展開をやり直しました。
言い訳するなら、IFでやさぐれだなんだのイッセーシリーズをやり過ぎて本編の性格を半分忘れてました。
そういや、こんなんじゃねーよなと感想でハッ!? っとね……。
ギャスパーきゅんは……
『ギャーくんの事を忘れていました』
そう白音が本当に思い出したかの様に呟き、続いて祐斗もハッとしたかの様に焦りだしたが、ギャーくんとは何だ? としか思えない俺達は気になって聞いてみた所…………。
「ギャスパー・ヴラディという名は確かに駒王学園生徒名簿に名前が載っていたと記憶している。
なるほど……単なる外国人では無くてグレモリー3年の下僕悪魔だった訳か」
「はい……。ですがちょっと色々とありまして」
「? どういう事でしょうか白音さん?」
「ええっと、有り体に言えば……色々な事情ががんじがらめになって『引きこもり』というか『不登校』というか……」
ギャスパー・ヴラディ……いやヴラディ1年を今まで忘れていたせいなのか、実に罰の悪そうな顔で人と成りを説明する白音と祐斗の言葉に、ウラディ1年自体を知らない俺達は黙って注文したビッグジャンボパフェ一つに対して全員でスプーンを入れながら聞く。
「元ハーフ
「吸血鬼は私もよく滅してたよ。今となってはそんな使命感も全部騙されてたがな……フッ……」
「ゼ、ゼノヴィアさん……」
吸血鬼は知ってるけど見たことは無く、イマイチピンと来ない。
詳しそうな元悪魔祓いのゼノヴィアは何度か相対した事があるらしいのだが、教会の現実を思い出したのか急に塞ぎ混んでしまい、祐斗が慌てて彼女のメンタルを回復させようと必死になっている。
「どうも彼女の下には、どうであれ素質の高い者が集まりやすいようで……」
それもまた運命力の高さなのか、ポツリと呟いたレイヴェルの言葉に俺も内心同意してしまう。
聞けば聞くほどにウラディ1年はかなり『込み合った事情』を持ち、それが故に今まで表に出られなかった話にも納得してしまう。
いや……グレモリー3年の実力不足故に押し込んだというべきなのか――まあ、聞いてみれば本人も引きこもり気質故に文句なんて無かったらしいが…………。
「……! おいちょっと待とうぜ、リアス・グレモリーの僧侶だっつーのはわかったけどよ、肝心の王様が只今冥界の独房にぶちこまれた事をソイツは知ってるのか?」
パクパクとパフェを食べていた元士郎がこれまた急にハッとしながら白音と祐斗に質問する。
「どう……なんでしょうか?」
「うーん……多分知らないと思うけど、どうなんだろう。
悪魔契約の仕事をオンライン経由で任されてるから、もしかしたら契約をしても悪魔が来ないってクレームメールで不審には思ってるかも……」
元士郎の質問に二人は微妙な顔付きで何とも言えないと答える。
だが元士郎は聞きたかったのはそこでは無かったらしい。
「いや違う、そのギャスパーって引きこもり吸血鬼に今まで誰が生活用品を補充してやってたんだっつー話だよ」
「それはリアス元部長――あ」
「もしくはグレモリー家――――ハッ!?」
元士郎に言われてまたもハッとする二人。
今度は普通に『マズイ』って表情だった……というか聞いてた俺達も急に不安になってきた。
「供給が断たれて餓死してるかもって事かにゃ?」
そしてその不安を代表して黒歌が声に出した瞬間……。
「マスターよ、お釣りは取っといてくれ!」
「餓鬼がナマ言ってんじゃねーや。
