IS~ただ一発の魔弾として~   作:ディアズ・R

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第九話

「アリス。対中距離用武装弐型の緋と蒼を展開なさい」

《YES マスター》

 

空中に浮かんだまま、武装を展開する。

別段、急いで倒さないといけないわけではないので、アリスに武装の展開を任せる。

私の周囲に光の粒子が舞い、宙に浮くように展開したのは六台のミサイルポット。

そして、両肩に固定するタイプのグレネード二門。

 

「久しぶりの戦闘ですね。ふふ」

 

ユラの気分が昂ぶってゆく。

あぁ、今から戦うのですね。

敵ISが、拡散するビームを放ってくる。

 

「簡単に壊れないでね?」

 

それら全てに当たるが、一切のダメージを通さない。

これは対エネルギー兵器防御機能【ハイ・フィールド】の効果だ。

この守りを抜けたいなら、アリーナのシールドエネルギーを突破した攻撃の倍以上はないといけない。

実弾兵器は、普通に通るのが欠点でもあるが。

 

「最後まで、私を満足させてください!」

 

その宣言とともに、ミサイルとグレネードが敵ISを襲う。

激しい衝撃と爆風が、辺りを吹き飛ばす。

爆煙が敵ISを包み込み、弾を撃ち尽くして止まる。

攻撃が止まった瞬間、爆煙の中からビームが放たれる。

 

「硬い……」

 

ボロボロではあるが、破損はしていない。

それを見た瞬間、身体が火照ってくる。

 

「ふふ、うふふ、あぁ、硬い、凄く硬いわ。あぁあぁ、どうしましょうか。ふふふ、硬くて、大きくて、激しい……あぁ、いいわ」

《対中距離用武装壱型・紫、起動》

 

私が言うまでも無く、今一番展開したい武装を選択してくれる。

この子となら、良い相棒(パートナー)になれそうだわ。

展開された武装は、右腕に取り付けられたダブルガトリング。

 

「まだ、まだ足りない。ふふふ、アリス」

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)狂気の魔弾(トリガー・ハッピー)発動》

 

そして、世界が染まる。

赤く、あかく、紅く、アカク染まってゆく。

 

「さぁ!私と―――」

 

狂気の魔弾……使用者に多大な負荷を与えるが、その分効果は優秀。

発動時は、使用者の視界を染め上げる。

発動中は、実弾兵器及びエネルギー兵器を無限に使用できる。

弾切れやエネルギー不足に陥る事が無くなる。

ただし、使用後の一時的な視力低下など、日常生活に支障をきたすほどのデメリットがある。

 

「激しく―――」

 

後部スラスターに、全力でエネルギーを注ぎ込む。

敵ISも、スラスターにエネルギーを注ぎ込む。

 

「遊びましょう!!」

 

二つのISが高速戦闘を開始した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

視点・セシリア

 

「アレが、ユラさん……」

 

誰かに呟いた訳では無い言葉は、空気に溶けてゆく。

呆然と見つめる先には敵ISの反撃を一切許さない、それこそ圧倒的とも言える強さで攻め立てているユラさんのISがいた。

その見た目と重装甲からは、全く予想できない速度で空を舞う。

 

「アイツの本気は、この程度ではないぞ」

「え?」

「い、今だって教師陣、それどころか軍人とだって戦えるほどですよ!?」

「この学園に来た理由が、今が本気で無いということだ。これ以上は、極秘情報だ。まあ、上級生達は知っている様だがな」

 

アレで、本気じゃないなんて……貴女は、一体なんなんですか?

わたくしには、解りません。

あの時だって、貴女は……

 

 

思い出すのは、一夏さんとの決闘の後。

 

『ユラさん』

『なんですか?』

『どうすれば強くなれるのでしょう?』

『何故私に聞くんですか?』

『一夏さんにいろいろと教えていたのは、貴女でしたよね?』

『……なるほど。でも、強くなる必要は無いと思いますよ?だって、貴女には可能性がありますから』

『可能性……』

『力を求めた者は、必ず代償を支払います。それが大きいか小さいか、それは人それぞれです』

『では、ユラさんはどんな代償を?わたくしには、貴女が強く見えます』

『私の、代償……自由ですかね』

『自由?』

『えぇ、強者と戦う為に手に入れた力は、私から自由を奪う呪いの力でした。力を求める者は、愚か者です。ですが、私は力を求める。ただ、負けない為に……ずっと、ずっと………そろそろ、戻った方がいいですよ。セツリアさん』

『……セシリア、ですわ』

 

 

貴女は、何故そこまで強くあろうとするのですか?

どうして、強さを求めるのですか?

何故、諦めないのですか?

 

「ユラさん……」

 

わたくしには、その強さが羨ましいです。

貴女が、何を求めて力を欲するのか、解りません。

でも、知りたい。

何を求めているのか。

どんな力を欲しているのか。

どれほどの覚悟を持っているのか。

貴女の事をもっと、知りたい。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

敵ISの右腕、左足を破壊した。

たったこれだけしか破壊できなかった。

五分も経っているのに。

 

「あは♪最高の気分です♪もうこのままイっても良い位♪でも、まだ足りないの。私が狂うぐらい。アナタが壊れるぐらい。もっと、もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!!私に、アナタを、感じさせて!!」

《自立支援兵器特式・空の欠片を起動します》

 

