単なる蛇足です。
くだらねーオマケを追加
聖剣騒動。
この事件が僕にとってのターニングポイントだった。
直接その手で復讐を遂げた訳じゃないけど、あの日殺された皆の心は銀の鎧として――魂として僕の傍に帰って来た。
それだけでも――声を聞けただけでも僕は救われ、そして力を惜しみ無く貸してくれた一誠くん達の存在によって自分の道を歩く決心がつけた。
真の銀牙騎士となり、今度は僕が一誠くん達の恩に報いる時……。
そして――――
「はは……は……予想通りだ。
あまりにも知りすぎたせいで教会を追い出されてしまったよ」
奇妙な縁となり、一誠くん達と同じように力を貸してくれた彼女にも恩を――絶対に返す。
「お前の生き様に興味がある……だから見届けさせて貰うぞ木場祐斗よ」
「……。うん、僕なんかで良ければ」
それが僕の生きる意味。
ゼノヴィアがさん戻って来た!
と、本人は微妙に自覚をしていないのだろうが、かなりのハイテンションで祐斗から聞かされた俺達は、取り敢えず彼女を迎えて聖剣騒動の際に集まっていた喫茶店にやって来ていた。
「――――――と、いうわけだ。私は教会を追放され、イリナは……」
「まさかとは思うが消されたのか……?」
「違う。兵藤誠八達の元に送るそうだ。
そして近々行われる裁判で一緒に……と」
帰還した教会での話をするゼノヴィアの表情は終始暗かった。
当たり前だ。己がずっと依存してきたモノから用無しとばかりに切り捨てられたのだ。
俺や悪魔であるレイヴェル……そして教会との関わりが無い元士郎や黒歌や白音とは比べ物にならないショックがあるだろう。
ましてや同僚までもとなればな。
「そうか……。
どうも裁判とやらは三大勢力トップの集まりの際一緒に行うとの事だが、どうやらサーゼクス・グレモリーは本気で兄貴達を潰してしまうつもりらしい。
ま、どうでも良いことだしお前が無事に戻ってこれたのには俺達は安心だ」
とはいえ『踏み込んではならない領域』に侵入したのはゼノヴィアでは無くて紫藤イリナ本人の意思。
それが例え兄貴の洗脳による結果だとしても本人が決めた道にわざわざ口を挟むほど不躾では無い。
確かに俺の1/2のスキルである
だがしかし、俺にとってな過ぎ去った過去の思い出と、どう頑張ってもどうとも思えない赤の他人だ。
故に間に挟んで余計な真似は絶対にしない。
多少の同情はしてやらんこともないが……所詮そこまで。
「しっかしなぁ……。洗脳されてると解っても何にもする気になれないのは、やはり俺自身が彼女達に無関心が故か……」
「何とかってお前な……。
寧ろ『助けるぞ!』なんて言ったらドン引きするわ。アイツ等揃いも揃ってお前のせいでとか思ってるんだぜ?」
「恩を仇で返すに決まってますわ」
「んー? いやほら……なじみなら平等にある程度のチャンスでも与えるかもしれねーと思うと、やっぱし俺は悪平等にはなれねーなーって」
「それは……それを言われたら私だって分身の資格はございませんよ」
俺の事を良い奴だと思ってる奴は皆勘違いしてるがそれは間違いだよ。
俺の性格は正直……悪いんだぜ?
