生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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練習の成果………特に無かった。


会談する人外達
運命の会談


 やっとこの日がやって来た。

 どういう結果になるかは解らないが、それでも俺の人生に一つは区切りは付けられる事は間違いない。

 だから出ろと言われたら出るさ……。

 

 

「ようこそ……まずは御足労に感謝するよ」

 

 

 この場違い感バリバリながらも決着が付けられる席にな。

 

 

「この度は愚妹が君達に大変な迷惑を掛けてしまった。

お詫びのしようが無いくらいだが、どうする? 望めば直ちに全員の首を跳ねて――」

 

「それはアンタ達で決めてくれれば良いだろう。俺達は俺達のやるべき事をただやっただけだ」

 

 

 堕天使・天使・悪魔のトップが本日駒王学園の会議室に終結した。

 理由は一つ……コカビエルの事と『俺達』の事と、奴等個人のこれからの事についてである。

 人間の餓鬼がコカビエルを――後で聞けば神すら叩き上げで超越した堕天使を単身で撃破した俺はこの三勢力からしても相当警戒すべき対象として認定されてしまったらしく、兄貴様達の事も相まってこの三大勢力会議に生徒会スタイルでレイヴェル、白音、黒歌、元士郎、祐斗、ゼノヴィアと共に出席し、参加する事になったが……。

 

 

「へぇ、お前がコカビエルとタイマン張って勝った人間かよ? いやぁ、ウチの戦闘バカがすまんすまん!」

 

「その頭の悪そうな喋り方は何とかならないのですかアザゼル? いえ、そんな事より此度は聖剣を守って頂きありがとうございます」

 

「む、別に貴様等の為じゃあ……」

 

 

 堕天使と天使の代表者に何故か俺は頭を下げられた事にどう返すのか迷った。

 途中から殴りあってるのが楽しくなってたとはとても言えん状況だ。

 

 

「アザゼルにミカエル、話し掛けるのは良いがその前に終わらせる事があるだろう? 本当なら来る必要も無いところをわざわざ来てくれたのだから」

 

 

 が、そんな二人を諌めたのが、あのサーゼクス・ルシファーだった。

 なじみ狂信者という……微妙によろしくない趣味をしてる彼は事あるごとに俺や分身のフェニックス家に対してゴマスリじみた行為をしてきて、正直辟易する部分も多かったのだが、今回に限ってはちょっとだけ助かった。

 

 

「む、そうですね」

 

「はいはいっと」

 

 

 背に純白の翼と頭に変な輪っかを浮かべてる……確かミカエルという天使と、何処と無くいい加減っぽく見えなくもない風体のアザゼルという堕天使がサーゼクス・ ルシファーの言葉に従い、各々の席に座る。

 ミカエルなる天使の後ろには金髪の天使、サーゼクス・ルシファーの後ろには銀髪の――確か嫁さんが控えているが、アザゼルという堕天使には誰もいない。

 ちなみに元士郎をジーッと見つめているセラフォルー・レヴィアタンが居たりするが、そのいえば彼女も魔王なんだよなー……とぼんやり考えつつ、俺達全員も席に座る。

 ちなみにウラディ1年は置いてきた。

 理由は普通に彼……? いや彼女? ………まあ、本人が『邪魔になると思うので、一人で制御の練習をしておきます』と言ったからだ。

 

 どうも俺達と過ごした――特に元士郎を見て何か思う切っ掛けでも得たのか、最初の頃と比べるとちょっとは怯えの心が克服されている様である。

 

 

「さて、全員が揃ったことで会談を始めさせて貰うけど、その前に会談の前提条件がひとつ。

此処にいる者は全員最重要禁則である事項である『神の不在』を認知している」

 

 

 さて、長くなったがサーゼクス・ルシファーが魔王らしい振る舞いでこの場に居る者達全員に、まずは参加する為の資格を――つまり神とやらが居ない事を認知しているかの確認をする。

 勿論天使の長も堕天使の長もそれを知ってるいので今更だろって表情だが、俺達はそうじゃない――というより今のは俺達に対して向けた言葉である。

 

 

 

「コカビエルとの戦いで……」

 

「同じく」

 

「自分も同じく――チッ,ミテジャネーヨ」

 

