生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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木場きゅんラブコメ戦闘回……と思ってるかたは申し訳ない。

今話はそれに平行した生徒会長&匙きゅん組と、小猫&レイヴェルさん組のお話。

特に小猫&レイヴェルさん組ですねメインは。



イレギュラーにはイレギュラーを

 今にして思えば、一目惚れの延長で悪魔に転生したって中々にアレな理由だと俺は思う。

 初恋相手と結ばれるなんて決まった訳でもないのに、その人が好きだからと盲目的に突っ走り、その結果は『魅力的』で『完璧』で『誰にもお優しい』と吟われておられる奴にその人は惹かれていき、他の仲間達皆もソイツの所に行って宜しくやって堕落してしまいましたなんてオチだ。

 

 しかもその完璧男様々が女関係にクソだらしねぇってんだから、笑えやしねぇってのはまさにこの事だぜ。

 ま、それも含めて俺はくだらねぇとさえ思える初恋も仲間としての情も綺麗さっぱり消せたから良いし、今は同じ苦渋を舐めさせられて孤立気味となった性欲馬鹿と同じ眷属である木場の手伝いを『誰にも命じられること無く、自分の意思』でやってるし、こっちの方が充実した気分を味わえてる。

 

 

「見つからんものだな」

 

「そんな簡単に見付かれば苦労もないだろ」

 

「それはそうだな……」

 

 

 はぐれ悪魔になる覚悟で眷属を脱退する宣言を、溺れて堕落したしょうもない連中に啖呵切ってから数日か? 未だに奴等は俺に正式なはぐれ認定をしてこない。

 まあ、テメーが抱えてた奴に失望されて眷属を抜けましたなんて周りの悪魔連中に知られたら『恥』以外の何物でもねーし? テメーの体裁の為に俺を何とか縛り付けようとでもしたいんだろうよ……自覚もなく奴隷扱いしながらな。

 

 

「よし、次に行くか」

 

「おう。でも大丈夫なのかイッセー? 塔城さんとフェニックスさんを二人だけにさせて?」

 

「む? なにがだ?」

 

「いや……一度キッパリ拒絶したと聞いたし、俺も無いとは思ってるが、それでもお前が居ない間にあの性欲馬鹿が――なんて思うとな」

 

 

 俺はそんなもんゴメンだ。

 洗脳だかなんだか知らんが、性欲馬鹿に溺れ、寵愛(笑)を受けるために本来の役割を疎かにしてまですり寄るその尻拭いをし続ける人生なんて真っ平ごめんだ。

 それだったら、どうぞ姉魔王にでもチクってはぐれ認定にしてくれて結構だし、俺はやっぱりイッセーやイッセーに集まった奴等とツルんでた方が今じゃ心の底から安心できる。

 

 性欲馬鹿が塔城さん以外の眷属連中とプロレスごっこしてるせいで孤立してしまった木場。

 

 初恋の人を落とされ、それまでの関係すら塗り替えられ、否定されたイッセー

 

 そしてそこから這い上がり、それに惹かれて性欲馬鹿の誘惑を真正面から拒絶した塔城さんとフェニックスさん。

 

 んで、こっちの事情は知らないけど、イッセーによって少しずつ変わりつつある元浜と松田。

 

 

 性欲馬鹿から逃れ、突っぱねてきた者達が奇しくも集まった俺達は奇妙な繋がりがあると俺は確信できる。

 だからこそ、性欲馬鹿の目を付けられてるあの二人の――普通に美少女である二人が心配なのだ。

 洗脳をはね除けられるとはいえ、イザとなったら力付くでも事を動かす様な気がするあのクズに何かされんじゃないのかと……。

 そんな不安をさっきから抱えながら、手分けしてイッセーと聖剣探しをやってる最中問い掛けてみる俺に、イッセーは『フッ……』と軽く俺に微笑を見せると、怪しい箇所と定めて訪れた廃墟の地面に落ちていた小石を拾い上げながら口を開く。

