ヱヴァンゲリヲン異聞譚   作:沖田十三郎

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序 4

●S‐13 神奈川県 足柄下群 旧箱根町付近 タバコ屋前

 相も変わらず頭の上からは爆発音が轟いているし、っていうかフロントガラスからミサイルを喰らってる使徒が見えてるっちゅーの。

 ―――事前の調査報告書を読む限りこの状況で笑っていられるような少年ではなかったと思うんだけど。

 ……でも今はそんなこと言っている場合じゃないしね。

「乗って!」

 

●S‐14 アルピーノルノーA310SP

「乗って!」

 先ほど魅せつけられたドライビングテクニックは、どうやら伊達でも酔狂でもなかったらしく、ギアの入れ替えから急速後退まで、鮮やかと言う他ない技量だった。

 そうこうしているうちにどうやら頭上の黒い巨人は移動する事にしたらしい。車の鼻先を掠めるくらい直ぐ近くに彼の足が下りてくる。

 彼にしてみたら普通に歩いてるだけなんだろうが、彼から見たら米粒の様に小さい小人であろう人間である僕たちはたまったものじゃなかったんだけど、葛城さんは凄かった。

 迷う事もなければ慌てる事もなく、それどころか唇の端をにぃっと歪めて舌先でその端を舐める始末。

 恐らくここは戦場だろう。

 戦場において、彼女はひどく扇情的だった。

 一言で彼女を表すなら、そう、美しかったと言うべきだろう。

 それは責任と渇望とほんの少しの誇りに裏打ちされた、恐らくは彼女の無意識が生み出した本性の残影だ。

 だからこそ、きっとは彼女はその本性に対して無知なのだ。

 この僕がそうであるように。

 きっと僕の本性を最初に知るのは僕ではない誰かだ。

 自分自身の事は自分自身が最もよく知っている?

 無知で健忘症にかかった阿呆の言いそうなセリフだね。

 残念だが、それは幻想さ。

 多角的かつ客観的な観察を望めない主観が、それを可能とする他者を上回るだなんて、恥ずかしくって僕にはそんな高尚な台詞は言えない。

 けれど、僕は僕の本性がきっとロクでもないものであろうと思う。

 だから隠す。

 ばれないように、見つからないように。

 きっと彼女は、僕の同類さ。

「―――もしかしたら、最初に僕を見つけるのは君になるのかもしれないね」

 爆発音と暴風と地鳴りに車体を揺らしながら、青い流線型を駆る彼女の隣で、僕は場違い極まりないことに少し興奮していた。

 

●S‐15 国際連合直属非公開組織 特務機関 NERV本部

 全面に巨大な状況映写スクリーンを置き、最下層に地形データを反映させた3Dスリーンを敷き、それを俯瞰する形で複層式の、まるで第2次大戦時の戦艦の艦橋の様な造りをした特務機関NERV(ネルフ)の脳髄に当たる総合戦闘指揮所において、自衛隊を預かる3人の軍人は歯ぎしりを押さえる事で精一杯だった。

 それも、

『目標は、依然健在。現在も第三新東京市に向かい進行中』

『航空隊の戦力では足止めできません。』

 という放送が指令所内に響くまでの事だったが。

 ――そして、そんな国の守護を司る自衛隊の無力を知らされて平然としていられるほど、彼らは自らの職務に対して矜持を持っていなくはなかった。

 だから叫ぶ。

 自らが着る制服と同じ制服(志し)を持って戦う同士に叫ぶ。

「総力戦だ!後方の第四師団も全て投入しろ!」

「出し惜しみはなしだ!何としても目標を潰せ!!」

 ――所謂(いわゆる)矜持や誇りと云うヤツを嗤う層というものはある。そして、その嘲笑には一定の意味があり、根拠がある。

 矜持や誇りでは守れない物があり、失うものがある、と。

 だがしかし、自らの職務に矜持も誇りも持たない者が従事した仕事が、果たしてそれらを胸に抱いた者が従事した仕事と比べて優れる事はあるのだろうか?

 あるだろう。

 だが、それは一定のラインを越えはすまい。

 本当に優れた仕事というものは、自らの行いに矜持や誇りを抱いた者だけが成し得るのだ。

 

●S‐16 第三新東京市内各地

 そう信じて彼らは戦場に立ち、遥かな先にある非現実的と言ってもいい『敵』と相対し、戦った。

 主力戦車が、試作軽戦車が、自走式多連装ロケット弾発射機が、多連装ロケットシステム自走発射機が、大型戦略重爆撃機が、砲弾を、ロケット弾を、そして超大型殲滅弾を雨霰、所狭しと目標()に向けて放射した。

 その様はまさしく乾坤一擲(けんこんいってき)

 街を火の海に沈めてでも国を守らんとする意志その物をぶつけてぶつけてぶつけた。

 ―――そして爆炎が地を焼き、煙が街中を支配した。

 

●S‐17 NERV本部 国際連合軍 特殊混成部隊 臨時戦闘指揮所

 だがそれでも、効果はなかった。

 黒の巨人は悠々とその歩を進める。

 その様が前面に配されたスクリーンに映し出される。

「何故だ!!直撃のはずだ!」

 今は臨時で国連軍を指揮下に置いた自衛隊、その軍人Bが叫び、拳を机に叩きつける。

「戦車大隊は壊滅、誘導兵器も砲爆撃もまるで効果なし、か。」

 軍人Aは腕を組み、厳しい視線をスクリーンに向けて睨みつける。

「駄目だ!!!この程度の火力では埒が明かん!!!!」

 軍人Bの嘆きに満ちた叫びが虚しく響く。

 

●S‐18 特殊混成部隊 臨時戦闘指揮所 後方

 

 サングラスをかけ、両の手を合わせてその上に顎を置いた男がある。

 その後ろ、壮年の男性が直立する。

「やはりATフィールドか」

「ああ。使徒に対し、通常兵器では歯が立たんよ」

 楽しむ風情でもなく、ただ事実を述べるという訳でもなく、感情の乗らない言葉の応酬は、騒然とする指揮所内にあって誰に聞こえるでもなく虚空に消えた。

 

●S‐19 NERV本部 国際連合軍 特殊混成部隊 臨時戦闘指揮所

 サングラスの男の呟きが終わるやいなや、臨時指揮所に運び込まれていた通信機に灯がともった。

 軍人Bはそれを手に取り、ふんふんと頷き、そして 

「分かりました。予定通り、発動致します。」

 口元を引き締めてそう答えた。

 

 




ある意味仕方ないとは言え、軍人のセリフ回しもう少しなんとかするべきだろうか?
原作と一字一句変えてないんだけど(その代わり内心やら行動所作の描写は盛りまくった)、いくら再構成ものとはいえ問題ではなかろうかと思わないではない。

しかしなぁ、キャラ立てしても仕方ないんですよねぇ(苦笑)
大幅な、というほどセリフ量ないんだけど、引っかかるかなぁ?
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