 

 俺達の中でも特にゼノヴィアが若干複雑そうに、ミカエルなる天使を一瞥しながら頷いていた。

 だが敢えてそれを見ないことにしたサーゼクス・ルシファーは話を進めるべく……いや、俺とレイヴェルをガン見しながら頷いた。

 元士郎がセラフォルー・レヴィアタンに対して小さく毒づいたのは聞こえなかったことにしつつな。

 

 

「よし、全員が承認しているということで始めさせて貰おう。

まずはこの度起きた騒動について、申し訳無いけどキミ達から話を聞きたい――良いかね?」

 

 

 こうして始まる会議なのだが、やはり初めはコカビエルとの戦いでの件だった。

 どうやら当事者でもある俺達の口から直接聞きたいらしく、各勢力のトップの視線が一斉に俺達へと向けられる。

 

 

「……………。初めは何の関与もしないつもりだったんだ。だがまあ……サーゼクス・ルシファーは存じの通りだろうけど、一応の兄貴様――つまり兵藤誠八達があまりにも『使えなかった』ものでな……。この学園を媒体に奴等が聖剣を元の姿に戻す仕込みをした後破壊すると言ったものだから、つい勝手ながら……」

 

 

 誰が話すんだ? と思いきやレイヴェル達全員が俺を見るので、仕方なく椅子から立った俺はコカビエルとの戦闘の経緯を説明する。

 祐斗がその際、何か言いたそうな顔だったが、三勢力達に見えないところで手で合図を送って喋られない様に諭す。

 

 

「断っておくが、別に正義感に燃えた訳じゃないし、アンタ等の為でもない。

単純に自分のエゴでやった事だから感謝する必要だって無いと思うぞ」

 

 

 聖剣を越える事で自分の心にケジメを着けた今、わざわざ連中にその事実を教えてやる意味もない

 

 

「…………。ありがとう一誠君。

ではこの事に感して堕天使総督の意見を聞きたいのだが?」

 

 

 一部を詐称したあらましを話し終えて席に座ると、サーゼクス・ルシファーの視線はアザゼルと呼ばれる堕天使へと向けられた。

 堕天使の長故に、コカビエルがやった騒動の風当たりは恐らく強いのだろう。

 だがしかしアザゼルとやらの表情は寧ろ好戦的なそれだった。

 

 

「今回の事件は我が同胞コカビエルの仕業というのは否定しようもない事実だ。

が、信じる信じないは別にして先日の事件はアイツの独断で行われた事であって俺達他の堕天使は一切関与していない」

 

「ほう、貴方の発言を我等が信じるに価する証拠はあるのですか?」

 

「残念ながら無ぇな、だから俺も困ってんだよ。

ったくあのバカ……勝手に神の子を見張るもの(グリゴリ)を抜けるなんて置き手紙なんて置いて去りやがって。

お陰でこっちは戦力の大低下と、アイツを慕う若い連中がアイツを追って抜けようと大騒ぎだぜ」

 

 

 そうこの場に居ないコカビエルに対して恨み言を呟くアザゼルとやら。

 どうやら見た目とは反対に中々に苦労してる様だ。

 

 

「確かに、あのコカビエルは別にしても、貴方達は我等と事を構えたくは無いとは聞き及んでますので、コカビエルの独断というのはある程度信じてあげられましょう。

とはいえ、起こした事件のお陰で我等三勢力に組する者達が別の意味で事件を起こし、それを人の子である彼やその仲間達に尻拭いして貰った事実は覆りようが無い」

 

「まぁな……。

まさかあの戦闘好きが行き過ぎて神話越えをまでしたコカビエル(ヘンタイ)を、神器も持たない人間がぶっ倒すなんて驚愕を通り越していっそ笑うぜ。マジでどうなってるんだか……」

 

 

 アザゼルとやらとミカエルとやらの視線が俺に向けられる。

 

 

「なあ、人間――いや、兵藤一誠つったか? お前は本当に人間なのか?

