生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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VSフリードきゅん……なんですが、ゴチャゴチャしててアレっすね。
てか、超展開甚だしいぜ。


※少し加筆と修正とタイトル変更しました。
感想返しは明日やります。


フリードという少年と剣

 最初は慢心からの敗北だった。

 悪魔は総じてクズで、それに頼る人間共々消すことに生き甲斐と快楽を感じていた。

 そんな自分を少しだけカッコいいとも思ってたし、例え異端扱いで追放されてしまおうともこの思想を変えるつもりは無かった……決定的な敗北を知るその日まで。

 

 その日もほんの遊びのつもりであり、何時もの仕事だった。

 左腕に龍の籠手を持つクソ悪魔が正義顔で語るのを無視してぶっ殺し、良い子ぶってるシスターに軽い仕置きをしてそれで終わりのつもりだった。

 

 しかし、待っていたのは敗北。

 それも身体の一部を失う程の決定的な敗北。

 

 散々毛嫌いしてきた悪魔に全身の骨を砕かれ、顔面を殴り付けられ、左目を抉られてしまった少年は、薄れゆく意識の最中確かに思った。

 

 絶対にぶっ殺してやる……。

 

 天才と言われて天狗になっていたかもしれない。悪魔を滅し慣れすぎて忘れていたのかもしれない。

 既に身体は死に体同然だったが、それでも心に残る憎悪の炎は消えず、寧ろ燃え上がる程の復讐心を装填したフリードは、無慈悲に自分を見下ろす暗い空に向かって渾身の歪な笑みを浮かべつつ自ら地獄に堕ちていった。

 自分にトドメも刺さず勝手に消えたゴミ悪魔に復讐を誓いながら……。

 

 地獄に堕ち、それでも尚消えない仕返しの心を膨らませていくフリード少年は、その為にはあらゆるものを利用する。禁忌していた己の身に宿るとある力をも使う覚悟も持った。

 

 そしてそれが、心をへし折る事を知らないが故に持つそのハングリー精神とあらゆる感情が、動くことも儘ならなかったフリードのもとへ漆黒の羽根を持つ堕天使を呼び寄せる事になる。

 

 

「人間……それもはぐれ悪魔祓いか? 死に掛けの様だが、その心は死んでいないらしい」

 

「良いだろう人間。貴様の望みの手伝いをしてやろう。

俺はコカビエル、今のお前が持つ心と同じく、地の底から這い上がりたいだけの只の堕天使だ」

 

 

 己の生まれながら持つ強大な力に慢心もせず、ただ一つの望の為に0からのリスタートを果たした堕天使との邂逅により、フリードの運命は一気に変わることになるとは、この時の本人も知らなかった。

 

 

 

 

「ヒャッハー!!」

 

 

 不気味な程に輝く星空の下、駒王学園の校庭にてフリードは立ち向かってくる二人の悪魔と悪魔祓いと戦っていた。

 

 

魔剣創造(ソードバース)!!」

 

「疾っ!!」

 

 

 輝く金髪を持つ少年と、青髪と少々の緑メッシュが特徴的な少女。

 奇しくも二人は剣による戦いが得意であり、0から全てを吸収してきた紛れもない天才と化したフリードと切り結ぶ。

 転生悪魔である祐斗の持つ神器がフリードの周りと足下に無数の剣を作り出して牽制し、その隙にゼノヴィアという悪魔祓いが祐斗から借りていた一本の西洋剣で特攻する。

 悪魔と悪魔祓いという両極で相容れない存在だというのに、自然なまでに息の合う動きをする二人にフリードはただ嗤いながら襲い掛かる魔剣を三本が一つとなった聖剣で破壊し、斬りかかるゼノヴィアの斬撃を避けていく。

 

 

「そらそらぁ! 止まって見えんぜ元・同僚ぉぉ!!」

 

「くっ……!」

 

 

 ゼノヴィアの繰り出す斬撃の一太刀一太刀とを右目のみで負いながら紙一重で避けるフリードの動きはまるで踊るかの様に洗礼されていた。

 

 

「そんな脆い剣じゃこの聖剣の敵じゃねぇぜ!!」

 

「っ……うぐっ!?」

 

 

