所謂リアルがやばめに忙しくて時間が無さすぎました故に……。
つー訳で更新ですが、最早ヤケクソ気味に新たな超展開ががが。
※少しだけ加筆しました
足を引っ張ってるだけ。
それが僕に突き付けられてる現実だ。
デュランダルに対抗してジョワユーズを呼び出したフリード・セルゼンに僕の力は完全に叩き伏せられ、出来る事と言えばゼノヴィアさんの援護くらい。
けれどそれでもフリードは何の苦もなさそうに戦い、ジョワユーズを完全にモノにしているというアドバンテージもあって、不利なのは此方側だった。
「死ねっ!!」
「くっ……!」
「はぁい、次ィィィ!!!!」
「がはぁっ!?」
デュランダルとジョワユーズ。
ゼノヴィアさんとフリードが其々宿らせる聖剣二つの力は拮抗しているが、使い手の力量の差が時間と共に表れ始め、最初は何とか食らい付けていた僕達が徐々に圧され始めてきた。
狂気の天才フリード・セルゼンの才能は僕とゼノヴィアさんの上を行っていたのだ。
「く、クソ……強い……!」
「ハァ……ハァ……!」
「休ませねぇよ!!」
斬り掛かる、避ける……。
あらゆる剣技が僕達の1歩先に居るフリードに押し切られてしまい、段々と防戦一方となる展開を強いられてきたゼノヴィアさんと共に膝を付いてしまう。
「ぐ……ぐぐ……!」
「ま、まいった……ちょっと勝てんぞこれは……」
致命傷だけは意地で回避してきたものの、疲労感だけは拭えずに大きく息を切らしながら膝を付き、反対にフリードはジョワユーズを構えながら静かに立っている。
兵藤くんに負けてからその復讐でコカビエルに師事して此処まで這い上がったと言ってたけど、いくら天才でも短い間にこんなにも化けるだなんて信じられない。
「おいおい、最初の威勢はどうしたよカップル?」
「「……」」
疲労感の色がまるで無さそうに、ジョワユーズの切っ先を僕達に向けながら煽るフリードに僕とゼノヴィアさんは何も言い返せずゼェゼェと息を切らし続ける声しか返せない。
「デュランダルと魔剣創造使いなんだろ? …………
度で終わってんじゃねぇぞゴラァッ!!!」
やや心が折れてると顔に出て閉まっていたのだろうか、何も返さない僕とゼノヴィアさんにフリードが激昂しながら突撃してくるので、持っていた剣を無駄だと悟りつつも投げつけて時間を稼ごうとする。
「ヒャハハハハ!!」
「くっ、ぐぅ! ぐはぁっ!?」
「祐斗!」
でもやっぱり僕の剣ではフリードに届かず、軽々と破壊しながら接近し、蹴り飛ばされてますます心が折れてしまいそうになる。
「う、うぅ……ゼェゼェ……」
「避けるだけは上手くて拍手ぅぅ!!」
「ごはぁ!?」
嬲られるようにして小さく身を切り刻まれながら殴り付けられる僕は、フリードとの大きな壁の差を感じて挫けそうになってしまう。
身体全体を襲う痛みと、のし掛かる疲労感で支配されている僕やゼノヴィアさんとは異なり、疲れ知らずかと言いたくなるフリードの怒涛なる連激を前に、先程の決心した心が砕かれてしまう思いだった。
「い、いくら吠えても勝てないのかな……」
それはやがて弱音となり、ゼノヴィアさんを隣にしているというのに声に出してしまい、聞こえただろうゼノヴィアさんはこんな僕に渇を入れる。
「くっ、祐斗……! 自暴自棄になるにはまだ早――がっ!?」