正直俺はお前を人間とは思いたくはねーんだが」

 

「カテゴリーで言えば確実に俺は人間だ。まぁただ……育った環境が特殊なものでね。

彼女……あー……つまりここに居るレイヴェル・フェニックスとその家族に可愛がられたお陰でそれなりにな」

 

「業火の不死鳥と憤怒の女帝の娘……でしたね。

前線を退いても尚衰えないその手腕という訳ですか」

 

 

 シュラウドのおっさんとエシルねーさんの渾名か……。

 実はSMプレイ好きな夫婦と言ったらどんな顔をするのやら……まあ、めちゃんこ強いのは否定しようもない事実であるが。

 

 

「しかし俺としては、そこの魔剣創造使いの餓鬼の禁手化と銀の鎧騎士が気になるな。確か銀牙騎士だったか? 是非とも研究させて欲しいぜ」

 

「っ……!?

い、いやそれはちょっと……」

 

「アザゼル。

彼には――いや彼等には妹の件で多大な迷惑を掛けたんだ。これ以上僕達のエゴを押し付ける訳にはいかないだろ?」

 

「チッ、わーってるよ……ならコカビエルの所に居るとされる白夜騎士ってのをコカビエルごと取っ捕まえるので我慢してやるよ」

 

「………。コカビエルを貴方がですか? 無理だと思いますけど?」

 

「……………。

だよなー……あの野郎、サーゼクスも大概だが、アイツもアイツで堕天使って種族じゃ考えられない強さだからなー……。最悪俺達皆殺しかも」

 

 

 なるほど……アザゼルとやらは祐斗の力が気になるのか。

 だが本人が嫌そうにしてる限りは俺達が全力で守るつもりだ……残念ながら貴様の目的は果たせんよ。

 あとコカビエルも多分フリード・セルゼンにそんな真似はさせんと思う。

 

 

「とはいえ、コカビエルを野放しにする訳にはいかないのもまた事実です。

放って置いたら彼は北欧神話にも喧嘩を売りそうですし……」

 

 

 ミカエルとやらがハァとため息を吐きながら、俺達にとっては正直あまり知らん何者かについて話すが、それを聞いたアザゼルとやらは『あー……』と気まずそうに明後日に視線を向けて口を開く。

 

 

「実はもう売ってたりするんだな、あの戦闘バカは。

オーディンって隻眼のジジィを半殺しにしたとか何とか――まあ、そん時は奴にエロ画像を渡してご機嫌を取ったから事なきを得たが」

 

『……………』

 

 

 後半の意味なのか、それとも前半の意味なのか。

 よくは知らんが北欧神話系統連中の誰かをコカビエルが前に半殺しにしたという事実をアザゼルとやらから語られた途端、全員が閉口をしてしまった。

 

 

(ほ、北欧神話て……。

お、俺達よく生き残れたな……)

 

(書物でしか見ない名前だったから実感なかったけど、本当に一誠くんは凄いよ……)

 

(よせよ、本当にあの時は俺が死んでてもおかしくないほどギリギリだったんだ。

それに俺がその北欧神話とやらに勝てるとは限らんだろ……相性の問題とかで)

 

(いえ、一誠様は日々進化をし続けますから)

 

(惚れ直しました抱いてください)

 

(惚れ直したにゃメチャメチャにしてにゃん)

 

(いやお前ら……今はその話じゃないだろ)

 

 

 やはりなじみを越えるを目標としてるだけに、あの時点での実力も凄かったのは直接やり合った俺がよーく身に染みて解っていたが……だから余計にアザゼルとやらやミカエルとやらは俺という存在を本当に人間なのか疑ってたのか――納得。

 だが別にコカビエルに僅差で勝ったからと言って、じゃあ俺が北欧神話連中とやらに勝てるかと言われたら解らん。

 まだ相対もしてないし、さっきの通り相性の問題もあるのだ。

 

 

「? おいミカエルの後ろの……ガブリエルか? お前さっきから何をソワソワしてるんだ?」

 

 

 結局の所、今回の事件はコカビエルが原因なのだが、奴の力が既に三勢力――サーゼクス・ルシファーでも抑え込むのに手間取るだろうレベルで捕らえるのは容易じゃないという意見三者はで一致した様で、その中で一人……ミカエルとやらの後ろでコカビエルの話しになってからずっとソワソワしたり、一人でニヤニヤしてた金髪の女天使の不審な態度が気になったアザゼルとやらが変に思って話し掛けている。

