギ先生……」

 

 そしてそんなネギの瞳を見て超も笑う。その瞳には揺るがない信念と、自分の行動によっておこるすべての責任をとる覚悟が見えたから。

 

「ようやく先生は、ただの鬱陶しいガキから私の敵へとジョブチェンジしたネ」

 

 喜ばしい限りヨ。と、告げながら彼女も中国拳法の構えをとった。

 

「だが先生、忘れていないカ? 生徒とはいずれことごとく教師を超えて巣立つものだ」

 

「笑わせないでくだささいよ中学生。まだ高校卒業もしてないような子供が、巣立ちなんて百年早いです」

 

「それを君が言うカ!!」

 

 瞬間、飛行船上に立つ二人の姿が消え、

 

悪魔前撃(アンフェール・シャッセフロンタル)!!」

 

「旋風脚!!」

 

 灼熱の蹴り上げと、宙を舞いつつ竜巻のように旋回する二連蹴りが、飛行船上で激突した。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 やはりネギ坊主は天才ネ。超はそう思いつつ、機械の鎧に覆われた両足から、もはや人一人程度ならたやすく撲殺できる威力の蹴りを放ち、ネギの蹴りを迎撃する。

 

 ネギの足に触れた瞬間、機会の鎧がジュウ……という不気味な音を立てた。

 

 一応耐熱処理は万全に施したはずなんだけどネ。いったいどんな温度してるネ、あの蹴りは。と、内心で冷や汗をかきつつ、超はさらに攻めるため、迎撃した足を地面につける瞬間力をその足の一店へと集中させ、

 

「覇っ!!」

 

「っ!?」

 

 震脚。機械の鎧にアシストされとんでもない力を地面へとぶつけたその行為は、ネギと自分が立つ場所に局所的な激震を与え、ネギの行動をわずかに阻害する。

 

 そしてそのわずかな行動阻害は、二人ほどの実力者にとっては致命的な隙。

 

「もらたよ、ネギ坊主」

 

 瞬間、彼女上半身を覆う鎧の背中に搭載されたカシオペアがうなりをあげ起動し、彼女を瞬時にネギの背後へと移動させた。

 

 指の間に挟み込んだ時間跳躍段を、ネギの背中にたたきこむような体制で。

 

「しまっ!?」

 

「下手な芝居はやめるといいネ」

 

 本来なら一撃必殺。これで敵は終わる攻撃。だが、ネギは違う。

 

「私の真似事など、やても意味はないヨ」

 

「くっ!?」

 

 瞬時に時間跳躍を行い、先ほどの超と同じよう彼女の背後に出現したネギ。だがそんなものは超も予測済み。即座に時間跳躍を行いネギからはるか離れた地点へと転移する。

 

「そ、そんな!? カシオペアの時間跳躍を戦闘に組み込めるほどの精密さで操作するなんて、そんなもの超さんと私の合作であるそのパワードスーツでしかできないはず!?」

 

「タネはそこにいる精霊だナ?」

 

 驚く葉加瀬を落ち着かせるため、超はすぐさま敵の時間跳躍精密操作のタネを言い当てる。まさかこれほどすぐにタネが言い当てられると思っていなかったネギは、そのことにわずかに動揺を示しつつも、

 

「ええ、その通りですよ」

 

 と、素直にカシオペアを掲げた。

 

 そこには、カシオペアの時間操作を行うつまみを弄繰り回す小型の精霊がいた。

 

「簡単な魔法の応用ですよ。機械の操作程度だったらそれほど複雑な命令は必要ありませんから」

 

「いてくれるネ。私たちがこれほどの精密操作を行える人工知能をスーツに搭載するのにいたいどれだけの時間がかかたとおもてるネ」

 

 やはりお前は天才だよネギ坊主。と、自分のご先祖様の優秀さに、超は苦笑いを浮かべた。だが、

 

「まだまだ、若いね。ネギ坊主」

 

「っ!?」

 

 瞬間、背後に出現した超にカシオペアを一時的に奪われ、ネギは思わず瞠目する。

 

 それもそうだろう。なぜならネギのカシオペアは、

 

「はるか一週間先からこの時間に戻ってくるための影響かナ? この戦闘で使える時間跳躍はせいぜいあと二回程度だロ?」

 

「くっ!!」

 

 自身のターニングポイントを言い当てられ、思わず歯噛みをするネギに長は小さく嘲笑を浮かべる。

 

 本当、若くて素直すぎる……と。

 

「そんなカシオペアで大丈夫か?」

 

「大丈夫です! あなたに心配されなくても、問題ありません!」

 

 それ、死亡フラグヨ? と、カシオペアを取り返しあわてて超から距離を取ろうとしたネギに対し、時間跳躍を行った超は再び時間跳躍弾を叩き込む。

 

 これで、ネギ坊主が使える時間跳躍はあと一回!

