生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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さて、一誠を人外に仕込んだ彼女の気紛れお散歩と、聖剣だけ破壊して後は兄貴には押し付けちまえ作戦をやってる一誠達の様子……みたいな?


前回も沢山の感想をありがとうございます!


人外の師匠

 兵藤一誠という少年が居る。

 その少年は、外から転生した一人のイレギュラーにより後に獲られる全ての権利を奪い取られ、物語から弾き出された元・主人公だ。

 

 肉親を、友人を、初恋の子を……それまでそれが当たり前だと思っていた人間達をイレギュラーに奪われ、居場所すら失った一誠には何の才能も無くこのまま朽ち果てる筈だった。

 

 そうなればイレギュラーである兵藤誠八は一誠という主人公に加え、貰い物の力を駆使して順風満帆な二度目の人生を送れた――

 

 

『キミにその気があるのであるのなら、彼に負けない――いや本来のキミすら凌駕する存在にしてあげよう。

ただし、かなりのスパルタ式だがな』

 

 

 筈だったんだよなー

 少なくともこの僕が剥奪されてブチ落とされた事により覚醒した可能性を見付けてしまうまではな。

 

 

『キミは兵藤誠八が『突然沸いて出てきた』と思ってるが、キミの周りの元・大事な人達はアレを最初からキミの双子の兄として扱っている。

だからもしかしたら自分の頭がおかしくなったのではないかと懸念しているようだが、それは正解さ。

彼は外の世界から、くだらん欲望を持ったままキミの双子の兄として転生してきた、単なるイレギュラーであり、キミが本来持つべき可能性の全てを奪い取ったのさ』

 

 

 正直今にして思えば、なんて僕はラッキーなんだと思ったもんだ。

 そりゃあ普段でも一京分の一のスキルである善行権(エンゼルスタイル)があるし、何もせんでも勝手にラッキーだけど、それでも僕はひょっとしたら『初めて』心の底から出会えた事に幸福感を持ったのかもしれない。

 

 

『しかし、兵藤誠八は見誤った。

全てを奪い取り、絞りカスと見下して優越感に浸ってる暇があるんなら、そのまま今のキミを殺すべきだったんだ。

が、それを怠った故に彼は近い将来、必ず後悔するだろうよ』

 

 

 赤い龍の帝王(ウェルシュドラゴン)を失い、その力を底上げする将来のエロさも無くしてしまった……が、そのイレギュラーによって一誠には新たなイレギュラーが備わった。

 それこそ、赤龍帝の籠手(そんなもの)なぞより遥かに上り詰められ、これまでの悪平等(ぼく)と比べてもより安心院なじみ(ぼく)らしく。

 

 不知火半纏よりも僕の写し鏡になれるだろう、新たな人外。

 

 

『死にたいと思うのであれば、その命を僕に寄越しなさい兵藤一誠くん。

決して後悔もさせず、決して埋まらず、誰よりも僕の背中を任せられる男にしてやるからさ』

 

 

 イレギュラーによって生まれたイレギュラーな人外。

 それが僕が持ちうる全てを叩き込み、それを吸収しつくした人外……兵藤一誠なのだ。

 他の誰にも代わりは務まらない。

 失った主人公としての格を見事自力で復活させた男。

 

 

「最近は夢でしか会ってねーしなぁ。

何やら一誠もお友達に恵まれてるせいで、この僕に構わなくなってきたしー? 仕方ねーから直接会いに行ってやるかな。

ったく、この僕に此処まで想われる男は有史以来、めだかちゃん達が居た世界を引っくるめてもお前だけだぜ一誠」

 

 

 夢と現実を操る過負荷(マイナス)一つ。

 持つ技術(スキル)と力を無限大に進化させる異常性(アブノーマル)一つ。

 総数二つのスキルを持ち、かつては勝てなかった言彦すら刹那でブチのめせるだろう領域に僕を引っ張り上げてくれた人外。

 