 

 

「っ!? べ、べべっ! 別に……!?」

 

 

 実はさっきから俺も気になってた。

 コカビエルの名前が出て来た瞬間、キリッとしていた態度が急変もすれば疑問に思う―――思うからレイヴェルも白音も黒歌も三人して変な目で見ないでくれ。

 いや、エシルねーさんとは別意味でキレーだなーとは思ったけど、別にそんなん無いから。

 

 

「いや、明らかにテンパって――」

 

 

 話を戻すが、ガブリエルという名前らしい女天使は、やっぱり明らかなる動揺した態度を取っており、声も完全に上擦っていたので、初見の俺達でも絶対平静ではないだろうと疑うが、ミカエルとやらが『所で……』と話を切り替えた為に真実は不明のままだった。

 

 

「話は変わりますが、今回の事件で失態を犯した悪魔と我等側の悪魔祓いの処遇を決定したいのですが……」

 

 

 遂に来たか……兄貴どもの話が。

 俯いてしまった――えっとガブリエルとやらの前でこの話を切り出したミカエルとやらに、まず反応したのは俺達とサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンだった。

 

 

「僕の妹であるリアス・グレモリーとセラフォルーの妹であるソーナ・シトリーの二人とその眷属達については、おおよそ初めにこの一誠くんが話した通りだ。

赤龍帝にてリアスの兵士である兵藤誠八と……事件直前までまあ、楽しく事を行っていたみたいで、役にも立たず1度コカビエル達に捕まったらしい」

 

「………。その事に関しては彼等に多大は迷惑を掛けたと思ってるよ。

だからミカエルちゃん側に居た一人の悪魔祓い以外は力を封印した状態で冥界の下層独房に閉じ込めてる」

 

 

 実はなじみ狂信者で肉親に情が実は皆無なサーゼクス・ルシファーはともかく、度越えのシスコンなセラフォルー・レヴィアタンまでもが低い声で今の兄貴達の状況を説明すると、この件関してだけは無関係なアザゼルとやらはケタケタと笑っていた。

 

 

「赤龍帝に食われたのかよ?

しかもかなりの人数って聞いたが、ハーレム好きな赤龍帝だったって訳か……こりゃ御愁傷様だぜ」

 

「当初は紫藤イリナの身柄もそちらに預けるつもりだったのですが、話を聞く限り近くに置けばどうなるか予想が付きやすかった故に、本教会の最下層に閉じ込めるという処置を取りました。

しかし、報告によればもはや赤龍帝の事しか頭に無いみたいです」

 

「っ………」

 

 

 ミカエルとやらの口から放たれた紫藤イリナの現状に、相棒だったゼノヴィアが唇を噛みながら下を向く。

 長らく兄貴にどっぷり漬かったのだ……もう取り返しは付かないとは解ってても彼女にとっては相棒だったんだ……複雑な気持ちなんだろう。

 俺は――――

 

 

「兵藤誠八でお前と顔がソックリってことは双子か?」

 

「名目上はな……俺は奴と兄弟だった事は1度も無い」

 

 

 もう過去の事だから、割りきってしまってる。

 

 

「故にこの場を借りて彼等の処遇を決定したく、身柄を此処に連れてきた」

 

「連れてきたのかよ……。

しかし赤龍帝は俺に渡して貰いたいもんだな、 研究が捗りそうだし」

 

「白龍皇を抱えてる貴方に渡したら戦力に加えそうですが?」

 

「よせよ、コカビエルの代わりなんて白龍皇でも務まらねって。神器使いを集めてるのだって単なる研究だよ研究」

 

 

 そしてその過去との決着はもうすぐ終わる。

 

 

 

 

 

 兵藤誠八は久方ぶりにリアス達と再会したが、お互いに心身がへし折られてるせいで喜ぶ事もなく、独房から出された。

 久方ぶりにの外の光に目が眩み、頭痛に襲われるが、その事を訴える暇もなく連れてこられた場所は、人間界でそれも駒王学園の会議室だった。

 

 

「サーゼクス様、兵藤誠八並びにリアス・グレモリーとソーナ・シトリーとその眷属達を連れて参りました」

 

 