背中と腰から、十二機のビット兵器が飛び出す。

空の欠片は、アリスに操作させている。

今回が初の実戦投入だからなのか、一定パターンの軌道で、かなり単純だ。

それでも、十二機という数とエネルギー切れを起こさないことから、敵ISの装甲を確実に削っていく。

敵ISは避けようと動き回るが、もともと無人機の敵ISと自身で考えるAIが操作するビット兵器がぶつかれば、当然AIが一手先を読んで攻撃を当てる。

 

「ほらほら、もっと粘って。アナタは、私と戦っているのよ?休憩なんて、させないわ♪枯れるまで、搾り取ってあげる♪」

 

空の欠片の攻撃を避けていた敵ISを、背中を踏みつけて、地面に落とす。

そのまま、展開中だったガトリングを敵ISのコア付近に向ける。

 

「さぁ、聞かせて頂戴!アナタの、悲鳴を!!」

 

ゼロ距離からの一斉掃射。

薬莢が飛び散り、鉄の砕ける音が響く。

数秒か、数分か、それとも数時間か撃ち続け、撃った弾数が三十万を越えたあたりで掃射を止める。

少し離れ、反応が停止しているのを確認する。

 

「……これで、終わりなの?まだ、私が満足してないのに?欲求不満だわ」

 

背を向け、モニタールームに戻ろうとした。

 

《マスター!敵ISから高エネルギー反応!》

 

アリスのその言葉で振り向くと、完全に沈黙していた筈の敵ISが、再起動していた。

高エネルギー反応、敵ISの再起動、本来なら焦るか、慌てるだろう。

だけど、私は違う。

 

「あっは♪まだ私の相手をしてくれるのね!良い!君、凄く良いよ!そこまでしてくれるんだもの、私も、全力でお相手しないと失礼よね♪」

 

敵ISは、間違いなく自爆しようとしているのだろう。

ISが、自分から自爆した場合の爆発範囲は、その希少性ゆえ不明だ。

数の限られているISのコアを、好き好んで吹き飛ばす者はいない。

だからこそ、この場所で爆発されるのは、望ましくない。

だからと言って、自爆されるのを待つ気は無い。

 

「これが私の、全力よ♪さあ、私の力を見せてあげる♪装甲破棄(パージ)

《装甲破棄、二次移行を開始します》

 

全身装甲(フルスキン)が、崩れ落ちる。

そして、殲滅女神(イセリア・クィーン)が、真の姿を現す。

ほとんどの装甲を破棄し、通常のISの装甲よりもさらに薄い装甲のみが残る。

だが、翼があった。

背中から離れて、浮いている赤黒い四対八枚の機械翼。

その姿は美しく、凛々しく、神々しく、世界に顕現する。

 

「……綺麗だ」

 

誰かの声が聞こえた。

でも、その誰かを確認するには、時間が足りない。

 

《二次以降完了。敵ISのエネルギー限界、残り十秒》

「最後だものね、派手にイかせて、ア・ゲ・ル♪」

《残り九秒》

「コード・セレスティアル・ブラスト」

 

背中の機械翼同士の間から、黄金の粒子が噴出す。

それはまるで、黄金の翼の様であった。

 

《残り八秒》

「ターゲット・ロック」

 

エネルギーの溜まっている場所。

つまり、敵ISのコアをターゲットする。

 

《残り七秒》

「アナタの御蔭で、なかなか楽しめたわ」

 

掌同士を向かい合わせ、胸の前で止める。

 

《残り六秒》

「アナタが来たから、この感覚を思い出せた」

 

掌同士の中心に、エネルギーが凝縮され、球状のエネルギー体を生成する。

 

《残り五秒》

「アナタは、私を喜ばせてくれた」

 

エネルギー体が、サッカーボールサイズで固定される。

 

《残り四秒》

「ありがとう」

 

私はこの時、心の底から、笑えていた。

とても純粋な、感謝の微笑み。

 

《残り三秒》

「そして―――」

 

超高速で敵ISに近づき、上空に蹴り上げる。

 

《残り二秒》

「さようなら」

 

放たれたエネルギー体は、敵ISのコアに向かう。

 

《残り一秒》

「アナタとの逢瀬、有意義だったわ」

 

そして、敵ISをコアごと破壊した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

《残り零秒。お疲れ様です、マスター》

「えぇ、お疲れ様」

 

落下した敵ISの残骸には見向きもせずに、アリーナ内に残されていた二人の方に向かっていく。

 

「……ユラ、だよな?」

「えぇ、そうよ。貴方、強くなりなさい」

「え?」

「強くなって、私を満足させてね?」

 

そう言いながら、一夏の頬に手をあて、顔を近づける。

 

「満足させてくれたら、気持ち良い事してあげる♪」

 

綺麗な微笑みを至近距離で見て、一夏は顔を赤くして停止する。

隣の鈴が怒鳴ろうとするが、それよりも早くユラは行動した。

 

「ん♪」

「んん!?」

「んな!?」

 

キスしたのだ。

唇と唇を合わせて。

 

「ふふ♪貴方との逢瀬、楽しみにしてるわ♪」

 

満面の笑みで投げキッスをしながら、モニタールームに向かう。

後ろから怒鳴り声と悲鳴が聞こえたが、振り向かない。

今はまだ、振り向くに値しないから。

何時の日か、彼が自身の前に立つ事を夢想しながら、その日を待つように。

 

「私は気に入ったけど、アッチの私はどう思ってるのかしらね……いい暇潰しにはなりそうだわ♪」

 

楽しそうに笑う彼女は、小悪魔の様に見えた。

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