「神と、月と、ロケットと」   作:saboten21

4 / 4
 まさかの連続投稿。近い期間に連続して投稿すると創作意欲が全く続かなくなるというジンクスがありますが、果たして……?
 今回も安定の殴り書きやりたい放題と、それでもちょっとだけストーリーを進めていこうということで書いていきました。張った伏線をちゃんと回収していけるのか甚だ疑問ではありますが、次回の更新をお楽しみに頂ければな、と思います。
 文字数的には前回と同程度ですが、良ければ是非読んで頂けると幸いです。


chapter4

 カントーのヤマブキシティ。カントーで最も栄えている大都市、タマムシシティにこそ一歩及ばないものの、こちらもまたカントーの主要都市として一角を担う存在である。

 そんなヤマブキシティに存在する高層ビルの一つ、“ヤマブキビルD”には実に百を超える階層が存在すると言われているが、その中の上層階には限られた役職に就いた者しか立ち入りを許されていない。何故ならば、そこは市として、区として、街としての最高機密事項を有しているからだ。

 嘗て、こういった存在はタマムシシティにもあった。当時としては画期的であった“ゲームセンター”ではスロットを始めルーレットと言った娯楽を数多く備えており、仕事に疲れた若者達を癒す憩いの場として愛されていたのは事実である。しかし、それは宙に投げたコインが地に落ちたとき、上を向いた面が表として振る舞うように大衆に見せていた仮の姿に過ぎなかった。では裏の姿とは何か、少なくとも真っ当とは言えないであろう仕事を行い金を稼ぐ、ポケモンマフィアの根城がそこであったとしたらどうだろうか。ゲームセンターの存在はタマムシシティがタマムシシティである所以として大きく貢献した。そしてそれを運営していたのが他ならぬ“ロケット団”であり、当時そこを拠点として様々な活動を行っていたということは記憶に新しい。例え社会として認められる存在ではなかったとしても、市としては認められる理由がそこにはある。それが裏社会だ。裏面だ。社会と裏社会の最高位に位置する両者にとってメリットがあるのだから、誰に止められるはずもない。完璧だった。

 

 はずだった。

 

 それを一人の少年に看破され、それどころかロケット団がロケット団として活動し得るために必要だった全ての機能を停止まで追い込まれて解散、撤退せざるを得なくなった状況になり、一度は全てが瓦解した。ジョウトにてロケット団の復活を残党が呼びかけたときも、同様に阻止された。“一人の少年”に。

 だが、彼等は大人だ。大人は負けを知っている。負けを知っている人間は二度と同じ過ちを繰り返すものかと、そして勝ったときの喜びをまた得たいと考える。つまるところは誰にとって残念か――諦めが悪いのである。そういったわけで、三度目の復活を果たしたロケット団は他地方進出を果たすまでに大きく成長したが、現在ロケット団本部と呼ばれる本拠点はヤマブキシティに存在している。そしてこの“ヤマブキビルD”こそがそれに当てはまり、その上層部ではロケット団内部でも高位の役職、つまり幹部としての地位を持つ人間がとある階層の一室にて会話を行っていた。

「ラムダ、アポロのやつがどこにいるか知らない?」

 大きなビルの窓ガラス。外から内部が覗けないよう特殊な細工が施してあるが、内部からは高層から見たヤマブキシティの街並みを眺めることができる。そんな窓ガラスに寄りかかり、丁寧にも換気扇の下で喫煙を嗜んでいるのは紫の顎鬚、そして紫のモヒカンという奇抜な容姿とロケット団のスーツに身を包んだラムダと呼ばれた中年の男である。

 そして、それを呼びかけるのはまるで研究服や白衣といったものを想像させるような特注の衣装を纏った女性であった。紅色に染まる髪は、彼女のどこか心の奥底に見える権高な姿勢を表しているようにも見えるが、換気のために僅かに開かれたウインドウの隙間から流れる風は紅い髪を微かに靡かせ、彼女の焦りと共に風はそういった様子を消し去っている。

