生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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その2
これは次の話と入れ替えで消すかもです。


閑話・敗北を糧に這い上がる堕天使と天使なストーカー

 負けた。

 言い訳はしない……俺は負けたのだ。

 安心院なじみの幻影を背負う人間の小僧に俺は負けたのだ。

 

 

「傷は塞がりはしたが、暫く派手に動けんな」

 

 

 しかし俺は折れない。

 負けてしまおうが何だろうが、俺は決して潰れはしない。

 負けるというのは、『張れなく』なった時である。

 人間に負けた情けない奴だと何も知らん連中達から笑われようが、小悪党と罵られようが構いやしない。

 

 この命がある限り……俺は何度でも這い上がってみせる。

 

 それがあの女に敗北を味会わせ、そして越えて見せると決めた時に抱いた俺の覚悟。

 

 

「フリードよ、調子はどうだ?」

 

「うぃ~

ボスが動けるのに手下の俺っちが寝てるわけ無いだろ? あの悪魔くんからのダメージなんて半日寝てれば余裕で回復だぜ!」

 

「フッ……それは頼もしい。流石だなフリードよ」

 

「なっはっはっはっ! 俺っちもあの野郎はぜってぇぶちのめしてやるぜ!」

 

 

 兵藤一誠とその仲間達よ。

 俺は――俺達は死なんぞ。

 貴様にリベンジし、安心院なじみに勝つまで俺は地獄に堕とされても這い上がってやる。

 

 

「さて、早速だがお前がジョワユーズを覚醒させて到達した白夜騎士の力を見せて貰うか」

 

「イエッサーボス!」

 

 

 

 白夜騎士。

 それはフリード・セルゼンがジョワユーズを受け入れ、そこから覚醒に至った純白の鎧騎士。

 木場祐斗が覚醒に至った銀牙騎士なるものと似ている所が多いこの鎧は神器でも、スキルでも無い――前例が一切無い新たな力だとコカビエルは、召還と共に槍形態へと変化したジョワユーズを振るうその姿を捌きながら考える。

 

 

(考えられる事柄は、安心院なじみが木場という小僧とフリードの二人に人知れず干渉して覚醒させたか……。

いやどちらにせよ……)

 

 

 かつて自分を完膚なきまでに叩き潰した見た目少女の事を考えながら、合気の要領で白夜騎士形態のフリードを投げ伏せるつつ、ニヤリと心の中で笑う。

 

 

「ぐっ!?」

 

「俺もお前の事は言えんが攻撃が単調すぎる。もっと変幻自在さを身に付けろ」

 

「うへー……りょーかいでーす……」

 

 

 フリードは確実にこれからもその力を増す。

 偶々拾った小僧がよもや此処までの進化を遂げてくれた……コカビエルは素直に歓喜を覚えつつフリードにそう告げ、復帰後の『リハビリ』を完了させるのであった。

 

 

「バルパーはお前が殺してしまった。そうで無くとも確実に三大勢力から狙われるだろう」

 

「でっすよねー……。

あんまりにも喧しかったからついバルパーじーさんを殺っちまったんだ。

直ぐに後を追う的な約束も破っちまったし、バルパーじーさんは今頃地獄で俺達を恨んでそうだぜ」

 

 

 一誠達に破れた際に負った傷を癒した後のコカビエルとフリードは人間界の各地を転々としながらその力を磨いていた。

 理由は勿論あの日の夜の借りを利子つきで返すためであり、フリードと同じく一誠との戦いで目にした『状況変化(モードチェンジ)』の一つを引き出せるようになっていたコカビエルは、三大勢力達からすれば『余計な真似をして緊張状態に引き戻した戦犯』であると自覚しているからであるからだ。

 

 傷が癒え、一誠との戦いで更なる領域へと進化した今三大勢力と殺り合っても問題はないが、一誠との戦いで決まっていた約束があるた為、コカビエルは動かない。

 

 

「にしてもボスも随分とパワフルになりましたなー

俺っちの鎧が砕かれんばかりに」

 

