IS ~Identity Seeker~   作:雲色の銀

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第2話 気高きお嬢様は最悪の運命を共にするか

 セシリア・オルコットとの騒動もありつつ、午前の授業は無事に終わりを迎えた。

 まるで勉強していなかった一夏は、頭から煙を吹きそうになっていたが。かくいう俺も、基本事項しか頭に入れていなかったので、分からないところはあった。そこは追い追い身に付けていけばいいだろう。

 

「ゼロからのスタートの方が、より上を見やすい」

 

 女尊男卑の社会で2人以外は皆女子。ISの知識も経験も他の連中に負け越しているだろう。

 そんな境遇を、俺は逆に喜ばしく思っていた。ここから夏までにどれくらい上まで上がれるのか、非常に楽しみなのだ。

 特に、すぐそばには険悪な仲の代表候補性がいる。奴を出し抜きさえすれば、大幅なレベルアップが期待出来そうだ。

 

「お前、そんなもの持ち込んでたのか」

 

 そんなことを考えていると、一夏が俺の傍にやって来る。

 俺が今いる場所は食堂。昼休みにすることと言えば、昼食だ。

 だが、俺は食堂の定食を買わずに、鞄の中に大量にしまい込んでいたリンゴをかじっていたのだ。

 

「人が何食おうと構わんだろう。ルール違反ではないはずだ」

 

 俺は構わず、シャクシャクとリンゴを食う。言っておくが、分けてやる気は全くない。

 ふと、一夏の隣に知らない女子がいることに気付いた。黒髪のポニーテールに、女子にしてはやたら敵意をむき出しにしたような目。胸は……日本人ながら、セシリア・オルコットよりデカいと見た。

 あぁ、そういえばクラスメートにいたような気がするな。一夏め、女子の相手はウンザリしていたんじゃないか?

 

「一緒に食っていいか?」

「好きにしろ。そこの……ええと?」

「コイツは篠ノ之箒(しのののほうき)だ」

「……そうか。箒も座ればいい」

「そうさせてもらう」

 

 4人席しか空いておらず、俺は1人で食べていたからな。あと3人分は空いている。特に気にすることもなかったので、一夏と箒を座らせた。

 それにしても、篠ノ之……か。

 

「お前、箒と何処で知り合った?」

「幼馴染なんだ。6年ぶりにここで会ったんだけど」

 

 あぁ、幼馴染ね。そうかそうか。

 つまりは、織斑先生と箒も知り合い。そして──ISの開発者、篠ノ之束(しのののたばね)と織斑先生も知り合い。

 これは果たして偶然なんだろうか。世界最強のブリュンヒルデ、織斑千冬の弟と、世界を変えた科学者、篠ノ之束の妹が幼馴染だと。

 

「何だ。私の顔に何か付いているのか」

「いや。不愉快だったら謝る」

 

 ジロジロ見ていたことに気付かれ、箒に睨まれる。俺はすぐに視線を逸らし、リンゴをかじる。

 ここで箒との仲を拗らせれば、篠ノ之束に繋がる情報も得られなくなる。世界を変えたいと思っている以上、あの女科学者とはいつか敵対するかもしれないからな。

 

「悪いな。昔からこうツンツンした奴でさ」

 

 一夏がこっそりとフォローに入る。今のは俺に非があった分、気にしてはいないが。

 ところで、さっきから箒はチラチラと一夏を見ては視線を逸らしている。俺と相席することになった時にも、少し不満そうな表情を見せていたし。

 そして、幼馴染にして6年ぶりの再会、と。

 これで気付かない程、俺は空気の読めない男ではない。

 

「俺はもう行くぞ」

「え? もう食い終わったのか?」

 

 芯と種だけになったリンゴをその辺のゴミ箱に捨てて、俺は食堂を後にした。

 

「あとは2人で、ゆっくりするといい」

「なっ!? お、おい! それはどういう意味だ!」

 