「相談はさせねぇよ!!」
立つことも億劫な程にボロボロとなる僕にゼノヴィアさんの声が……そして遅れてその声を塗りつぶさんとするフリードの声と共にゼノヴィアさんが大きく後ろに蹴り飛ばされてしまった。
「ゼ、ゼノ――」
決心した所で露呈してしまうその弱い心……。
それがいけなかったのか、その甘え癖を拭いきれなかったのが災いしてしま僕への罰なのか。
「まずは一人……道連れだぜ」
「ぁ……ゆ、祐……と……!」
「ゼノヴィアさんっ!!!」
デュランダルを手放し、丸腰となったゼノヴィアさんの身をフリードに容赦なく切り裂かれる光景を――
かつての仲間が殺されていく思い出したくもない光景と重なる、見たくなかった光景が無力である僕の目の前で……。
「そ、そんな……そんな……!」
「す、すまない……私は此処までみたいだ……」
起こってしまった。
2度……。
2度による徹底的な無力感を味合わされた祐斗は、血を流しながら横たわるゼノヴィアの身を抱き寄せ、かつての時と同じ『自分は無力』だと何処かの誰かが嘲笑いながら突き付けてきた現実を斬られたゼノヴィアという形で再び見せつけられてしまった。
「け、結局借りは返せないとはな……。
私もヤキが……ごほっ! ヤキが回ったみたい……だ……」
「そ、そんな……また僕は……!」
ドクドクと流れるゼノヴィアの血が祐斗の手を真っ赤に染め上げ、その量が『致命傷』だと無慈悲な言葉として祐斗にのし掛かる。
いや、こうなっても今コカビエルと戦ってる一誠の力があれば何とでもなるかもしれない。
「そ、そうだ……一誠くんがきっと……!」
「だ、だと良いがな……。お前も聞いただろ? アイツの力は決して万能なんかじゃないって……」
「ハッ……!」
死という現実からも逃げられる一誠の力なら、致命傷を負ったゼノヴィアを何とか救えるかもしれないと、彼女の下へ駆け寄り、傷口から止めどなく溢れていく血を手で無理矢理押さえて泣きそうに話す祐斗は、声が掠れていくゼノヴィアの言葉にハッとし、前に一誠自身から聞かされた事を思い出してしまう。
『俺の
その者が死んだ現実を否定出来るかもしれないが、それが全ての者に適応される訳じゃない……でなければ
決して万能じゃない。
何処かでバグが発生して使えなかったりする場合は大いにある。
「うぅ……うぅ!」
「もう良い……この傷じゃ助からない。それより……」
「嫌だ! 嫌だ!!」
だから決して頼るな……前に一誠という
「まずは一人……でもこれだけじゃあの世のバルパーの旦那は激おこってか?」
ゼノヴィアの血で染まったジョワユーズを振って払うフリードは、離れに横たわるバルパーの亡骸と使わなくなった聖剣に視線を移しながら、様々な感情が入った何とも言えない歪んだ笑みを浮かべ、血を拭ったジョワユーズを手に構えを戻す。
「早く、行け……! 私に構うな……!」
「い、嫌だ……! 僕のせいで人が死ぬのなんて見たくない!」
そして祐斗は、フリードがゆっくりと殺気放ちながら近づいてくるのにも目もくれず、結局はおんぶに抱っこだった無力さに心が折れ掛けていた。
「け、結局僕は一誠くん達みたいに強くない。
せっかく友達になれた人を守れず……こんな……こんな……」
「はん、泣き言か?