「それよりだ、祐斗と白音と元士郎……そしてゼノヴィアよ。
お前達の身は一時的にフェニックス家預かりになる様にシュラウドのオッサンとエシルねーさん――つまりレイヴェルの両親に拝み倒して来たのだが……」
だって俺……基本身内贔屓だしね。
だから俺は悪平等にはなれんのさ……平等的じゃないから。
「「「えっ!?」」」
「レイヴェルさんの……?」
故に奴等が勝手に朽ち果てようが知らんし助けもしない。
ほらな? 俺って性格が悪いだろ? 黒神めだかにはなれないのさ。
「な、何だその話しは!? 一体何時――」
「ゼノヴィアさんが1度帰還している間ですわ。
このまま自由になっても、各々がお持ちの『力』が原因で狙われるかもしれませんので……勝手ながら対処をさせて頂きました」
「すまん。
特にゼノヴィアは悪魔にそんな真似をされて我慢ならんと思うが、自立するまで我慢して欲しいというのが本音だ」
ゼノヴィアが此方に無事に戻ってきた……。
この瞬間俺達で彼女を立場的にも物理的にも守れる事になる。
だから祐斗や元士郎にも黙って三人の身の安全の保証をより確実にする為にシュラウドのおっさんとエシルねーさんに頼んだのだ。白音はリアクション的にそんな驚いてないけど。
結果はアッサリ了承。近々行われる裁判にて正式に三人の身柄はサーゼクス・グレモリーとセラフォルー・レヴィアタンの後ろ楯+フェニックス家というガードにガードを固めた布陣が完成する。
「友達を失いたくないって理由の俺のエゴだ……。
生活を縛る真似は決してしない……だから俺に友達であるお前達を守らせてくれ」
「「「………」」」
最初はレイヴェルで自覚した。
次は好意を寄せてくれる白音と黒歌で自覚した。
最後は自分なんかと仲良くしてくれる祐斗や元士郎やゼノヴィアで自覚した。
俺は大切となった人達を失いたくないからこそ……強引なまでに引き留めようとしてしまう。
それが俺の致命的な弱点。
致命的な欠陥。
「エゴでお前達を縛り付ける点では、俺も兄貴様と変わらないのかもな」
そんな鬱陶しい性格なんだからこそ俺は駄目人間なんだろう。
「いや寧ろそこまでして貰える事に俺は驚きと、逆に良いのかよって遠慮が……」
「う、うん……僕なんて貰ってばかりで何の恩返しもしてないし……」
「私なんてそもそも元教会の人間だぞ……」
「一誠様の悪い癖です。一誠様と付き合う上でのデメリットとして認識なさいな。
言っておきますけど、一誠様は1度『身内』と認識した相手には死ぬほど甘やかしますわよ」
正直レイヴェルのフォローが無かったら只の気持ち悪い男扱いされても仕方無いくらいだ。
「にゃ!? 私は放置プレイな方向なの!?」
「いや当然お前もだよ黒歌。
へんっ……ったく、我ながら気色悪い性格してると思うぜ」
なぁ、やっぱり俺はお前の後継者の資格なんてないよ……なじみ。
友達。
私はイッセーにそう言われた。
聖剣騒動の手伝いをしてくれた男に、教会を追放された私に対してまでそこまでしてくれただなんて……。
「良いのか……? 私までそんな……」
「言っただろ? 俺は友達に利用されるのであれば喜んで利用されてやるってよ。
正直な……祐斗とお前を引き離したく無いというか、行く末を見たいんだよ」
「なっ……!?」
「え? 僕とゼノヴィアさん……?」
正直、お先真っ暗な私にとっては生きる為の糸口。
イッセーのこのニヤニヤした表情を見るに、何か察しられてしまってちょっとアレだが、既に神が――主が存在しない現実を知ってしまった今、私の生きる意味は隣でキョトンとしている金髪の男の生き様をもっと近くで見る事。
『銀牙騎士に――僕はなる!!』
今でも鮮明に思い出す。
聖と魔を取り込んだ剣へと昇華させ、その身に待とう銀狼の鎧。
目の前の男が悪魔だという現実なんてどうでも良くなる程美しく、そして力強い姿。
『僕はもう足手まといにはならない!