 主に箒への捨て台詞を残して。

 

 

◇◆◇

 

 

「あらあら、この学園には猿がいらっしゃるのね」

 

 教室に戻って来た俺は、鞄からもう一つリンゴを取り出してかじる。やはりリンゴは丸々1個、皮ごと喰らうに限る。

 リンゴをかじっている時が一番落ち着くというのに、高飛車な台詞が俺に向けて放たれる。

 それが誰の台詞かは、姿を見なくとも分かる。

 

「リンゴをそのままかじっているだなんて、猿以外の何ですの?」

「人の自由をとやかく言う権利は、お前にはないはずだが?」

「まぁ、まだ分かってないの? エリートの私にそんな口の利き方をするだなんて、本当に野蛮な人」

 

 セシリア・オルコットは嘲笑を含みながら、オーバーな物言いを続ける。

 エリートエリート煩い奴だ。コイツから肩書きを取ったら何も残らないんじゃないかってくらいに、自分の功績を盾にしている。

 

「いいか、代表候補生。今はお前が上だろうと、いつか必ず俺がお前を下に引きずりおろしてやる。敗北の泥を舐める日を、楽しみにしてるんだな」

「うふふ、今の冗談も面白くありませんわ。ジョークセンスのない殿方は、女性に好かれませんわよ?」

「お高く留まった女なんかいらん」

 

 リンゴを食ったまま、セシリア・オルコットを睨みつける。上を見ようともせず、下ばかり見て悦に浸るような奴は好かん。

 たとえ容姿が良くとも、俺好みのボディスタイルを持っていても、性格が悪ければ話にならない。

 俺がセシリア・オルコットを気に入らないように、俺の態度の一々が気に食わなかったのかセシリア・オルコットの眉がヒクヒクと動いている。

 

「……ふん!」

 

 そして、一瞬笑ったかと思いきや、俺が持っていたリンゴを手ではたき落とした。

 

 かじりかけで。

 まだ食える部分のあるリンゴが

 床に。

 落ちて。

 汚れる。

 

 この時、複数ある俺の記憶から鮮明なビジョンが蘇った。

 果樹園の木を切り倒す男達。大事に育てたはずの果実が落ち、潰される。

 ああ、なんて勿体ないことか。

 

「あら、手が滑っ──」

 

 気が済んだのか、にこやかに微笑むセシリア・オルコット。

 だが、その表情は次の瞬間には驚愕に歪むことになった。

 

「貴様……」

 

 俺は隙を突いて、セシリア・オルコットの首根っこを掴もうと腕を伸ばしていた。

 だが、奴も伊達に代表候補生を名乗っている訳ではなく、咄嗟に手首を掴んで防ぐ。

 けど、誰であろうと許さない。食べ物を粗末にする奴は、決して。

 

「何を……!」

「拾え。今すぐにそれを拾え」

「誰が……っ!」

 

 静かに怒りながら、俺は首を狙う腕の力を緩めようとしない。

 セシリアも、俺の手首を決して離そうとしなかった。

 このまま力で勝負してもいいが、セシリア・オルコットに勝てるかは分からん。

 

「チッ、食べ物を粗末にするな。それを作る為にどれだけの苦労があるのか、貴様知っているのか?」

「そんなこと! ……もういいですわ。お猿さんの相手にも疲れましたし」

 

 俺は引き下がり、床に落ちたリンゴを拾った。……大丈夫。まだ食える。

 それに対し、セシリア・オルコットは汚らわしいと言わんばかりにハンカチで手を拭いていた。

 

「で、まだ何か用か?」

「けど、覚えていなさい。いずれ、後悔させてあげますわ」

 

 プライドが富士山よりも高い女は、俺を恨めしく一睨みし、そそくさと自分の席に戻って行った。

 ……奴の土俵であるIS戦なら、セシリア・オルコットに圧倒的な分があるしな。

 

「それもいつまで持つかな」

 

