生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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不快な内容ですね。
間違いなく。

それと毎度多くの感想がやはりうれちー


過去への決着
覚悟の男の子達


 死地へ赴く任務。

 それが主が私に与えた道なのであれば、私としても受け入れるつもりだ。

 

 それが私の生きる道なのだから。

 しかし……ふむ……。

 

 

「久し振りセーヤくん!」

 

「イリナ……? お前、イリナなのか!?」

 

 

 同じ死地へと向かう相棒が、これから交渉する相手であり我等にとって天敵とも云える悪魔に対し、鈍い私でも分かるレベルで好意的な態度を見せてるのを見てると、何ともやるせない気持ちになってしまう。

 しかも困ったことにだ……。

 

 

「ちょっと!? セーヤにベタベタしないで頂戴!」

 

「教会所属の貴女が悪魔に転生したセーヤくんに近付くのは良くないのでは?」

 

「……」

 

 

 これから交渉する相手の気に触れるような真似は、いくら久し振りの幼馴染みとの再会で舞い上がってたとしても止めて欲しかった。

 というか、何度も何度も相棒で今もセーヤと呼ばれる悪魔に主に逆らうかのごとく身を寄せてるイリナに念を押したのに……。

 

 

「……………ハァ」

 

 

 主よ。これもまた試練なのでしょうか? クリスチャンがああも簡単に異性へ色目を使うのをお許しになるのですか? 私には主の意向が全くわかりません……。

 

 

「話をしてもいいか? イリナも戻れ」

 

「む……はーい」

 

「では話すぞ。

先日、カトリック教会本部ヴァチカン及びプロテスタント側、正教会側に保管・管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われた」

 

 

 しかしそれでも私はこの任務を果たさなければならない。

 恋愛なんてものに興味が無いので、騒ぎが大きくなる前にさっさと話を進めようとイリナを引き離しながら、本日のこの場に来た理由をこの地の管理を任せられているらしいグレモリーにする。

 イリナの行動のおかげですっかり警戒心を持ってしまったグレモリーとその他。

 チッ……めんどうな。

 

 

「盗まれた? へぇ、誰に?」

 

神の子を見張るもの(グリゴリ)の幹部・コカビエルだ」

 

「ふーん、聖書にも記載されてる大物堕天使じゃないの」

 

 

 あまり興味も無さげな反応に、少しばかり肩透かしを喰らった。

 聖書にも記載されてる大物堕天使と分かってるのにも拘わらずこの態度……妙だなと感じてしまう。

 

 

「興味が無さそうだが、分かってるのか? 私達が此処に来たということは、貴様が管理してるこの地にコカビエル達が潜伏しているという事なんだぞ?」

 

「そうねぇ……確かに私が管理を任されてるこの地にそんなのが居るのは鬱陶しいわね」

 

 

 私の問いにグレモリーは鮮やかな紅髪をかきあげながら、上からコカビエルを見下ろすかの様な態度を示す。

 余裕のつもりなのか、それとも単に危機感が無いのか、よくよくリアス・グレモリー以外を見れば、長い黒髪の……確か姫島朱乃とやらも、元・聖女のアーシア・アルジェントとセーヤといった悪魔も同じだった。

 唯一違うのは、この部屋の隅で大人しくしている白髪の悪魔と、先程から私とイリナが布にくるめて背負ってる成れの果てと化した聖剣を一点見している金髪の悪魔くらいか?

 

 

「貴女達の言いたいことは、私が管理を任されてるこの地にあるだろう盗まれた聖剣の残りを回収したいので、許可が欲しいといったところかしら?」

 

「む……そ、そういうことだ」

 

 

 何だ、このグレモリーという悪魔は? ロクに話をしてないのに此方の意向をハッキリ見破ってきただと?