 次々と襲い掛かる祐斗の魔剣を、持っていた聖剣で切り壊しつつゼノヴィアの一刀を紙一重で避ける。

 左目を失う前よりも遥かに実力を増したフリードの言葉通り全くの油断が無く、わずかな隙を突かれて腹部に鈍い一撃を貰ったゼノヴィアが祐斗の下へと吹き飛ばされた。

 

 

「ごほっ……!」

 

「ゼノヴィアさ――」

 

「へ~い! 今度は此方のターンだぜラブカップル! 死ぬ気で避けろよぉぉ!!」

 

 

 借りた魔剣の人振りを壊され、蹴り飛ばされたゼノヴィアに祐斗が気を取られたその隙を突いたフリードが聖剣に力を込め、輝きを増した聖剣から放たれる鎌鼬の様な斬撃が二人に襲い掛かる。

 

 

「くっ!」

 

 

 その斬撃に本能的な恐怖を感じた祐斗は即座に両手へ新たな剣を生成し、襲い掛かる光の斬撃を斬り潰していくもその顔は苦痛に歪む。

 

 

「へぇ、光喰剣(ホーリーイレーザー)かい? 流石複数剣所持の魔剣創造(ソードバース)だなぁオイ!!」

 

「っ……くぅ……!」

 

「祐斗!」

 

 

 光を喰らう魔剣の力で何とか聖剣の光の斬撃を相殺した祐斗だが、既に両手にあった光喰剣は粉々に砕けており、斬撃を切る様を見ていたフリードなニヤリと口を歪めながら茶化しているが、祐斗からすればかなり必死だ。

 光喰剣でなんとか被害は抑えたが、それでもその余波は祐斗の身に刻み込まれてしまっており、肩から出血をしていた。

 

 

「言ったろ、最初からマジで行くってよ? 気ィ抜いてると死んじまうぜ?」

 

「ぐ……」

 

 

 悪魔にとっては毒にしかならない聖剣の斬撃の一部を受け、出血が止まらない肩を押さえながら祐斗は膝を付く。

 

 強い……。

 今も三本が一つとなった聖剣を器用に回しながら此方を見下ろすフリードに対しての祐斗の感想は純粋にそれだけだった。

 

 如何に前の撃退が偶然とフリード自身の油断に助けられたのかと嫌でも思い知ってしまう……そう肩から流れ出る血と痛みに顔を歪めながら思う祐斗にゼノヴィアが駆け寄る。

 

 

「祐斗……!」

 

「ぼ、僕は大丈夫……まだ、やれるさ……!」

 

 

 確実に聖剣を使いこなしているフリードを……そして有利と分かってその後ろで嘲笑っているバルパーを眼前に弱音は吐かないと決めていた祐斗の目にはまだ力が残っている。

 

 

「ハァ、ハァ……本当、キミには無様な姿ばかりだよ僕は……」

 

「祐斗……」

 

 

 安心させるように笑みをゼノヴィアに浮かべるも、それが無理をしている事なぞゼノヴィアは見抜いており、チラリと上空でコカビエルと殴り合いをしている一誠達を見てみる。

 厳しい現実だが、今の祐斗ではとてもじゃないがフリードを倒せない。

 ともなればコカビエルを圧して思い切り殴っている一誠――いや、そのフォローに障壁を張っているレイヴェル達の中の誰かに増援を頼むしかないのだが……。

 

 

「一誠くん達は言ってたよ……僕達がフリードとバルパーを倒すのを信じるって」

 

 

 それを止めたのは、出血している祐斗の肩を押さえているゼノヴィアの手を握る祐斗自身だった。

 

 

「だ、だが……」

 

「おうおぅ、作戦会議か? 早くしねーと一撃必殺パワーチャージ中の聖剣ちゃんに殺されちまうぜぇ?」

 

 

 手を握られ、ハッとなるゼノヴィアが何か言いたそうにしている横でフリードがトドメを刺そうと聖剣により一層の力を込め始めつつ宣言するその最中、祐斗は首を横に振りながら真っ直ぐゼノヴィアの瞳を見つめながら口を開く。

 

 

「僕は弱い。

偉そうな事を言っておきながら、結局最初から最後まで一誠くんやキミに力を貸して貰ってばかりだった」

 

「……」

 