 

 

「心配せんでもあの子達なら大丈夫だ。

洗脳についてはまだ不明瞭な所はあるが、少なくとも兄貴に力付くで――なんて事は特にレイヴェルには不可能さ」

 

「というと?」

 

 

 最初から信じきってるように断言するイッセー

 悪平等(ノットイコール)という存在を名乗るイッセーとレイヴェルさんには不思議な――俺や木場の持つ神器とは別物の力があると聞いてはいる。

 が、それでも性欲馬鹿は困ったことに神器の中でも最上位の神滅具である赤龍帝の籠手(ブースデッドギア)の使い手だ。

 

 その力を今何処まで引き出せてるかは知らんが、十二分に引き出せてるとすればいくらレイヴェルさんでも危険じゃないのか? そう思う俺にイッセーは察した様に首を横に振る。

 

 

「確かに兄貴の持つ赤龍帝の籠手は、時間と共に力を倍加させるという恐ろしい神器だ。

だが、それでも足りないな……レイヴェルを屈服させるだけには全然足りん。

力を倍にする程度じゃあ、フェニックス家過保護な兄達に『自衛手段』と俺と共になじみ――いや師匠に一時期教え込まれたレイヴェルには絶対にな」

 

「…………」

 

 

 クックックッとイッセーにしては意地の悪い顔でニヤけて言い切るのに対し、俺はただ黙って見ていた。

 曰く、現実を否定して書き換える力を持つらしいイッセーの力は只の人間とは思えない凶悪な力である。

 そんなイッセーにそこまで言わせるレイヴェルさんは、そこまで凄かったのか……転校初日から『一誠様ぁ~!』とキャーキャー言ってる姿を見るとどうしても違和感を感じてしまうが、それ以上に俺達を恐怖させる威圧感を持つものまた事実。

 曰く、ガキの頃から年の近さもあってずっと一緒だったと言ってるイッセーがそう言うんだから、俺もまた二人を信じるべきなんだろう。

 

 

「それに、レイヴェルに張り合っては何度も叩き潰されてる小猫も、ふふ……自覚してないんだろうが、そろそろ化けるかもな」

 

「え、レイヴェルさんと勝負してたのかよ……」

 

「あぁ、最初の方はは三秒で沈んでたが、最近は5分程真正面からレイヴェルと殴りあってたからな……。

この前俺も手合わせした時も……ふふ、腹に一発貰って内臓数ヵ所をやらてれしまったよ」

 

「戦車の彼女に腹に一発貰って内臓も破壊されてるのに平然と生きてるお前の身体が信じられねぇ……」

 

「為せばなる。鍛えれば人間も奴等と張り合えるって事さ、ほら次に行くぞ匙よ」

 

「…………。おう」

 

 

 平等ってだけの人外を自称する悪平等らしい二人だからか、俺からすれば純血悪魔のフェニックスであるレイヴェルさんならともかく、只の人間であるイッセーが戦車の駒を持つ塔城さんの一撃を貰って平然と生きて動き回ってる事が驚きというか……まあ、それも追々聞いてみる事にして今は木場の役に少しでも立たないとな。

 

 

 

 

「うーん……『お目当ての探し物をピンポイントで発見できるスキル』が無いと、中々難しいものですわね」

 

 

 一誠様のご指示に従い、只今小猫さんと木場さんのお手伝いをしている訳でありますが、こうして手懸かりが殆ど無い状態でのお探し物というのは中々どうして難しいですわ。

 まさかこんなにも見つからないものとは……探すのが下手なのか、それとも隠れてるコカビエルの手腕を誉めるべきなのか。

 

 

「そんな日常的な力もあるんですか?」

 

 