余りの分は次回はタダで食わせてやる」
全員で一気にパフェを胃の中に押し込み、全員分の代金を俺が出し、全員が無言で席を立ち喫茶店を出て、全員が無言で歩き出す。
「………」
「………」
「……………」
「…………」
「………」
「………」
「…………にゃ」
歩くスピードは初めはゆっくりだった。
しかし全員の考えていた事が一致しているせいか、やがて早歩きとなり――
「い、急ぐぞ皆! ヴラディ1年は何処に居る!?」
「学園の旧校舎です!」
「ま、まだ断定は出来ないけど、僕は物凄い不安だよ一誠くん!」
「チッ! 開けたら衰弱死した遺体がございましたなんてオチだったら最悪だぜ!!」
「いくら私でも同情してしまうぞそんなの!」
「まったくもう! 最後まで厄介事ばかり残してあの方々は!!」
「こっちが近道だにゃ!」
よく街を気儘に歩き回っている黒歌を先頭に全員が全員でひた走る。
すれ違う一般の方々は俺達の形相にビックリするけど、今はそれすら気にも出来ず走り続けて学園に到着。
もはや誰も居ないと言っても良い旧校舎へと入り、白音と祐斗に案内される形で『KEEP OUT』なんてわっかりやすいテープだらけの扉の前まで到着したのだが……。
「いでっ!?」
とにかく安否が知りたいと開けようと元士郎が扉に触れた瞬間、何かに拒絶されるかの様に元士郎の手がバチン!という音と共に弾かれた。
「大丈夫ですか匙さん?」
「いってて! と、扉に触れようとしたら電気が走ったみたいに……」
「恐らく術式だろう。封印していると言っていたしな」
手が若干焦げたのか、掌を涙目になってふーふーする元士郎にレイヴェルが即座に用意した薬を塗りたくり、ゼノヴィアが冷静に術式を解析しようとする。
だが……意外にも短気な俺は待ってられなかったので……。
「下がれ三人とも! やるぞ白音!」
「はい!」
術式なんぞ知らん! とばかりにゼノヴィアと元士郎とレイヴェルを下がらせ、白音と並んで拳を握り締めた俺は……。
「はいせーの、けんけんぱ」
「けんけんぱ」
「「拳波、拳波……」」
「「はい拳々波ァッ!!!」」
術式ごと扉をぶち破った。
白音に教えた一種の技を一緒にぶちかましてね。
「やったな白音!」
「はい、何とかなりました」
「おい、物理で術式が壊されたぞ……。それもあっさりと」
「ありゃー……白音が見事なまでの物理アタッカー化してるにゃん……流石戦車」
黒神めだかの前任者だったとなじみから教えられたとある生徒会長の技を白音に教えてみたんだが、流石俺と同じ物理アタッカーだ。
ビックリなレベルの飲み込みの早さで俺は嬉しくて仕方ない。
数人からドン引きされてる気がしないでも無いけど、扉を何とかする為には時には強引に行かなければならんのだよ……わかる?
「ぴぃ!?!? な、何ですかぁぁぁ!?」
さて、取り敢えず邪魔な扉をぶち壊して中に入ってみた訳だが、第一印象はやはり『暗い』であり、奥に入ってみれば、死人みたいな顔色をしながら部屋の隅でガタガタと震えている者が一人。
「な、だ、だ、誰ですかアナタ達は!?」
「……………。あれがギャスパー・ヴラディ……なのか?」
「はい、間違いないです」
「良かった元気そうで……」
薄い金髪。
そして赤い瞳をこれでもかと潤ませながら突然すぎる訪問者である俺達に完璧に怯えている駒王学園の女子制服に身を包むこの者こそがギャスパー・ヴラディらしく、オーバーリアクションをしている辺り、衰弱している様子は無かった。
