地獄を撃ち抜く、ランスターの弾丸   作:山原手長黄金虫

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Act1 -Chapter4-

 最初にそれを発見したのはドムだった。銃架にすえられた、水平に二つの銃身を並べ、分厚い装甲板をもつそれを――

 

「トロイカだ!」

 

 叫び声に反応し、デルタは二手に分かれる。直後、彼らがいた空間をトロイカ ヘヴィマシンガンの弾丸が通り過ぎていく。

 キムはドムとマーカスと共に向かって左側の建物の壁に飛び込んだ。右側にはティアナとカーマインが同じようにして身を隠す。ローカストを観察するため顔を少しだし――トロイカの銃口が自身に向いたのを見て――、すぐに引っ込め、それだけではなく壁際から距離を置いた。次々と放たれた弾丸は、壁を砕き、一部は貫通すらしていた。

 くそが。キムは内心、舌打ちをする。トロイカに正面から銃撃を加えても、意味がないのはよく知っていた。図太い銃架と装甲板、そして銃そのものが射手への攻撃を防いでしまうからだ。 

 唯一、可能性があるのはグレネードだが・・・。そう思い、カーマインらを見ると、ティアナからフラグを受け取ったのだろう、カーマインがブラインドスローでグレネードを投擲していた。当たってくれよ。皆、その一投がローカストを倒してくれることを願った。

 電子音に続き爆発音がする。カーマインは堪えきれず顔を出し、結果を確認しようとするが、そんな彼を銃撃が御出迎えする。慌てて引き戻すカーマイン。

 キムが再度顔を覗かせた。トロイカはこちらを狙っていない。そして、トロイカを運用するドローンの他にもう1体のドローンがいることを確認した。こいつがグレネードから自分たちの身を守ったのか、もしくは単にカーマインがヘタクソだったのか。どちらにせよまだ奴らは生きている。

 突然、そのローカストが姿を消した。いや、トロイカの横にある通路に飛び込んだのだ。通路!キムはすぐさまカーマインたちに命令する。

 

「そっちから回り込めるぞ!いけ!」

 

 そして、トロイカの気を引くよう3人はランサーでブラインドファイアを開始した。

 命令を受けた二人は、反対側の様子を伺う。ちょうどドローンが姿を現したところだ。銃で撃ち殺したくなるがぐっとこらえる。奴はトロイカに注目しているであろう彼らが自身に気付いているとは考えてもいない。もっと牽きつけてからだ。

 遂に彼らの近くまで来たとき、カーマインが先手を打ってハンマーバーストの銃床で頭を殴る。ふらつくその後頭部に、カーマインはさらに殴りつけた。地面にうつ伏せに倒れるドローンに二人が飛び掛り、地面に押し付ける。手に構えたナイフや魔法刃を、首や心臓につきたて、とどめの一捻り。痙攣を起こしながらローカストは絶命した。

 先程ローカストが通った通路へ到達し、トロイカを見るとキムたちに猛烈に攻撃していた。後ろにいるティアナに合図し、まずカーマインがトロイカに向けて駆け出す。足音に気付き、通路に銃口を向けようとするローカスト。

 だがカーマインはその銃身を抱え込み、トロイカの動きを封じた。そしてその脇をランサーを持ったティアナが駆ける。彼女はランサーのチェーンソーを起動させ・・・叫び声と共に、射手の体に押し付けた。回転する刃はやすやすとドローンを切り裂く。

 

「うあぁぁ・・・、きっついわね・・・」

 

 むせ返るような臭いに思わず顔を顰める彼女であった。

 人間ダ!奥からローカストの声が聞こえる。

 

「そのタレットを使え!」

 

 通路に退避しながらカーマインが叫ぶ。ティアナはトロイカに跳び付くと銃を回転させ、かつての使い手たちに向けさせた。ぐっと引き金を引くと溢れるように弾丸が飛び出る。ハンマーバーストのそれより遥かに巨大なそれは、長い銃身の中で大きな運動エネルギーと回転を得て、ドローンへ襲い掛かる。直撃を受けたドローンは文字通りバラバラになっていった。