 どちらにせよ、一本でも探して木場さんに連絡をしてしまおうと手当たり次第怪しい場所を探して回ってるのに、収穫はゼロ。

 こればかりは安心院さんにスキルを借りておけば良かったと後悔してると、三手に別れて組む事になった小猫さんがスキルについて訪ねて来たので、取り敢えず頷いておく。

 

 

「人の性質(キャラクター)を具体的に示すのが能力(スキル)ですからね、あると言えばあるかもしれまん」

 

「………」

 

 

 能力保持者(スキルホルダー)……何物にも属さないその力はその人物の性質で決まるのが大体のセオリー

 それ以外は安心院さんの貸し出しによって使えるのだが、生憎安心院さんはもうスキルの貸し出しはやってない。

 

 いや、貸す相手も貸すメリットも無いから貸し出しなんてやる必要がないというのが正確でしたか……とにかく安心院さんの持つ一京という途方もない数のスキルの中にはそういったものもある筈。

 しかし無い物ねだりはよくありませんし、そんな事で安心院さんを頼るなんて悪平等としてはほぼ失格。

 故に僅かに感じる『気配』だけを頼りに私はあちこち小猫さんと探し回る。

 これもまた『修行の一つ』と思えば苦とは思えませんしね。

 

 

「あ、レイヴェルちゃんに小猫ちゃんじゃないか」

 

 

 ………。まあ、その修行の為に聖剣探しをしてるのに、邪魔になる輩が現れるのは喜ばしくありませんが。

 

 

「……。また貴方ですか」

 

「……。どうも」

 

 

 聖剣を探してるのは私達だけじゃない、きっと何かの理由で兄貴も動くだろうな。

 そう一誠様は仰有ってたし、現にあのゼノヴィアという人間が一人で木場さんに連れられて来た辺りから簡単に予想は出来ましたが、まさかこうも的中するとはと呆れすらくる。

 無駄だと分かってるのに、張り付けた嘘っぱちな笑顔を……一誠様のお顔をトレースしただけのゲスがするなとある種の嫌悪すらある。

 

 

「こ、小猫さん……」

 

「む、またセーヤくんの知り合い?」

 

「まぁね」

 

 

 おまけにまた違う女を引き連れてる。

 一人は元シスターのアーシア・アルジェントで、もう一人は……

 

 

「なに、まさかアンタ達もセーヤくんを?」

 

「「…………」」

 

 

 紫藤イリナ……でしたか? 一誠様の初恋相手であり、そして兵藤誠八に洗脳され、全てを塗り替えられた……ある意味被害者。

 あの時一誠様から聞いた限りじゃ同情―――

 

 

「いや、この二人は一誠が好きみたいでな」

 

「一誠? あぁ、セーヤくんの弟の? 昔私にセクハラした……」

 

「え、そんな事が……?」

 

 

 

「「…………………………………」」

 

 

 

 ……。いや、しませんね。

 どうであれ、洗脳されたとはいえ、あぁも嫌悪感丸出しで一誠様を語られるのを見て同情する気持ちは完全に吹き飛んだ。

 そしてその話を簡単に鵜呑みにするシンパ達にも失望ものだ。

 

 

「あぁ、そういえばあの時イリナってば悲鳴だしながら一誠をビンタしてたっけ?」

 

「うん、だってあの時セーヤくんを語って私に近付いてきたんだもん。

まあ、一瞬で見抜けたけど」

 

「双子だからパッと見じゃどっちか分からないしね。

まあ、イリナは騙せなかった訳だが」

 

「あ、あの人そんな事をしたんですか……? ちょ、ちょっとそれは……」

 

「あぁ、友達が居なかったからなぁ……アイツは」

 

 

 

「「………………………………………」」

 

 

 八つ裂きにしてやろうか……。

 私は……そして恐らく小猫さんも思っただろう。

 一誠様が言ってた事とまるで違う事を平然と宣う紫藤イリナと、こちらを見ながらニヤつく兵藤誠八――そして簡単にうのみにしてるアーシア・アルジェントを消し飛ばしてやりたくなる。

