生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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閑話ですね。

基本的に砂糖回……でありたい。


閑話・色々な愛情その1

 物凄く長く感じた夜は終わった。

 コカビエルから学園を守り、兄貴達はやり過ぎたせいで冥界に強制送還させられ、紫藤イリナはゼノヴィアに連れられて教会に戻った。

 

 が、これで終わりではない。

 あれだけ各々が派手にやらかしたのだ。

 その後始末はまだ完全に終わってる筈も無く、近々兄貴達の裁判が先ずは執り行われる。

 

 それによって兄貴達がどうなろうとしったことではないが、聖剣事件に茶茶入れをした俺達もまた裁判とやらに出席しないといけないらしい。主に証人的な意味で。

 

 それは別に良いのだが、その裁判にサーゼクス・ルシファーも出席する話を聞いた時は若干ゲンナリした気がするのは果たして気のせいなのか。

 

 あの男……ガキの頃から顔見知りではあるが、なじみに執着し過ぎで、俺達に対して露骨な態度を示してくるんだよな。

 何がとは言わんが。

 

 いやまぁ……それもどうでも良いか。サーゼクス・ルシファーに何言われてもどうとも思わんし。

 そんな事より今日のこの休日を……つーか色々な意味で久しぶりなる休日をまったりのんびり過ごす事が大切なのだ。

 

 

 

 

「何故か本当に久し振りに感じるな、お前とこうして休日をまったりするのは」

 

「白音さんや淫乱黒歌さんが最近は邪魔ばかりしてましたからね。そう思うのも仕方無いかと……」

 

「邪魔って……」

 

 

 コカビエルとの戦いが終わってからの休日。

 誠八達のイザコザがまだ片付いてないものの、目下の驚異は去ったという事で久し振りにも感じるまったりした時間を、これまた久し振りにレイヴェルと二人きりで自宅にて過ごしている一誠。

 

 白音と黒歌が珍しく来ないという状況も珍しく、ただただのんびりとした時間を過ごしていく二人は――

 

 

「レイヴェル~ 膝枕してくれ~」

 

「あら、今日の一誠様は久し振りに甘えん坊さんですね……うふふ」

 

 

 ナチュラルにイチャ付いていた。

 

 

「コカビエルに勝ったご褒美が物足りなくてな……嫌なら止めるけど」

 

「まさか。一誠様がお望みならレイヴェルは喜んで受け止めますわ」

 

 

 今更ながら、基本的に一誠はこんな感じだ。

 自分を『レイヴェルが傍に居てこそ』とまで考えてるくらいだ。

 

 それは致命的な弱点とも言うべき危うさも孕んでおり、もしもレイヴェルが一誠の傍らから消えてしまった場合――――どうなるかはお察しである。

 

 

「やっぱりお前が傍に居ないと駄目だな俺は。自分でもよーく解るよ」

 

「それでは駄目ですよ――と本当なら私が一誠様にご注意すべき立場なのですが、私も駄目な事に、一誠様のそのお言葉が何よりも嬉しい……」

 

 

 何時だって一緒だった。

 一誠がフェニックス家に安心院なじみによって連れて来られてからずっと一緒だった。

 奪われ、喪い……それでも尚グレずに進化への道を走るその背に憧れ、追い掛け、何時しか恋心を抱いたレイヴェルからすれば、一誠から甘えられるという事自体が幸せ。

 

 満足そうな表情で膝に頭を乗せる一誠を撫でると心が暖かく、満たされていく。

 白音と黒歌には悪いが、一誠が甘えてくるのは自分だけという自負がある限り、勝手に一誠を誘惑する行為に憤慨することはあれど負ける気はしない。

 

 

「~♪」

 

「きゃ……!? も、もう一誠様ったら……」

 

 

 だって一誠がこんなにも子供っぽく甘えるのは自分だけだから。

 膝枕をしていた一誠に倒され、抱き枕が如く抱き着かれたレイヴェルはトクントクンと自分の心臓がくすぐったくも心地好く鼓動しているのを感じながら、抱き着く一誠の身を優しく抱き締めるのだった。

 

 

 

 

 