 

 

 前進を再開するデルタ部隊は、噴水のある公園へと飛び出た。もう何年も水の噴出していない噴水は、そこかしこがひび割れていた。

 地面が揺れ、彼らが進んできた道が、その上を通る橋が崩れた事で塞がれる。

 

「またローカストホールだ!フラグをぶち込め!」

 

 噴水の中へ入り、その縁に身を隠しながらドムが言った。同じく噴水に入り、そこに転がっていた二つのグレネードを手にしたマーカスとキムが、ホールに投げ込む。だが続けて三つも出現したローカストホールを全て埋める事は出来ず、結局一つが残ってしまう。そこから湧き続けるローカストが地面に出ないよう、弾薬を惜しむことなく撃ち続ける。

 敵を全滅させたのは、全員がメインアームの弾を撃ち切った頃だった。

 

「もう大丈夫そうだ。弾薬を補給しよう」

 

 弾薬ボックスを発見し、全員に配る。だがランサーは3マガジン分しか補充できなかった。ローカストの死体を探り、ハンマーバーストのマガジンを頂戴する。しばらくはこちらで戦う事になりそうだ。

 キムが前進し、部隊についてくるよう指令を出す。それを聞き入れ、ついていくなかでカーマインが口を開いた。

 

「なんてこった。連中はどっからでも出てきやがるのか?」

 

 酷くうんざりとした様子だ。マーカスが続く。

 

「いいかげん、何らかの防御方法がわかったっていい頃だよな」

 

「ああ、こっちの司令部は完全にお手上げ状態だ。おかげでローカストはやりたい放題だったさ」

 

 魔導師が来てから、幾分改善されたけどな。そう言ってティアナを見る。

 

「まぁ、魔導師だけじゃどうしようもないけどね。地面の中を探知する魔法を使った人たちは挙って動く事も儘ならないし」

 

「ガキの頃、そういう悪夢にうなされたもんだ。大体が少しずつ減らされていって、最終的に全滅しちまうのさ」

 

「・・・オレは、今でも見るぜ」

 

 ハウス・オブ・ソブリンズへと前進を続けるデルタ部隊は分岐路へと差し掛かった。どちらも奥では同じ建物内へと続いている。分散するか、集中か。しばらく考え込んだキムは、分散を選んだ。

 

「二手に分かれよう。フェニックスとカーマイン、ランスターは右へ行け。俺はドムと左へ行く」

 

 イエッサー。マーカスが応え、デルタは分かれて移動を開始した。

 

 

 先へと続くドアが見える。そしてその前に陣取るトロイカの姿も。右手を進んでいたマーカスらは、建物内の狭い通路でその光景を発見した。その足元に積まれた土嚢の影にはドローンの姿も。厄介な事にトロイカはマーカスたちだけでなく、左手を進むキムたちも視界に納めていた。

 3人は互いに視線を交わし、頷く。手にフラググレネードを携えて。トロイカからの猛烈な銃撃をなんとか凌ぎきった3人は、グレネードを相手の頭上目掛け、投擲する。天井や壁に当たって跳ね返ったグレネードは、彼らの目的通り、ドアの手前――ローカストの真後ろ――におとされる。いつもの二つの音がした後、ドローンたちは跡形もなく消し飛んでいた。

 ドアの元へ走り、ボタンを押して空ける。ポチッ、と小さな音がするが・・・開かない。どうやらグレネードの爆風で死んだのはドローンだけではないようだ。

 後ろから雄叫びが聞こえた事で誰かがチッと舌打ち。ローカストが出現したらしい。マーカスがトロイカにつき、数発試射する。

 こちらは生きている、その事に安堵しつつ、マーカスは姿を見せた敵に弾丸を浴びせる。その後ろでは残る2人がドアをこじ開けようととタックルをかましていた。

 敵が全員バラバラになるのと、ドアが開いたのはほぼ同時だった。もつれ合いながら床の上を転げる二人。そこへ、またも銃弾が叩き込まれた。咄嗟に防御魔法を展開するティアナ。それが突破される前に二人はマーカスたちの下に駆け込む。