 

 

「まあ、セーヤくんに色目使わなければ別に良いけど……」

 

 

 そんな私達の気持ちも知らず、紫藤イリナは兵藤誠八にもたれながらこっちを睨んでる。

 しかし私は言いたい……そのもたれ掛かってる相手の兵藤誠八の貴女を見る目が『あんまり余計な事を言わんでくれ、コイツ等を落とせないじゃないか』って下劣な目をしてることに……まあ、言わないけど。

 

 

「話は終わりですか? ならこれにて――」

 

 

 くだらない茶番に付き合わされてすっかり本来の目的から離れてしまった私と小猫さんは、後でコイツ等共々八つ裂きにしてやると決心しながら離れようと、自分でも分かるくらいに無愛想に言ってその場を去ろうとする。

 

 

「あ、ちょっと待てよ。レイヴェルちゃんはしょうがないとして、小猫ちゃんはれっきとした俺達グレモリー眷属の仲間なんだぜ? あんまり勝手に連れ出すのはやめてほしいんだけどな……どうせアイツが勝手にやってるんだろ?」

 

「はぁ?」

 

 

 しかし、あまりにも今の自分の状況を自覚してない発言に思わず私と小猫さんは呆れてしまいながら足を止めてしまう。

 何というか、バカなのかと。

 

 

「それはお互い様じゃなくって? 貴方も見る限りじゃそこの教会の使いと一緒に行動してるじゃありませんか」

 

「確か部長は『この人ともう一人の教会の人のやることに一切干渉しない』と言ってましたけど?」

 

 

 自分のやってる事の方が主の意向に逆らってるというのに、ただ私と一緒に居るだけで『何をするとも言ってない』小猫さんを仲間と尤もらしい事を言って抱え込もうとする。

 これがバカじゃなければ何だというのか……兵藤誠八はそろそろぶっ飛ばしたくなる笑みを見せながら、勝ち誇っている。

 

 

「どうせ木場経由で無関係な一誠がチョロチョロ動いてるんだろ? リアス部長からアイツと関わるなと言われてるのにさ」

 

「だから?」

 

「だからって……それこそ主の意向を無視してるって事だろ? 俺は悪魔としてじゃなく幼馴染みとしてイリナの任務に協力してるが、アイツは単に好奇心と無駄な自己満足で木場の復讐に荷担してる。

わかるか? 一誠は人間だから勝手に動いても何もされんと鷹を括ってるようだが……それに傾倒してる木場や協力してる君達は違うんだ、これ以上付き合ってると何かしらの罰が下ってしまうんだぞ?」

 

「………」

 

 

 ペラペラと得意気に語る兵藤誠八は、私と小猫さんはどうしようもないバカを見る目に気付いてない。

 だからなのか、急にまた殴りたくなる笑顔を向けながら手を差し出す。

 

 

「悪いことは言わない、俺達と協力した方が良い。

木場も小猫ちゃんも……そしてレイヴェルちゃんもアイツの役に立ちそうもない協力より効率が良いだろ?」

 

 

 そして、私達にとって尤も言ってはならないことを、このゲスは言ってくれた。

 

 

「話になりませんね」

 

「ええ、バカだバカだとは思ってましたが、こうまで救いようが無いとは」

 

「は?」

 

 

 協力? なんで私達がお前ごときカスと徒党なんて組まなければならない? 借り物の、奪い取った役割に悦に浸るクズに私達が? 笑わせないで貰いたい。

 

 

「この際ですからもう一度言いましょうか兵藤先輩? 私は貴方が心の底から大嫌いです。そんな人の近くに居ることすら耐えられないくらいに」

 

「支離滅裂な事しか言えない『カス』に貸す力なんてございませんわ。

死んで出直しなさい……無能が」

 

 