 

 

「お見通しなのね……」

 

「あぁ、正直驚いたぞ……」

 

 

 これにはイリナも驚いた様で、私はこの連中に対して一気にやり辛さを感じ始めるのと同時に思い知る。

 この連中は良くも悪くも悪魔なのだと。

 ならばもう回りくどいのは止めだ。

 

 

「それなら単刀直入に言わせてもらおう。

私達はコカビエルに奪われた聖剣を奪還したいと思っている。

故に此処を管理する貴様の許可と、一切の干渉をしないで欲しい」

 

 

 足を組ながらソファに座って此方を見るリアス・グレモリーに、我等の意向である『悪魔の不干渉』を直入で告げる。

 

 私としても回りくどいのは好きじゃないし、何より先程からセーヤとやらが此方を見ているのだ。

 だから私は一気に話を終わらせようと興味無さそうにしているグレモリーに話しソワソワ気分をさっさと解消してしまいたい。

 どうにもこの場所に入る前からそうだったのだが、さっきからセーヤというイリナの幼馴染みとやらに見られてるせいか、変に心が落ち着かないのだ。

 

「…………ふふ」

 

「っ……!?」

 

 

 それを決定的にさせたのは、奴の笑みを見てしまった時だった。

 

 

「……。まあ、貴女達からすれば私達が堕天使と組んでエクスカリバーをどうこうするんじゃないかと心配だから、干渉をしないで欲しいといった所かしら?」

 

「う……うむ……」

 

「……………ふふふ」

 

 

 な、何だ……? 余りにも視線を感じるから一瞬だけ兵藤誠八を……その目を見た途端……言い様のない気持ちにさせられ、落ち着かなり、グレモリーの言葉が耳に入らない。

 こう、心地好くて……奴の笑みを見てると――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわーつまづいてしまったー! 足がもつれて転んでしまったー!(棒)」

 

「あー祐斗先輩が転んでしまいました~(棒)」

 

 

 胸がドキドキし、段々と奴に対して無常の信頼をしてしまう…………と一瞬だけ思った矢先だった。

 派手に何かが壊れる音と共に、部屋の隅に居た金髪の男悪魔が床にひっくり返り、妙に大きな声でわざとらしく転んだと自己主張したその声に私はハッ今しがたまでボーッとしていた意識がクリアに戻り、今しがたまで感じていた妙な気分は綺麗さっぱり消えた。

 

 

「祐斗……今度はなんなの?」

 

 

 リアス・グレモリーも隅で大人しくしていた方の自分の下僕の 行動に眉を潜めながら……ん? 妙に苛立った表情を浮かべていた。

 しかし金髪の悪魔……リアス・グレモリーいわく祐斗と呼ばれた少年は……。

 

 

「申し訳ありません……足が痺れてしまいまして……」

 

「ついでに言うと私もです」

 

 

 白髪の悪魔と並んで『妙に反省の色が無さそうに』それだけ言うと、苛立ってるリアス・グレモリーと……

 

 

「……………………………」

 

 

 それまで笑みを浮かべてた筈の兵藤誠八が、明かに仲間に向けるべきではないおぞましい殺意を祐斗とやらに向けて睨み付けていた。

 

 

「どういうつもりかしら祐斗に小猫? この前から……また兵藤一誠の入れ知恵かしら?」

 

 

 それに気付いてないリアス・グレモリーは、話を中断した二人に対して怒りを向けている。

 しかし主である筈のリアス・グレモリーの責める視線を受けても祐斗とやらと白髪――じゃくて小猫とやらはシレッとしままに見受けられる。

 

 

「反抗的な態度をしてるのは認めますが、転んだだけで反抗的と言われたら堪ったものじゃありませんね」

 

「あ、この態度も反抗的とお思いですか? それなら謝罪しますよ……『申し訳ございません、もうしません。』」

 

 

 此処に来て初めて私は気付いた。

 どうやらこのグレモリー眷属の一枚岩では無いみたいだと。

 明かにこの二人だけグレモリーに対する敬いが感じられない。

 

 

「くっ、アナタ達は……!!」

 

「お、おいリアス・グレモリー……! 何があるかは知らんが、話の続きをだな……」

 

「話なら終わりよ! 奪われた聖剣の奪還も好きになさないな!」

 

 

 ……。あ、あれ? あっさり要望が通った。

 もう少し長丁場になると思ってたのだが……いや、都合が良いといえばそうだが……。

 