 

「これで終わりだ。ネギ坊主!」

 

 そして、再び違う場所に出現したネギに超が、時間跳躍弾を叩き込もうとしたとき!

 

「超~。うしろうしろ~」

 

「っ!?」

 

 ふざけきった掛け声とともに、超の背中にすさまじい衝撃が走る!

 

悪魔・飛翔撃(アンフェール・シャッセソテ)!!」

 

 その声と攻撃の威力は、武闘大会で見たネギと全く同じ!

 

「なっ!? 馬鹿な……いったいどうやって!?」

 

 超がそういった瞬間、カシオペアを持っていたネギが風となりほどけ、その姿を完全に消滅させて、カシオペアを地面に落とす。

 

 ま、まさか!?

 

「風魔法で編んだ……(デコイ)だと!?」

 

「あのカシオペアではまともに戦闘できないことはわかりきっていましたからね。でも、超さん相手ではカシオペアなしではまともな戦いはできない。その常識を逆手にとって」

 

「デコイにカシオペアを持たせて、私と戦わせたのか!?」

 

 ただ囮の信憑性を上げるためだけに、自身の切り札をこんなにあっさり切って捨てるなんて!? 長がそう驚きながら振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべるネギがいた。

 

「策を練るなら敵をだませるものを作れ。切り札だろうがなんだろうが、切り捨てて見せる度量こそが、敵をだます第一歩だ」

 

 犬神さんの教えです。と、ネギは笑う。そして、

 

「こうも教わりました。成功したなら容赦はするな――一撃必殺だ!! と」

 

 瞬間、ネギの足に集まる魔力が爆発的な量へと膨れ上がる。遅延呪文が発動しているのだ!

 

「くっ!?」

 

雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

 

 ゼロ距離で放たれたレーザーのような雷光が、超の体を打ち抜く!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 やった!! 飛行船にて倒れ伏す超を見て、ネギは自分の勝利を確信した。

 

 超に圧倒的戦闘能力を与えたカシオペアはもう使用不能。話を聞く限り超は魔法も使えない。

 

 彼女が操る化学兵器は確かに脅威だが、魔法使いの自分の戦闘能力と比べるとはるかに見劣りするものだ。超が勝てる要素はカシオペアがなくなったことによって、すべて消滅した。

 

 そう思っていたのだが、

 

「まだネ」

 

「っ!?」

 

 再び立ち上がる超を見て、ネギは思わず慄然とした。

 

「そんな……無理をしないでください! あなたはもう、僕に対する対抗手段を失っているはずです!!」

 

「ははは……ネギ坊主、いたい何を勘違いしているネ。確かに私は今まで魔法を使たことはなかた。だが」

 

 ネギの攻撃によるダメージが抜けていないのか、超はややふらつきながらも、

 

「いつから私が……魔法を使えないと勘違いしていた?」

 

「なん……だと!?」

 

 こんな時でもネタですか!? と、ネギが驚くのをしり目に、超は不敵に笑う! そして、

 

炎の精霊(ウンデセクサーギンタ)59柱《スピリトゥス・イグニス》!! 集い来たりて(コエウンテース)!! 魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾(セリエス)火の59矢(イグニス)!!」

 

 超が放った炎の矢が、油断していたネギに牙をむく!

 

「くっ!! 光の66矢!!」

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 上空での戦いは遠距離からの魔法戦へと突入した。

 

 牽制用の魔法の射手が宙を彩り、時折放たれる敵を必殺するための雷光や炎が、無数の激突を経て爆発する。

 

 それは一種の幻想的な風景を作り出し、祭りの最後へと突入した麻帆良を照らし出していた。

 

 そんな光景を見て、

 

「くっ……この上討伐報酬まで、とられるわけにはいかない!!」

 

 地下から出てきた化け物が、空気も読まずに行動を開始した。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「超さん……あなたは、どうして!? あなたの魔力はその体に刻まれた刻印によって賄われている!! でも、体内に無理やり魔力を生成する刻印なんて、使っただけで死ぬほどの激痛があなたを襲っているはずなのに!?」

 