 皆さんは誤解をされてますが、一誠様は決して完璧で完全な方ではございません。

 ご自身でも『独りじゃどうしようもなく駄目人間になる』とおっしゃる通り、一誠様は周期的に誰かに甘えたくなる時があります。

 それを受け止めるのは当然私だけであり、白音さんや黒歌さんに渡すつもりは微塵もありません。

 

 

「…………。どうも、何故かは知らないがレイヴェルにこうしてないと不安になる」

 

「不安? それは何故……?」

 

「いや、夢というか何というか……レイヴェルが兄貴に奪い取られた的なビジョンがコカビエルとの戦いの時に浮かんでな……」

 

 

 膝枕から抱き枕になり、ご成長されて逞しくなられた一誠様に抱き締められて色々とキュンキュンしていたりする私に一誠様は少しだけ弱々しいお声で、私があの兵藤誠八なんぞに行ってしまうという話をされた。

 

 

「それはまた……あまりに気分の良いお話ではありませんね」

 

「いや、勿論お前がそんな訳がないのは解ってるぞ?」

 

 

 あり得ません。

 一誠様以外の殿方なぞ眼中に無い私が兵藤誠八なんて……想像しただけで舌を噛みきってしまいたくなる。

 一誠様だけ……私は一誠様専用なのだ。

 

 

「そんな事は忘れてくださいな一誠様。

レイヴェルは一誠様だけの女ですから……」

 

 

 だから今日の一誠様は何時にも増してスキンシップが激しいのか。

 嬉しい反面、ちょっとだけ複雑な気分になってしまう。

 

 

「わかってるよ。変な事言ってごめん」

 

 

 一誠様が大好き。

 好き、好き……どうしようもなく大好き。

 

 一誠様に抱き締められると、黒歌さんじゃありませんがお腹が熱くなる。

 

 

「ん……んっ……一誠様……。私は一誠様だけのモノです。キスだって一誠様としかしません。

この身の全てもも一誠様だけにしか見せません、触れさせません……」

 

「っ……お、おう。

解ったけど……あー……レイヴェルとキスしたのって何年振りだっけ? やっぱりいいなー……」

 

 

 

 

 

 

 冥界・ルシファー領。

 名の通り、ルシファーの称号を継ぐ魔王・サーゼクスのテリトリーであるのだが……。

 

 

「さてと……。セラフォルーから聞いたけど、随分とやらかしてくれたみたいだね」

 

「っ……お、お兄様……」

 

 

 只今サーゼクス・ルシファーは、先日の事件で大失態をやらかした妹のリアスを、隠していた本性をほぼ見せてる形の『肉親すらどうでも良い』といった目と表情で、震える下僕達共々を見据えながら冷たく言い放つ。

 

 

「兵士の――ええっと、何だっけ? 兵藤誠八だっけ?

その子と複数の女達に混じって随分とやっていたみたいだし、先ずは彼と関係を持ってる皆には検査をして貰うよ。身籠ったかどうかのね」

 

 

 人生・安心院なじみ一番。

 いっそ清々しく安心院なじみという存在に狂っていたサーゼクスにとって、肉親が何処ぞの転生悪魔と関係を持ってようが知ったことでは無かった。

 

 けれど、よりにもよって目の前で震えて下を向いている妹以下兵藤誠八と関係を持った者達は、安心院なじみが現在最も接触しているフェニックス家の令嬢と、安心院なじみの後継者とすら言われている少年の邪魔ばかりをしてきた。

 

 後継者の少年とフェニックス家に胡麻を摩り、安心院なじみに少しでも近付きたかったサーゼクスからすれば『余計な真似をしてくれたバカども』としか認識して居なかった。

 

 故に非情。

 サーゼクスは殺意すら入り交じる威圧感を年若い妹達に向けながら、これまで見逃してきた蛮行についての処罰を口にした。

 

 

「詳しくは後になるけど、もうこれまでと同じような生活が出来るとは思わないことだ。覚悟しといてね」

 

『…………』

 

 

 安心院なじみ大信者が故。

 安心院なじみとの接触機会を邪魔されたが故。

 

 実に自分本意ではあり皮肉ではあるものの、今のサーゼクス・ルシファーは実に『魔王』らしかった。

 

 

「そ、そんな……私は悪くないのに……」

 