 

「出て行きなさい! そして少しは頭を冷やして頂戴……。兵藤一誠に何を入れ込まれた知らないけど、余りにもふざけすぎよ」

 

「いや、イッセーくんは全く無関係なのですが――いえ、わかりましたよ……ただ転んだだけなのに」

 

「何を誰に吹き込まれたかは知りませんが、どうせなら眷属から外して欲しいのですがね……」

 

「な、なんですって!?」

 

 

 正直不安だ。

 蓋を開けてみれば眷属を制御できない。

 冷静に思えばこの二人以外は兵藤誠八を取り合ってたし、イリナもずっと熱っぽい視線を向けてるし、その兵藤誠八自身も今にして思ってみると変だし、そして……。

 

 

(兵藤君の目と表情には気を付けてね)

 

(一応忠告はしておきます)

 

「え……?」

 

 

 その懸念を後押しするように、部屋を出ようと私の横を通りすぎる際小声で言ってきた忠告じみた言葉に、私の不信感はますます増大するのであった。

 

 

 

 

 

 

 ハァ……何とか我慢できたけど、その代わり追い出されてしまった。

 

 

「ちょっと露骨すぎたかな……。まさか教会の使いの人まで落とそうとするとは……」

 

「予想通りとはいえ、余りにも見境が無さすぎですね兵藤先輩も」

 

 

 別に義理も何も初対面だし、寧ろ聖剣を持ってた人だからあんな下手な演技までして注意をそらす必要も無かったし、寧ろ兵藤君に堕ちて聖剣を奪還する任務を忘れてくれたら心置きなく堂々と探して壊せた筈だった……だから部室の隅で大人しく教会の使いの人達と部長のやり取りを聞いて情報を獲ようとしたのに、その教会の人達に兵藤君が

またやってしまおうとするとはね……。

 

 だからついつい僕は、何度なく見せられ不可解にも落としていた兵藤君の笑顔に落ちかけていた……ええっと、ゼノヴィアさんって人を見て自然と身体が動いてしまっていた。

 

 

「あの紫藤イリナって人は手遅れでしたが、あのゼノヴィアって人も馬鹿じゃないと思うので、私達の忠告を頭に入れてくれてる筈です……多分」

 

「だと良いけどね。ハァ……」

 

 

 恨んでも恨みきれない聖剣を目の前にしてたのに、それに何もせず兵藤君に心を奪われそうになっていた初対面の人に手助けする様な真似をしてしまった事に、今になって変な後悔が沸いてくる。

 

 結局搭城さんの言った通り、イッセーくんは僕の復讐心について一切軽蔑しなかった。

 いや、それどころか――

 

 

『お前が最近ボーッとしている理由を話してくれた……それだけでも十分嬉しく思うし、それだけの事をされて忘れるというのば無理な話なのも分かる。

だが、一人で突っ走る真似はするな……どうせなら『只の人間』である俺を利用しろ。

そうすれば、『お散歩中に偶然不思議な剣を見つけてしまい、得体が知れないので専門家のお前に電話してしまう』かもしれんからな……ふっふっふっ』

 

 

 そう言外に僕の復讐に協力するとまで言ってくれた。

 

 復讐は何も生まないなんて尤もらしいことを言うでもなく、ただただ僕の生きる理由を肯定してくれた。

 

 

『見て分かると思うが、俺は自分が友達だと思った相手には全力で味方をする様なタイプでな。

偉そうに生徒会長とふんぞり返ってるが、俺自身の性格は恐らくかなり悪いぞ?』

 

『つまり俺は他人には平等的だが、友にはそれが一切なくなる――言ってしまえば俗な人間なのさ』

 

 

 イッセーくんは自分の事をそう言ってた。

 確かにその言葉だけ聞けば、身内に甘くて他人に無関心という何とも言えない性格だけど、僕にとっても匙君にとっても搭城さんにとってもそれが何よりも心地良い。

 だってそれは、イッセーくんが僕達を『絶対に裏切らない友達』と認識してくれている事に他ならないのだから。

 