ゼノヴィアさんが一緒に戦って守ってくれたからこそ、今度は僕が守るんだ!』
『クヒャヒャヒャヒャ!! 相変わらずお熱いコメントですねぇぇぇ!!!!』
白夜騎士とやらになったフリード・セルゼンと互角に渡り合っている最中に耳にしたこの台詞は私にとって初めてで……そして心地よくてちょっと恥ずかしかったけど、嬉しいと思った。
主への信仰で男なんて興味もなかったのに――聖剣奪還の仕事に於ける一時的な関係の筈だったのに。
祐斗……そしてその仲間達は皆私に優しかった。
「祐斗。
だからお前はゼノヴィアの傍に居てやれ。
剣を扱う者同士気も合うだろう? いやもう合ってるか」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ!? だ、だ、だってゼノヴィアさんは女性だし……し、白音さんと黒歌さんと一緒の方が……」
「あーごめんなさい祐斗先輩。私と姉様は明日にでも一誠先輩の所へ厄介になりますので……」
「残念だけど無理かにゃ~?」
「はい!? ちょ、ちょっと待て二人とも、俺はその事実が初耳――」
「オイゴラ雌猫共。大概にしないと焼き尽くすぞ」
「お、おいレイヴェル……! 口調がマジギレしたエシルねーさんになってるから……!」
狡いんだよ。
皆して悪魔と敵対してた私に優しくして。
お前達が――祐斗がそんなに優しくするから私は……。
「解った。あの日の夜言った通り、私は祐斗に養って貰おうか」
お前達の手を取ってしまうんだ。
「あ、は、はい……」
なぁイリナよ。
お前は私を恨むだろう、イッセーに与した私を憎むだろう。
…………。どうしてお前は洗脳されてしまったんだ。
人も悪魔も……感情のある生物は受け入れがたい現実から目を逸らしたくなる。
兵藤一誠によって全てを壊されたと思い込む紫藤イリナ――そして兵藤誠八達にとってはまさに今がその時でだった。
「………………」
悪魔とまぐわった……。
その事実はイリナを異端者として扱われるのに十二分な素材であり、ただ追放されたゼノヴィアと違って自由すら束縛された彼女は暗い底穴の牢獄に居た。
「セーヤくん……セーヤ……くん……」
虚ろな瞳でただ想い人の名を呟きながら爪を噛み続ける姿は家族ですら目を覆うような有り様であり、近々行われる裁判でイリナは確実なる罰を受ける。
「ふふ……ふふふ……助けてくれる……セーヤくんがきっと……」
だが今の彼女にはその現実を認識できず、ただただ冥界の牢獄で捕らえられている誠八がこの暗い底穴から救い出して助けてくれると本気で信じている。
「あの痴漢男……許さない……それにアッサリ下ったゼノヴィアも何もかも許さない……!」
そして反対に抱くは、一誠達への殺意。
記憶をねじ曲げられた事実を知らず、ただひたすらに幼き頃しつこく憑き纏ってきたと思い込む一誠に対しての憎しみを増大させる。
最早誠八しか考えられず、再会前には確かにあった神への信仰心と使命感すらねじ曲げられた少女がそこには在った。
リアスとソーナは怯えていた。
そして平行して恨みを募らせていた。
あの日の夜……全てを壊した裏切り者――そして示唆したと思い込んでいる兵藤一誠を。