どうやらグレモリー家からの生活用品供給はストップされた訳では無かったらしく、カタカタカタカタカタカタと震えているウラディ1年の姿に取り敢えずホッとしつつ、見知った顔を出して落ち着かせようと白音と祐斗を前に出す。
「あ、こ、小猫ちゃんと祐斗さん……! こ、こ、こここここれはなんの騒ぎなんですかぁ……?」
「久し振りギャーくん」
「……。その様子だと知らないみたいだね?」
「な、何の事ですか……?」
祐斗と白音の姿を見た途端、少しだけ落ち着いた様で、俺達のせいとはいえあの耳を塞ぎたくなる声が止んでくれて助かったと、後ろで俺達はホッとしながら見守る。
「女かよ。よくあの性欲バカの魔の手から逃れられたな」
その際元士郎が何抜き無しにヴラディ1年の姿を見てボソリと呟いたのを聞いて俺は頷いてしまう。
確かに……知識とやらがある兄貴が見逃したのは何故なんだろうか……。
単純に趣味じゃなかったからなのか……それとも――――――
「あの、つかぬところを聞くが、ヴラディ1年の性別は女で間違いないよな?」
「あ、いえ、ギャーくんは――」
「ひぃ!? こ、この人怖いです!」
本当にまさかだとは思うが、疑念が抱かれた以上は知りたいと思う訳で、三人の会話に割って入る形で聞いてみようと口を挟んだ途端、白音の答える声に被せてウラディ1年が俺を指差しながら思いきり怖いと言ってきた。
「怖い……のか? 俺は」
「まあ、いきなり扉をぶち破る真似をされればそうもなるだろう」
別に他人に怖いと言われて傷付く程繊細じゃないのだが、こうもあからさまな態度で言われるとちょっとアレというか……ゼノヴィアに思いきりダメ出しされてしまった。
いや確かにぶち破ったのは事実だが、それは急を要したからというか……もう良いや。
「怖いとよレイヴェル…………あははは、もうお家帰る。」
「だ、大丈夫ですわ一誠様! 寧ろ一誠様のワイルド思考にレイヴェルはきゅんきゅんしてますから!!」
良いさ良いさ……。
所詮俺は黒神めだかにも日之影空洞にもなれない生徒会長さ……。
脳筋だもん……術式とか物理でぶっ壊すしかできないもん……。
「おいチビ。コイツはお前がグレモリー家からの支援が消えたと心配して飛んで来たんだよ。
確かに扉をぶち壊したのはアレだったかもしれねーが、顔見て怖いは無いだろ?」
「ひっ!? な、何ですかこのチンピラみたいな――」
「んだとゴラ!? ぶっ飛ばすぞクソガキィ!!!」
「お、落ち着いて匙君!!」
「ひぃぃぃっ!! やっぱりチンピラですぅぅ!」
「ほーらイッセー? 私の胸でたんとお泣き。ちゅーちゅーとかしても良いにゃ」
「だから事あるごとに一誠様を誘惑するな!!」
「帰る……お家に帰る」
木場や塔城さんが思い出した事で急いで駆け付けたってのに、どうやらグレモリー眷属最後の一人であるギャスパー・ヴラディって餓鬼はある意味であの変態魔王とタメを張れるくらいにイライラする奴だった。
「うぅ……」
「で、結局あの性欲ボケの魔の手から逃れられたこのチビは――――女で良いのか?」
ギャスパー・ヴラディが封印されていた部屋の隅っこで体育座りして意外なまでに落ち込んでいる一誠をレイヴェルさんと黒歌さんに任せ、代わりに俺が本人に問い詰めてみるが、チンピラなんぞと評されてるせいか、ギャスパー・ヴラディは木場と塔城さんの後ろに隠れて答えようともしない。
