「神と、月と、ロケットと」   作:saboten21

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 実に半年振りになってしまった……。遅すぎる更新になってしまって本当に申し訳ありません。需要がない気もするのでセーフでしょうか。
 というわけで三話目です。今回も特に話が進展するわけでもないですが、安定のフラグ建築と回収に向けての布石を立てておこうかと思い更新した次第です。
 今回も文字数的には多くないですが、次回更新したときそろそろ展開を進めていく予定ですので見ていただければ、と思います。


chapter3

 気づけば夕方。睡眠時間をそこまで取ったつもりはなかったけれど、もう秋ということもあってか日暮れは早く、目覚まし時計の人形ではない本物の“ホーホー”が鳴き始める時間へ変わる。でもそれはこれから行う僕の活動にとっては好都合で、まあ言ってしまえば泥棒をするんだから暗い方が相手に視覚的な情報を与えにくくなる。単純な道理だ。

 ロケット団より支給されたこの“チョロネコ”、ミントも本来夜行性に近い性質を持っているようで、日中よりも活発な動きをしているように見える。準備は万端、玄関を開けると暗がりにある数多の街灯に照らされ、僕はシャラシティ行きの電車があるミアレ駅へと向かい始めるのだった。

 現在ポケギアの時計が指し示す時刻は十七時。任務のタイムリミットが十八時なので、残り時間は二十五時間ということになる。一見多く見える時間だけど、メガバングルを奪ってカロス支部に持ち帰らなければいけないことを考えると、あまり多い時間ではないように感じる。もし逃げることが上手く行かず、遠回りをするハメになってしまうかもしれない。それ以前に逮捕されてしまうかもしれないけど。だから、あまり悠長に過ごしている時間はない。なんとか、シャラシティのジムリーダーから上手く奪える手段を到着するまでに考えなければ。

 

 夜でもミアレシティが活発なのは変わらず、家を出てちょっと歩き大通りへと出れば人の波に合わせて歩くことを強いられるほどの行列に巻き込まれることになる。駅へと向かう為には嫌でもこの道を進まなければいけないんだけど、あまり人ごみが好きではない僕には少し苦しい。

 そして暫く人ごみに流されながら、たどたどしく歩いているとミアレ駅へとたどり着く。これはカロス地方でも有数の大きな駅で、カロスの各地方へと運ぶ路線はもちろん、シンオウ地方やイッシュ地方などの別の都市へと続く路線もミアレ駅にしか存在しない。なので例えこの時間であっても日々人で満ち溢れており、今日は僕もその一人と化している。でも今回は観光なんて浅慮の目的ではなく、強奪という平和とは無縁の行為。気を引き締めなければ、と自分に言い聞かせ、切符を駅員に見せて乗車するのだった。

 体良く個人席に座れた為、先程まで人ごみによってモンスターボールへと閉まっておいたミントを出す。毎回この機構が起動する度に、どんな技術を使えばこんな高度なことができるんだろうと感心に浸ってしまうが、赤い光と共に出現したチョロネコはそんなことを知る由もなく、僕の膝へと駆け上がり、丸くなる。どうやらここがミントにとっての定位置のようで、気に入られてしまったらしい。

 さて、ようやく落ち着いたところでメガバングルを奪う方法も考えなくてはならないだろう。戦闘を介さずに奪えればそれが理想的だし、ロケット団的にもそうあるべきなのだろう。とりあえず、このまま滞りなく進めばシャラシティへの到着時刻は二十時と言ったところ。ギリギリジムが閉まらない時間ではあるものの、ここで二つの選択肢が発生する。

 それは、ジムが空いている内に乗り込むか、閉まってから侵入するかということだ。前者は当然ノーリスクで入れるものの、ほぼ全てのジムに存在するジムリーダーの部下に当たるトレーナー、“ジムトレーナー”の存在も考慮しなくてはいけなくなる。まあそれはバイトであったり、師弟関係、ボランティアや友人であったりと様々ではあるけど、実力云々よりかは人目があるということが好ましくない。後者は、まずそもそも侵入ができない可能性が高い。ジムの構造は設立時にリーダーが自由に設計できるので、機能性を度外視した奇抜過ぎる構造である場合が多く、とてもジムリーダーの寝室を狙って侵入、なんてことは叶わないだろう。さてどうしたものか……。

 そんなことを考えていると、ミントが何かを訴えるように鈎状になった尻尾で僕の肩を叩く。お腹が空いてるのだろうかと、ふとバッグのポケフードを出そうとすると刹那、チョロネコが悪タイプである所以を知らしめられる程の早業――。まさに一瞬で僕の腕に巻かれていたポケギアを掠め取り、まるで“いたずらごころ”溢れる子供のように自慢気にこちらを見るのだった。それによって、僕はチョロネコが何を訴えているのかを推察した。自分を使えと、そう言っているのだろう。

 当然ではあるけど、僕はチョロネコにこの任務を話したことはない。ポケモンが人間の命令を忠実に聞くのは知っているけど、人語をどこまで理解するのかまでは知らないからだ。一節には“人語を話せない人間”と比喩されることもあるポケモンの知能ではあるけど、もし僕が考えていることを全て何らかの方法によって読み取ってしまうのだとしたらそれすらを遥かに超えているのではないかと、僕は改めてポケモンに対し敬畏の念を抱かざるを得ないのであった。