まあ、好きな女を目の前で斬られて平然としてたら別の意味で感心してたが……流石にそうじゃないらしいな悪魔クンよ?」
デュランダルが消失していくのをフリードと共に見届けてしまった祐斗の目は諦めの色が強く出ていた。
かつての仲間の命を弄んだ敵はフリードに切り払われ、そして肩を並べて戦うと決めた盟友までも目の前で切られてしまった今、例え一誠がコカビエルに勝利して此方に来たとしても、突きつけられた無力さは拭えない。
結局の所、自分はイキッテただけの餓鬼だった。
その現実だけが祐斗の心を蝕み、ゼノヴィアの次は貴様だとジョワユーズを両手で持って殺気を膨らませるフリードに対してその場から動こうともせず今にも散らせそうなゼノヴィアの身を抱き締めながら小さく……呪うかの様に呟く。
「僕は……また一人だ……」
無力という現実が祐斗を蝕む。
「あの時何で僕だけ生き残ったのだろうって、毎日思っていた……」
力無き自分に深い憎悪が宿る。
「醜く生き残り、悪魔の眷属になってでも行き続け、その眷属の中の居心地が悪いからって一誠くん達に寄生して……」
見て見ぬふりをしてきた現実に押し潰されそうになる。
「そして出来たトモダチも今こうして僕の弱さのせいで失いそうになってる……」
誰に対してでも無い、ただ己の力の無さを呪う祐斗は意識が既に無いゼノヴィアの身を抱き締め続けながら涙を流す。
「僕はただの馬鹿だ……! 結局誰かに頼りきってばかりで……!」
そして辿り着くは『力無き者は淘汰されてしまう現実』。
フリードの様に度を越えた努力の結果を越えられなかった。
ひょんな事から親しくなったトモダチを守れなかった。
そして……復讐もできなかった。
「僕は……弱いまま……」
「チッ、心が折れたか?
てっきり仇討ちとかで向かってくると思ったのに拍子抜けだぜ悪魔よぉ」
一誠の様な力強い精神は無い。
失った現実を否定できる力なんて無い。
受け入れがたい現実から逃げられないという現実をこれでもかと突きつけられた祐斗に最早戦意は無く、それを見たフリードは落胆の気持ちと共に舌打ちをし、仲良くトドメを刺そうとジョワユーズを振り上げた。
「そんなに大事ならあの世で精々仲良くしとけや……ラブカップルよぉ」
自分を導いた堕天使に対する恩に報いる為にフリードに慈悲なぞ……いや、敢えてトドメを刺そうとする辺り、もしかしたらフリードなりの慈悲なのかもしれない。
「じゃあな、楽しかった……ぜ!」
「…………」
狂気を孕んだ笑みも無く、ただただ無表情で振り上げられたジョワユーズの刃が、ゼノヴィアの身を抱き締めながら俯く祐斗の首に振り下ろされたその
『違う、アナタは無力でも独りでもない……!』
「あ?」
「……え?」
突如として耳に入る謎の声に、フリードと祐斗はハッしながら辺りを見渡す。
向こうで戦ってる一誠達ではない何者かの声にフリードも振り上げた剣を下ろしながら眉を寄せる……。
「誰だオイ?」
「…………」
何処からでは無い、強いて云うなら頭の中に直接響くその声はフリードの呟きに答える代わりに変化として……亡骸となったバルパーから溢れた小さな瓶が独りでに光を放ちながら浮かぶという現象を見せる。
「あれは……バルパーの旦那が余り物だと言ってた聖剣因子の結晶……!?」
「この、声……は……?」
バルパーの亡骸から溢れた瓶……。
そしてその中に詰められた狂気の野望の果てとなった結晶が淡い光を放ちながら祐斗の頭上に現れ、思わず目を覆いたくなる強い光が降り注ぐ。
「チッ……!」
その光に本能的な危機感を覚えたフリードが、ほのかに放っていた殺気を一気に爆発させ、閃光の速さで祐斗に斬りかかる。
「うっ!? 何だこれ――ぐはぁ!?」
だがしかしフリードのジョワユーズの刃は祐斗に届かず、強い光と見えない壁のようなもので防がれた挙げ句逆に吹き飛ばされた。
「こ、これは……?」
あのフリードが吹っ飛ばされた……。
自分の頭上から眩しくも心地よい光を放つナニかに驚く祐斗は状況が掴めずに動揺していると、今度はもっとハッキリとした声が――それも複数の幼い男女の声が祐斗に語り掛けていた。
『アナタは独りじゃない』
『諦めちゃ駄目だ』
『その子はまだ死んでいないよ!』
「え……え……?」
ある声は勇気づけるように、ある声は優しく諭すように、ある声は墜ち掛けた心を引っ張りあげるように。
頭上から降り注ぎ続ける強い光はやがて大小様々な人の形となって祐斗を囲い、幼い声で次々と発破を掛ける言葉を紡いでいく。
「これは……あの時の……皆……?」
その声に祐斗は聞き覚えがあった。
だからこそ自覚は無いが祐斗の目には失意によって失った力が戻り、涙が止めどなく溢れていく。
「皆……どうして?