「だからこそ、この戦いに僕達を信じて送り出してくれた一誠くん達の信用に答えるんだ。

一誠くん達が信じてくれたように、僕も一誠くん達を信じる! それが……僕達の鉄則なんだ!」

 

 

 信じ合う。

 それが一誠達との絆の絶対条件。

 信じ合いこそが互いの進化を促す。

 

 コカビエルと殴り合いをしてる、一誠達は祐斗達が勝つことを心の底から信じきっている。だから力を貸さずにいる。

 

 必ず勝利することを確信して……。

 

 だから祐斗は頼るだけの事はしない。

 誠八によって歪められ、疎外感しか無かったあの頃の自分を受け入れてくれた。

 

 それだけで祐斗は救われ、だからこそその恩義に今こそ報いる時。

 いくら実力差がある相手だろうと、その差は気力で埋め尽くす。

 相手の動きが読めなければ、慣れてしまえば良い。

 両腕が切り落とされたら蹴り飛ばせば良い。

 両足がもがれてしまえば噛み殺せば良い。

 牙を折られてたのなら睨み殺せば良い!

 

 その覚悟が無いのに、復讐も過去へのケジメも付けられるか!

 

 

「だから僕は戦う……! 四肢がもがれようと最後までね!」

 

「…………」

 

 

 より強く、より気高く、より高らかに。

 ゼノヴィアの手を無意識に握りながら、聖剣の一撃でフラフラな身体に渾身の鞭を打って再び立ち上がった祐斗は、嗤いながら更に聖剣に力を込めるフリードを真っ直ぐ見据え、その手に双剣を生成しながら力強く構え声を張り上げた。

 

 

「僕は木場祐斗だ! 例え勝ち目が無くとも、その牙は決して折らない!!」

 

「さっさと殺せフリード!!」

 

 

 より強く、ボロボロとなっても諦めない瞳に晒されたバルパーが焦るようにフリードの後ろで吠え、フリードはこれでもかと嗤って見せる。

 

 

「ヒッヒヒヒ……ギャッハハハハァ!!! カッケーな悪魔ァ!! ならば望み通り跡形くも無く消滅しろや! この光でナァ!!!」

 

 

 そしてフリードもその瞳に狂ったが如く嗤い、もはや光の何かとしか思えない閃光を放つ聖剣を両手で持ち、真っ直ぐ振り上げた。

 

 

「………」

 

 

 決心を固めたものの、絶望的な状況に代わりは無い。

 しかしそれでも祐斗の瞳は諦めの色は無く、間近でそれを見せられたゼノヴィアはただ自然と粒やいた。

 

 

「男ってのは……バカだな」

 

 

 一誠達に頼れば良いのに、頑固なまでに拒否し、勝ち目の無い戦いに心を折らずに挑む。

 まさしくゼノヴィアからすれば何てアホで融通の効かん奴だと思った。

 だが、そう思うのと同時にゼノヴィアは頬を緩ませており……。

 

 

「だが、そんなお前は嫌いじゃないぞ? ふふ……」

 

 

 優男の見た目とは裏腹に頑固な祐斗は嫌いじゃない。

 双剣を構え、男らしく一歩も身を引かずに居る祐斗の隣に立つゼノヴィアはそう呟くと……。

 

 

「その頑固さに……私も付き合ってやるよ」

 

 

 右手を夜空に向かって掲げだした。

 

 

「あ? 何の真似だおい?」

 

「ゼノヴィアさん……?」

 

 

 既に殺る気満々のフリードが目元をピクリと動かしながらゼノヴィアの行動を不審がる。

 それは隣に立つ祐斗も同じであり、静かに目を閉じるゼノヴィアに思わず目を奪われる。

 

 しかしゼノヴィアは答える事はせず、代わりに小さく……それでいて凛とした言葉を紡ぎだす。

 

 

「ぺトロ、バシレイオス、ディオニュシウス――そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 

 それは何かの呪文の様であり、フリードもバルパーも祐斗もその行動に目を奪われる中、ゼノヴィアは続ける。

 

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する――」

 

「っ!?」

 

「あ?」

 

「な、なに!?」

 

 

 そして詠唱が終わり掛けたその刹那、空間が歪みそこから現れた『ソレ』に見ていた者達は目を見開く。

 力量不足故、扱いが下手故に封印して持ち歩いていたゼノヴィア本来の武器。

 