 あの高飛車女のことは大分分かってきた。デカいプライドと高圧的な態度。それをボロボロに崩せば大人しくなるだろう、と。

 リンゴを完食した俺は、ゴミを外に捨てに出た。幸い、外から今のやり取りを見ていた女子は誰もいなかったらしい。流石に学園の生徒全員を敵に回すような真似はまだ早いからな。

 

 

◇◆◇

 

 

 初日が終わり、流石に疲れがドッと押し寄せてきた。

 織斑先生の授業は、一言で言えば「超スパルタ」だ。理論としては合っているのだが、説明が強引すぎる。まるで軍人学校にでも入れられたのかと錯覚してしまった。

 これでも初歩の初歩らしく、周囲の女子達は問題なくついてきていた。超倍率を勝ち上がってきたエリートというのは、間違いでもないらしい。

 

「うぅ……」

 

 おかげで一夏は今にも死にそうになっていた。

 コイツの場合は専門用語が片っ端から分からない所為もあるだろうが。本当に一週間で詰め込めるのか?

 

「生きてるか?」

「い、意味が分からん……なんでこんなにややこしいんだ……」

「……骨は拾ってやろう。せめてもの情けだ」

「勝手に殺すな!」

 

 吠えるだけの元気があれば十分だな。

 

「ああ、織斑君、蒼騎君。まだ教室にいたんですね。よかったです」

「山田先生?」

 

 気分転換のリンゴでもかじろうかと思っていたら、山田先生がトテトテとやってきた。手には数枚の書類を持っている。

 授業はもう終わったが、何か事務的な用事でも残っていたのか?

 

「えっとですね、寮の部屋が決まりました」

 

 そうだ、ここは全寮制の学園だった。確かに、ISの操縦者は将来の国防のためにも重要な存在だ。優秀な生徒は守らなければならないし、同時に他国の操縦者は是が非でも勧誘したい。

 そうなると、色んな意味で生徒達を守る為、自宅からの通学よりも全寮制で身近に置いておいた方がいいだろう。

 男もいないから貞操面での心配もない──いや、なかったか。今は俺達2人の男が、この女の園に足を踏み入れるのだ。学園側としても、貞操面で最大の注意を払わなければなるまい。

 

「俺の部屋、決まってないんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

 

 俺もその手筈だった。本当に急な入学だったから寮の部屋が用意出来ていなかったとのことで、それまでは学園で用意したマンスリーマンションを使えと言われていたのだが。

 

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……織斑君、蒼騎君。そのあたりのことって政府から聞いてます?」

 

 山田先生は最後ら辺で俺達に耳打ちしてきた。日本政府の話はあまり大きな声で話したくはないだろう。

 政府側としても、当然男の操縦者である俺達には保護と監視を付けたいだろうし、この処置は当然と言えば当然だな。全く聞かされていなかったのはどうかと思うが。

 

「そういう訳で、政府特命もあって、とにかく寮に入れることを最優先したみたいです。一ヶ月もすれば、個室の方が用意できますから、しばらくは相部屋で我慢してください」

 

 申し訳なさそうに、山田先生は俺達にそれぞれ鍵と書類を渡してきた。こういう謙虚な態度は好感が持てるな。どこぞの誰かとは違って。

 しかし、受け取った俺はある異変に気が着いた。

 

「あの、先生」

「はい、蒼騎君」

「俺と一夏が相部屋、じゃないんですか?」

 

 俺と一夏に渡された鍵は、それぞれ別の部屋のものだった。

 普通なら男2人で相部屋だと考えるべきだと思うのだが。もしや、先生が間違えたのかと書類の方も確認するが、やはり別々の部屋割りになっていた。

 

「えっと、さっきも言った通り、無理矢理変更したので別々になってしまったみたいです。一ヶ月ぐらいで二人の相部屋が用意されますので、それまでは我慢してください」

「……はぁ」

 