のうのうと中途半端に生き残った僕を責めないのかい? 僕は――」
『誰もアナタを責めない』
『どんな生き方にせよ、アナタは私達を忘れなかった』
『僕達にはそれで充分』
『だから今度は私達の番!』
辛かったけど皆が居たから楽しかったかつての思い出が降り注ぐ光と自分を囲う者達の声によってより鮮明に頭の中で広がり、折れ掛けていた心は再び――より強く剣の様に打ち直されていく。
『さぁ祐斗……!
辛かった時皆で歌ったあの歌を――』
『決して下を見ないで上を見ることを誓いあったあの歌を――』
『その子を救う――聖歌を!!』
「うん……うん……!」
夜空に降り注ぐ光と歌が、学園中に響き渡る。
「む!?
フリード……? いや、違う……あの小僧か……!」
「祐斗……? なるほど……アイツめ……クククッ!」
それは黒神ファイナルをする前でベタ足インファイト中だった一誠とコカビエルにも伝わり……。
「これは……歌?」
「なんかホワァってするにゃ~」
「祐斗先輩……」
一誠を見守る少女達の心をも動かし……。
「っ!? な、何よ今度は!」
「む、向こうから……?」
「へっ、木場の野郎……俺も負けられねぇぜ!!!」
はぐれとなる覚悟を決めて主に反旗を翻す少年の闘争心をより刺激していった。
「聖歌……だとぉ……!?」
平等に降り注ぐ優しくも強い光……悪魔すら包み込む優しきその光と歌は祐斗を囲い、祐斗にとっては英霊ともいうべき仲間たちと共に歌われていく中、ヨロヨロと立ち上がり、口の中に広がる血をペッと吐きながらフリードはこれでもかと顔を嫌悪に歪めていた。
「ふざけやがって!
またトドメを刺す前に最悪すぎる横槍いれやがって……! バルパーの旦那の呪いかよ!」
祐斗が祐斗を囲う光達と歌う聖歌に耳を塞ぎながらフリードは頭を振りながら苦しみだす。
「クソッタレが!!
こんなクソ歌を俺に聞かせるなぁ!! 偽善者共の嘘を聞かせるんじゃねぇぇぇ!!!!」
紡がれていく聖詞にフリードはこれまで以上の憎悪を剥き出しにし、ジョワユーズに最大の力を込めて祐斗と祐斗を囲う何者かに斬りかかるが、ジョワユーズすら飲み込む強い光に刃は届かず、見えない壁に憚れるようにフリードの攻撃は無効化されていく。
「うるせぇ! うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇぇぇぇ!!!!! ガァァァァッ!!!!」
それでも尚フリードはジョワユーズを狂ったかの様に振る。
まるで拒絶するかのように振り続けていく。
「聖歌……」
そんなフリードに気付くこと無く、祐斗はかつての仲間の英霊達と共に、辛くても前を向くために皆で歌った思い出の聖歌を涙と共に紡いでいく。
「ぅ……?」
その歌のせいか、祐斗自身には分からないが降り注ぐ光が横たわるゼノヴィアの身を優しく包み込み、傷が塞がり始め、眠るような顔に再び生気を宿らせ、遂には意識を取り戻す。
「ゼ、ゼノヴィアさん!」
「ゆ……祐斗……? これは……?」
「大丈夫……大丈夫だよゼノヴィアさん……。
もう2度と僕は自分を見失わないから……!」
「…………あぁ」
祐斗に抱き締められていること、そして包み込む光に安堵の表情を浮かべたゼノヴィアは微笑みながら静かに目を閉じる。
「皆……ゼノヴィアさんをありがとう……!」
生気を帯びた表情で眠るゼノヴィアに最上級の安堵を見せた祐斗は、己を囲うかつての仲間達に礼を言う。
奇跡だろうが何だって構わない……腐りかけた自分に渇を入れたのもゼノヴィアを死の淵から救ってくれたのも紛れもなく嘗ての仲間達。
それがどんなに嬉しいか……そしてどんなにその礼に応えるべきか。
祐斗の心に最早傷は無かった。
『僕らは、一人ではダメだった―――』
『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど―――』
『皆が集まれば、きっとだいじょうぶ―――』
『聖剣を受け入れるんだ―――』
『怖くなんてない―――』
『たとえ、神がいなくても―――』
『神が見ていなくても―――』
『僕たちの心はいつだって―――』
「あぁ……皆で一つだ……!!」
復讐……違う、勝つために受け入れる。
復讐を乗り越えるなんて綺麗事は言わない……それらのマイナス面全てを受け入れて前に進む。
それが残された自分の生きる道……!