 こういう時ほど小猫さんと息がピッタリ合う。

 唖然とするバカにハッキリとありえないと言い放った私と小猫さんはほんのちょっとだけスッキリしながら、シンパ達のそよ風以下の殺気を受けていると、言われた本人の兵藤誠八は差し出した穢らわしい手を引っ込めながら何とか保とうとして崩れてる笑顔を見せている。

 

 

「ず、随分と一誠に肩入れするけど……ひょっとして何かされたのか? キミ達からすれば人間であるアイツは弱いだろ?」

 

「それが貴方の無能表している証拠。無知というのは幸せですわねぇ」

 

「ちょ、ちょっと貴女達!? さっきからセーヤくんを……!」

 

「無能に無能と言って何が悪いです? あぁ、愛しの兵藤先輩の悪口は耐えられませんでしたか? じゃあお互い様ですね」

 

 

 今の一誠様にどう逆立ちしても勝ち目が無いことも未だに見抜けない。

 まあ、一誠様がひけらかさずに居るから見抜けないのでしょうが。

 

 

「話はこれで終わりですわ。全く以て時間の無駄でしたわね」

 

「リアス部長に言っておいて貰えますか? 今の貴女には付いていけないと」

 

 

 最早話す舌は無いと、私と小猫さんは顔を歪ませるバカと取り巻きを通り過ぎ、さっさと次のポイントを目指して行く。

 その際兵藤誠八がどんな顔をしていたかは知りませんが、それを引っくるめてもとんだ茶番……それが私の正直な感想ですわ。

 

 

 

 

 

 

「まったくもう、何なのあの二人!」

 

「その……セーヤさんがお嫌いなのでしょうか?」

 

 

 レイヴェルと小猫。

 アレが男だったらぶっ殺してやってたが、誰が見ても美少女だ。

 だから俺は許せるし、我慢も今は聖剣の問題が片付くまでする。

 が……ふっ、ああも向こう気が強いと逆にそそるな。

 

 

「大丈夫だよ、二人もちゃんと一から話せば分かってくれるさ」

 

「もう、セーヤくんは甘いのよ!」

 

「でも、そんなセーヤさんのお陰で私は幸せだし……ちょっと複雑です」

 

 

 そろそろ邪魔になった一誠を始末し、その後二人にはじっくりと……クククッ!

 あぁ、様子から見てもまだ『未経験』だってのが分かるし……く、クククッ!

 

 

「取り敢えず好きにさせよう、ゼノヴィアも探さないといけないし」

 

「む……そうね。まったく、一人で考えるって言ってから何処行ったのよゼノヴィアは」

 

 

 二人は後の楽しみにするにして、今は居なくなったゼノヴィアにそろそろ本気で落とす事に集中しなければな。

 原作から大分離れてしまってるが、ゼノヴィアは一誠達と何の関わりも接点も無いだろうし、探して警戒を解く……それが一番にやらなければならないのさ。

 レイヴェルと小猫はそのあとでじっくり……『俺しか考えられなく』してやる。

 あぁ、イリナの時みたいに一誠の目の前でやってやろうかな? そうしたらアイツ、今度は自殺でもしてくれるかな? どちらにせよ楽しみである。

 

 それに小猫を完全に掌握すれば……その姉である黒歌もその内現れ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃ~にゃにゃ~♪」

 

 

 現れるだろう。

 そう思って気を取り直してゼノヴィアを探しに行こうとしたその時だった。

 小猫とレイヴェルの姿が消えたまさにそのタイミングで、人気の少ない住宅街の道路の向こうから此方に向かって歩くその姿に、俺は再びイレギュラーな出来事だと認識させられた。

 

 黒を基調とした着物を着ずし、長い黒髪と金色の瞳……。

 アレはまさしくこの時期に姿を見せないはずの、俺が第一候補として狙ってる獲物……。

 

 

「な、何て格好……」

 

「す、凄いですね……」

 

「~~♪」

 

 