「いんや、見てねぇな」

 肺に溜まった煙をゆっくりと吐き出しながら、彼は答える。

「あ、でもあいつ今日休暇取るっつってたような……何か用あったのか、アテナ」

「用も何も、あの作戦実行の日が目と鼻の先に控えてるじゃない! 当然その話よ」

 アテナと呼ばれた彼女は、やり場のない焦りや憤りを堪えるように、ラムダへと解き放つ。彼も堪ったものではないと言うように目を逸らし、それを受け流すべく煙草の煙を外方へと吐き出す。しかし、それに関しては彼にも思うことがあるようで、ロケット団として最重要とされる作戦を目の前にしてコンタクトを取れない幹部がいるというのは、彼にとっても決して喜ばしいことではないのだろう。様々な場数を踏み、普段から大抵の状況でも冷静を装う彼等がここまで動揺している理由は、しかもそれが一人ではない、ということだ。ラムダは目を瞑る。

「なんで今日なんだろうなぁ、ランスのやつもいねぇし……このまま当日迎えて失敗しました、じゃボスに示しがつかねぇぞ」

 彼等はため息を、空虚に放つほかなかった。

 

 

「――命、爆発ッ!」

 外観からは想像がつかないほどに大きなスケートリンクが存在する建築物。地下をくり抜くように設計することで十分なエリアを確保し、大人数でのスケートを楽しむことができるほどのサイズになったのだという。そして、その中央部にはスケートの設備からは連想することができない闘技場のようなスペースが存在している。

 その闘技場部では、スケート用のヘルメットを始めとした軽装を着用した女の子、見た感じの年齢だと僕と同じぐらいだろうか。そしてその隣には例えるなら二足歩行が可能な人型の犬のような――いや、それが更に“シンカ”をしたポケモンが彼女の隣に立っている。それと相見えているのは他ならぬ僕なんだけど、その周りを囲うように複数人のジムトレーナーも僕を見ている。全員が、逃げようものなら私が、僕が捕まえてやると言っているようにも感じるし、実際そうなんだと思う。

「答えなさい! 何故チョロネコを使って私のメガバングルを奪おうとしたの!」

 状況は最悪だ。もうこの時点で任務は失敗したと言っても差し支えはないだろう。恐らくポケモンが勝手に、とか出来心で、とか言えば悪戯扱いとされて許されるだろう。だけど、これはロケット団の最重要任務なんだ。今逃げたとしても時間的には猶予があるけれど、次にメガバングルを彼女から奪おうとするのは絶望的だ。次に、というのは実は今現在メガバングル自体は僕の手元にあることに由来している。

 作戦はこうだった。まずはジムへと潜入し、時間的にも減っているであろうジムトレーナーの目から掻い潜りつつジムリーダーの近くへと潜伏する。そして、今日最後の“ジムバッジ”挑戦者と戦闘している隙に、チョロネコがメガバングルを盗んで逃げる、という算段。そうすれば両者とも弱った状態になり、万が一見つかって戦闘することになっても、勝機の目が見えるはず。

 実際は決してそんなことにはならず、挑戦者のボロ負けだった。陰から盗む隙を伺っていたものの、あまりに一方的な勝負で弱る様子など全くなかった。それでも、これを逃したらもう今日のチャンスはないと、少々強引なタイミングで決行したことは、まあこの結果となるに必然と言える要素であっただろう。

 でも、以前の僕なら、こんなことは言えなかった。昔から内向的な人間だったし、トレーナーズスクールでもクラスの中心とは程遠い存在だった。いじめられていたわけでもないけど、あの退屈な日々を今も送り続けていたなら、間違いなく言えなかっただろう。今の僕は、世間から悪として煙たがられ、忌み嫌われているロケット団なんだ。悪が悪として行動するのに怖いことなどあるはずもないんだ。

 これは仕事だ。仕事には責任がある。気を抜けば一瞬で押しつぶされてしまいそうなほどに大きなプレッシャーは、僕に勇気と悪意をくれた。

 