 それが何よりも今の僕は嬉しく思う。

 結局複数なんて生易しい数の女性と平然と関係を持ち、更に増やそうとしている兵藤君も、それに落とされてしまった部長も今の僕を……仮に表だって反抗してなかったとしても認めてくれなかっただろう事を考えてしまうと余計に。

 

 

「これって僕の予感なんだけど、あの紫藤さんって人と幼馴染みって繋がりで兵藤君も干渉するんじゃないかなって思うんだ……ゼノヴィアって人の事も諦めなさそうだし」

 

「ありえそうです。

となると、さっさと強奪された方の聖剣を探さなければいけませんね」

 

 

 身勝手なのは重々承知している。変わってしまったとはいえ、僕を拾ってくれたリアス部長に対しての恩を仇で返していると思う。

 

 けれど僕は、あの日の事を忘れてのうのうと生きるなんて真似は出来ない。

 

 殆どの人たちは『復讐は何も生まない』とか『許して前に進むことが大事なんだ』と言ってくるだろうし、恐らく部長も……そして何故か兵藤君も知ったような顔で言ってくるだろう。

 

 けれど、僕にとって全てだったあの時の仲間を一部のエゴな奴等によって奪い取られ、命を弄ばれて殺された事について無理矢理忘れるなんて出来ないし、僕はその覚悟をもって決心している!

 

 

「復讐なんて言葉では誤魔化さない。

僕は、自分の今と過去にケリを着ける……!」

 

 

 そうすることで僕は止まった時間を動かせる……そんな気がするんだ。

 過去と今に決着を着け、未来へと進む……それが僕の『覚悟』なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 木場の奴、大丈夫だろうか。

 聞けばアイツは俺なんか温すぎる程に辛い出来事があったらしく、イッセーにその事を話をしているのを聞いた時は『単なるイケメン野郎』という認識を改めてしまうほどだ。

 

 聖剣計画の生き残り……それがどんな非業なものなのか、フワついた理由で悪魔に転生した甘ちゃん馬鹿な俺にはわからないし、並々ならぬ憎悪を持っているその気持ちも俺には全部を理解してやれる事が出来ない。

 けど、木場が……アイツがそうしたいと願うのであれば俺は……俺達は無償の協力をしたいと思っている。

 

 勝手に思ってることだが、アイツも俺の『友達』なんだから。

 その為には……。

 

 

「で、俺をクビにする呼び出しでしょうかこれは?」

 

『…………』

 

「匙……!」

 

 

 俺も今の状況と決別しないとな……ふふふ。

 

 

「アナタは分かってるのですか? 自ら眷属を辞めるという意味を」

 

 

 ソーナ・シトリー……そしてその眷属――つまり兵藤シンパな連中に呼び出された俺は、空き教室のど真ん中に立たされ、それを囲うように佇む連中から非難めいた視線を向けられていた。

 どうやら先日、ソーナ・シトリーに向けた態度が実にお気に召さないご様子なようだが、俺は脱力状態で突っ立ちながら一応王であるソーナ・シトリーの問いに答えようと口を開く。

 

 

「はぐれ悪魔認定にでもされるんですか? いや、されるで確定かな? 下僕の下級悪魔が主かつ上級悪魔様に逆らうのはご法度ですものねぇ?」

 

 

 悪魔社会には階級がある。

 そして俺は人間から転生しただけの悪魔故に立ち位置としてはこのソーナ・シトリーに逆らってはならん。

 が、兵藤シンパと化して色々と堕落しちゃってる彼女に対しての未練も忠誠心も失せてしまった今、こんな脅しめいた呼び出しに屈するなんて有り得ない。

 

 

「そ、そうです。こちら側に深く関わり、尚且つ人間の兵藤一誠に何を吹き込まれたかは知りませんが、私はアナタをはぐれ悪魔になんて……」

 

 

 そう、物悲しそうに俺を見るソーナ・シトリーに、俺は変わらずの白けた気分だ。

 下僕悪魔程度の兵藤に堕ち、堕落しきってるのに今更尤もらしいことを言われても説得力なんてありはしねぇし、ていうかイッセーは関係ねーと何度も言ってるのにまるで聞きもしねぇ。