 原作から剥離しまくったせいで、おおよその予想が出来なくなってイライラしてたが、そのお陰でこんなイレギュラーにも巡り逢える。

 

 今その状況に心の底から歓喜しながら……そしてうもはも言わさず物にする為……俺は間髪入れずに此方へ近付く間違いなしの黒歌の前へ立つと。

 

 

「にゃ?」

 

「ねぇ、キミ……もしかして白音ちゃんのお姉さんの黒歌さん……だよね?」

 

 

 ほぼ全力のチャームを掛けた。

 

 

「セ、セーヤくん?」

 

「え、え? ま、またお知り合いなんですか? ま、また……増えるのですかぁ……?」

 

 

 あぁ、ごめん。この世界に転生した第一目的がそれだからさ。

 これだけは全力でやる。本当は原作前に接触したかったが小猫共々探せず、最近になって黒歌ははぐれじゃないとだけわかった。

 そうなると原作より弱体化してると予想されが、黒歌自身の実力なんてどうでもいい……要は俺のモノになるかが問題なんだ。

 

 それが今イレギュラーとして原作より早く舞い降りた……全力を尽くに決まってるし、もうその仕込みは完全に済んだ。

 後は徐々にキョトンとしてる黒歌の表情が物欲しそうな顔に――

 

 

「……は?」

 

「……え?」

 

 

 顔に――

 

 

「いきなり何なの君は? 白音の何?」

 

「え、い、いや……だから……キミは白音ちゃんのお姉さんだろう? 俺は今白音ちゃんと一緒にグレモリー眷属をやってる……」

 

 

 か、顔に――

 

 

「あぁ……ふーん? で、だから何?」

 

「え……な……」

 

 

 な、ならない……だと!?

 

 

「ちょ、ちょっとセーヤくん? 全然話についていけないんだけど……誰この人?」

 

「それに白音って人も誰なんですか?」

 

「し、白音ってのは小猫の本当の名前で……え、えっと……この人はその姉の……」

 

「ええっ、姉なんていたんださっきの白髪に!」

 

「……む」

 

「し、知りませんでした……」

 

 

 状況が分かってないイリナとアーシアに説明しながら俺は心の底から狼狽えていた。

 レイヴェルと白音が異常であっただけで、チャームはほぼ初見殺しともいえる力なのに、まったく警戒してない筈の黒歌に全く効いてないんだ。

 いまも隙あらばイリナの白髪呼ばわりに顔をしかめてる黒歌に掛けてるのに……少しも動じてないんだ。

 

 

「白音のお仲間さんってのは分かったにゃ。

それで? その姉の私に何のようなの? 無いなら用事があるからこれで失礼したいんだけど」

 

「あ……ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

 

 それどころかさっさと去ろうとしてる。

 こんな俺にとって大都合のイレギュラーを逃したくは無く、段々胡散臭そうなものを見るような目をし始める黒歌を引き留めつつ、何度も何度もチャームを掛ける。

 しかし、黒歌は……俺がこの世界に転生する大半の理由である彼女は……。

 

 

「言いたいことがあるなら早く言って貰えないかな? 私これから白音に顔見せた後、もう一人会わなくちゃいけない人の所に『お土産』を持って行かなくちゃいけないんだから」

 

「も、もう一人?」

 

 

 もう一人という言葉に思わず反応する俺に、黒歌は急にとろーんと惚けた表情を浮かべて『うん』と頷く。

 それを見て『掛かってくれたのか?』と喜びそうになるのもつかの間―――

 

 

 

 

「えへ……♪ どうしようも無く大好きで、いっそ滅茶滅茶に私の身体を好きにしても良いよって思える人――

 

 

 

 

 俺のモノになる筈だった黒歌は惚けた表情のまま……。

 

 

 

 

「イッセーにね……あぁん♪」

 

 

 俺にとって、最悪の展開と言わざるを得ない事を惚けた表情と声で黒歌は言った。

 

 

