怖気づくことなくサウザーに物を言うルイズもルイズだがそれに律儀に答えてやるサウザーもサウザーである。
学院長の部屋に向かう道すがら言い合いを続けつつコルベール先生にたしなめられている。
「あなたね!いいかげんにしなさいよ!」
「ふん、口の減らぬ小娘だ」
「学院長の部屋にもう着きますのでその辺で・・・・」
ノックをし部屋に立ち入る。
「初めましてというべきかの?わしがこの魔法学院の学院長オスマンじゃ。こちらはわしの秘書をしておるミス・ロングビルじゃ」
オスマンは丁寧に挨拶をした。なにぶん入ってきたのは体格のいい妙齢の男でしかも目つきも鋭く隙のない体さばきだからである。
「俺はサウザーだ。ここがどこかも知らぬ・・・いやこの世界を知らぬと言うべきか」
「人を使い魔として呼び出すような事例はなくての・・・・。こちらとしても今すぐに元の場所に戻すというような話はできんのじゃ。なので申し訳ないがしばしこのルイズの使い魔としてここに居てもらえまいか?衣食住の提供はもちろんさせてもらう」
「これ俺が使い魔だと・・・・?このような小娘に使役されろと言うのか」
「小娘じゃなくてルイズだと言ってるじゃないの!私はあなたの主人になったのよ!?」
「ふん」
いいかげんルイズも涙目になってきている。コルベール先生は困った顔で口も出せずに見つめている。
「サウザー殿とでも呼べばよろしいか?ちと二人で話をさせてもらいたい。他の者は席を外してもらえんじゃろうか?」
ミス・ロングビルはうなずいてチラっとサウザーを見た後部屋の外に出て行った。
ブスっとしていたルイズもコルベール先生に促されて出て行く。
二人きりになったのを確認したあとオスマンは口を開いた。
「この世界の社会は魔法を使える貴族と使えぬ平民で成り立っておる。やはり力を持つものと持たぬものじゃ扱いもだいぶ変わってしまう」
サウザーはそばにあった椅子に勝手に腰掛けて肘置きに手を突いてじっと聞いている。オスマンもそれを見たが何も言わない。
「その貴族の中でも一、二を争うほど上の位にいるのがヴァリエール家なのじゃよ」
「ほう・・・・それほどの血筋か、あの小娘は」
「そう、なればこそ魔法の扱いにも余計に長けておかねばならぬのじゃよ。ただの貴族でない故にな」
「ふむ・・・・」
「ただあの子は生来魔法がうまく使えず過ごしてきた。この学院に入ってから勉学も重ねてきたじゃろう。じゃがうまくいかん・・・・。それゆえに周りからの重圧も陰口もあったろう」
「・・・・」
「そしてようやく上手くいったのが使い魔の召還なのじゃ。サウザー殿がここの居るのはあの子の努力の証なのじゃよ。まだまだ子供ではあるがどうかあの子の使い魔としてすごしてもらえんじゃろうか?」
オスマンは頭を下げた。
サウザーは真剣な眼差しで教え子のことを気に病んでいるオスマンを見てなんとなくオウガイを思い出していた。
「・・・・いいだろう。たかが小娘と侮っていたがそれなりの背景があるのであればやむを得まい。それにこのサウザーに怖気づくことなく物を言うのも気にはいっている、ふっふっふ」
目を瞑りさきほどから続けていた言い合いを思い出すと笑みがこぼれた。
そう、あの眼差しには覚えがある。南斗十人組手に挑んできた少年時代のケンシロウを思わせる意志の強さがあった。
「おぉ!引き受けてもらえるか」
オスマンはほっとした表情を見せる。
「まぁ魔法が使えないのなら俺が拳法を仕込んでも構わんがな」
立ち上がりながらサウザーは呟いた。
扉の外ではミス・ロングビルとコルベール先生とルイズが待っていた。
「うー」
「大丈夫ですよ。学院長ならなんとか説得してくれるはずです」
にっこり微笑みながらロングビルはルイズに語りかける。
コルベールはサウザーの使い魔の紋章を思い出し思案に耽っている。
がちゃりと開いた扉からサウザーが出てくる。
「あ!」
ルイズが駆け寄り下から睨みつけるが迫力はない。
「ふ・・・小娘。学院長に免じておまえの使い魔としてここに居ることにしよう。まぁ元の世界に戻っても居場所はあるまい」
「えっ!ほんとに?・・・じゃなくて!私はあなたの主人なのよ?!小娘呼ばわりはやめなさい!」
ころころ変わる表情も面白いがやはりその瞳には力がある。
「仕方あるまい。ルイズと呼んでやろう」
「なんか釈然としないけど、まぁいいわ」
「おぉ話がついたようで何よりです」
はっと気づいたようにコルベール先生が声をかける。
ミス・ロングビルはサウザーを見つめ何か思案しているように見える。
「とりあえず学院内を案内してあげるわ、あなたに何か頼むにしても場所がわからないようじゃ困るしね」
「ふん、使い魔としてここに滞在はしてやるが俺は俺の意思でしか動かん」
「・・・・・きー!あなたね!私の使い魔になるんじゃなかったの!?」
と時間は過ぎていく。
サウザーはとりあえず魔法学院に居るようです。
だらだらと続いていきます