 そして、あろうことかこの僕の心を満たしてくれた絶対唯一の男とのたった十年ぽっちの付き合いを思い返しながら僕は動く。

 かつては七億は下らなかった悪平等(ぼく)全員と比べても釣りが出る、友人でも恋人なんぞ生易しい……それ以上の関係である愛弟子のもとへ散歩がてら行こうか。

 

 

「やぁ、グレモリー君。相変わらず奥さんと子供を大事にしてないみたいだな」

 

 

 色々と手土産片手にな。

 

 

「あ、あ、ああああ……! 安心院(あんしんいん)さん!」

 

 

 ま、彼に会うのは正直ダルいけど。

 

 

 

 

 平等なだけの人外・安心院なじみ。

 魅力的な声・可愛すぎる容姿・インフレ宜しくな数の様々な能力(スキル)

 それだけでも出て来ては駄目だろうと突っ込まれる存在の彼女だが、最近は無限に進化する異常性と現実を書き換える過負荷に自力で覚醒した愛弟子の『特性』により、なじみ自体も獅子目言彦に少なくとも一億回は苦渋を舐めさせられてきたかつてよりとは別領域へと進化している。

 

 つまり、出てきたら話がそれで終わってしまうと言うべきイレギュラー中のイレギュラーとなっているなじみだが、そんな彼女は只今冥界の現・ルシファー領の城の更に奥……サーゼクス・ルシファーの自室に来ていた。

 好んでよく使う一京分の一のスキル……腑罪証明(アリバイブロック)を駆使してである。

 

 

「き、来てくれると分かれば、最高のおもてなしをしたのに……」

 

「別にいらないし、話をしたら直ぐに此処から居なくなるつもりだ」

 

「えぇ……」

 

 

 ただ、そんななじみは、目の前でこれでもかと落ち込んでるサーゼクス・ルシファーに対して、色々な意味で面倒な奴だと思っていた。

 理由はサーゼクス自身のこの態度でわかる通り、かつて気紛れでなじみが姿を現したのを見た途端、何処かのシンパみたいな執着心を抱いているのだ。

 そして、何としてでも安心院なじみの分身である悪平等(ノットイコール)になりたいと思っているのだが……。

 

 

「そ、それなら今日は一体――ハッ!? まさかとうとう僕を悪平等(ノットイコール)に――」

 

「それは無いな。ありえねぇわ」

 

 

 なじみにとってはウザったい事この上ない性格故に、サーゼクスは未だに悪平等では無かった。

 いや、素養はあるようで無いのだが、それを加味しても有り余る程に『ウザい』性格をしてるせいで、大元のなじみから嫌がられてるという皮肉だった。

 

 

「そ、そんなぁ……!

僕はこんなにも安心院さん以外の全てはどうでも良いと思ってるのに……」

 

「思うだけなら誰だって出来るし、そのせいで、キミの大事な妹が兵士の少年と関係を持っちまってるんだけど」

 

「え、あぁ……兵士の少年って赤龍帝の事ですか?」

 

 

 そんなサーゼクスのあからさまな落胆を無視して話を進めるなじみに、どんよりとした雰囲気全開で、実の妹が下級の下僕悪魔と関係を持ってることに対して興味なさげな態度を示す。

 

 

「そうさ。

僕にとっちゃあ、キミの妹が誰と関係を持ってようが知ったこっちゃねーんだが、問題は手当たり次第女の子を口説いては貪ってる赤龍帝の小僧だ。

キミの妹のみならず、同眷属やらソーナ・シトリーさんやらその眷属の皆さんと関係を持っても僕にとっちゃ知ったこっちゃ無いんだが……」

 

「はぁ」

 

 

 日本の巫女の様な紅白装束もその声も容姿も何もかもが素敵だ……なんて見惚れながら気の抜けた返事をするサーゼクス。

 初めて目にしてからというもの、他の全てがどうでもなるほど安心院なじみの虜になってしまい、彼女の意に添わない真似は絶対にしなかった。

 例えるなら、主人に腹を見せて絶対の服従を示す犬と言える程の心酔っぷりだ。

 

 

「最近になって――まあ、あんな餓鬼にどうこう思うなんて有り得ねぇが、僕の次に一誠と親しい悪平等(ボク)にちょっかいを掛けて来たんだよねー……」

 