 

 どうやら思う通りにならない事に腹でも立てた兵藤がソーナ・シトリーを含めたシンパ共にイッセーについてあることないことを吹き込んでるらしく、それを簡単に信じてる。

 ……。はぁ、くだらん。

 

 

「今なら先日セーヤくんに対しての態度について、謝罪をしたら許してくれる筈です。だから――」

 

 

 

 

 

 

 

「あー あー あー!! うるせービッチ共だなぁ!!」

 

 

 

 くだらん。実にくだらねぇ。

 

 

「えっ……!」

 

『!?』

 

 

 期待なんてもうしてないけど、それ以上に失望だぜ、ソーナ・シトリーさんよぉ。

 

 

「兵藤に謝罪? クックックッ……何だそりゃ? 結局アンタ等が心配なのは俺じゃなくて、『眷属である俺が兵藤に失礼な事を言ったせいで嫌われる』って心配してるだけじゃねーか。何が『はぐれ悪魔にしたくない』だ……尤もらしい事言いやがってクソビッチ共が」

 

 

 あーもういい。

 上級悪魔とか主だとか知るかんなもん。

 処刑されようがなんだろうが、俺はこんな連中とやってくなんて無理だ。

 例え兵藤の洗脳じみた魅力に取り付かれた被害者だとしても、そんなものはテメーの責任だ。

 それに対して俺を巻き込むんじゃねーってんだスットコドッコイ共が。

 

 

「な、あ、主に向かってなんて事を!」

 

「謝ってください匙くん! 今すぐに!!」

 

「そ、そうだよ! 匙くん変だよ! あの、生徒会長と関わってから……」

 

 

 つい『プチン』としてしまった俺の言葉に大層なショックでも受けられたのか、驚愕の表情で口をパクパクしてるソーナ・シトリーの代わりに元・仲間共が口々に撤回しろと殺気混じりで脅してくるので、俺はふんと鼻を鳴かしながら連中を睨み返しながら、イッセー達との日々で緩和していたものの、それでも残っていたストレスをぶちまける。

 

 

「変わったのはお互い様だろ? 別に誰が誰を好きになろうが知ったこっちゃねーがな、周りも見えず、本来の仕事もしねーで一人の男の取り合いなんぞしてる貴様等よりかはマシだバーカ!」

 

『なっ……!?』

 

「それとも何だ? テメー等が兵藤に股でも開いて誘惑してる間に俺達は奴隷の如くテメー等の分まで働けってか? ざっけんなクソボケ!! んなもんはぐれ悪魔にでもなった方がマシだ!」

 

 

 兵藤の魅力とらやに取り付かれたからと、まだ我慢してやれたが……もう良い。

 こんな連中なぞこっちから願い下げだ!

 俺は……俺は……アンタ等を見限ってアンタ等を越えてやる……! そしてその位置から見下し言ってやる。

 

 

 ザマーミロってなぁ!

 

 

「アンタに情を持ったのは黒歴史だぜクソッタレが! 退けぃ!」

 

「ちょっ……さ、匙! 待ちなさい!!」

 

 

 これで大っぴらに眷属を辞めたと言えたし、ちょっとはスッキリできた。

 まったく、こんな連中の言いなりになるくらいなら木場の復讐を手伝う方が余程有意義だぜ。

 

 俺の啖呵に雷に撃たれたように固まる連中を背に空き教室から出た俺は、今を以て奴等を越えるという目標を打ち立てた。

 それがどんなに辛い事になるかまだ分からないが、この燃える様な気持ちがあれば何とかなる……そんな気がする。

 それに……何よりも俺には――

 

 

「ん、匙同級生? どうしたそんな興奮して? シトリー3年との話は終わったのか?」

 

「そのお顔からして仲直りは不可能だったみたいですわね。

それなら、今から木場さんのお手伝いをしに行く所ですが、匙さんも付いてきますか? 聖剣探しに」

 

「……。あぁ、いくぜ。木場はもう友達だ、友達の困り事は全力で手助けしてやらぁ!」

 