『何故俺がどうでも良い貴様等の――兄貴の傷を治すんだ? コカビエルを止める筈の貴様等がそのザマだから来ただけであって貴様等を助けに来た訳じゃないぞ』
『まあ、兄貴の手足にしても義手とか義足で何とかすれば良いじゃないか。
不能になった訳じゃないし、夜の裸プロレスごっこぐらいなら現役続行で出来るんじゃないか?』
見下した目。
見下した言い方。
まるで自分達をゴミ扱いするような言動と化け物じみた力。
何もかもが見下されていたという現実はリアスとソーナ――そして各々の下僕達を憎悪させる材料だった。
「…………。セーヤと逃げる。それしかもう道は無いわ」
「はい……もう私達にはセーヤくんしか頼れません。異常なまでに兵藤一誠に姉やサーゼクス様が味方してしまっている今……逃げて逃げて誰も来ない場所でセーヤくんと永遠を――」
『…………』
故に懲りない。
力を封印されているにも拘わらず、使命を放置して一人の男を巡って争った現実を見て見ぬふりをした少女達はただ一人の男に狂い――そして計画する。
「セーヤさえ居れば何とかなるわ……絶対に」
その心が塗り潰されたものであり……その心のメッキがもし剥がれた場合の訪れる末路を知らずに……。
「あーぁ……。バカは死ななきゃ直らないらしい」
紅髪の魔王に丸聞こえな事も知らずに……。
サーゼクス・ルシファーは絶賛超不機嫌だった。
何故か? それは妹達を放置しすぎて余計な真似をしてくれたせいで色々と狂いが招じてしまった挙げ句、この期に及んで無駄な悪あがきをしようとしてるのを聞いたから。
そしてもう一つというか、これが本領なのだが、二度に渡って嫌いな女に一服盛られた挙げ句情けなく喰われたからだ。
しかもあまつさえ『愛してる』とまで言われたせいでイライラ速度はマッハだった。
「……。僕の半径数千キロは近付くなと言いたいくらいだよ」
「それは悔しいから? 私と事を行ってしまったから?」
「あぁそうさ。
出来ることなら今すぐにでもバラバラにして畜生の餌にしてやりたいさ……!」
屈辱と憤怒。
サーゼクスはその感情をギリギリで押さえ込みながら、シレッと己の傍らで微笑む大嫌いな女を睨み付けていた。
「ミリキャスが生まれてなかったら本気で殺してた。
だがあの子にはキミみたいなのでも母親が必要……だからこうして必死こいて我慢してるんだ。
まったく、我ながらなんと我慢強いんだと褒め称えてやりたいよ」
「そうですか……。ですがお言葉を返すようですがサーゼクス、私はアナタにズタズタにされる事すら今は受け入れられる」
サーゼクスにとっては腸が煮えくり返るあの夜を経て吹っ切れたのか、それとも頭がイカれたのか。
銀髪が美しいグレイフィアは、そんなサーゼクスの殺意溢れる形相を向けられても涼しげに微笑みながら宣う。
「アナタが私をズタズタにする間は安心院なじみという女があなたの頭から一瞬でも消え、そして私にのみ意識が向けられる。
ふふ……ふふふ……アナタが悪いのよサーゼクス? ミリキャスに優しい姿を見せたアナタのせいで私は狂ったのだから……」
安心院なじみなる女と思われる人物しか見てない男が見せた小さな優しさ。
それがグレイフィアの心を変え……狂わせた。
殺されることすら『愛情』と平然と解釈する程に……。
「貴様……!