「兵藤一誠が使っていた技の一つを覚えてな。『乱神モード』というらしい」

 

 

 約束を守る代わりに獲られる『再戦』の二文字の為、コカビエルとフリードは今よりも更に上を目指して高める――今はそれだけが全てであった。

 

 

「最近は無限の龍神(ウロボロスドラゴン)の所が煩いしな……。更に強くならんとリベンジも儘ならんよ」

 

「あー……確か前にボスを勧誘しようとしてた」

 

「そうだ。

奴等……というか無限の龍神(ウロボロスドラゴン)の目的に興味は無いが、どうも種族関係無く強い力を持つ連中を集めているらしいからな。

正直奴等の敵になった方が色々と捗る」

 

「なーるほど、俺達の強化パッチになって頂くわけだな? ボスも悪よのぉ~!」

 

 

 更なる進化を遂げた堕天使は這い上がり続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 学校に通って授業を受ける。

 …………。何故かは知らんが妙に懐かしい気がしてならないのだが、それはまごう事なく気のせいであり、俺達はコカビエルから死守したこの学舎で今日も各々学園生活に精を出す。

 

 グレモリー3年達とシトリー3年達と兵藤誠八がごっそり『休学』したもんだから、一部の生徒達が騒いだりもしたけど、それは一時の事なので俺達は知らんフリだった。

 

 

「聞いたと思うが、どうも『兄貴。』の裁判とやらに俺達も出席しないとならんらしい……証人としてな」

 

 

 真実は知る者達だけしか知らず、そのまま闇へと葬られる。

 それが奴等への処遇らしく、その裁判を執り行うに当たっては俺達が出て証人とならなければならない。

 その事をあの日の夜、あの場所に居たメンバー――つまり、レイヴェルに始まって白音、黒歌、祐斗、元士郎を生徒会室に召集して確認をすると、全員が予め知っていましたと頷く。

 

 

「やっとさ奴等の下僕悪魔って呪縛から解放されるって話だ。

当然知ってるし、俺はさっさとその日が来いと思ってるぐらいだぜ」

 

「僕は――えっと……うん……同じくかな」

 

 

 特に兵藤誠八により変わり果ててしまったグレモリー3年とシトリー3年の下で苦痛な眷属生活を送っていた元士郎と祐斗は、早いところ人生をリセットしたくて堪らない様子で各々が来るべきその日についての思いを口にする。

 

 

「私はあんまり関係無いしねー

ぶっちゃけるとイッセーの周りをチョロチョロする奴が消えればそれで良いと思ってるにゃん。だってアイツ等全然話とか聞かないし」

 

「…………。元々私は一誠先輩を探すついでに眷属になっただけですから……」

 

「幽閉されようが傷の舐め合いをしてようが知ったこっちゃありませんわね。

所詮、カスに惑わされたカス共ですので」

 

 

 黒歌、白音、レイヴェルもまた各々がどうでも良さげに彼女達について語るので俺も頷く。

 レイヴェルは特に毒舌が凄い……。

 

 

「ま、そうだろうな。

俺だって正直に奴等の未来なぞどうでも良いし、精々死ぬまで裸でプロレスごっこしてようとも俺の関わりの無い所でやるんだったら一向に構わんと思ってる。

だから特に兄貴が多数の女と関係を持った話はハッキリと証人席で言わせて貰おう……。それで大騒ぎになっても俺は知らん」

 

 

 上級悪魔二人……もそうだが、教会所属の紫藤イリナとすらコカビエルとの決戦前にどうのこうのしたとゼノヴィアから聞いた時は、どんだけ常に命の危機を感じてるんだこの男はと呆れたものだ。

 

 というか何度やらかしたのかは知らんが、もし誰かしらが孕んでたらどうなるかぐらい分かるもんだろうに……。

 

 

「全員が孕んでたらどうするつもりなんだろうな……あの兄貴は」

 

「うーん……兵藤くんの性格的に、全員平等に愛するとか言って全員認知でもするとか?」

 