「はぁ……………はぁっ!?」

 

 

 だからこそ、自分じゃないにせよ自分の身内のどうでも良い餓鬼のやらかした失態に、思わず『あぁ、今日は隠れてるけどあの足で踏んでほちぃ……』と煩悩丸出し思考だったサーゼクスの血の気を一気に引かせる事となった。

 

 

「あ、安心院さんの次に兵藤一誠と近い存在というと、まさかレイヴェル・フェニックスさん……!?」

 

「そうさ。

ついでに言うと、キミの妹の眷属で唯一兵藤誠八君に靡かなかった塔城小猫さんも口説こうとしてたっけ?」

 

「そんな馬鹿な……!?

アレだけレイヴェル・フェニックスさんは丁重に扱えと念を押したのに!」

 

 

 今は数少ない安心院なじみの分身。

 即ち、サーゼクスにとってはなじみに選ばれた、嫉妬と憧れが入り交じる思いを抱く存在。

 悪魔で唯一悪平等(ノットイコール)であるフェニックス家……その子女であるレイヴェル・フェニックスが、最も嫉妬する相手である兵藤一誠と共になる為、妹達が居る人間界の学校に通いたいという申し出があった際、当然了承したのと同時に、既に学園の生徒だった妹達にくれぐれもと念を押した筈だった。

 

 それなのに、あの赤龍帝の少年――いやクソガキは妹やそ眷属・シトリーや眷属だけでは飽きたらず、よりにもよって安心院なじみに最も近いとされてる悪平等(ノットイコール)に手を出そうとし、それをわざわざなじみが直接自分に言いに来た。

 

 

「も、申し訳ありません!! 早急にそのクソガキをぶっ殺して参ります!!」

 

 

 サーゼクスは後方2回転宙返りと共に華麗なる土下座をしながら、薄い笑みを見せているなじみの足下にひれ伏した。

 冗談じゃない、赤龍帝というだけの単なる『カス』の下半身の緩さのせいで、なじみとの縁が完全に切れて敵意なんて向けられて見ろ、冥界なんて5分も待たずして悪魔ごと消滅してしまう。

 

 いや、悪魔という種族が滅ぶなんてどうだっていいが、なによりもなじみとの縁が切れるのをサーゼクスは心底恐れ、大戦の時ですら無かった大量の冷や汗と恐怖で真っ青になった顔で何度も何度も床に額をぶつけながら謝罪していた。

 

 己が魔王なんて事も刹那で忘れてである。

 

 

「いや、別に殺さなくて良いぜ? さっきも言った通り、悪平等(ぼく)があんな餓鬼に心を奪われるなんてあり得ねーし、実際レイヴェルちゃんは突っぱねたからな。

まあ、それに対して勝手に逆恨みして、レイヴェルちゃんを犯してまで言うことを聞かせるとかあのカスは馬鹿な事を考えてるみてーだが 」

 

「な……!? そ、それならやはり殺した方が……!」

 

 

 お、犯してまでだと!? 知らない事とはいえ悪平等相手になんて事を! とますます青白くなりながら始末する提案を出すサーゼクスに、なじみは『面白そう』に微笑みながら首を横に振る。

 

 

「キミがわざわざ出張らんでもアレは近い内にそれ相応の報いを受けるさ。

例えばそうだな……複数の女の子と関係を持ってるのに、妹にまで手を出され骨抜きにされちまった事にキレてる姉のセラフォルーちゃんとか?」

 

「あ、た、確かにセラフォルーは激怒してましたが……」

 

 

 クスクスと妖艶に微笑むなじみに一瞬見とれながら、ソーナとまで関係を持ったことを知り、激怒して人間界を破壊しようとしたのを必死になって止めた以前の事を思い出して苦い表情をするサーゼクス。

 

 セラフォルー・シトリー……現・レヴィアタンにてサーゼクスの同期なのだが、極度のシスコンだった。

 まさしく『目に入れてグリグリしても全然痛くない』程に、周りから見れば鬱陶しいレベルの過保護を妹に示してた訳で、当然妹が単なる下僕のガキに骨抜きにされたという報告を受けた時は激怒していた。