だったらお望み通り今すぐにでも――」
それはサーゼクスにとって邪魔でしかないものであり、グレイフィアの挑発とも取れる言動に我を忘れて殺そうと殺意を剥き出しにしたが……
「お父様! お母様!」
その殺意は血の繋がった我が子の純粋さによって即座に霧散した。
「っ!? ど、どうしたんだいミリキャス、確か今は勉強中だろう?」
安心院なじみに狂気の沙汰ともいえる拘りを見せるサーゼクスが唯一見せる隙。
それは血の繋がった我が子であるミリキャス・グレモリーだった。
嫌いな女との間に作ってしまったとはいえ、我が子である事には変わりなく、そして罪なんてある筈もない。
そう考えていたサーゼクスはミリキャスだけには親らしく接し、不器用ながらも偽り無き愛情を注いできた。
故にミリキャスは父親であるサーゼクスを心の底から慕っており、母親であるグレイフィアを常に邪魔に思っているとは毛ほどにも思っていなかった。
故にだ――
「お父様に出された課題は全部終わらせました! だから……お母様と三人で一緒に遊ぶ約束を!」
ミリキャスは何の打算もなく親子三人での時間が今の人生での一番の宝物であり、その為ならどんな試練すら乗り越える芯の強さを持つ子供だった。
「な、何だって!? な、何だその約束は……!?」
然るに、只今ミリキャスがニコニコして話した事にサーゼクスは真面目に狼狽えつつ、ミリキャスにバレない程度に同じく『ニコニコ』しているグレイフィアを横目で睨んだ。
「偉いわミリキャス。それなら今度は私達が約束を守る番……ね、ア・ナ・タ♪」
「ぎ……ぎぃ……!(こ、こ、の、アマァ~!!)」
十中八九。間違いなく。100%
グレイフィアが勝手にミリキャスと約束したんだと、わざとらしくウィンクまでしてきたのを見たサーゼクスは怒りで城ごと――いや冥界ごと滅ぼさんばかりの憤怒の炎を内面に孕み、燃やした。
「お父様……?」
「うっ……!?」
しかしミリキャスが見ている。
安心院なじみを手に入れる為には邪魔な要因だと心で理解はしても、何故か非情になれない自分の子供の手前下手な真似が出来ないサーゼクスは、全力で憤怒を押さえ込み、全力で作り笑顔を見せながら――
「ぐっ……ぅ……!
そ、そうか……わ、わかったよ。ミリキャスが!!! 頑張った事だし約束通り三人で外に遊びに行こう……か……っ!」
「本当ですか!? やったー!!」
「あ、あぁ……だ、だから部屋に戻って準備をしなさい」
「はい!」
子を――憎しみが沸けない我が子の為にサーゼクスは折れた。
妹や親ですら無関心だったサーゼクスが……だ。
「うふふ……」
「……。(この女……ミリキャスを利用したな。後で絶対に泣かす)」
心の底からの笑顔を浮かべるグレイフィアに対して、後で地獄すら生温い報復を誓うのを忘れずに。
ちなみにミリキャスは只今リアス達の事を裁判の判決が下るまで意図的に『忘れさせられて』いたりする。
狂った。
今の私にはその言葉がピッタリなのかもしれない。
あれ程大嫌いであったサーゼクス相手に私は今更ながら気を引こうと必死になっている。
会えもしない女の尻を追い掛けてるだけの男相手に私は憎悪を含めた感情全てを向けてほしいと本気で思っている。
「…………。やってくれたね」
「怒りますか? いや当然憎悪しますよね? 貴方は私を邪魔に思っているのだから」
準備をさせる為にミリキャスを退室させた後、早速とばかりに殺意を剥き出しにするサーゼクスのその表情が堪らなく思う。
「あぁ、キミを殺してやりたいと怒りで狂いそうになったのは多分これが初めてだよ。
本当にキミは僕の邪魔になる真似をする事に関してだけは天才的だ」
その皮肉の言葉ですら誉め言葉に聞こえてしまう。
「お褒めに預かりに光栄よサーゼクス。どうするの? 八つ裂きにする? 畜生の餌にしてしまう? ふふふ……私は構わないわよ?」
「……………ぐっ」
狂ってる。
ええ……狂ってるわよ。
アナタのせいで……嫌いな筈のアナタのその態度のせいで私はおかしくなったわよ。
安心院なじみに向けてるその心をどんな理由、どんな感情でも良いから私が独り占めしてやりたい。
安心院なじみを恨めしくすら思うほど、今更になってアナタが欲しい。
リアスお嬢さま……兵藤誠八……? あぁ、うん……本人同士の納得であの様な末路になったのならそれで良いんじゃないかしら?