「おいおい、それをマジで言うつもりなら相当の馬鹿だろってか、確実にその子供は将来いじめられるだろ」

 

「子は親を選べないの典型的なパターンだにゃん」

 

「逆にあること無いことを親に吹き込まれて恨んだりしたり……私たちを」

 

「だとしたら確実に灰にしてやりますわ。親もろともね」

 

 

 あの兄貴の将来計画は何だったんだろうか――今更ながら地味に気になる俺達はいつの間にか兄貴談義になっており、その過程で俺はふと思い出したので、学園の生徒じゃないけど此所に居て白音とお茶飲んでる黒歌に、前に歪んだ顔をされつつ言われた事についての内容を話た。

 

「そういえば黒歌よ。

前に兄貴に言われたのだが、どうもあの男はお前がドストライクに好みだったみたいだぞ? 何か俺のせいでどうのこうのと煩かったが……」

 

「え? やめてにゃイッセー

顔だけしか似てない男にそんな事言われても全然嬉しくないし興味もないにゃん」

 

 

 然るに黒歌は大方の予想通り、嫌そうな顔をしながら兄貴には興味無しと言い切る。

 まぁ、複数じゃ生易しい数の女と番になってると知った上で興味あると言われてもリアクションに困るのでちょっとホッとする訳ですが――なんて思ってたら、黒歌が俺をジーっと見てる……はて?

 

 

「どうせならその台詞をイッセーが言って欲しいし―――えへ、イッセーは私の事……タイプじゃない?」

 

 

 にゃん? と縦長に開いた猫目で問う黒歌に俺は何と無く隣に立つレイヴェルの顔色をうかがいつつ答えた。

 

 

「さてな、タイプと言われても解らんよ俺には。

光栄な事にお前と白音は俺を好いているってのは態度で解るけど、応えられるほど俺はご立派な人間じゃねーのさ。

だが強いて言うなら、レイヴェルみたいな子が傍らに居ると一番安心する……昔から一緒だからな」

 

「まあ一誠様ったら。レイヴェルは嬉しいですわ……♪」

 

「む……」

 

「むむ……」

 

 

 そう……そうなんだよ。

 いくら馬鹿な俺でも白音と黒歌が好いているって事ぐらいは分かってる。

 分かってるけど――分かってるんだけど、ね。

 

 

「仮な話だし有り得ないと思ってるけど、もしもレイヴェルがあの男に堕とされたら―――――躊躇なしにこの世自体を『否定』するだろな。

それくらい、俺はレイヴェルが居ないと駄目になる」

 

 

 想像するだけでも脳が焼き切れるんじゃないかと思うほどにおかしくなりそうな程、俺にはレイヴェルが必要だ。

 餓鬼の頃から一緒で、何時だって応援してくれて、スキルを覚醒させる前の弱い頃から認めてくれて、助けてくれた。

 

 

「むむむ……」

 

「むー……」

 

「お、おいおい姉妹揃ってそんな目で見るなよ……。

勿論お前達が堕とされても精神が軽くイッちまうくらいに嫌だと思ってるしさ」

 

「おほほほ! 所詮下品な色仕掛けしか出来ない雌猫さんはその程度ですわ!」

 

 

 二人には悪いけどこれだけは……本気だ。

 

 

「だからその―――」

 

「ふーん……へー? じゃあとある夜に白音と全裸で迫っても絶対に何もしないんだね?」

 

「わかりました。じゃあ今晩にでも試しますので……」

 

「は!?」

 

「待てやコラ。全然懲りてねーじゃねーか雌猫」

 

「えぇ? だってレイヴェルだけが大好きなんでしょう? それなら私と白音が迫っても何も無いもんねー? おっぱいでパフパフしてあげても無反応なんでしょ~?」

 

「全裸で先輩に密着して、意味深に身体をさわさわとまさぐっても無反応ですよね? だってレイヴェルさんだけしか好きじゃないんだから」

 

 