 その時はサーゼクスや他の魔王の必死なる説得により事なきを得ており、何とか人間界の消滅は免れたが、今でも隙あらば兵藤誠八を八つ裂きにしてやろうかと虎視眈々準備をしている。

 

 具体的には近々行われる授業参観とかで。

 

 

「それに、レイヴェルちゃんを兵藤誠八が犯して言うことを聞かせる――なんて知れば、僕達身内以外には意外と無関心な一誠も本気で動くし、あんまり悲観する所じゃあ無いさ。

アレは一誠を絞りカスと見下して優越感に浸ってるが、実際戦えば一誠に存在ごと消滅させられると知らんし、テメーが主人公だと思い込んでるという、実に幸せでお目出度い性格だ」

 

「…………」

 

 

 『一誠も甘いんだからなぁ。ま、その分は身内である僕達に全力で尽くしてくれるし? だから大好きなんだけど……』

 と、わざとらしく人間界で聖剣の破壊の為に色々と友達とやってるだろう一誠を夢想しながら頬を染めるなじみに、サーゼクスはその表情を向けられる一誠に対してどす黒い感情を抱く。

 

 人間の癖に最もなじみに近い力を両方持ち、なじみですら完全に背中を任せられると認められている新たな人外である兵藤一誠とは、まだ一誠が小さかった頃に何度かサーゼクスも会っている。

 

 弟子という美味しいポジション・ご褒美と表したキス・聞けば風呂も一緒に入ったし、わざわざ狭いベッドで一緒に寝たとか噂で聞いたサーゼクスでも、確かに彼の持つ能力(スキル)は攻略できないものだった。

 それを考えれば、双子の兄の兵藤誠八程度の才能なぞ豆粒のそれでしか無い……それは超越者と評されるサーゼクスをも認める決定的な事実だった。

 

 そして事実だからこそ嫉妬するのだ。

 無条件で信頼され、無条件でなじみに愛される兵藤一誠に。

 

 

「相変わらず羨ましい事を言われてますね、彼は……」

 

「そうかな、これでも大変なんだぜ?

兵藤誠八が目の前で当時一誠の初恋の女の子を虜にし、まだそのトラウマが残ってるせいで、異性対してかなり消極的だからなぁ……。

黒い野良猫が最近『姿と実態を任意に消せるスキル』で悪戯しくさってるが」

 

「そう貴女に言われてる事自体が……妬ましい」

 

 

 サーゼクス・ルシファーにとって、兵藤一誠は心の底から嫉妬する男なのだ。

 

 

 

 

 

 

「どうだ木場よ。兄貴達は動きそうか?」

 

「うん、塔城さんとフェニックスさんの話だと、さっき道端に突っ立ってた二人の使いの人とファミレスに入ったらしいよ」

 

「やはりか……フッ、言っては何だがわかりやすいか奴だ」

 

 

 どうせしゃしゃり出るだろう兄貴を使い、聖剣を破壊する作戦で行くことにした俺達は、悟られない距離から兄貴達の動向を見張っていた。

 そして見事に予想は的中し、アルジェント同級生と共に街中でお布施の呼び掛けを何故かしていた教会の使いと共にファミレスに入る所を押さえ、只今その外から監視していた。

 

 

「紫藤さんが兵藤くんに抱き付いてて、それを見てるゼノヴィアさんが固い表情で見てるね……」

 

「……。なるほど」

 

「もはや突っ込まねぇぞ俺は」

 

 

 双眼鏡片手に木場と匙とで少し離れた箇所からファミレス店内に居座る兄貴と教会の使い二人を観察してる最中、これまた予想通りの事をやってる様を見て、変に微妙な気分が三人の中で芽生えていた。

 ちなみにレイヴェルと白音は別方向から観察しているのでこの場には居ない。

 

 

「チッ、早く聖剣に関しての話をしろよ、どんくせぇな」

 

「落ち着け匙。イライラしていると見逃すぞ?」

 