「わかった……ありがとう、ミント」

 僕はそういってミントを撫でると、咥えていたポケギアを放し、満足そうに鳴き声をあげた。

 

 ――ミアレシティに存在する、とある喫茶店。真っ赤に染まった外装が特徴的で、内部もまるで燃え上がる獅子をイメージさせるかの如く、様々な赤みを帯びた装飾が散りばめられている。名を“フラダリカフェ”としているが本来であれば、イズモがミアレシティを出立したこの日は休日のはずであり客は存在しないはずなのであるが、今回はその喫茶店のオーナーが、それと接触し得ないはずであった客を出迎えていた。

「久しぶりだな――。フラダリ」

 背中にR。黒尽くめの衣装に水色の青みがかった髪。ロケット団であることを指し示すその衣服に身を包む青年は、凛とした顔立ちでフラダリと呼ばれた男に問いかける。

「“カントー”のポケモンマフィアとして悪名高いロケット団の者か。私は君個人との面識を持った記憶はないのだがね、何用だ?」

 こちらもまるで燃え盛る炎を連想するような髪型。それでいて落ち着いた雰囲気、そして何よりロケット団の首領と同等以上のカリスマ性を醸し出している。それはつまりこのフラダリという男が、自分が崇拝する存在に近い力を持つ存在なのだと、直感的に感じざるを得なかったのである。だが、そんな男と対面している青髪の青年、アポロはそれに動じる様子を全く見せず、話を続ける。

「忘れたのか? 貴様が馬鹿げた野望を掲げ、少年に打ち砕かれたあのとき……貴様等フレア団に我々の戦力を提供することを許可したのは他ならぬ私だというのに。おっと、今は“元”フレア団だったか、失礼」

 フラダリにはとある目的があった。あるのではない、“あった”のだ。彼は苦しむ沢山の人々、民衆を救いたいと常々考え、強きものは弱きものを助けるというその信念を貫いて行動をした。だが、できなかった。どんなに権力を持っていたとしても、一個人でできることには限界というものがある。彼はその限界に直面し、己の弱さを悟った。弱者がどうやって誰かを助けるというのだろうか。ここで大きくフラダリの信念は変革し、弱きものしか存在しない世界を作ればいい。そしてまた世界を一から作り直し生み出す、という思想を得るに至った。

 だが、これも失敗に終わる。奇しくも、現在対面しているラムダが属するロケット団と似たように、数人の少年によってそれは全て阻まれてしまったのだ。彼が掲げた二つの悲願が失敗に終わりその後の行方は知れず、彼が大きな行動を起こすことは今に至るまで一度もない。

 そのフラダリと対面し彼が今現在何を思っているかなどアポロには知る由もなかったが、アポロには彼ととある交渉をしなければいけない理由があった。そして多々ある交渉術の中からアポロがとった手法は――。“挑発”であった。

「何が言いたい?」

 過去の事件に対し、彼の思惑など誰に分かるはずもないが、その失敗を抉り返され良い気がするはずもないことは、まさに火を見るより明らかと言える。しかし、アポロは凄まじい“プレッシャー”で“にらみつけ"られているにも関わらずお構いなしと言わんばかりに、涼しげな表情で受け流す。

「率直に言おう。我々ロケット団にメガシンカに対する機密情報の提供をお願いしたい。相応の見返りは用意しよう、フレア団の再建も容易い程度のな」

 告げられた交渉。同じく闇に生きる、そした生きた者同士のみが理解できる内容。相応の見返りというのは、詰まるところ拒否をするなという意味に置き換えることができる。伝えられた文面にこそ含まれていないが、断った場合命の保証はしないと、そう言っているのである。

 フラダリは嘲笑し、アポロに言った。

「いいだろう――。但し、お前が生きていたら……な」

 彼はスーツの裏に手をやると、収縮したモンスターボールを一つ、取り出した。それがどういった意味を持つのか、読み取ることは容易である。

「出てこい、“カエンジシ”」

「力尽くでも情報は貰う。行きなさい、“ヘルガー″」

 どういった性か運命か、彼等が繰り出したポケモンもまた、動物型のポケモンであり炎の扱いを得意とするポケモンであった。カエンジシは名の通り獅子を彷彿とさせる雄大なタテガミを持ち、素早い動きと体内で生成される超高温の炎で狩りを行う、四足歩行ポケモンの王とも言える存在。対してヘルガーは、まるで地獄からの遣いと言えるような禍々しい外見を持ち、内蔵器官より発生した毒素を炎に変換し放つことを得意技とする極めて凶暴なポケモンである。古記に記されている――遥か昔に存在したと言われるサバンナには獅子が実在したという。そしてそのサバンナと呼ばれる大地にはハイエナという獅子と対立する生物もまた繁栄しており、両者とも警戒しあいながら生存していった。

「ヘルガー、“あくのはどう”」

「……ふん。迎え撃て! “ハイパーボイス”」

 静けさから一転、思惑とプライドとが激突することになった現在の状況はそういったサバンナでの生存競争を思わせるように、どちらが勝つのかなど誰に予想できるわけもないのだろう――。

 

 

 ――To be continued.

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