「そう思いたければそう思えば良いよ。思った所でキミ達はもうどうにもならないからね」

 

 

 僕の夢の邪魔をする奴は例え肉親だろうと容赦はしない。

 サーゼクス・ルシファーは死んでもブレない男だった。

 

 

 

 

 ハァ……本当に嫌になるよ。

 あれ程リアス達に余計な真似をするなと言ったのに、あの赤龍帝だか何だかの子供に呆気なく毒されてしまうなんてね。

 おかげで僕は更に安心院さんから遠退いてしまうし……ちくしょう。

 

 

「サーゼクス様……その……」

 

「……。なに?」

 

 

 兵藤一誠くんによって力を封印され、連行されたリアス達を独房にねじ込む様命じた後。

 僕は遠退いてしまった安心院さんとの距離をどう縮めるかだけを考えながら自室に籠っていると、来いなんて言ってもないのに形だけの妻であるグレイフィアが、何か言いたげな顔をしてやって来た。

 

 とっとと滅ぼして置くべきだった旧魔王派からの人質だか何だかで僕に宛がわれた彼女も、まぁ同情してあげないこともないしさっさと離婚してしまいたいのだが、口だけの小うるさい連中のせいでそれすら儘ならないし、最悪な事に子供まで作らされた。

 

 全く……僕の人生には邪魔者ばかりだよ。

 

 

「本当にあの様な処分をなさるのですか? 聞けば赤龍帝の兵士に洗脳されて――」

 

 

 まあ、何も知らない子供に八つ当たりする程僕も腐っちゃ居ないからあの子には必要最低限の親としての努めは果たすけどさ。

 

 

「されたから何? 洗脳されたから人間界を危機に陥れても仕方無いと?」

 

 

 で、わざわざ何をしに来たのかと思えば……どうにもグレイフィアはリアス達の処分に文句があるらしい。

 ……。どいつもこいつも……あぁ、そうか。

 

 

「まさかキミも兵藤誠八に惚れたのかい? はっはっはっこりゃ傑作だね!」

 

「なっ……!」

 

「まあ、お互いにゴチャゴチャしたくだらない理由で一緒にさせられた訳だし、当然愛情なんでものは皆無。当然と言えば当然かな?」

 

 

 別にどうでも良いし、返って都合の良い話だというかそうであって欲しい。

 もし安心院さんの言ってた通りの洗脳を彼女がされてたんであれば、それを理由にさっさと離婚――――

 

 

「ふざけないでください!!

私はそんな気持ちを抱いてる訳ではありません!」

 

 

 ………と思ったら違うらしく、珍しく激昂されてしまった。

 

 

「キミにしては珍しく取り乱したな。例えられるのも嫌だったのかい?」

 

「あ、当たり前です。私はアナタの――」

 

「『妻です』ってかい? ふん、ふざけた理由で一緒になった事にキミだって嫌がっていたじゃないか」

 

「っ――そ、それは昔の……」

 

「もう良いから、早いところ出ていってくれ。

何を言われようとリアス達の処分が軽くなることなんて無い。身内贔屓もしないよ」

 

 

 そもそもかつては殺し合った様な仲なんだ。

 それを偶々殺さずに置いたってだけで意味不明な結婚相手にされた挙げ句……チッ、思い出すだけで腹が立つ。

 

 

「ま、また安心院さんという方を考えているのですか?」

 

「だったら何? キミには関係ないだろ?」

 

 

 いっそこの処分大会が終わったら魔王の地位を返還してしまおうか。

 そうなれば僕は自由となり、安心院さんを追えるし、彼女の為じゃあ決してないが、グレイフィアも自由になれるだろうしね。

 ミリキャスは僕が引き取っても良いさ……。

 

 

 まあ、ミリキャスが僕を好いてるとは思えないけどね。

 

 

 

 

 

 サーゼクス・グレモリーの本心は何時だって――それこそ肉親に対してすら無関心。

 故に私との結婚は今でも死ぬほど嫌がっているし、現在もその安心院さんという知らない人に拘り続けている。

 特に先日の堕天使コカビエルの件では、何故かコカビエルに対して嫉妬にも感じるな感情を剥き出しにして暴れており、ますます私には安心院なじみという存在が気になってしまうのだが……。