『何時だって私達はアナタと共に在る……』
「うん……ありがとう……!」
綺麗事で復讐を否定しない。
けれどその復讐を乗り越える……!
仲間達の優しき声に涙を消して力強く頷いた祐斗は両手に剣を持つ。
「何度も何度も口だけの僕だけど、今度こそ迷わない……
幾度となくフリードに心と共にへし折られた剣に、今の祐斗の心と直結させるように強く生成された剣が現れ、魔剣だったその剣に祐斗を見守ってきた仲間達の魂が入り込む。
それはいうなれば祐斗だけの進化。
何度折られても仲間達の声により不死鳥の如く蘇る心に至った力の進化。
「
聖と魔を兼ね備えた剣が祐斗の力となりてこの世に現れたのだ。
「聖魔だぁ……?
くっ、ケケケケ! 耳障りな歌聞かされた挙げ句パワーアップとはなぁ……!」
まだ止まぬ光と歌にこれでもかと顔を憎悪に歪めていたフリードは先程までとは違う、荒れ狂う殺意を撒き散らしながらジョワユーズの柄を握り潰さんとする力で握り締める。
「聖魔だかなんだか知らねぇが、今を以てテメーは確実にぶちのめす!!」
遠い記憶を無理矢理掘り起こされる歌を聞かされたフリードはこれまで以上の殺意を剣に込め、未だ光を浴びながら進化した双剣を構える祐斗に吠えた。
「キミは……聖歌が嫌いなのか?」
今まで以上の殺意を受けた祐斗も、フリードの異常な嫌悪感を感じて小さく問う。
するとフリードはジョワユーズで足下を破壊しながら獣の様な声をあげた。
「あぁ嫌いだぜ!! 主様と聞こえの良いこと抜かして無理矢理歌わされたクソ偽善歌なんぞヘドが出やがる!!」
「そう……」
押さえられない憎悪を撒き散らすように辺りを破壊しながら吠えるフリードに、祐斗は少しだけ何故彼がはぐれ悪魔祓いになったのか……その理由がわかった様な気がした。
「だからテメーは……テメーの光諸ともぶった斬ってやらぁ!!」
「わかった……わかったよフリード……。
でもこれだけでは今のキミにはまだ勝てない」
フリードの精神に呼応するようにジョワユーズが光を放つのを見届けた祐斗は目を伏せながら小さく頷き、進化した双剣の刃をクロスさせる。
「あぁ!? まだ何か――」
「キミは強い……天才で間違いない。だから僕は双剣の他に至ったこの力も使う……!」
ギャリギャリと刃同士が擦れて火花を散らず双剣を持った祐斗の真っ直ぐな瞳に一瞬だけ気圧されたフリードの疑問に言葉では無く行動で応えようと、祐斗は覇気を放ち、金属の音を奏でさせながらその刃を重ね天に掲げ――そして宣言した。
『さぁ行こう……!』
「我が名は木場祐斗!」
再び失わない為にも、決して折れないと自分に言い聞かせるように、かつての仲間の優しき声に背を押された様な感覚と共に、振り上げたら双剣で描き、それに沿うように二つの円陣が祐斗の頭上に現れる。
『何時だって一つ……祐斗を守る力としてずっと一緒!』
「聖と魔の力を宿す
頭上に出現した二つの円陣はやがて重なって一つとなり、そこから更なる光が降り注ぐ。
「な、なに……このっ……クソッタレ!!」