 そうか、無理矢理なら仕方ないな。管理体制ぐらいしっかりしておけよ、IS学園。

 俺と一夏は大きく溜息を吐いた。

 

 

 

 それから寮までの道。俺と一夏の後ろを、興味深々と言った風に大勢の女子達が付いてくる。

 まるで親鳥を追うひよこのようだ。この視線の雨にも、そろそろ慣れて行かねばなるまい。

 

「じゃ、俺はこっちだから」

「そうか。また明日な」

 

 一夏と別れ、俺は更に廊下を進んでいく。入口には近い方が良かったのだが。

 

 さて、ここで俺なりにある推測を立ててみた。何故男の一夏と俺が同じ部屋でないのか。

 それは恐らく、俺達を守る為のIS学園の策だろう。二人しかいない貴重な男性IS操縦者が同じ部屋に集まっているのならば、誘拐するのにも楽だ。

 そこで、より強力な防衛システムを完成させることと、俺達が自衛出来るまでの準備期間として一ヶ月を設けた、と。

 

 そんな風に考えながら、鍵の番号と部屋の番号を照らし合わせつつ歩き、やっと自分の部屋に着いた。

 

「ここか……いや、待て」

 

 鍵を差し込んで不用意に扉を開けようとした手を止める。部屋割りを無理矢理変更した、ということは向こう側にいるのは必然的に女子ということだ。ここで普通に入って行けば、何かしらのトラブルが発生する確率が高い。

 ダメだ、それはダメだぞ。見知らぬ女子にセクハラ染みた行為なんかすれば、確実に刑務所行き。社会的には抹殺され、挙げ句には即解剖という目に遭いかねない。

 たとえ学園側や政府側の非であろうと、この世は女尊男卑。俺の言うことなぞ誰も信じてくれないだろう。

 ならば、男として最低限の節度とエチケットは誠心誠意守るべきだ。

 

「ふぅ……」

 

 大きく息を吐いて呼吸を整えてから、俺は扉をコンコンと大きめにノックした。防音設備の整った環境なら、これぐらいしないと聞こえないだろうに。

 

「はい、どなたですの?」

「ここで相部屋になった者だ。一応、ノックさせてもらった」

「まぁ。では、少し待ってくださる? シャワーを浴びていたところでして」

 

 よかった。本当によかった。

 女子がシャワーを浴びてるところに入るだなんて、変態もいいところだ。

 きっと頭を割られて死ぬ未来がやって来るだろう。

 

「お待たせしました。どうぞ」

「ああ、失礼する」

 

 向こうの準備も整ったようなので、鍵を開けて中に入る。

 女子の園、と言うべきか、部屋からはいい匂いがした。この辺りも非常に気にするのが女というものなのだろう。

 中はまるでホテルのように片付いている。目に入ったのは2つの大きなベッド。テレビや冷蔵庫、IHコンロなどの設備も非常に充実している。相部屋とはいえ、こんな部屋を与えられるとは、まるで天国のようだ。

 

 

「私はセシリア・オルコット。1年の間、どうぞよろしくお願い致します……わ……」

 

 

 だが、相部屋の相手を見た瞬間、天国は一瞬で地獄のようにまで感じた。

 よりにもよって……よりにもよって!

 

「い、いやぁぁぁぁぁっ!? な、なんであなたがここにいるの!?」

「それはこっちの台詞だ! それにドア開いてるんだから大声出すな!」

「あ、あなたの方が声が大きいですわ!」

「いや、お前の方が……今は落ち着こう」

 

 無意味な言い争いをする前に、やることがある。

 俺は頭に血が上る前に、まずはドアを閉めた。防音設備十分とはいえ、ドアが開いている状態で怒鳴り散らせば、当然廊下まで響く。

 そうすれば、興味を持った野次馬がまたぞろぞろと湧くことになるだろうからな。

 

「さて、と。貴様が同じ部屋だと?」

「それはこっちの台詞ですわ! 誰があなたのような野蛮な猿なんかと……」

 