「わーってるよ」

 

「…………」

 

 

 まだイチャイチャしてる兄貴と紫藤イリナにイラついてる匙を宥めつつ、口の動きから何を言ってるのか読み取るために集中して観察を続ける。

 やはり一度でも懸念を抱かせれば耐性が付くのか、さっきから兄貴の笑みを見ても表情に変化が見えないゼノヴィアとやらの『おい、結局なんの用だ?』という口の動きを読み取ると、漸く兄貴は紫藤イリナから離れて、居心地の悪そうな顔をしてるアルジェント同級生の隣に座り直す。

 

 

「『聖剣の奪還に……協力させてくれないか……?』だな。

どうやら本当に予想通りに動いてくれてるみたいだ」

 

「だね。それにしても部長の許可とか取ったのかなぁ?」

 

「ねーだろ。性欲馬鹿の目的はどうせあの紫藤イリナとゼノヴィアって奴ともにゃんにゃんする事だろうしな」

 

 

 大の男三人が双眼鏡を覗く事に変な罪悪感はあるものの、相手は兄貴だし、兄貴には上手く働いて貰わんとならん。

 だから此処は心を鬼にして、どうでも良いし観察なんてしたいと思わん連中の動向を探る。

 匙も木場もそれを押し殺してこんな情けない真似をしてるのだ……我慢だ我慢。

 俺もレイヴェルも目当てのものを探し当てるスキルは持ってないからな……地道にやらんと。

 

 

「ふむふむ……む……ゼノヴィアとやらが『断る、いくらイリナの幼馴染みであろうと、悪魔である以上信用できん』……と言ってるな」

 

「あー……僕が余計な事をして兵藤君に疑念を抱かせたからなぁ……信用できないんだろうね」

 

「教会側なら当然の反応だろ。

それに俺個人としては木場の行動が間違ってたとは思わねぇぞ」

 

「うむ、彼女まで兄貴の虜になったら使い物にならなくなってたと思うしな」

 

 

 木場のファインプレーにより、あの青い髪に緑のメッシュが特徴的なゼノヴィアとやらは兄貴の笑顔による洗脳に耐性が出来ている。

 兄貴はそれに負けじとさっきからゼノヴィアとやらに構おうとし、それを見てるアルジェント同級生と紫藤イリナが不満そうにしてるのが見える。

 うーむ……中々聖剣についての話が出ないな――っと?

 

 

「んん? 何だ、紫藤イリナが頭からコーヒーを被ってるぞ?」

 

「だな……おっ! 今度は性欲馬鹿が顔からハンバーグに突っ込んでらぁ! ザマァ(笑)」

 

「……。アルジェントさんとゼノヴィアさんが辺りをキョロキョロしてるね……というか、僕の見間違えかな?

さっきから兵藤くんと紫藤さんの頭の上を湯飲みが旋回しているように見えるんだけど……疲れてるのかな僕……」

 

「む……ほんとだ」

 

「なんだありゃ?」

 

 

 目を擦っては双眼鏡を覗き直すの繰り返しをする木場だが、俺も匙も同じ光景が見えている。

 

 

「あ、熱い!? な、なんなのよさっきから!」

 

「セ、セーヤさん大丈夫ですか!?」

 

「あ、あちぃぃぃ!? か、顔がァァァっ!!!」

 

「な、ななな! 何だ!?」

 

 

 ……恐らくこんな阿鼻叫喚の叫びが兄貴と紫藤イリナの二人によって店内を騒がせているのは読唇術をせずとも様子だけで想像できる。

 まあ、それはどうでも良いとして……俺達が気になるのは今尚、二人の頭上を不規則に旋回してはダイレクトに中身を二人のドタマにぶちまけてるコップや食器である。

 

 

「様子がおかしくないか? 誰かの悪戯にしては人間技には見えん」

 

「簡単な浮遊魔法なら僕達でも出来るけど、僕等じゃないし……」

 

「まさか塔城さんとフェニックスさん……じゃねーよな。

監視なのにあんな事をしたら意味無いし」

 