「これは僕に必要なものなんだ。どうしても返して欲しければ、僕にバトルで勝ってみなよ」

 ――ちょっとだけ、声が震えた。

 

「最初からそのつもりだったけど――ごめん、私どんな相手でも手加減する気はないよ。ましてや、泥棒さんなら尚更」

 僕のポケモンを見た故の発言だろう。僕の手持ちはチョロネコ一匹、当然と言えば当然だ。今日は彼女も犬のような人型ポケモン、“ルカリオ”一匹しか連れていないようだけど、そのルカリオのレベルを表す数値はポケギアにとても高いと表示されており、タイプ相性自体も最悪なチョロネコ一匹で敵う相手ではないと言える。それに加え、あろう事か彼女のルカリオは“メガシンカ”までしている。

 そもそもシャラシティのジムリーダーである彼女、コルニは“継承者”としての役割を担っており、人間として、そしてトレーナーとして優秀な人間に“メガリング”という最終段階まで進化したポケモンの細胞を、トレーナーの心をメガリングに伝わせて変化させることで、一時的にではあるものの更に進化をさせることができるといったアイテムを渡す使命を持っているらしい。

 今は各地方での研究も進み、広く一般的な物としてメガシンカは浸透したけれど、本部より届いた指令書の備考によると、彼女が着けている“メガバングル”には通常のメガリングやメガバングルと異なる特別な機能を有しているらしい。謂わばオリジナル。それをロケット団が保有する研究施設のサンプルに使用することで、新たな模造品を作り出すというのが今回の趣旨らしい。

 とにもかくにも、挑戦者との戦闘中にメガシンカしたままのルカリオを相手にするのは非常にまずいことであるというのは想像に難くないけれど、ああも言ってしまった手前、引き下がるわけにはいかない。

「やるよ! ミント!」

 投げられ、空中にてボール上部と下部が分離する。そして、そこから放たれる赤い光よりその生物の形状が構成され、実体となる。そうして現れたのは、猫のような姿で艶やかな紫色の毛並みを持つ悪タイプのポケモン、チョロネコだ。ミントはちらりと僕を見ると、自分の相手が誰なのかを理解したようでメガルカリオを見上げる。力量の差は自身も痛感しているはずなのに、特に動じる様子もないミントが何を思っているだろうかは分からなかったが、僕が勇気を維持するには十分な理由になった。ありがとう――ミント。

「お願い、ルカリオ!」

 コルニがそうルカリオに告げると、ルカリオは力強く頷きまさに高速と言える速度で瞬発し、チョロネコの前に立つ。しかし、彼は明らかに自分の実力より格下であるチョロネコ、そして自分の主であるコルニの“たいせつなもの”を奪い取った相手と対峙しても怒りを露にするわけでもなく、威圧、威嚇をするどころかこれから戦う相手に対し敬意を見せるかの如く、悠然とバトルが始まるそのときを待ち、構えている。それは彼が鋼タイプであり、格闘タイプであり、そして“とくせい”や“せいかく”共に“ふくつのこころ”を持ち彼なりの正義を貫いているからこそ振る舞えるものだろう。

 ――それまで同様に佇んでいたチョロネコが、ルカリオを睨みつけたような気がした。

「全力で行くよ、バトル! メガルカリオ、インファ――」

「チョロネコ、“威張る”」

 秋は夕暮れ。ジムの外では残暑も消えかかった秋という季節の真っ只中であると、美麗な音色で教えてくれる野生の“コロボーシ”の声がする。時刻は二十二時。リーダーのバトルを見守るジムトレーナーも、コロボーシの音色に応えるように睡眠を始める街の住人達も、バトルの当人である僕らでさえも、勝敗の行方なんてわからない――。それが、ポケモンバトルだ。

 

 ――To be continued.




 一話目から結構経ってるのもあってか文調が全く安定していないので、既存の話もちょこちょこ修正していくかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。