 そこに居るのは三大勢力のトップ達と本来なら居ないはずの一誠であり、手足がもがれたままの誠八はリアス達と共に部屋の真ん中の床へと無理矢理座らされた。

 

 

「サーゼクスの妹とセラフォルーの妹か……随分とたらし込まれた様だな。

おい兵藤一誠よ……お前に熱い眼差しを送ってるぜ?」

 

「………。殺意という名のな。やはり俺は奴等にとって憎む相手らしい」

 

「尻拭いして貰ってですか? なぜ?」

 

「奴等にとって『兄貴様。』の敵は絶対悪らしい。まあ、俺自身善人のつもりは無いから別に構わんがな」

 

 

 コイツさえいなければ――未だに一誠を憎み、三大勢力会議の席で悠々と座りながら自分達を、本来なら自分のモノにするつもりだったレイヴェル、白音――そして黒歌と共に冷めた目で見ている一誠に更なる殺意が膨れ上がり、呪詛の言葉を投げ掛けようとしたが、その前にコカビエルと同じく原作を遥かに超越していたサーゼクスの殺気により押し黙ってしまう。

 

 

「悪魔として地位の剥奪だけじゃ済まされないので直ぐには殺さない。

キミ達は力を永遠に封じたまま冥界の最下層に閉じ込めるよ……キミ達が居た独房がマシに思える地獄の最下層にね」

 

「っ……ま、待ってください! そ、そもそも彼等が関与したのは私の騎士である木場祐斗が聖剣に対する復讐心から勝手な行動を……」

 

「そ、それに私達は当初教会側に一切の関与をするなと言われました! 故に私達は大人しく――」

 

「大人しくするのが性欲バカとのプレロスごっことは畏れ入るぜ元主さまよー?」

 

「というか貴様……今完全に祐斗を出汁に使おうとしたな? ……………………兄貴様がそんなに良いのか」

 

 

 

 冷たい視線を全方向から向けられてるにも拘わらず、リアス達は誠八にどっぷりと浸かってしまった典型的な思考回路へとねじ曲げられている。

 元・眷属達を出汁に言い逃れすらする姿に、元士郎も思わず嫌悪にまみれた表情だ。

 

 

「もうその話は何百と聞いたよ。だけどどんな言い訳をしようが判決は覆らない。残念だけどソーナちゃんにリアスちゃん。

キミ達は永遠に何も見えない穴蔵で死ぬまで生きるの」

 

「っ……あ、アンタ等こそ、そこでふんぞり返ってる野郎に騙されてるとは思わないのかよ!?」

 

 

 そんな元士郎の態度を見て察したセラフォルーがすかさず釘を刺すと、今度は手足が無くなったままの誠八が一誠への憎悪を剥き出しに喚くが、誰も彼もが呆れ果てた表情だった。

 

 

「キミにそんな事を言う資格はあるのかい兵藤誠八? 言っておくけど僕達は全員正気だ。

まったく……せめてコカビエルに勝っていれば少しは何とかなっただろうけど、女好きに浸かりすぎてるキミには一万年経とうが無理だろうね………役にもたたない」

 

「おいおい、これが今回のヴァーリの宿敵かよ? 確かに殺してやる価値もねーな。あーウチん所の女達がやられんでよかったわ。

まあ、元々ウチん所の半分は趣味が悪いことにコカビエル――――え、な、なんだよガブリエル?」

 

「………………。別に」

 

 

 誰も取り合わない。

 自分というイレギュラーが一誠というイレギュラーを覚醒させ、その一誠を覚醒させた存在が更なるイレギュラーを間接的に生ませた結果、彼の思い描いていた原作とやらを大きく離脱したインフレ世界へとなってしまっていた事なぞ知るよしも無かった誠八の運命は決まっていたのだ。

 

 

「一足早く最下層に行きたまえ兵藤誠八。まあ、死にたかったら自分でするんだ………その手足で出きるかは僕は知らないけど」

 

「ふ、ふざけるな! お、おい一誠! よくも俺をこんな目に! 許さねぇ、ぶっ殺してやる!」

 

 

 冥界最下層送り。

 悪魔に転生した影響で簡単に死ぬことは出来ない誠八はコカビエルとフリードに切り落とされた不満足な肉体のまま永遠にも近い時を生きなければならない。

 