 人のことを猿としか言えんのか、この女は。

 頭を抱えたくなった俺は、最後の望みに賭けることにした。

 

「ちょっと待ってろ。織斑先生のところに行って、部屋の相方を入れ替えてくれないか交渉してくる」

「私も同行しますわ。あなたに任せるなんて出来ません」

「好きにしろ」

 

 こういう時ばかりは気が合うのか、俺とセシリアは急いで寮長室に向かう。

 

「ダメだ。大人しく部屋に戻れ」

 

 が、交渉は即座に却下されてしまった。

 寮長、織斑千冬先生は教鞭を振るっている時と同様にキツイ視線を向けて来る。

 

「何故です。別にこの女でなくてもいいでしょう?」

「そうですわ! 大体、男女が同じ部屋だなんて納得がいきません!」

「これは学園の決定だ。素直に従え」

 

 抗議しても、決定事項だの一点張りで取り合ってくれない。これで万が一問題が起きて、俺が訴えられでもしたら最悪だ。

 

「男性のIS操縦者を保護するため、でしょう?」

「……そうだ。分かってるなら早く部屋へ」

「一夏の相方は? 別のクラスの代表候補生ですか?」

 

 IS学園には、現在二十人近くの代表候補生が在籍している。その内、一年生はわずか四人。

 大きなアドバンテージを持ったセシリア・オルコットが選ばれるのは当然だが、他の三人の存在はどうしたのか。

 

「いや、織斑のルームメイトは篠ノ之だ」

「箒が?」

 

 奴は専用機も持っていないはず……いや、篠ノ之束の妹という事実を考えれば分かることだった。

 一夏は()()()のISを動かした男にして、世界最強(ブリュンヒルデ)の弟。篠ノ之束の妹と一緒の部屋にしておけば保護対象を同時に守れる。

 そして、所詮は()()()の俺は専用機持ちの代表候補生に守ってもらおうって寸法だ。

 

「代表候補生は他にもいるはずですが?」

「だからどうした。変更はもう効かん。相部屋が気に入らんのなら、廊下で寝てもいいんだぞ」

 

 俺からの質問攻めにいい加減ウンザリしてきたのか、織斑先生は敵意を込めて俺を睨む。並大抵の人間なら裸足で逃げ出すような覇気に、俺は体温が一気に下がっていくのを感じた。

 とはいえ、これ以上は本気で取り合ってくれなさそうだ……。

 

「……一ヶ月後を楽しみにしてますよ」

 

 俺は捨て台詞を吐き、無意識の内にセシリア・オルコットの手を引いてズカズカと部屋へ戻っていった。

 気に入らない。俺の待遇が、価値が一夏よりも下だなんてな。

 

「あ、蒼騎君だ」

「蒼騎君! 部屋何処か教えて!」

 

 俺と織斑先生の言い合いを聞いていたのか、途中で部屋着のまま出て来た女子達に追いかけられる。だが、俺は一切答えないまま歩くスピードを速めた。

 部屋に入りバタンッと扉を閉めて、野次馬が中に入ってこれないよう鍵を閉める。これで、一安心のはずだ。

 

「クソッ、奴等にとってはたかが二匹目の(どじょう)か!」

「ちょ、ちょっと! いつまで手を握ってるんですの!?」

「あ、悪い」

 

 セシリア・オルコットを連れて逃げたから、俺は握っていた彼女の手を離す。

 すると、セシリア・オルコットは俺から距離を取って、握られていた手を抑えながら睨んでた。拾いたての子猫か、貴様は。

 

「……一ヶ月。我慢するしかなさそうだな」

「うぅ~~~っ!」

 

 一ヶ月。短くて長いような期間を、このプライド塗れの代表候補生と部屋を同じくしないといけないとは。

 この時ばかりは、自分の置かれた境遇に嘆くしかなかった。

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