「……。チッ」
「(ビクッ!?)」
初対面で悪いが、俺は正直コイツとは馬が合う気がしない。
一々しつこい奴も大概だが、びくつくだけでロクに会話もしない奴もイライラする。
が……グレモリー共にほったらかしにされたという点だけは同情するのと一学年ぽっちだが俺の方が上なので此処は一つ大人な対処をする。
「わかった……いきなり土足で踏み込んだのは俺達が全面的に悪かった。
だが、さっき木場と塔城さんに聞かされた通り、今リアス・グレモリーとソーナ・シトリーは冥界の独房の中で、それによって引きこもりになってるキミに支援が無くなって餓死してしまっているかもしれないと、ウチの生徒会長が心配して飛んできたんだ……………てだけは解ってくれ頼むから」
「ぅ……は、はい……。
それは聞きましたけど……本当なんですか? 部長達がそんな……」
丁寧に、警戒心に覆われた心の皮を一枚一枚はがしつつ……。
正直こんなまどろっこしい真似はしたくないし、こんなビクついてるだけの餓鬼に時間なんて割きたくも無いが、話をさっさと進めるためには仕方ないと割りきる。
それが項をそうしたのか、ギャスパー・ヴラディは木場と塔城さんの後ろから顔だけを出してチンピラ匙くんである俺と視線を合わせながら、信じられないって様子を見せた。
「残念ながら現実だぜ。
とある性欲バカがグレモリーの兵士に転生した途端、全部が狂いやがった」
「……。そ、そういえば定期的に様子を見に来てくれた部長と副部長が最近は全く来てなかったから変だなとは思ってましたけど……」
「…………。シトリーとその眷属と合同で深夜のプロレス大会をしてたしな。
その点だけで言えば君は実に運が良かったね……あの性欲バカの捌け口にされなくて」
「う……」
意味は解ってるのか、俺の遠回しな言い方にギャスパー・ヴラディは蒼白い顔色で吐きそうなっていた。
…………。て事は女で間違いないのか? 本当に運が良いなこの餓鬼。
「元士郎の方が余程立派だ。
ふははは……今すぐ元士郎にこの腕章を渡して俺はフェードアウトしてしまおうか……」
「い、一誠様もちゃんとお話しすれば解って貰える筈です……!」
「そうじゃなくても私達がいるにゃん」
「あ、あの……僕あの人に……」
「ああ、ちょっと強引だけど悪い奴じゃないから、謝りゃあ刹那で許してくれるさ」
「うん、僕も白音さ――じゃなくて小猫さんも彼に助けて貰ったんだ。このゼノヴィアさんって人もね」
「うむ」
正直、アイツが居なかったら一生奴等の都合よき奴隷で終わってたからな。
アイツのお陰で今の俺達があるんだ……それだけは誰にも否定させねぇよ俺達は。
木場も俺もゼノヴィアも……ね。
「それにしてもギャーくん。『今は』男の子なんですね?」
さて、そんな訳で一誠に対する認識も何とか緩和させる事に成功した俺達は、このギャスパー・ヴラディの今後についてを問おうとした時だった。
俺やゼノヴィア……そしてまだ体育座りしてる一誠とそれを慰めてるレイヴェルさんや黒歌さんよりも遥かに事情を元眷属仲間として知っている塔城さんが、何やら変な問い方をギャスパーにしている。
「あ、う、うん……三日前から」
それに対してギャスパーは恥ずかしそうに頷いていた。
何だ? 今はとか三日前からってのは?