 

「デュランダル!」

 

 

 現れるは一本の聖なる剣。

 見るだけで荒々しくも聖域を感じる力を放つ不滅の刃。

 

 

「デュ、デュランダルだと!? 馬鹿な! 貴様は確か聖剣使いでは無かったのか!? それに人工のデュランダル使いなぞ聞いた事が……!」

 

 

 英雄が持つとされていた剣を前に、ただ一人バルパーが盛大に狼狽えながらゼノヴィアに吠える。

 しかしゼノヴィアは静かにバルパーの叫びに首を横に振りながら否定すると……。

 

 

「聞かれもしなかったから言う必要も無いと思ってただけだが、生憎私は天然のデュランダル使いでな。

まあ、なんだ……私自身の力量不足のせいで触れたものを何でもかんでも切り刻む危険があったから今まで封印してたのさ……」

 

「な、なんだ……と……?」

 

「………。デュランダル」

 

「す、凄いやゼノヴィアさん……」

 

 

 罰の悪そうな顔で祐斗を見ながら淡々と答えるゼノヴィアにバルパーは呆然としながら立ち尽くす。

 

 

「……。だが借りを作ったまま隠すつもりは無い……だから解放したまで!」

 

「ゼノヴィアさん……」

 

「すまんな祐斗……だが此処からは私も全力でお前のサポートをするぞ!」

 

 

 デュランダルを手に持ち、バルパーと同じく固まるフリードに構えるゼノヴィアに、祐斗はよく解らない嬉しさと心強さを持って改めて構える。

 

 

「行くぞ! 聖剣と打ち合うのは初めてでな、心なしかわくわくしているから覚悟しろ!」

 

「フ、フリード! 早くっ……さっさと殺すのだ!!」

 

「…………」

 

 

 デュランダル使いなどと聞いてないバルパーはハッとして狼狽えながらもフリードに命ずる。

 もしかしたら、という考えを誤魔化すかの如くフリードに殺すよう吠える。

 

 だがフリードは突如として聖剣に込めていた渾身の力を霧散させ、輝きをも消し始めてしまう。

 

 

「え?」

 

「な、何をしてるフリード!?」

 

 

 その行動に祐斗とゼノヴィアは眉を潜め、バルパーは何をバカな真似を!? と激昂するも、フリードの表情は先程までの狂気に満ちた笑みでは無くなっており、ただただ冷酷で……そして冷めきった表情だった。

 

 

「ハァ……マジかよ。

デュランダルが来るたぁ、こりゃめんどくせーな」

 

「な、何を言ってるフリード!」

 

 

 遂には持っていた聖剣をもその場に突き立て、ダラリと脱力までするフリードにバルパーが吠えるも、フリードは脱力したまま不気味に首だけを向けだけだ。

 

 

「いやいやぁ、デュランダルは無理だぜ旦那?

見て解るっしょ? 7本全部を融合させた聖剣ちゃんなら話は別だけど、三本程度じゃへし折られて終わりだよ、お・わ・り・!」

 

「そ、それは……!」

 

 

 胸の内を見透かすかの如く言い放つフリードにバルパーは言葉に詰まってしまう。

 

 

「だからこの聖剣ちゃんじゃ無理よ無理~

旦那の期待には応えられんわ」

 

「ぐっ……ふ、ふざけるな! お前に力を……その聖剣を与えたのは私なんだぞ! だったら――」

 

 

 ヘラヘラしながら無理と連呼するフリードにバルパーが吠える。

 本来なら5本……何れは全ての聖剣を確保し、あるべき姿に戻す夢もデュランダル使いと聖剣計画の生き残りである小僧に粉砕され、唯一残った聖剣を一つにしてもデュランダルを前に無理だと言われ。

 のし掛かる現実に理解しつつもバルパーとしては納得できず、ただ子供の様にわめき散らした。

 

 

「私の夢がこんな簡単に砕かれて堪るか!

命まで掛け、立場も何もかも捨てて此処まで来たのにこんなオチがあって堪るかぁぁっ!!」

 

「狂人が……!」

 

「そのふざけた夢の為に、僕の仲間は殺されたんだ!」

 

 

 咆哮するバルパーにゼノヴィアは嫌悪を見せ、祐斗が激昂する。

 だがバルパーはそんな祐斗を射殺せんばかりな形相で睨み付け更に吠える。

 

 

「黙れ失敗作が!!