 

「またトロイカだと!連中の準備が良すぎないか!?」

 

 ドムの叫び声。ローカストはまたもトロイカを準備していたのだ。

 

「右側にもいるぞ。小屋の2階だ!」

 

 さらにマーカスが注意を促す。キムが2階のローカストを指差し叫ぶ。

 

「まず奴を倒せ!」

 

 しかし、ロングショット スナイパーライフルを誰も所持していない今、そいつを倒す事は非常に難しい事だ。ふと、ティアナがキムの肩を叩く。

 

「あいつのところに忍び込んできますね」

 

 そういうと、彼女の姿が徐々に消えてゆく。幻術魔法の一つ、オプティックハイドだ。完全に消えた後、彼女はゆっくりと、しかし急いで移動を始めた。オプティックハイドは激しい動きを行なった時、または大量の魔力を使用すると、その効果を失う。彼女にとって、特に後者は自身の優位な点を封じてしまうということで、酷く心配していた。

 頭を低く、目をつぶらず、周囲を確認――。この惑星に来てから、必然身についた動きを意識して、少しでも敵の弾が当たらないよう勤める。今や仲間達と大分離れた。ここで居場所がばれたりでもしたら、集中砲火で跡形も残らないだろう。

 当たるな、当たるな。その願いが通じたのか、彼女は一発も当たることなく目的地へたどり着いた。そっとドアをあけ、階段を上りきる。窓の近くにドローン。よほど余裕なのか、リロードする際もカバーすることなく行なっている。

 クロスミラージュを手に取り、魔法を発動する。彼女の周囲にその魔力で形成されるオレンジ色のスフィアが4つ現れた。エンブリー広場でも使用した魔法、クロスファイアーシュートだ。

 そのうち一つのスフィアから光弾が放たれる。誘導弾であるはずのそれは僅かな軌道の変更すらせずドローンに命中した。

 すぐさま窓際に寄り、残るスフィアからも発射する。それらはトロイカの射手と、前へ進んだ仲間たちに近づく2体のローカストに命中する。後は先程から小屋の軒下にいる1体だけ――、窓から周囲を確認した彼女は、階段を駆け下りながら思った。

 小屋から出ると、ちょうどそいつが始末されたところだった。とたんに揺れる建物。

 

「ローカストだ。こっちに来るぞ!」

 

 目を凝らすと先程まで仲間がいた後ろにホールが出来たのが見えた。もし制圧が遅ければ、彼らは挟み撃ちを受け、全滅していたかもしれない。

 だが、現実にはそうはならず、デルタ部隊は正面きって戦う事ができた。しかも重機関銃がある状態で。ドムがトロイカにつき、這い出てきたローカストにひたすら撃ち続ける。他の面々は、足が止まった敵を次々と撃ち殺していった。

 

「よくやった。さあ、レゾネイターを探そう。急げ!」

 

 キムの号令のもとデルタは奥のドアへと急ぐ。その向こうから、最近よく聞くようになった声が聞こえた。

 

「ローカストの増援部隊か!」

 

 キムが身構えるが、ティアナが困惑したように口を開く。

 

「ええと、その・・・1匹だけ・・・?」

 

 ドアが大きな音を立てて開かれる。本当に増援は何故か1体しかいなかった。5人からの集中砲火で蜂の巣になる。

 転がった死体に哀れみの眼差しを向けながら、デルタは先へと進んだ。

 

 

「コントロール、こちらデルタ部隊だ。アルファからの連絡は?」

 

『ないわ。無線は沈黙したままよ。オーバー』

 

 ―――了解。キムが耳から指を外す。後ろを振り向き、デルタに指示を出す。

 

