楽天家な忍者   作:茶釜

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序章 -6-

――深く、深く潜っていく

 

――色んな人の憎しみ、色んな人の嘆き

 

――全て、一つに向かった感情

 

――それを覆すことは出来ない

 

――それをなかった事には出来ない

 

――だからこそ……

 

 

 

「一緒に背負わなきゃなんねえよな!」

 

 

 檻に貼られた札を引きちぎり、鍵を突き刺す。

 これまで7年。長いこと狭い檻の中に縛り付けてしまって悪かったよ。確かにお前は色々とやっちまったけどさ、それでも、分かり合えるよな。だって、俺とお前は相棒なんだからな!

 

 

『……とうとう、ここまで来たな』

 

 

 九喇嘛の声が響く中、俺は檻の封印を開いていく。

 何となく開き方は解った。くるくるとゆっくり回りながら開く鍵を見て俺は息をゆっくりと吐く。

 

 

「さて……あんた、誰だってばよ」

 

 

 振り返り、俺の後ろに立っていた男に問いかける。黄色の髪に青色の瞳。火影装束を身につけた男……それは文献で見た四代目火影の姿に酷似していた。

 いや、十中八九本人なのだろう。九喇嘛を封印したのは四代目火影なのだ。ならばこの場において現れてもおかしくない。

 

 

「まさか、自分で封印を解除するなんてね」

 

「あんたには悪いとは思うけど、こいつは俺の相棒なんだ。いつまでも狭っ苦しい思いはさせられねえってばよ」

 

「そうか……」

 

 

 何故か苦笑を浮かべる四代目火影だが、それくらいじゃあ警戒は解かない。

 里を守るためとはいえ、九喇嘛を封印したのはその力を危険視したからだ。その保険としてこの場にいると推測できる以上、九喇嘛を再封印するのが目的だと思う。

 

 そんな事はさせない。折角解放できたんだ。縛り付けるのはもう可哀想なんだ。

 

 

「こうなっては仕方ないね。九尾を御する力をナルトが持っているのか、見せて貰うよ」

 

「やっぱそうなるか……」

 

『ナルト、気をつけろ。そいつは今のお前より確実に強い』

 

 

 背後の九喇嘛を一瞥して吹き出してしまう。

 いつも仏頂面しているけど、やっぱり良い奴なんだよ。今も俺の心配して力を貸そうとしてるんだからな。

 

 

 でも――

 

 

 

「手は出さないでくれってばよ、九喇嘛。ここは俺の力を見せなきゃいけないんだから」

 

 

 

 走りながら印を結び、影分身を出現させる。

 数は四体。自分自身を含め、5人での特攻。まずは相手の出方を見なければどうしようもない。

 

 

「………」

 

 

 四代目火影がクナイを投げてくる。

 速度は十分対処できるレベル。影分身の一体がクナイを取り出し、叩き落とす。

 

 その瞬間、影分身全員の視界から四代目火影が消え、クナイを弾いた影分身が消えた。過程までは解らない。だが、消えた影分身の感覚的に、四代目火影がいきなり目の前に現れたように見えた。

 

 確か文献では四代目火影は瞬身の術を得意としていたと書いていたはず。

 速いということはそれだけで脅威になる。攻撃は当たらないし、回避することも難しくなる。

 

 そんな手合を相手取るには、工夫しないといけない……

 

 そして、工夫のためには相手を知らないと行けない。

 

 

 直ぐ様全員、術を何時でも発動できるように印を結んでおく。

 

 四代目火影が投げてきたクナイを1体の影分身が回避した。

 その瞬間、四代目火影の姿が消え、クナイを持った状態で回避した影分身の背後に現れる。

 

 

「「「影分身の術・遠の陣!!」」」

 

 

 対象を影分身とした新たな影分身の複製。クナイが振り下ろされる前に発動させ、新たな影分身が3体現れる。

 振り下ろされたクナイで一体消されるが新たに創りだされた影分身は既に術の準備を終えた状態で現れている。

 

 

「「「影分身の術・遠の陣!!」」」

 

 

 新たに現れた影分身によって本体の影分身が新しく3体出現する。

 これで影分身の数は現在8体。一回の攻防で5体増やすことが出来た。

 