何かをしようとしている祐斗に本能的な恐怖を感じたフリードが再び斬りかかるも、祐斗を囲っていた英霊達が阻みながら小さな銀の塊――魂となって祐斗の周りを回り、やがて一つ一つの魂が腕、足、胴……そして顔へ――白銀の鎧となって包み込む。
『悪魔の騎士なんかじゃない真の――銀牙騎士となるッ!!』
「な、なんだそりゃあっ!?」
祐斗の全身を覆った白銀の鎧と共に光は晴れ、再び暗い夜空が支配する中、一連の状況を見ていただけしか出来なかったフリードは変化した祐斗の双剣……そしてその身を包む白銀の鎧姿にこれでもかと顔を歪めた。
「こ、ここに来てまた謎のパワーアップかよ!?」
『
冷たく……しかし目を張る銀の鎧で全身を固めた姿に吠えるフリードに応える事無く、祐斗は眠るゼノヴィアの身を横抱きに抱えたかと思うと、堅牢で鈍足そうな見た目とはまるで真逆の目では追えないスピードで彼女の身を安全な場所に置くと、再びフリードの前に進化した双剣を構えながら小さく腰を落として構える。
『これで……これでやっとキミと対等になれた』
「あぁっ!?」
ジョワユーズを握る柄に自然と力がこもる中、狼を思わせるフェイスメイル越しに聞こえるエコーの効いた祐斗の声にフリードは動揺の余り声を荒げる。
「対等だぁ? 御大層な鎧を纏ってもう勝った気か、あぁっ!?」
当たり前だ、バルパーの亡骸から出てきた聖剣因子の結晶に謎の現象がおこったかと思ったら祐斗自身の魔剣創造を聖を兼ね備えた力を与えたばかりか、白銀の狼を思わせる鎧まで与えたのだ。
「クソが、新しい力を得てチョーシこいてんのかよ……」
『どうかな……でももう役立たずにはならない』
しかも目にする限り、あの鎧自体『えげつない力を』をヒシヒシ感じる。
怒る狼の表情を思わせる鎧姿とその威圧感に、フリードは先程までの楽さは絶対無いと確信しながらジョワユーズを両手しっかり握りしめながら腰を落とす。
『僕はキミに勝つ……フリード!!!』
「面白ぇ! 来いや狼男ぉぉぉ!!!!」
最早そこにこれ以上の言葉は要らない……。
ただ男と男の意地のぶつかり合いの為に……白銀の狼となった祐斗と、天賦の才を極限まで研ぎ澄ませたフリードは互いに肉薄し――
『ハァァァァ!!』
「くたばれぇぇぇ!!!!」
決着は一瞬で終わった……。
『ハァッ!!!』
「ぐ……がっ……!?」
すれ違い様胴を切り裂かれたフリードが崩れ落ちるという結果で……。
「クソッタレ……またかよぉ……!」
『キミの陰我……僕が解き放つ!!』
白銀の刃と白銀の鎧。
魔を超え、聖を超え……平等に斬り伏せし銀牙騎士。
その名は――
補足
木場きゅん……聖魔剣と共に白銀の狼に覚醒する。
スキルホルダーとして……となるとワンパターンだし、どうせクライマックスに向けてるし別意味の覚醒をさせてみました。
元ネタは某銀牙騎士の某ゼロです。
その2
月満る夜空の下に出現せし銀牙騎士。
ふふふ、この世界にはホラーなんて存在しないのにあの坊やったら銀牙騎士になんてなっちゃって……。
でもあの坊やなら大丈夫かしら? だって私が付いているもの。
次回『絶〇』
私は誰かって? それはヒ・ミ・ツよ♪
……。冗談です。