 

 どう見ても人間がやってるようには見えない。

 されど俺達がやってる訳じゃない。

 熱々の――多分機械から汲んできたお湯をぶちまけられて跳び跳ねてる二人を眺めながら、俺達は首を傾げるのであった。

 

 

(にゃ、にゃ、にゃ……♪)

 

 

 姿と実態を任意に消せるスキルを持つ、悪戯猫の仕業とはこの時不覚にも見抜けず……。

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

 イッセーのイッセーを堪能した。

 しかし、その最中で聞いたイッセーの過去を聞いてないわけはない。

 だから私は、イッセーの全てを一度奪った奴とそれにまんまと引っ掛かった馬鹿な雌に個人的にイラッとしたので簡単な仕返しをしようと、ふぁみれすというご飯を食べるお店の外から此方を見てるイッセーに見えるように……ふふ。

 

 

(食べ物を粗末にしちゃいけないし、次からはコレにゃん!)

 

「あっつぅ!? ま、また……ぐあっ!?」

 

(こっちを見るな! どうせ見えてないだろうけど、それでも不愉快だにゃ!)

 

 

 機械から出てくるお湯を一杯掛けたり、お前ごときがイッセーと同じ顔なんて嫌だと、イッセーにビンタをした雌共々ビンタをしてやったり……。

 まあ、取り敢えず昨日聞いた話に対しての報復を代わりにやってやる。

 イッセー自身はもうどうでも良いみたいだけど、聞いてた私や白音……そしてレイヴェルって子が納得する訳なんてない。

 だからやる……何の躊躇もなしに私はやる。

 まんまと洗脳されてイッセーにビンタした雌も、手当たり次第雌を洗脳して思い通りにするムカつく馬鹿も……私が仕返しする。

 

 存在と実態を好きなときに、好き様に消せる……この力でね。

 

 

「セ、セーヤくん!?」

 

「あ、あぁ……だ、誰がこんな……!」

 

「な……何なんださっきから……」

 

 

 ふふ、キミ等は私が見えない。

 気配も分からないし、『私の許可がなければ私に触れられない』。

 ただ、一方的に私に嬲られる。

 イッセーから与えられた自由を守るために使える様になった私だけの新しい力。

 転生悪魔なんかよりよっぽど頼もしい私だけの力……。

 

 

(ま、名前は分かんないけど、ね!)

 

「ぶはっ!?」

 

 

 イッセーの兄の後ろ髪を掴み、そのままテーブルに叩き付ける。

 にゃは♪ 外からイッセーがジーッと私を見てる気がすると思うと、お腹がきゅんきゅんしちゃうにゃ♪ アハ!

 

 

 

 

 

 

「……。昨日……一瞬だけ感じた気配の奴なのか?」

 

「え?」

 

「昨日? そういや、変な声で悶えてたなお前……」

 

「あ、いや……な、何でもない……。(こ、股◯をめちゃくちゃ触られてたなんて言えない……)」

 

 

終わり




補足

一誠の異常性……まあ、つまり無神臓(インフィニットヒーロー)は他作品におけるイッセーの無神臓との違いがある。

それが、本編で安心院さんが言った通り、彼を心の底から信用し、そして一誠からも信用された者は一誠と同じように進化が出来る。
 故に、最初の信用を勝ち取れた安心院さんの現在は言彦さんすらブチのめせる……てか、完全な主人公と対等以上にやりあえるまで進化してます。


その2

黒歌さんのスキルについて。

名前は考え中なんですが、効果は以下の通り。

 任意に気配・姿・実態を消せる。

 姿に関してはわざと相手に見えるように出来るらしく、煽り目的で相手の攻撃を『すり抜けるように』見せるナウい演出も可能。


 まあ、簡単に言えばデメリット無しの某万華鏡の『神威』です。
 故に兄貴は黒歌さんを無理矢理モノにする……のはかーなーりムズい。
そして洗脳に関しても、今回のオマケの通りほぼ不可能。

あぁ、兄貴は黒歌さんがかなり好みなのに……とまあ、そんな訳ですな。

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