「ドムとフェニックスは入り口を探せ。俺は残る二人と後方から援護する」

 

 2人は歩みを速め、前に出た。マーカスがキムに尋ねる。

 

「アルファはどうする?」

 

「余力があれば助ける」

 

 ・・・余力、ね。少しムリをしてでも作り出してやる。考えながらティアナはまたクロスミラージュを携える。いつでもカートリッジをロードできるよう、準備もしておこう。

 前に出た2人がドアを蹴りつける。正面に一際大きな建物が見えた。ハウス・オブ・ゾブリンズだ。

 

「行くぞ」

 

 デルタ部隊は走り出した。道路に差し掛かると突然大地が揺れだす。大きく崩壊した、更にその先からだ。皆がそちらに目をやると・・・2つの影が通り過ぎていった。

 

「見たか?」

 

 誰もがばっちりと見ていた。

 

 

 建物前の大きな空間に入ると、奥からドローンが現れた。またもや、トロイカが配備されている。まず、外に出たローカストに対してデルタは攻撃を開始した。

 このとき、ローカストは酷く間抜けな事をした。なんとトロイカに誰もつかなかったのだ。それに気付いた彼らは慌てて、()()が建物内にさがる。ほんの僅かな間に、外にいるローカストは0になった。

 

「突入して側面から攻撃しろ。援護する」

 

 それをみて、なにもしないほどキムはおちぶれてはいない。ドムとマーカスが建物に侵入したのを見計らい、前に出てローカストに攻撃を加えた。カーマイン、ティアナも同様の動きをとる。怒り狂ったように反撃が飛んでくるのをみて、3人はそれぞれカバーし、ブラインドファイアで応射したり、グレネードを投擲したりした。

 側面から進入した2人は、正面入り口に向け、建物内を走っていた。グラグラと建物がゆれ、どこかが崩落した音が聞こえる。

 

「ローカストホールだ!」

 

 遠目にホールの端が見えたマーカスは、すぐさまフラググレネードを手にする。近づいて確実に入れたいが、そこまで行く前に多くのローカストが這い出てくるだろう。そうなれば容易に頭も出せなくなるに違いない。するとまたローカストが這い出て・・・・・・という悪循環に陥りかねない。

 刺のついた鉄球のような形をした爆弾を振り回しながら、マーカスはよく狙い、一発で放り込めることを願ってスローする。

 

「吹っ飛ばせ!」

 

 少し手前に落ちたグレネードは、少しの間地面をすべり、吸い込まれるようにホールへ入った。内部で爆発が起き、崩壊するローカストホール。這い出る事ができたのは4体、上々の成果だろう。もう一つを投げ込む。爆風から頭をかばい、動きを止めたドローンたちを2人は次々倒していった。

 異変を察知した射手が、トロイカから離れたのを見て、外にいた3人は周辺に目を配らせつつ、補給を開始した。マーカスから通信が入る。

 

「・・・・・・オールクリア」

 

 

 キムは2人にも弾薬の補給を命じ、その後集合するよう号令をかけた。

 マーカスがキムたちに近づき、ドムのまた歩み寄る。

 

「無事か?」

 

 キムは部隊全員を見渡しながら確認する。マーカス、ドム、ティアナはそれに軽く頷く。

 

「ああ、でもマズイな・・・・・・」

 

 声を出したのはカーマインだ。彼は自身のランサーのあちこちを叩き回しながら言葉を続ける。

 

「どっかイカレちまったのかな。弾が出やしねぇ」

 

 どうやら彼のランサーに重大な不具合が出たようだ。コッキングレバーを引くものの、びくともしない。

 

「ほら!」

 

 おもむろに立ち上がる。キムがランサーをよく見えるように。それがいけなかった。

 パツンッ、という音とともに彼の頭が弾けとんだ――――。




カーマイン死亡を持ってこのチャプターは終了です。
え?生存ルート?アンソニー・カーマインにそれはないでしょう。
彼が死んでこそ第2第3のカーマインたちが輝くのですから。
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