 

 トモダチが居る。

 なまっちょろい主従関係じゃない……対等な繋がりが。

 

 

「さて行くか、友の忘れられない過去に決着を付ける手伝いに!」

 

「はい、一誠様!」

 

「おうよ!」

 

 

 裏切りが無い……最高の繋がりが。

 

 

終わり。

 

 

 オマケ……やっぱりその頃な黒猫お姉ちゃん。

 

 

「さて行くか! 友の忘れられない過去に決着を付ける手伝いに!!」

 

「はい一誠様!」

 

「おうよ!」

 

 

 実の所、友達に対しては不平等なまでに全力バックアップをするという、悪平等にしては不合理な性格をしている一誠は、先に外へと出た祐斗と白音と合流するため元士朗とレイヴェルを引き連れて生徒会室を後にした。

 当然、この三人以外が出ていく事で無人となった生徒会室なのだが――――

 

 

 

 

 

「にゃにゃ~ん♪」

 

 

 それは錯覚だった。

 一誠達ですら気づけなかったが、生徒会室には一人部外者が居たのだ。

 

 

「イッセー達は居なくなっちゃったかぁ……後を付いて行きたいけど、その前に~♪」

 

 

 名を黒歌。

 白音の姉にて誠八好みの女性であり、只今一誠達が居なくなった後の生徒会室を満面の笑みで物色していた……。

 

 

「イッセーにしては珍しいにゃ~♪ でも私に好都合だにゃ~ん♪」

 

 

 主に会長席……つまり一誠の座る席を。

 そして嫌に機嫌が良い理由……それは、一誠の席に残された空のマイ・ティーカップだった。

 

 

「さっきまで飲んでたイッセーのティーカップ……えへ♪」

 

 

 一誠やレイヴェルにすら気付かれない、謎のステルススキルを持つ黒歌は、その特性を利用して一誠の私物をアレしたりコレしたりに嵌まっていた。

 そしてこの一誠のマイ・ティーカップは、極上の獲物だった。

 

 

「此処に一誠は指を掛け、此処に口を付けて……んっ……ぺろぺろ……」

 

 

 誰も居なくなった生徒会室。

 その会長席に座りながら、黒歌は一誠がさっきまで使っていたマイ・ティーカップをぺろぺろとし始めた。

 

 そして頬を染め、恍惚な表情まで浮かべ始める。

 

 

「イッセー……あは……いっせぇ……♪」

 

 

 本当なら一誠の自宅に潜入すれば直ぐに手には入るつもりだった。

 しかし、こういった食器類はレイヴェルが直ぐに洗ってしまうのと、流石にあの二人が居る時に潜入するとバレてしまう可能性も無きにしもあらずだったので今まで手が出せないでいた。

 だからこそ、念願の一誠の使用済み私物を手に入れた黒歌は悦び混じりにぺろぺろする。

 

 

「椅子を汚したらばれちゃう……けど、……あぁ……♪」

 

 

 そんな黒歌の行動を……人はまごうことなき変態と言うだろうが、彼女の身に宿った特質のせいで誰にもバレない。

 だから、ドン引き行為の自覚も無しに黒歌はストーカーをするのだ。

 

 

終了




補足

イリナさんは既に手遅れです。
そしてゼノヴィアさんも堕ちそうになりましたが、何と無く仕返しがしたかった木場きゅんがファインプレーしてギリギリ持ちこたえました。

ちなみな話、一誠くんはイリナさんと顔を会わせたくないと思ってます。
てのも、トラウマが決定的になった原因ともいえる相手なので。(奪われたという意味で)

その2
匙きゅん……目標を定めるの巻&完全な見限りの巻。

お陰でヒロインが完全に消滅しましたが、イレギュラー化となることで別フラグも立つ……そゆことです。


その3
木場きゅん……覚悟を決めるの巻。

かつての仲間の為と言い訳せず、過去との決着を付け未来へと進むために動く事にしました。





その4
黒猫お姉ちゃん、段々距離が近いの巻。

……まあ、内容通りに。

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