木場は知ってるみたいだけど、俺やゼノヴィアからすればその言い回しが意味不明なんだがな。
「む……どういう事だヴラディ1年よ? 貴様は女で間違いないんだろう? ぶっちゃけよくあの『兄貴様。』から逃れられたと思うがな」
「え、えっと、そ、それは……その……」
それは落ち込んでいた筈の一誠も違和感を感じたのか、物凄いローテンションな声で体育座りしたまま顔だけを向けて質問をすると、言い辛そうにしてるギャスパー・ヴラディの代わりに答えたのは塔城さんだった。
「ギャーくんはハーフ吸血鬼の他に、別の特性というか……この子だけが持ってしまった特殊な体質があります。
実はギャーくんの性別はある周期で変化するんです…………所謂両性って奴ですね」
へー……変化するんですかーそれはそれは―――――
「ワッツ!?」
「な、何だその漫画みたいな性質は!?」
「つ、つまりふたな――――」
「まあ、有り体に言えばです。
周期的に完全に変化するんです男の子か女の子かのどちらかに」
「加えて強い神器を持ってて、最初言った通りハーフ吸血鬼。
元部長の実力じゃ手に余るから今までこうやって封印されていたんだ」
「うぅ……こんな性質嫌なのに……」
な、何かの漫画であったな。
水を被って女になるって奴が。
それがまさかリアルに存在するなんてな……世の中広すぎだろ。
「つまり女物の制服着といて……つ、付いてるのか? バベルの塔が?」
「お、驚いたな……まさか兄貴も知らなかったのか?」
「な、な、な、ふ、二人して僕の何処を見てるんですかぁ!?」
ビックリし過ぎて思わず俺と一誠はギャスパー・ヴラディ………の、まあ、見てしまう。
その際物凄い冷たい視線を周りから向けられてる気がしたけど、別にエロとか関係無く普通に気になったからだという事だけは言っておく。
「今が男だとしても、元々が女顔なんだなお前……」
「うむ確かに。しかしながら……本当に付いてるのか? ちょっと試しに全裸とかに―――」
「一誠様?」
「あんまり冗談を言ってギャーくんを困らせないでくれますか?」
「じゃないと此所でイッセーを全裸にしちゃうよ?」
「じょ、冗談だよ。すまんヴラディ1年よ……」
「うぅ……」
とはいえ、内股になってもじもじし始めたギャスパー・ヴラディをジロジロ見てると、犯罪的構図になる気がしてならないので、後ろからゾッとするような声を聞かされてる一誠にならって視線を切る。
「こほん……まぁ……その、何だ。
俺達がここに来たのは、貴様は今後どうするのかって事だ。
言っておくが近々グレモリー眷属は完全な解散をさせられると思うから、これまでの様な支援ありきの引きこもり生活は無理になるぞ」
「ええっ!? そ、そそそそんな!? 僕はどうすれば良いんですか!?」
「さぁな。それはお前自身の人生だし自分で考えろよ」
そして此処からがある意味本番だった。
「だ、だって僕……外に出たら虐められるから出たくない……!」
「いや、別に出ろとは言ってない。
引きこもりたければ好きなだけ引きこもれば良いだろう? 貴様も何かしらの事情があって引きこもっていたみたいだしな。
但しだ、これから先の生活資金は貴様自身で稼がなければならんがな」
「うっ!?」
「おいおい、少し考えれば分かるだろ?
まあ、グレモリー家に必死こいて頭を下げたら何とかなるかもしれねーが………解散された眷属一人にわざわざ金を出すとは思えねーし、元シトリー眷属だった俺だったら奴等の施しなんて絶対にお断りだがな。
そうでなくても悪魔らしく『対価』が求められそうだぜ」
「うぅ……」
ギャスパー・ヴラディの進路相談がな。
「とはいえだ。
貴様さえ良ければ、貴様自身の持つ神器をコントロールできる手伝いぐらいなら出来るぞ?」
「え、そ、その後は?」
凄い対人恐怖症……と聞いていたけど、想定外な状況のせいか、最初は怖がってたものの意外と普通に意思疏通というか会話が成立している。
とはいえ、俺の煽りに物凄い不安がってるけどね。
「うむ……その事なんだがなヴラディ1年。
これもまた貴様さえ良ければな話なのだが――――」
そんな一誠はギャスパーに対して言った……。