「あ、どうしよ……イッセーのこと考えたらお腹がきゅんきゅんしてきたにゃ」

 

 

 俺は……何かをぶっ壊された気持ちに死ぬ前の時と同じように味あわされた。

 

 

「いっせ……ぇ……?」

 

「んん……そうにゃ、キミの双子の弟のイッセーだにゃ。

だからごめんね? キミのその―――――つまんない魅力って奴には一ミリたりとも興味ないの。

ま、そこの二人の女の子とか他にも引く手沢山なキミが私に興味なんて無いと思うけど~? それじゃーね、早くイッセーに初めてを貰って欲しいにゃ~♪」

 

 

 黒歌の言葉が耳に入らない、呼び止める暇もなく行ってしまったその後を追いかけて捕まえる事も身体が動かず出来なかった。

 

 あるのはただ……。

 

 

「殺してやる……あの絞りカスがぁぁっ………!」

 

「ひっ!?」

 

「せ、セーヤくん……?」

 

 

 生かしてやった自分の甘さと絞りカスに対する本気で殺意だけだった。

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

 白音とレイヴェルって子に対して言いたい放題言ってたからついつい『姿を見せてまで』言ってやったけど、彼はどうやら私にイッセー達の言ってた『洗脳』って奴を使ってたらしい。

 急に訳知り顔で近付いて来て、目を合わせた時に瞳の色が変わってたから何と無くそれが洗脳だと私には分かったが、全然私の心は揺れなかった。

 

 

「しかし、何で彼は白音の名前と私の存在を当たり前の様に見抜いてたんだろ? 白音が本当の名前と私のことを言うとは思えないし……不思議だにゃ」

 

 

 その際、疑問に残る点がいくつか浮かんだけど、どうでもいい人の事なんて深く考えるだけ疲れるので、直ぐに思考を切り替える。

 勿論考えるのはイッセーである。

 

 

「白音とレイヴェルって子は大丈夫かな、見た感じレイヴェルって子はめちゃくちゃ強いし、白音も凄い強くなってる。

はは、これは私もウカウカしてられないなぁ……。

あ、でも弱いフリしてイッセーに鍛えて貰うのも良いかも――」

 

 

 

 黒歌おねーさんの只の妄想。

 

 

『にゃぁ……もう無理だよイッセー……』

 

『弱音を吐くな! 無理だからこそやるんだ!』

 

『で、でも……』

 

『ったく、白音は弱音を吐かなかったのに、姉のお前はだらしないな……! ほら、早くしろ!!』

 

 

 厳しい鍛練をやらされ、無理だと言ってもイッセーは甘やかさずにいる。

 それどころか……

 

 

『にゃっ!? や、やめてよイッセェ……お尻グリグリされると力が……あ、あっ……!』

 

『こうでもせんとお前は頑張らんだろうが! まったくもってだらしのない猫め! というか何悦に浸っとるか!!』

 

『うにゃ!? だ、だって……グリグリされると気持ち良くなっちゃう駄目猫なんだもん……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんて! なーんて!! 厳しいイッセーにめちゃくちゃにされるのも良いにゃ!」

 

 

 黒歌おねーさん、住宅街のど真ん中で妄想しながらクネクネ動いて悦に浸る。

終わり




補足

兄貴、転生した時から一番に狙ってた黒歌さんにそっけなくフラれるの巻。

ま、まあ……生徒会長に逆セクハラしまくるレベルですからね……そらチャーム程度なぞ無理ゲー


黒歌さん……割りとマゾ疑惑。

……取り敢えずイッセー成分補給できたらそれで良いと――つまりそゆこと。




てな様に、イレギュラーによってイレギュラー化した皆さんが出始めた事により、完全に兄貴の思惑が外れ始めてます。
で、一番に狙ってた女の子からフラれ、兄貴もとうとうイッセーを本格的に消そうと思い始めましたとさ、


あぁ、イッセーが危険だ~(棒

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