 

 

「誰なのよ……その女」

 

 

 平行して……かつて私を『見下す』かの如く捻り潰した気にくわないサーゼクス・グレモリーをそこまで拘らせる安心院なじみに、月日が経つに連れて『嫉妬』する様になった。

 

 周りに圧される形で一緒にさせられた当初は隙あらば殺そうとすら思っていたムカつく男だったのに。

 見た事もない女らしき幻影に何時までも拘ってる情けない男だっていうのに……。

 

 ミリキャスが生まれてから私は徐々に――

 

 

「いっそミリキャスにも冷たく接してくれれば本気で嫌いになれたのに……どうしてアナタは――」

 

 

 周りからの圧力でサーゼクスに強烈な媚薬を仕込んで『寝込み』を襲って子を成した時から。

 身籠った子が無事に生まれた時に見てしまったサーゼクスの別の面のせいで私は殺意すら抱けなくなってしまった。

 というのもだ……私に無理矢理襲われてデキた子供だというのに、サーゼクスはミリキャスに対してだけは八つ当たりもせず、いっそ父親らしくちゃんと接しているのだ。

 

 遊んでもあげる。

 勉学も見てあげる。

 

 安心院なじみ以外に興味なしな男が見せる、若干ぶっきらぼうな態度にミリキャスはちゃんと父親として慕っている。

 

 

『……。キミは嫌いだけど、それをミリキャスに八つ当たりするつもりは無い。

だから最低限の親としての責任は果たすよ……チッ』

 

 

 私に寝込みを襲われたのが屈辱なのか、それでも私を殺すことなく生まれた我が子にちゃんと父親らしい真似をしてる――そのせいで私は本気で憎めなくなりつつある……いや憎めなくなり、それと同時に私は初めてこの男を取り巻く安心院なじみなる女に対して嫉妬を覚えた。

 

 

「ミリキャス」

 

「はい! どうかしたのお母さん? お父さんは?」

 

「お父さんは今お仕事で忙しいの。だから――」

 

「うん! ちゃんとお勉強してお父さんに誉めて貰う為に頑張ります!」

 

「偉いわ……ふふ」

 

 

 どうして。

 この子にも冷たくしたら殺意だって甦るのに、アナタはこの子にだけは優しいのか。

 中途半端に優しいから私は――

 

 

 

 

 憎しみは月日を追う事に変質する。

 最初は人質としてサーゼクスに嫁がされたグレイフィアだったが、その殺意は子を成し、子に対するサーゼクスの接し方を見てしまったが故に霞んでしまった。

 

 本心は親だろうが妹だろうが冷徹なのに、無理矢理作らされた我が子だけにはそれを見せない。

 子に罪は無いと厳しくも優しく接する姿にグレイフィアは意外性を感じ、それはやがて『少しでも良いから自分にも……』という気持ちを芽生えさせてしまったのだ。

 

 

「サーゼクス……」

 

 

 そんな気持ちを抱いてしまった。

 あれほど憎んだ男に対して芽生えてしまった気持ちにグレイフィアは戸惑い、そのせいで1度兵藤誠八に心を塗り替えられそうになったが、その経験がグレイフィアの精神をより強固なものにしたのは皮肉というべきか。

 

 

「何? 話なら明日にしてくれない?」

 

 

 体裁上という理由で就寝を共にしているグレイフィアは、一つのベッドにギリギリまで距離を離して不機嫌そうに背を向けて寝ようとしているサーゼクスの名を寂しそうに呼び、めんどくさそうにサーゼクスが返事をする。

 ミリキャスが一人部屋となった事で再び二人きりになった訳だが、やはりサーゼクスはグレイフィアに対して冷たく、一緒に寝るなんて虫酸が走るとまで言い切る。

 

 以前ならそれは此方の台詞だと言い返せたが、今はそれすら出来ず、不機嫌オーラ丸出しのサーゼクスの背を見つめながらグレイフィアは言う。

 

 

「私が憎いですか? 安心院さんという方を追い掛ける弊害となる私が嫌いですか?」

 

「当たり前だろ。

キミさえ居なければ僕は本気であの人を追い掛けられるしね」

 