 等と拗ねた様子で刺激的な事を宣う二人に俺は結構な身の危険を感じた。

 無反応……スキル使えば何とかなるけど、でも使ったらそれは反応してしまったという事であって……ど、どうしよう……黒歌と白音の割りと本気な態度をなまじ知ってるせいなのか、若干期待してしまってる最低な俺がいる……。

 

 

「おおっと一誠くんが地雷を踏みましたー」

 

「ごめん、僕と匙くんは頑張ってとしか……」

 

「………………。うぬ……」

 

 

 押し入れを改造して鍵付きにしようか……本気で考える裁判前の一時であった。

 

 

 

 

 大天使・ガブリエル。

 天界一の美女であり、ファンは多くて人柄も良い――――

 

 

「コカビエル……」

 

 

 のだが。

 彼女は天使にあるまじき感情を、よりにもよって堕ちた天使である男に年々悶々と募らせていた。

 

 

「これでアナタにリベンジする大義名分が出来ました……ふふ、ふふふふふ♪」

 

 

 完膚なきまでに叩き潰された挙げ句に見逃され、あまつさえ誉められた。

 戦闘狂の堕ちた天使の男によって植え付けられた初めてでちょっとくすぐったい感情は、ガブリエルの内面を変化させるのに十二分であり、敵を知る為の処置だと言い張っている彼女の部屋の壁には、隙間一つすら存在しない程にビッチリとコカビエルの――――アングル的に盗撮としか思えない大量の写真が貼り付けられていた。

 

 

「見つけ出して倒す……倒して……ふふっ、うふふふふふ♪」

 

 

 常人……いや上司のミカエルが手違いで見てしまった時ですらドン引きするガブリエルのプライベートルーム。

 ベッドには自作したデフォルメコカビエル人形と等身大抱き枕。

 

 

「どうしましょう……ドキドキしてきました……!」

 

 

 とにかくコカビエルにまつわる物だらけのこの部屋でガブリエルは、先日そのコカビエルが起こした事件により漸く訪れたチャンスを前に一人笑みを溢しながら、自作のコカビエルクッションを抱き締めている。

 

 

「私を生かした事を後悔させて見せます……。アナタに勝ち、そのまま縛り付けて身動きが取れなくなったら……ふふ、うふ、うふふふふふ………あは♪」

 

 

 純白の翼が灰色に点滅するのは何時もの事。

 スートハートの大天使のイメージぶち壊れ……。

 

 

「アナタなんて大っ嫌いよコカビエル……うふふ❤」

 

 

 けれど最強の天使として君臨する。

 ガブリエルという美女はそんな存在であった。

 

 

 

 ガブリエル

 

 所属……天界陣営

 

 備考…………コカビエルとの出会って敗北を味合わされた事で積み重ね、そして覚醒した現天界最強の天使――超越者。

 

 

「コカビエルなんて嫌い……嫌い、嫌い、嫌い❤ うふふふ♪」

 

 

 ――――毎日が堕天寸前のストーカー

 

 

そして……。

 

 

「元士郎くん……。あはは、元士郎くんのお人形がやっとできた……。えへへ……本物の元士郎くんが傍に来てくれるまでの繋ぎだけど――」

 

 

 冥界のとある魔王もまた……ストーカー予備軍だった。

 妹の事を好いていた兵士の少年のヤサグレっぷりが放っておけず、自分に対して対等な態度を示す年下の男の子に――

 

 

「写真と髪の毛とか……出来れば血なんか欲しいなぁ……えへへへへへへ♪」

 

 

 冥界魔王・セラフォルーレヴィアタン。

 ヤサグレ男の子匙元士郎の態度にほぼ無かった母性をコチョコチョされた結果――――経験不足が災いしてストーカー予備軍となる。

 

 

三大勢力裁判編へと続く 




補足

コカビーが安心院さんによって覚醒したように、ガブリーさんもコカビーによって覚醒しました。

…………ストーカーのおまけ付きで。


その2
魔王は基本的にストーカー
だって彼も安心院さんストーカーだし仕方ないね

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