貴様の大事な仲間とやらから取り出した因子があったからこそ、奴等は人工の聖剣使いの研究が進んだのだ! それなのにミカエル共は研究が完成したのを見図って私を異端と――」

 

 

 聖剣を扱えるその因子を集めるために子供を殺し続けてきたバルパーは抑え込んでいた全てを吐き出すが如く喚き散らす。

 そんなバルパーにゼノヴィアと祐斗は睨み、今にでも斬り伏せてしまいたいと剣を握る手に力を込めたその時だった。

 

 

「がっ!?」

 

「……。へーへーもう黙ってろよ旦那。

そんなに聖剣が好きならその聖剣と心中しちまえや?」

 

 

 地面に刺した聖剣を再び手にしたフリードが、憎悪を吐き出すが如く喚くバルパーの身を斜めに一閃……切り裂いたのだ。

 

 

「なっ!?」

 

「何を!?」

 

 

 バルパーがフリードに斬られた様を見せられた祐斗とゼノヴィアが驚愕に目を開く。

 

 

「な、なんのつもりだ……フリード……!?」

 

 

 肩から脇腹までを斜めに血を吹き出したバルパーは口から夥しい量の血を吐きながら、信じられないものを見るような瞳で、冷酷な表情で血を浴びるフリードに問うも、見える表情は冷めきったソレだけだった。

 

 

「聖剣聖剣聖剣聖剣ってよ、好きなのはウゼー程分かったけど、ちと鬱陶しいぜ旦那?

もう7本の聖剣様が一つになるなんて、そこのラブカップルが破壊したんだから無理なもんは無理……なら精々その夢の続きはあの世でやってくれや」

 

「ふ、ふざけるなフリード……お前に力を与えたのは――がふっ!?」

 

 

 鼻で笑いながら告げるフリードにバルパーが掴み掛かろうとするも、突き立てた聖剣がバルパーの左胸を貫き、トドメとばかりにフリードは言った。

 

 

「こんなガラクタを与えていい気になるなよオッサン? 俺に力を与えたのはアンタじゃなくてコカビエルのボスだぜ?

アンタは単にガラクタを一つに纏めてぇからボスに寄生してただけじゃねぇか」

 

「か……か……」

 

「だから死んでくれや? な?」

 

 

 瞳孔が開き、もはや絶命しているバルパーに囁くような声を聞かせたフリードは、左胸に突き立てた聖剣を引っこ抜き、刀身に付いたその血を振って払う。

 

 

「先逝っとけや旦那? 俺も後でちゃんとそっちに逝ってやるからさ……」

 

「…………」

 

 

 力無く倒れ伏すバルパーの亡骸を見下ろし、感情が掴めない透明な表情ででそれだけを言うと、その隣に持っていた聖剣を置く。

 

 

「さ~てと」

 

 

 そして、その様子を唖然として見ていた祐斗とゼノヴィアに、再び何時もの狂気の笑みを浮かべて見せ狂った殺意を全開にさせ始めつつ口を開く。

 

 

「そぉいう訳だラブカップル。

悪いが仇はこの通り俺が斬っちまったぜ? ヒッヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「フリード……キミは……!」

 

「仲間を殺したのか!」

 

 

 ゲラゲラとこれまで以上に大笑いしながら嘲笑うフリードに祐斗とゼノヴィアが剣を構えながら殺気を向けるも、フリードは顔色を変えず、ただただ笑ってるだけだ。

 

 

「バルパーの旦那の夢はオメー等が二本の聖剣をぶっ壊した時点で破綻してんだよぉ!!