 と言っても遠の陣はチャクラ消費が多い術。多用はできないのが難点ではある……

 

 

 しかし、これで現在本体である俺と同じチャクラ量を持った影分身が3増えたという事。

 

 

 更に、憶測の域は出ないまでも四代目火影の瞬身の術の法則を見ぬいた。

 間違っているかもしれないけど、見つけた法則というものはあのクナイの場所に現れる事だ。無条件で良いのであれば次々移動し、目も付く間もなく殲滅すればいいのだし……

 

 

「はは、随分と術の使い方が上手いね」

 

「へっ!余裕ぶっこいてるのもそこまでだってばよ!!」

 

 一度、影分身を作り、直ぐ様消し、作戦を全影分身へと伝えておいた。

 次に本体である俺を含め3人が螺旋丸を形成し、それ以外の影分身は遠の陣の発動準備を終えておく。

 当てれば相当なダメージなのだ。攻撃力は十分。後はどう当てるかだけど……

 

 

「……」

 

 

 四代目火影がクナイを投擲してくる。

 それに合わせて一体の影分身がクナイを回避し、術を発動させる。

 

 

「影分身の術、遠の陣!!」

 

 

 投げられたクナイへと発動した術。影分身の術にはいろんな特徴があって、その中に本体と出現する分身の位置を入れ替える事が出来る物がある。

 出現先はチャクラがあればあるほど、少しだけ距離を広げることは出来る。つまり、近距離とはいえど、すり替えが出来るというわけだ。

 

 

「「「螺旋丸!!!」」」

 

 

 俺達3人の前にすり替えられたクナイに向かって螺旋丸を叩き込む。

 回避した影分身の近くにはクナイの影分身がある。全く同じ物といえど、いきなりの事だったら本体のクナイに移動してくる可能性が高いからと考えられた作戦。

 

 

「何!?」

 

 

 見事に作戦は成功し、クナイへと移動してきた四代目火影に現れたと同時に3つの螺旋丸が突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 しかし、あるはずの手応えがない。まるで幽霊だったかのようにクナイを残して消え失せてしまった。

 そして、現れるのは影分身のクナイの方だった。

 あの一瞬でもう一回移動したっていうのか。

 

 

「いまのは危なかったかな」

 

 

 影分身のクナイを手に持ち、距離を開けた四代目火影を見て、一度息を吐いた。

 落ち着かないといけない。九喇嘛が言っていた通り相手は格上の存在なのだ。どうあがこうとも俺が逆立ちしても勝てない存在……

 

 冷静にならなければ一瞬でやられてしまう……今ここで新しい力が目覚めるなんて都合のいいことは起こりえないのだ。

 

 今使える手札、攻撃に螺旋丸。防御と陽動に影分身……後は、基本忍術しかない。

 

 どれも通用しない事は今の攻防で解った……いや、解ってしまった。

 

 

 

 

 ならば……もう出来ることは……

 

 

 

 

 影分身を一体残して消す。陽動を増やすのはこの場においては愚策。

 この作戦は判断力が要になる……

 

 作戦内容は……影分身も何も言わずとも理解している。これしか打つ手はないのだから……

 

 

 

 螺旋丸を作り出し、ゆっくりと視線を四代目火影へと向ける。

 影分身は落ちたクナイを拾い直し、四代目火影へと投げた。移動先をこちらの近くにしないためだろう……

 

 一発限りの奇襲。本体でなければ意味のなさない攻撃……

 

 

 影分身は準備し終わっている。

 左手にクナイを持ち、走りだした。

 

 四代目火影がクナイを投げてくる。

 手に持ったクナイで叩き落とし、集中する。

 

 

「影分身の術、遠の陣!!」

 

 

 影分身の声が聞こえたと同時に視界が一転し、四代目火影の背中が見えた。

 丁度創りだされた影分身を消した四代目火影の背中に右手を伸ばす……

 

 

 

「螺旋丸!!」

 

 

 懇親のチャクラを込めた一撃……四代目火影はそれにくるりと回転し、左手を突き出してきた。

 

 

「螺旋丸」

 

 

 二つのチャクラが衝突し、とてつもない衝撃が身体に奔る……

 

 

 そして――

 

 

――強くなったね、ナルト

 

 

 

 温かい声が頭に響いてきた……

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