「…………」

 

「……。で、そんな当たり前の事を聞く為にわざわざ話し掛けた訳? キミ……最近変だよ」

 

 

 背を向け、冷たく言い放つサーゼクス。

 最早何度と無く言われたこの台詞ですら、今のグレイフィアは本気で辛く、そして寂しかった。

 

 

「チッ、コッチはキミとなんか寝たくもないのに……早く寝ろよ」

 

「………………」

 

 

 異常なまでにサーゼクスを拘らせる安心院なじみが憎い。

 数百年もブレさせない程に想われる安心院なじみが羨ましい。

 

 会ったことは無いけど、会ったら一言言ってしまいたい。

 けれどそんな事をすればサーゼクスはうもはも言わずに自分を殺すだろう。

 そしてミリキャスももしかしたら――

 

 だから……だから――

 

 

「ところでサーゼクス。義父様と義母様に言われたのですが……」

 

「何だよ、そんな話なら明日に――――っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………。嫌で嫌で嫌で嫌でゾッとする話ですが、二人目を見たいと仰るお二人の為に身体を張る事にしたわサーゼクス。だから協力しなさい」

 

「な……なんだと……か、身体がっ!? な、何を……!?」

 

 

 グレイフィアは憎悪と愛憎をサーゼクスに向ける。

 ピシリと顔を歪めながら硬直するサーゼクスの身体へと乗り、スッケスケのネグリジェ姿で『にっこり』と微笑むグレイフィアにサーゼクスはミリキャスがデキタ原因であるあの日を思い出し、全力で抵抗しようとするが――動かない。

 

 

「流石……。一滴だけでも脳が壊れる程の媚薬だというのに……」

 

「な、なんだと……ふ、ふざけるな……! どういうつもりで……!?」

 

「こうでもしなければアナタは私を『愛さない』でしょう? だからよ」

 

 

 自分ですら気付けない媚薬を盛られ、全身が発火するのでないかと思うほどに熱くなり、目の前がギラギラする感覚を味わいながら、自分に馬乗りになってるグレイフィアを睨むサーゼクスだが、グレイフィアはただ微笑みながら訳の解らないことを宣うだけだった。

 

 

「な、何が愛するだ……! キミなんぞ僕は眼中に――んむっ!?」

 

「んっ……んんっ……はぁ……憎いわサーゼクス……嫌いだわサーゼクス……! ミリキャスにだけは優しいアナタを見てるとムカついて仕方無いわ。何時までも知らない女の尻を追い回してるアナタにイライラするわ……!」

 

「――!? ―――――!?!?!?」

 

 

 頭が切れたのか? そうとしかサーゼクスには思えない程に蕩けた表情でキスを何度も何度もしてくるグレイフィアに恐怖すら抱き始めたが、盛られた時点でサーゼクスに勝ち目は無く――

 

 

「好きよ……サーゼクス」

 

「!?」

 

 

 初めて……嫌い合ってると思い込んでいた女から好きだと言われ、サーゼクスは惚けたまま自分の胸元に頬を刷り寄せるグレイフィアを見つめ――

 

 

「や、やめ……っ!?」

 

「ふふふ……あはははははは♪」

 

 

 喰われるのであった。

 

 

終わり。

 

 

 

オマケ。

 

 

 野蛮な男。それがかつての戦争で大暴れした堕天使・コカビエルという男に対する印象だった。

 戦いこそが全て、殺し合いこそが生きていることの証等々、画に描いた野蛮人であり堕天したのは当然としか思えない蛮行ばかりで寧ろ嫌いだった。

 

 だからこそ偶然バッタリと会った時は戦ったのだが――

 

 

 

『ふむ……こんなものだな』

 

『ぐっ……』

 

 

 驚くほど呆気なく私は沈められた。

 明らかに戦争の時よりも強くなった男に私は意図も簡単に捻り潰されたのだ。

 

 

『貴様は確か――まあ、良いか。良い修行相手だっだぞ?』

 

『うぅ……』

 

『これで俺はまた強くなった……ふふ、それじゃあな』

 

『ま、待ちなさい……! 何故殺さないのですか……!』

 