だったから二度と叶わねぇ夢に苦しむくれぇなら殺した方が旦那の為だろ? それにどうであれ、俺がオメー等に負けたら斬られる運命なんだぜ? それが早まっただけじゃねーか! ヒャハハハハハハハ!!」

 

「コ、コイツ……!」

 

「キミはやはり此処で倒す!」

 

 

 屍となったバルパーの前に立ち、両手を大きく広げながら大笑いするフリードに祐斗とゼノヴィアは此処で始末を着ける決心を改める。

 聖剣はまだ残ってるものの、デュランダルを召喚したゼノヴィアと二人で戦えば勝機はあると確信があった。

 

 

「あ~ぁ……あの様子じゃボスもやべぇし、此方もコッチでデュランダル使いの元・同僚と悪魔相手と来た。

こんな未完成の聖剣じゃあ勝てねぇだろうし……全くつくづくボスに言われてた遊び癖が抜けねぇ自分(テメー)が嫌になるぜクソが……」

 

 

 だけどフリードはまるで怖じ気つかず、自虐的な笑みを見せながら俯く。

 こんな事ならデュランダルを呼び出される前にぶっ殺して置けば良かったと、つくづく自分(テメー)の慢心癖の悪さに自己嫌悪しながら得物を構える祐斗とゼノヴィア……特にゼノヴィアの持つデュランダルに複雑な目を向けるフリードは一つ深呼吸する。

 

 

「ハァ……嫌なんだけど、自業自得だし仕方ねー……か」

 

 

 そして抜け出せない己の悪い癖に反省しつつも、狂った笑みをまた浮かべたフリードはダラリと力無く右手をゼノヴィアの時の様に夜空へと掲げる。

 

 

「何をする気だ……聖剣は使わないつもりか?」

 

「何か……嫌な予感がする……!」

 

 

 その行動に眉を寄せるゼノヴィアと嫌な予感が止まらない祐斗。

 だがフリードは答えることはせず、代わりに見せつけるかの如く……そして聞かせるが如く小さく口を開いた。

 

 

「英雄よ目覚めろ。大帝よ奮起しろ。我の声に耳を傾け、目の前に立ちはだかる敵を斬り伏せろ」

 

「「っ!?」」

 

 

 何処かで見た光景……いや、ゼノヴィアがデュランダルを呼び出した時と同じ光景に二人は息を飲む中、フリードの頭上の空間が歪み始める。

 

 

「シャルルマーニュの御名の下に、我にその力を貸せ――」

 

 

 歪んだ空間から輝きを放つ一本の剣が姿を現し、フリードの手に収まる。

 その輝きは何の淀みも無く、寧ろ美しさすら放っていたと、少なくともゼノヴィアはそう感じ、祐斗はその輝きに更なる本能的危機を感じる。

 

 フリードの手に収まるは紛れもなき聖剣。バルパーがかき集めて一体化させた聖剣とは更に異なるモノ。

 それも皮肉な事に、ゼノヴィアが持つデュランダルと同等レベルの力を持ち、柄頭に聖槍が埋め込まれた剣。

 

 その名も……。

 

 

 

 

 

 

「ジョワユーズ」

 

 

 

 

 

 

 ジョワユーズ。

 伝説上、デュランダルと同じ材質で作られた伝説の一振りをフリードはその手に召喚した。

 

 

「な、なんだと!? 奴も天然の使い手だったのか!」

 

「だ、だから余裕な態度だったんだね……。

あ、あはは……隠し芸大会も大概にして欲しいな……僕としても」

 

 

 祐斗とゼノヴィアは目の前で起こる現実が信じられなかった。

 はぐれ悪魔祓いで人格破綻者としか言えないフリード・セルゼンが、よもや天然の使い手だったのだ。

 これでまた勝負は振り出しに戻ったのと同義であり、ジョワユーズの剣を持ったフリードは露骨にも嫌そうな顔をしながら驚く二人を睨む。

 

 

「あーあーあーあーあーあー!!

俺っちこれ大嫌いだっつーのに、呼び出すなんてアンラッキーにも程があんぜ馬鹿野郎が!!!!」

 

 

 そしてバルパーの亡骸の横に放置していた聖剣とはまた別域の聖なる力を剣から放つと、身構える二人に再び襲い掛かかった。

 

 フリードは悪魔が嫌いだ。悪魔に頼る人間も嫌いだ。

 けどそれ以上に、自身に宿ってしまったこの聖剣が大嫌いだった。

 

 

魔剣創造(ソードバース)――っ!?」

 

「悪いな悪魔クン。

バルパーの旦那が錬金した聖剣でもその様なんだぜ? このジョワユーズにゃあ最初(ハナ)っから効かねぇさ……残念な事にな」

 

 

 持つが故に、使えてしまったが故に、なまじ強力だったが故に。

 