 

「そう言うなよ兄貴よ? 俺は貴様のお陰でレイヴェル達という大事な人が出来たんだ。

だから俺はアンタを恨まんよ――いや寧ろ心からこう言おう―――『俺から奪ってくれてあがとうよ』」

 

「っ……アァァァァァッ!!!!!! 殺して―――」

 

 

 それはきっと死よりも苦痛なものだろうが、誰もそれに対して手を差し伸べる者は居なく、最後の最後で一誠に至近距離から爽やかな笑顔で礼を言われた誠八は、此処で精神の柱が壊れ、憎悪の咆哮をあげようとするが、淡々とした態度のグレイフィアによって最下層送りにされてしまうのであった。

 

 

「これで一つの癌は消えた。一誠くんもこれで良いかい?」

 

「……。まあ、少なくとも少しだけは晴れた気分にはなれたよ」

 

 

 サーゼクスの問いに一誠は能面を思わせる冷たい表情で淡々と言う。

 その表情からは彼の内面は窺えない。

 

 

「セ、セーヤ!! セーヤが……!」

 

 

 誠八が最下層送りとなった途端、目に見えて取り乱すリアスとソーナ達も一誠は冷たい目のままだ。

 

 

「…………。さて、次はお前達だが、先に姫島朱乃は堕天使側に引き渡す。ハーフ堕天使だし処遇はそっちに任せる」

 

 

 誠八の次はリアス達と銘打つサーゼクスだが、姫島朱乃の身柄を堕天使に引き渡すと宣言する。

 すると同じく拘束されていた姫島朱乃の顔色が更に青ざめた。

 

 

「っ!? い、嫌です……! 堕天使なんて――うっ……!」

 

「朱乃!?」

 

 

 まだ最下層の方がマシだと主張しようとした姫島朱乃だが、その前にめんどくさそうな顔をしたアザゼルに当て身を貰い、そのまま意識を失ってしまう。

 

 

「これ以上バラキエルのアホがショック死しちまう材料は与えたくねーが、まあ、最下層送りにされるよかマシだろ?」

 

「僕はどっちでも構わないけどね……。

処理する人数が一人でも減るならそれに越したことは無い」

 

「けっ、ここぞという時はマジで冷酷だぜお前」

 

 

 気を失った姫島朱乃の身柄を押さえ込んだアザゼルがその身柄を転移させながらサーゼクスの冷酷な対応に舌打ちをする。

 コカビエルに対抗できる唯一の悪魔とすら言われてるだけあって、昔から孤高気味だったのはアザゼルも良く知る所だ。 

 

 

 だがしかし、だ……。

 

 

 

「集まってるようだな」

 

 

 突如現れた第三者によってサーゼクスの冷酷な仮面は――

 

 

「っ!?」

 

「っ……お、お前っ!?」

 

「あ、相変わらず神出鬼没ですね……コカビエル!」

 

 

 剥がれる……かもしれない。

 

 

 

 解っていた事である。

 でも私にとってはハラハラしないとなると嘘になってしまう。

 何せ此度の三大勢力会談の主な内容は先日の聖剣強奪事件の首謀者であるコカビエルの事についてです。

 人間の子が単身でコカビエルを撃破した話は既に『本人から』聞いているので然程驚きはしませんでしたし、今日も会談の前に半日ほどコカビエルの近くで監視をしていたので心配なんてしてもありません。

 けれどやはり話を聞いていくと変な気持ちになるし、堕天使総督のアザゼルから変な目で見られてしまいました。

 

 だからこそ私は本気で驚いた。

 だって朝御飯の時も、その後の鍛練の時も聞かなかったのに――

 

 

「よぉミカエルにサーゼクスにアザゼル……。

そして兵藤一誠ェ……! ちょっとした挨拶に来たぞ?」

 

「やはり貴様だったか……リベンジか?」

 

「いや、まだ貴様に完全勝利する見込みは無いから今日は違うぞ」

 

 

 コカビエルが此処に現れるなんて――ワタシキイテナイ。

 

 

「て、てめっ! このバカ野郎!! テメーのせいで俺達は大混乱なんだよ!」

 

