D.Gray-man 《エクソシストで陰陽師》   作:四宮 (陽光)

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ゆったりたっぷりの~んびり♪


……すいませんでした。たっぷりではありません。


第二話 コッツウォルズ

イギリス――コッツウォルズ

 AM 5:00

 

「ふぁ~......体が痛いんですけど、リナリーさん」

「文句言わない」

「ふぁい」

 

 まだ朝靄がかった早朝。眼前にはぼんやりとはちみつ色の煉瓦造りの町並みが広がっている。人もまばらにしか見えず、ザ・田舎 って感じ。

 

 シスコン、もといコムイさんに慈悲もなく任務を言い渡され、なんとかジェリー料理長の愛の詰まった親子丼をたいらげ、食休みをする間もなくリナリーに連れられ列車へ。

 列車で少しの仮眠をとった後にリナリーに叩き起こされ列車を降り、そこからは徒歩での移動。

 いわく、田舎な為交通手段がないから、らしい。

 そして今に至る。

 

「それで、今回の任務ってなんだっけか?」

「あなたは、やっぱり、話を、聞いてなかったの、ね!」

「痛いッ!痛いですリナリー様ッ!?」

「……電車の中で話したじゃない。まったく」

 

だとしても言葉の合間に蹴りをかましてくるのは女の子としてダメだと思います。

どうしてこんな娘になっちゃったんだろう。昔はもっと可愛くて優しかったはずなの……嘘です。ごめんなさい。今もお美しいのでその高く振り上げた足を降ろして頂けると……ぐはッ。

冷たい地面と熱い接吻を交わす。

 

「……降ろすって振り下ろすことを言ったわけじゃないのさよ」

「そう。それで少しは思い出したかしら?」

「思い出してはないけどリナリーのパンツなら見え「死にたいか?」……いえ、なんだか思い出してきました!確かなにやら怪しげな宗教団体があるとか!」

「まあ外れてはないわね」

 

危ない危ない。主に俺の命が。帰ってきてからはリナリーの足がそのイノセンスであるダークブーツと相まって死神の鎌に見えるとです。ちなみにあれも黒でした。何が、とは言いませんが。

 

「んで、その宗教団体がどうしたんだっけか? 別に怪しいだけの宗教団体なら世界中に無数にあるはずだろ。それになんも知らない人たちからすれば俺ら黒の教団だって怪しさ満点だぜ?」

「……否定はできないわね。ただし、今回の宗教団体はある宣伝文句と噂によって広まっているのよ」

 

信じれば救われる、とかよくあるよな。他にも不思議な力を手に入れられる、とか。

世の中そんなに甘くはない。信じていたって平気で裏切られるし、力だって何かを代償にせずに得ることなんてできない。それでも縋ってしまうのは人の弱さだろう。安きに、集団に流れる。そういった人たちを責めることはできないが、かといって認めることはしたくない。一番悪いのはそういった人を騙す輩なんだろうけどさ。

でも、AKUMAやイノセンスと関わりのありそうなものか。

 

「へー、どんな感じなんだ?」

「曰く――

 

   ―――――愛する者の声によって死者は甦る―――――

 

                                    ――。」

「ッ……そういうこと、か」

 

少し血の登ってしまった頭を振る。

理解してしまったのだ。黒の教団やその関係者にしかわからないその言葉の本意を。

 

AKUMA。ソレを作り出しているのは千年伯爵だが、流石の千年伯爵といえども何もないところからAKUMAを作り出せるわけではない。AKUMA製造に必要なのはダークマターの骨組み、そして人の悲劇だ。もっと具体的に言うならば、大事な人を失った人間である。その者の呼び声が骨組みに大事な人の魂を宿し、そして骨組みは呼び出した者を殺し、皮を被り、何事もなかったかのように擬態し、人を殺し、悲劇を繰り返す。

そこに人の意思はない。魂が骨組みに縛られてしまった時点で、ソレはもはや千年伯爵の人殺しの道具でしかなくなるのだ。

ソレを破壊できるのはイノセンスを宿した俺たちエクソシストだけであり、今生きているのはまさに黒の教団と千年伯爵勢力との戦争の最中の時代なのだ。

だがこれは人間対千年伯爵には決してなりえない。千年伯爵やその勢力であるノアが人間であるかどうかについては定かではないけれど、少なくとも俺たち、ノーマルな人間が全員味方かと問われれば答えはノーである。

十人十色、という言い方はあっているのか知らないが世の中には善人もいれば悪人も、はたまたどちらにも属さないような者もいるし、途中で反対側になることだってある。

正義は人の視点によって変わってしまうが、少なくとも俺たちの視点から見れば悪人。これもまた存在するのだ。

千年伯爵と結託し、多額の金を貰う対価としてAKUMAの材料となる人間を提供し、さらには金のために自ら悲劇を起こそうとまでするような奴ら。

それが―――

 

「―――協力者ブローカー。」

「……そういうことね。まだ予測の域を出ないけれど」

「なるほどな。それで俺の目が必要だと」

「そうよ。予測が正しければこの辺りにはAKUMAが相当数潜んでいるはずだから」

「だろうな。その宗教団体が出来たのは何時ごろだ?」

「……二年と少しらしいわ」

「あぁ……」

 

思わず顔を手で覆う。隣のリナリーも険しい表情だ。美人が勿体ないが仕方ない。

二年ものさばらせておいていたら一体何人の犠牲者が出ているか分かったものじゃない。悲劇は悲劇を呼ぶ。眼前に広がっている町にはもう人間が住んでいないのかもしれないのだ。