『む? 何だ貴様。殺し合いでもしていたつもりなのか? ふむ、だが生憎俺は修行中の身でな。修行が完成するまで無駄な殺生はしないつもりなんだよ』

 

『なんで……アナタらしくも無い……!』

 

『? あぁ、前までなら殺してたかもしれんが、修行が完成する前に強い奴を殺したら試せないだろう? だから殺さんし、悔しいなら俺を殺せるだけ強くなって見せろ元同胞よ』

 

『ぐっ……ぅ……』

 

 

 違う。聞いていない。

 野蛮な男だと思っていたのに、何でそんな笑みを浮かべる。

 何故ちょっとだけ優しいんだ。

 私は認めたくないばかりに、動けない身体のまま彼を睨んでしまうが、彼は――コカビエルはそんな私に何を思ったのか。

 

 

『その目……良いなお前。

ミカエルとは違って強くなれる目だ。クックックッ……気に入った。やはり貴様は殺さん』

 

『うっ、な、何を……!?』

 

 

 笑って倒れている私の頭を嫌味っぽく撫でたのだ。

 そして傷薬の瓶を目の前に置くとコカビエルはニヤリとしながら言った。

 

 

『俺を叩き潰せる自信が付いたら何時でも来い――それじゃあな』

 

 

 せめてものと睨む私を軽く笑って流しながらそれだけを言ったコカビエルは去っていった。

 悪人みたいな顔で……戦いの際はそれが如実に現れて、私を容赦なく叩き潰したコカビエルの雰囲気は戦時中に見た頃と比べたらまるで違った――いや違いすぎた。

 

 私がミカエル様を越えるとまで言い、笑って去った男に私は――

 

 

 

「コカビエルがやってしまったらしい。

ですがどうやら人間の子があのコカビエルを止めたらしく、最悪の自体は免れた様です。

どうもコカビエルもまだ生きてる様ですし、この時期に中々骨が折れる真似をしてくれました」

 

「………………」

 

「取り敢えずはアザゼルにこの事を追求しなければならなくなりましたし、どうしたものか――――って、どうしましたガブリエル?」

 

「ハッ!?

い、いえ……な、何でもありません……何でも……」 

 

 

 強くなった。

 コカビエルに勝つために強くなったつもりだった。

 けれどコカビエルは人間と我等が管理していた聖剣を奪って人間界を危機に陥れた。

 その話を聞いた時は何かの間違いであって欲しいと願い、人間の子供にコカビエルが負けた話も信じられなかった。

 

 いや……それも全部建前だ。

 私は――

 

 

「あー……あのガブリエル? 先程から堕天し掛けてますけど……」

 

「えっ!?」

 

「……。コカビエルが気になりますか?」

 

「なっ!?

あ、あんな野蛮な男が何故出てくるのですか!? 別に私はあの男をどうとも思っていませんし、寧ろ今回の件で討伐すらしてしまおうと――」

 

「…………。あーそうですか。

それならアナタの自室に置いてある夥しい数のコカビエルの写真を処分して貰っても構いませんよね? 正直にコカビエルが絡む時の貴女は怖いというか……」

 

「あ、あれは倒すべき男の顔を忘れないように戒めているだけ! 戒めているだけなのです!!」

 

「…………。それならコカビエルの翼の羽を片時も離さず持ってる理由は―――――いえ、何でもありません」

 

 

 コカビエル……。

 アナタは私が倒す……絶対に。

 アナタのせいで私は何度堕天しかけたか……。

 

 

「全く……厄介事ばかり起こしますね彼は」

 

「ブツブツブツブツ……コカビエル……コカビエル……コカビエル……コカビエル……」

 

 

 

 

終わり。

 




補足

レイヴェルたんとはとっくの昔に済ませてます。
まあ、それ以上は無いですけど。

猫姉妹も本気出すフラグ……かも。

その2
安心院さん信者に幻滅してたけど、意外な側面を見たせいで憎めなくなっていたグレイフィアさん。

え、どっかのストーカーみたいだって? いやいや夫婦だし問題ないよ。


その3
………………。IFを知れば何と無くお察し。
え、これもストーカーっぽい? ま、まぁ……大人だし大丈夫じゃね?


その4
IFからのネタを引っ張った……だけさ。

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