「む? 大混乱だと? いや確かにミカエルの所から聖剣をかっぱらったせいで騒ぎになったのは否定せんが、俺は反省も後悔もせんよ」

 

 

 悠々と扉を開けて入ってきたコカビエルに全員が殺気立つ。

 しかしコカビエルはそんな我等に挑発的な笑みを崩さず戦闘の意思は無いと言った。

 その瞬間、私は何と無くチャンスだと思ったので、隠れずそのままの姿で扉の前に立つコカビエルの前に躍り出た。

 

 

「………」

 

「む、貴様は――ガブリエルか?」

 

「はぅ!?」

 

 

 その瞬間……コカビエルが私を見て名前を呼んでくれた瞬間、私の身体に電気が走ったような衝撃に襲われ、ゾクゾクとした変な感覚に襲われた。

 

 

「おいどうした? ふむ……どうやらあの時より遥かに強くなった様だ。

ふふん、俺の予想は大当りだったな……クックックッ……俺とヤるか?」

 

「うぇ!?」

 

 

 後ろでミカエル様が生暖かい視線を送ってきてる気がするけど、私はそれどころじゃなく身体に広がる得も知れない快楽で頭が溶けそうに加えて、コカビエルがニヤリとしながら……し、しながら……

 

 

「今の貴様となら最高の時間を過ごせそうだ……どうだ? 満足させてやれるほどの技量を俺も積み重ねたぞ?」

 

「ひ、ひは……しゃ、しゃいこうのじかん……?」

 

 

 なんだそれは? なんですかそれは? や、ヤるってつ、ちゅちゅまり、しょ、しょんな……は、はれれ!

 

 

「お、男の子と女の子……ひ、一人ずつ産みたいです!!」

 

 

 確定だ。わ、私は別に嫌だけど、こ、コカビエルがどうしてもというのなら、吝かじゃない。

 

 この野蛮な男がそれで少しは大人しくなるなら、これも世の為同胞の為! この身をコカビエルに仕方無く捧げてしまおうと、私は子供の数を口に出しながら衣装を――――

 

 

「なっ!? お、おいどうしたガブリエル!? 何故こんな所で脱ごうとしてるんだ!?」

 

「ひゃぁん!?」

 

 

 その際コカビエルの手が乱暴に私の手を掴み、それにより巨大な波を思わせる強烈な何かが私の身を駆け抜け、足の力が抜けてしまった。

 

 

「な、何だ……何なんだ一体? というかお前……翼が黒色に点滅してるぞ」

 

「ぁ……はぁ……も、もう……見た目通りに野蛮な人……。で、でもこれも平和の為に我慢するわ。

ほ、ほら好きにしなさい!」

 

「い、いや……えぇー? どういう事だこれは? おいミカエル?」

 

「……………。来るタイミングがある意味悪いんですよ貴方は」

 

 

 どんな風にされるのか。

 乱暴なのか……いや寧ろコカビエルになら乱暴にされたい……なんて……。

 うふ、うふふ……ふふふふ、何だか身体が熱くて……お腹も熱いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、なるほど……。

マジかよ天界1の美女に好かれてるとか勝ち組じゃねーかよあのバカ」

 

「っしぃ! これでガブリエルがコカビエルを落としたら安心院さんは僕の――」

 

「………………。私の中でサーゼクス様の子種が――」

 

「シャラップ!! そんなものは忘れたね!!」

 

 

 

 

「…………。意外とアレというか、デジャブを感じるな」

 

「にゃ? 何で私を見るんだにゃん?」

 

「エロ猫に自覚なしですか……あきれますわね」

 

「いや、私は姉様とは違いますからね?」

 

 

「………。尊敬する天使様まで変なんて……」

 

「あ、あの……その……元気だして……ね?」

 

 

 

「ね、ねぇ元士郎くん……あの……ソーナちゃんの事について本当に……」

 

「もう良いって。アンタがわざわざ気に病むなよ……ふん」




補足

最下層送りです。

兄貴はそのままにしても、最早達磨なので動けず、彼女達の洗脳は………状況に応じてどうなるか不明です。


その2
ガブリーさんとコカビーさんのリアル再会。

が、早速変な事に……。

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