「お前―――生徒会に入らないか?」
「え?」
結構ビックリ過ぎる提案を、何を言われたのか解ってませんな顔してるギャスパーに一誠は真顔で言ったのだ。
「せ、生徒会……って、えぇぇえぇぇぇ、ぼ、ぼぼ、僕がですかぁ!?」
「うむそうだ。生徒会だ」
「な、なな、何で僕なんか……」
ギャスパーの言葉に正直な所俺達も同意した。
何せ一誠は今まで一度たりとも俺達の誰かに生徒会へ勧誘する事が無かったのだ。
それをよりにもよって初対面であるギャスパーを勧誘したんだ……。
ビックリなんてもんじゃないし、ギャスパーを良く知る木場と塔城さんは微妙な顔つきだった。
「先輩……何を思ってギャーくんを勧誘したのかは解りませんけど、正直難しいですよ?」
「うん……ほら、見ての通り人前が苦手だし」
二人の言葉に俺も何と無く同意した。
ほぼ初対面だけど、ビクビクした態度を見てる限りじゃ対人恐怖症を拗らせてるままに違いないし、そもそも何でギャスパーなのかが解らない。
「別に人前に出て演説しろとは言わんさ。
ただほら……グレモリー3年達がああなったせいでヴラディ1年のこれからの人生がキツくなると思うと――やっぱり変な罪悪感があるというか……俺の兄貴様のせいでああなったし」
『…………』
つまり一誠はこう言いたいらしい。
性欲バカをほったらかしにして、グレモリー共を狂わせたままにした結果招いてしまったギャスパーの生活崩壊のお詫びがしたい……と。
「俺はこう見えて生徒会長で……まあ、その……悪魔との繋がりもある。
横に居るレイヴェル・フェニックスとその家族とは事情があって餓鬼の頃から世話になってるんだ」
「え、そ、そうなんですか……」
だが微妙に納得できない。
あの性欲バカは勝手に暴走して、狂わされた女共も勝手に暴走したんだ。
別にそれのせいでギャスパーの生活が崩壊したのは一誠のせいじゃない訳で……。
「聞けば貴様は――神器を含めて色々と大変だったみたいだし……。便宜上の兄貴のせいで遠回しに迷惑かけたし……助けるとは違うが、それなりのケジメを付けさせてほしいのだよ。あと本音を言うと生徒会に入ってほしい」
「う……た、確かにこのままだと僕自身どうなるかわかりませんけど……でも……」
「嫌なら別に生徒会に入らんでも良い。
だが、貴様の持つコントロール不能の神器を完全にコントロールできる手伝いはさせてくれ。
何か知らない間に色々と失ってる貴様を見てると居たたまれないんだよ……」
「ぅ……こ、怖い人だなんて言ったのに何で……」
だが一誠は、直接じゃないとはいえあの性欲バカのせいで色々と失ってるギャスパーに思うところがあるらしく、物凄く戸惑ってる彼にフッと笑みを浮かべながら遠くを見つめていた。
「やっと出来た友達の友達なら俺の友達になってくれそうな気がするから―――――と、変な欲で動いたアホな生徒会長とでも思ってくれ……あっはっはっはっ!」
つまり理由は――俺達の時と同じ……それだけの事であり、それを聞いた俺達もまた何かホッするような気持ちでギャスパーを『引っ張りあげる』決心を固めるのに十分だった。
あの性欲バカから逃れられたのなら、その後の人生は楽しく生きる権利はギャスパーにだってあるのだから。
「な、何で皆して優しいんですか……ヒック……何んで知らないけど……ふぇぇぇん……!」
「あ、しまった……早速泣かしてしまったぞ……」
「いえ一誠様……そういう意味で泣いてるのではありませんよ」
補足
転生兄貴の願望が中途半端に投影されたせいなのか、それともそうだったのか。
ギャーくんの性別は『ギャーくん』でした。
その2
生徒会長イッセーとしてを考えた結果――生徒会に勧誘するという展開に変更されました。
理由としては、兄貴を放置してリアスさん達をほったらかしにした結果、ギャーきゅんの生活がぶっ壊れそうになってしまった事への微妙なる罪悪感と、自分以上にギャスパーという子が『失ってばかりの人生』を歩んでる気がするから……という、同類意識が芽生えたというか……
まあ、ギャーきゅん本人は術式ごと扉をぶっ壊したかなり怖い人認識がまだ抜けてませんけど