 

「とりあえず見て回ってみるか。その後で本丸の教会とやらに行こう」

「そうね。この町もそんなに広くないし一時間もあれば十分かしら?」

「三十分でおつりが出るよ。二年の間で使用範囲も五十メートルまでのびたからな」

「ならこれが終わったら朝食でも食べましょ」

「そうだな―――イノセンス、発動」

 

その言葉を合図に俺の視界がグンッと広がり、目には十字架が浮かび上がる。

俺のイノセンスの一つ―――【聖者の目】。

自分を中心に半径五十メートルまでのAKUMAを識別できる能力をもつ。もう一つ、目で捕捉した範囲に一つの結界を張れる能力があるが今はあまり重要ではないか。

さて、このAKUMAを識別できる能力だが、これは教団側にとっては貴重な能力である。

理由は単純、黒の教団といえども見た目だけでAKUMAを識別することができないからだ。奴らの擬態は非常に精巧で、見分けることがまず不可能だ。だからエクソシストはどうしても受け身にならざるを得ない。襲われるまで、相手がAKUMAか人間か分からないからだ。だが、俺のような能力があれば話は別だ。要するに、可能性があるなら見て来て破壊すればいいじゃな~い、ということ。先手をとってこちらから攻めることができる。

だから今回のような任務は正に俺にうってつけなモノなのだ。

 

「それじゃ、行きますか」

「気づかれるかも知れないし、走っていく?」

「だるぃ」

「走るわよ」

「はい!誠心誠意全力で走らせていただく所存です!」

 

まあ、俺にしかできない仕事だし少しはやる気出さなきゃな。被害者をこれ以上増やさないためにも。

 

「そういえば、新しく入ったアレンくんもAKUMA見えるんだってー」

「がふっ!」

「それに、なんか魂? 、なんてものも見えるらしいよ」

「ゴパァッ!」

「なんか呪いらしいんだけど……どうしたの?」

「な、なんでもないです」

 

それなんて上位互換だよ……。俺の必要性が皆無です。

多少モチーベションが下がりながら俺たちは早朝の寝静まった町を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ。ここら辺で最後か」

「みたい。それじゃ朝食でも食べましょ……って、なんで息が切れてるの?」

「アンタのせいじゃ!」

「そうだっけ?」

「このッ……はぁ」

 

予定の三十分を大幅に上回る十五分で町を一周した俺は激しく疲労していた。

それもそのはずでこの黒娘イノセンス使って走るんだもん。おかげでこっちがどれだけ必至こいてついていかなきゃならんかったか。いや、調査自体は俺一人でもできるから無理についていかなくてもいいんだけどさ、前走りながらチラチラこっち見てくるんですよ。ソレがね、一人にしないでよぉ、みたいな可愛らしいモノならまだマシなんだけどさ、さっさとついて来いよ、死にたいのか? 、みたいな目なんすよ。いや、ホント。それで泣く泣く全力疾走です。

 

「つーかーれーたー。飯食うのはいいんだけどさ、どこで食うのさ。流石にAKUMAに金払って飯食うのは嫌だぜ? いやまあ、その前に戦闘になるだろうけどさ」

「こんなこともあろうかと……ジェリー料理長に厨房借りて軽食を作ってきたわ」

 

 

差し出される可愛らしいバスケット。ちょっと照れくさいのか軽く頬を染めてはにかんでいる。

 

「第一印象から決めてました、結婚してください!」

「えぇッ!?」

 

なんだかリナリーが慌てているようだがそんなことは今どうだっていいんだ。それよりも手料理だよ、手料理。

半ば奪い取るようにバスケットを貰い、手近なベンチに腰を下ろし、ソレを開ける。中には彩り豊かなサンドウィッチとから揚げ、ポテトサラダ。

その中の一つのサンドウィッチを手に取り咀嚼する。

 

「うまい!」

 

思わず声が出てしまうほど美味しい。

サンドウィッチや他のおかずにも手を伸ばしてもきゅもきゅと食べていく。どれも美味しい。普段からコムイさんや科学班のみんなのコーヒーとか入れてるし料理もできるとは思ってたけどここまでとは思わなかった。ジェリーさんとも張り合えるぞ、きっと。

 

「リナリー、美味しいよコレ! ……リナリー?」

「……ッッ~(けけけけけけけけけ結婚ッ!?いやそんなのまだ早いよ。私たちまだ未成年だよ、お酒だって飲めないし、タバコだって吸えないし。あ、でも16歳だから結婚は……。いやいやいやいや!でもその前に付き合ってもいないんだよ私たち!やっぱり結婚するならそういう段階踏まなきゃいけないと思うし、兄さんだって説得しなきゃいけないし!あ、でもでもこんな生活してたら何時も一緒にいれるとは限らないし、もしかしたら晴也が任務先で女の子作ってくるかもしれないし……そんなダメだよ!でも結婚すればそういうことは晴也の性格上できないだろうし……あ~でもでもッ!!?)」

 

……頬を染めて身をよじらせる姿は美少女なので可愛らしく映るが、道路の真ん中でやると危ない人みたいだよね。

 

「……。ま、いっか」

 

美味しいから良し。今はこの朝食に専念しよう。そうして俺は登りゆく朝日に目を細めながらサンドウィッチにがっつくのだった。

 

 

 

 

―――――戦いのトキは近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




☆リナリーさんはキャラが違います。
☆晴也の化けの皮は剥がれていきます。只の変態です。
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