「そんな目で見られると……ふふ、昨晩アナタから貰った『証』が私のお腹の中で――」
「うぉぉぉぉっ!!!! それ以上言うなぁぁぁっ! 僕は安心院さん一筋なんだよぉぉぉっ!!!!」
今の私はサーゼクスとミリキャス……この二人さえ居れば後は全てがどうでも良くなったんだもの。
「こんな女に……こんな女に……大嫌いだ!!」
「あらそう……でも私はアナタが大好きよ。その狼狽えた表情を見るだけで此所が締め付けられるように切なく――」
「黙れ!!! 安心院さんに言って欲しい台詞をお前が言うな!!!」
憎しみはほんの少しの切っ掛けで盲目を越えた愛へと反転する。
様々な理由で。
様々な状況でそれは訪れる。
「あ、ギャーくんの事を忘れてました」
「ああっ!? ぼ、僕も忘れてた!」
「何だ二人して唐突に……? ギャーくんって何の事だ?」
愛情は各々。
「お、俺の携帯が……ってメール? どれどれ―――――ぶふぉ!?」
「わっ!? 急にどうしたにゃ匙!」
「ふぅ……咄嗟に避けられて良かった良かった」
「って……何携帯見ながら固まってらしっしゃるのかしら?」
「い、いいいや……な、何でもない……迷惑メールだった。(あ、あの魔王……ま、また自撮りの写真なんか送って来やがった……! ほ、ほぼ全裸の……)」
皆違って皆良い……。
「良いですかガブリエル。
会談の際はコカビエルの名前を聞いても平静で居てくださいね」
「べ、別にコカビエルなんて……」
「いやもう天界中にバレてますからね? というかアナタは今現在のコカビエルの様子を把握してますよね?」
「し、知りません! はぐれ悪魔祓いの子供と楽しそうにしてる写真なんて撮ってませんしその子を羨ましいとか思ってません!
シャワーを浴びてる姿なんて映像として残し、鑑賞する度に邪な気分にもなってません!! 野蛮なコカビエルなんか嫌いです!!!」
「…………………。あ、そうですかハイ。(コカビエル……アナタはガブリエルに思いきり居場所がバレてる事を認識してるのですか?)」
「バックショイ! チキショイ!!」
「んー? 風邪かよボス?」
「ズズッ……いや、多分違う。(そういえば『最近に』なって感じるようになった謎の視線は今日は無いな。
殺気も無いし敢えて放置してたが……あれは何だったんだ?)」
「あ、ボス! この店の卵が特売やってて安いぜ!」
「なに!? しかもお一人様2パックまでだと? 当然行くぞフリード! 戦いの時間だ!!」
「イエッサー!!」
騒動まで……残り2日。
補足
銀牙騎士について。
聖と魔が合わさって最強に見える――じゃなくて聖魔剣へと進化させた祐斗にやっと届いた欠けがえのない仲間達の声により覚醒させた『この世には存在しない謎の物質で出来た銀の鎧』
文字通り木場きゅんの想いによってその強さは神をも越える可能性を大いに秘めている。
が、召喚するにも木場きゅん本人の覚悟が必要。
その2
グレイフィアさんはある意味で覚醒しました。
ある意味で。
その3
ギャーくんェ……
感想返しは後でします。
ガブリエルさんのスニーキングミッションは一誠達が生まれるもっと前から実は行われており、一誠との戦いで進化した事によってやっとコカビエルさん自身が勘づき始めた―――――レベルのヤバさはあります。
まあ、それを知った所でコカビエルさんは……
『何だと……最近になってやっと気付いたあの気配は貴様だったのか! ふふ、フハハハハハ!!! やはり貴様を生かしておいて正解だったぞガブリエル!
よし、それなら俺と一発ヤろう(バトル)じゃないか!!! ぬはははは!!』
『はぅ……!? ヤ、ヤる!?(堕天しちゃう的な意味で) こ、こんな所で……というかお外で!? そ、そそそそそんな……で、でもアナタがそれを望なら……』
と、物凄い滅茶苦茶なる勘違い展開になる……かは知らない。