「どうして? 今更そんなことを聞くのかネギ坊主!」

 

 そんなネギの質問に、超は小さく笑みを浮かべる。

 

「私の知るこの世界の未来は不幸なことばかりだ! そんな未来(さき)を知れば誰もが願うだろう! 幸せな未来でありたいと……幸多き世界であってほしいと! ゆえに許してほしい、私という存在をぉおおおおおお!!」

 

「くっ……それでも」

 

 いえた!! ようやく言えた!! と、ネギに見えないようにVサインを葉加瀬に出す超。

 

 その数秒後、

 

何故ダ。葉加瀬から帰ってくる視線がやたら冷たい気がするネ……。と、超は凍えそうになった。

 

“いいこと言ったロ!? いいこと言ったロ!?”

 

“テロップ通信代わりに使うのやめてください。つか、それ思いっきりパクリじゃないですか”

 

“違うネ! 先人からのリスペクトネ!!”

 

“さらに言うとそれ、力でたたき伏せられるフラグですからね?”

 

“そのふざけた幻想を今ここで修正する!! だって正論が勝たないと世界はいろいろおかしいネ!!” と、超が挑戦者風の表情になった瞬間、

 

「守りたい世界があるんだぁあああああああああああああ!!」

 

「「!?」」

 

 フラグ成立のセリフをきき、超と博士が思わず驚く。

 

 そして、

 

契約により我に従え(ト・シュンポライオン・ディアコネートー)高殿の王(モイ・バシレク・ウーラニオーノーン)――」

 

 上級古代呪文(ハイエンシェント)!? ネギの詠唱を聞き、超は小さく笑う。

 

「いいだろう。受けて立つ!!」

 

契約に従い(ト・シュンボライオン) 我に従え(ディアーコネートー・モイ) 炎の覇王(ホ・テュラネ・フロゴス)!!!」

 

 一息、呪文を唱え切りネギを追う超。

 

来れ巨神を滅ぼす(エピゲネーテートー・アイタルース)|燃ゆる立つ雷霆《ケラウネ・ホス・ティテーナス・フテイレイン》」

来れ(エピゲネーテートー) 浄化の炎(フロクス・カタルセオース) 燃え盛る大剣(フロギネー・ロンファイア)

 

 二人の詠唱はやがて重なり、

 

百重千重と(ヘカトンタキス・カイ) 重なりて(キーリアキス) 走れよ(アストラ) 稲妻(プサトー)!! 」

ほとばしれよ(レウサントーン) ソドムを(ピュール・カイ) 焼きし(テイオン)火と硫黄(ハ・エペフレゴン・ソドマ) 罪ありし者を(ハマルトートゥス) 死の塵に(エイス・クーン・タナトゥ)

 

 やがてその文字の意味通り、歌うようにシンクロする。

 

 そして!!

 

千の雷(キーリプル・アストラペー)!!!!」

 

 詠唱の収量はやはりネギのほうが早い。だが、

 

「そこは……根性でカバー!!」

 

“科学者らしくありません……でもまぁ”

 

 勝ってください。超さん。と、ずっとともに計画を進めてきた葉加瀬に言われ、蝶は小さく笑みをこぼしながら、

 

「応っ!!」

 

 と答え、

 

燃える(ウーラニア)――!!」

 

 ネギとの決着をつけるため、魔法を放とうとして、

 

 

 

「将星億閃・居合拳」

 

 

 

 突如、下から襲いかかった光にジュッっとされた……。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「「「「「え?」」」」」

 

 世界が氷結した。

 

 超陣営も、ネギパーティも、学園を守っていた生徒たちも、まだ戦っていた田中たちも、生き残ったヒーローユニットたちも、

 

 まるで突然氷河時代に叩き込まれたかのように凍りつき、その動きを止めた。

 

 そんな中、動いている人間がたった一人。

 

「さて、これで超鈴音の撃退ボーナスは僕のものだな」

 

 眼鏡を中指で押し上げる、ズタボロになったサディストを引きずった――犬神ゲルだ。

 

 そのあんまりといえばあんまりな結末に、その場にいたメンバーは油の切れたブリキ人形のように、ギギギギと首を動かし、

 

「ん? どうした?」

 

 と首をかしげた犬神に、

 

「空気読めやこの外道少年探偵ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 金髪の少女が勢いよくハリセンを叩き込むのを目撃した。

 




 相も変らぬ犬神節炸裂……超は果たして無事なのか!?

 次回……最終回!?

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