 祐斗が出現させる夥しい数の魔剣をたった一振りで粉々に破壊して見せたフリードはニタァとしながらジョワユーズに更なる力を込め、意趣返しが如く無数の斬撃放つ。

 

 

「そーらよ! 今度はカスっても死ぬぜぇ!」

 

「させるか!」

 

 

 聖なる斬撃が滅しようと無慈悲に襲い掛かり、祐斗はしないよりはマシだと両手に剣を持ってクロスさせ、ガードの体勢を取る。

 だがそれよりも早く祐斗の前にゼノヴィアが立ち、襲い掛かる無数の斬撃をデュランダルで相殺させる。

 

 

「大丈夫か祐斗!」

 

「う、うん……でも参ったな。これじゃあ完全に僕がお荷物になってる――」

 

「へーい! お喋りはそこまでだよーん!!」

 

 

 フリード自身の人生までねじ曲げられたからこそ、ジョワユーズの剣が大嫌いだった。

 しかし最早そうは言ってられない、どうしようもない自身を此処まで引っ張り上げ、面倒見が良かった堕天使の男に対する借りがあるから。

 

 

「は、速い!?」

 

「させん!」

 

 

 だからこそ呼び出し、天閃の聖剣以上の速さで距離を詰めてきたフリードにゼノヴィアが対抗し、上空へジャンプし、落下して来たフリードによる降り下ろされたジョワユーズの一撃をデュランダルが防ぎ、両者の刃から金属の擦れる音と火花を散らせる。

 

 

「ほっほーう? 流石デュランダル。

こうして打ち合うだけでジョワユーズが喧しくてしょうがねぇぜ!」

 

「それは此方の台詞だフリード・セルゼン。貴様には驚かされてばかりだよ!」

 

 

 デュランダルとジョワユーズから淡い光を放って共鳴する中を互いに笑って称え合いながら斬り合う。

 

 剣に使われるな、剣を支配して使え。

 

 死にかけの自分を拾い、保護し、短い付き合いの中で此処まで引っ張り上げてくれた堕天使に対する奇妙な恩の為に、今再びこの手に呼び出しだジョワユーズを使い、デュランダル使いであるゼノヴィアを倒そうと本気で斬りかかる。

 

 

「遅いぜボケ!!」

 

「チィッ!」

 

 

 正に本気。

 慢心も油断も今だけ本気で捨てて斬り結ぶゼノヴィアのデュランダルに力で打ち勝ち始めたフリードにとってはこれが最終最後の切り札。

 これで負ければ最早打つ手無し……自分もコカビエルも死ぬ。

 

 

「くっ……妬ましいほどの天賦の才だな。

デュランダルをコントロール出来ない私と違って奴は完全にジョワユーズを扱えてる……」

 

「こ、此処まで自分の無力さを呪った事はないよ。

彼は本当に兵藤君に負けてからずっと努力してきたんだね……」

 

 

 だからこそフリードは形振り構わず眼前の敵をなぎ倒す為に進化する。

 今こそフリード・セルゼンの真価が問われる刻。

 持ちうる力を全て出し切る刻!

 

 

「ヒッヒャヒャヒャヒャ!! 正真正銘の最終ラウンドと行こうぜクソッタレがよぉぉっ!!」

 

 

 禁忌していたシャルルマーニュ伝説・聖剣ジョワユーズと共にフリードは駆けた。

 




補足
フリードきゅん、実は天然のジョワユーズの使い手だったでござる。
まあ、うん……無いわなぁ。

てか、コカビー効果でなんつー主人公……。



その2
木場きゅん……バルパーさんがさっさと死んだせいで未だ覚醒せず。

フリードきゅんの這い上がり補正により、覚醒フラグが先伸ばしにされました。

その3
ゼノヴィアさん……木場きゅんを頑固お馬鹿と思えど嫌いじゃないの巻

てか、ナチュラルに戦闘中にイチャついてるのがチラホラあるというね……。


ちなみに兄貴は一誠とコカビーのベタ足インファイトを見て色々と折れ掛かってます。


その4
匙きゅんについて。

寝取られ失恋のせいで割かし女性にトラウマってるんですよ実は。

ので、彼に母性のある良い人が似合う訳で……え、魔王少女?
……。いやぁ、匙きゅん寧ろトラウマつつかれて辛くね?
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