生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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これは多分書き直すかもしれない。

うん……


事件の前

「よく集まってくれた――と言いたいが、若い者血の気が多いとはよく言ったものだな」

 

『………』

 

「命に別状は無かったものの、ゼファードルは全治半年の重症となった事について、レイヴェル・フェニックスの下僕候補である貴殿はどう見解するつもりか聞かせて貰おうか?」

 

 

 レイヴェルに手を出そうとしたゼファードルに対してらしからぬ激昂をして半殺しにしてしまった一誠は、魔王4名と上層部の初老の悪魔達……そして間近でゼファードルを半殺しにしている姿を見せられた若手の悪魔とその眷属達の前で、まるで裁判所に出頭した被告人の様にホールのど真ん中に立っていた。

 

 しかし一誠はそんな威圧にも似た悪魔達の視線を気にする事無く、ハッキリ堂々とした目で全員を見据えて言った。

 

 

「冗談でも主となる者に手を出そうとする輩が居るのであれば、私は誰が相手だろうが思い知らせるつもりでやりました。

……。まあ、少々頭に――ましてや自分の命よりも大切な方にゲスな目を向けられた事に対して大袈裟になりすぎた感はありますが、後悔はしておりません」

 

『………』

 

 

 一応目上の相手ということもあるので、少々開き直り気味ながらも敬語を使って自分の行動に後悔は無いと言い切る一誠に、サーゼクスとセラフォルーの二人は苦笑いが溢れ、残りの一誠をあまり知らない上層部はコカビエルという最強候補の堕天使を単騎で倒したという逸話が背後にあるせいか、何とも言えない表情だった。

 

 

「そう……か。

貴殿の噂は我々の耳にも入っている。

あのコカビエルの暴挙を止めた人間である事もな。

だが、レイヴェル・フェニックスの眷属候補である以上はいくら相手に問題があるとはいえ、我々にとっては貴重な純血悪魔の数を減らす様な事は控えて欲しいのだよ。わかるかね?」

 

「仰有りたい事の意味は理解します。

そうですね、この度は『たかが人間ごときが純血悪魔様に対して身分の差も理解できぬ馬鹿な真似をして申し訳ございませんでした。』」

 

『うっ……』

 

「ちょ、イッセーくん!? そ、そこまでしなくて良いからね!?」

 

 

 初老の悪魔の言葉に対し、どう聞いても皮肉にしか聞こえない台詞と共に、地面に額を擦り付け始める。

 その瞬間、サーゼクスが本気で慌てイッセーを止めたので直ぐに土下座は終わったが、見ていた悪魔達は何とも言えない気分になってしまったとか。

 

 

「……。キミ達に言うが、品位を損なう真似は控えなさい。

忘れて地雷を踏んで死にたいのであれば別に止めやしないが」

 

『…………』

 

 

 他の悪魔達からすれば不思議に思う程に慌てるサーゼクスに言われて立ち上がり、そのまま下がった一誠はレイヴェル達の下へと戻ってそこからは一言も言葉を発する事無く無言となったままピタリとも動かなくなった。

 その時点でサーゼクスは内心『あ、安心院さんとの繋がりが……』と焦ってしまってたりするが、気を取り直した初老の悪魔が、コホンと咳払いをしながら今日集まった若手の悪魔達に話をし始める。

 

 

「お前達は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。

だからこそデビュー前にお互い競い合い、力を高め、冥界の発展に努めて貰いたい…………まあ、若干1名は実に残念な事になってしまった訳だが」

 

 

 そう言って驚くほどに冷めた目をしていた人間に視線を向ける初老悪魔。

 フェニックスというだけで昔からの変人一族だというのに、変人は変人を呼び寄せるジンクスでもあるというのか。人間でありながら並みの存在を蹴散らす程の危険な力を持った人間を抱え込んでるという理由で、あまりいい気分では無かった。

 だからこそ敢えて彼の行った所業を強く咎める事をせず、フェニックスを介してその力だけを利用して飼い殺しにでもしてやろうと思っていたのに、何故かそれを本気で止めようとするサーゼクスのせいで上手く行かない。

 

 人は脆い生き物だというのが常識だった悪魔上層部は、早い話がサーゼクスに庇われているこの人間風情が気に入らないのだ。……態度には出さないもののだ。

 

 

「……。それはいずれ我々も『禍の団(カオスブリケード)』との闘いに投入されるという事で宜しいのですか?」

 

 

 上層部のそんな思惑を知ってか知らずか、激昂してゼファードルを本気で殺ろうとしていた一誠をレイヴェル……そしてその仲間達と協力して止めるのに一役買った若手悪魔の一人にてナンバーワン候補、サイラオーグ・バアルは堂々とした出で立ちで戦う意欲を見せつつ、無表情でレイヴェル眷属候補達が並ぶ列の最後尾で突っ立っている一誠に時おり視線を向ける。

 

 人でありながら伝説の堕天使であるコカビエルを単身撃破に加え、自分の従妹と色々な小競り合いをした一誠……いや一誠達に対して色々と思うところがある様だ。

 

 

「そうだ……と言いたいが、君達はまだ若い。

次代担う若者を戦争なんかで失いたくは無いというのが本音だ」

 

「そうだな。レイヴェル嬢の眷属候補の中には、かのカテレア・レヴィアタンを説得して投降させた者も居る」

 

 

 故に……我々としてはその実力を遺憾なく彼等に発揮して貰いたいものなのだが……。

 そう意味深に呟きながらサイラオーグ――では無くてレイヴェル達を見据える上層部達。

 要するに純血悪魔では無い一誠達を利用したい……そう言外に言っているのだ。

 

 

「それは……私の友を戦争の道具にしたいと仰有りたいのですね?」

 

 

 だがそれを聞いて黙っていられるレイヴェルで無く、上層部の悪魔達はかつてのエシル・フェニックスを思わせる物怖じ一切無しの表情に、まだまだ子供でしか無いというのに気圧された。

 

 

「何を言ってるんだ。勿論そんな真似は僕が絶対にさせやしないから大丈夫さレイヴェルさん」

 

 集まっているだけでも異常な経歴と戦闘力を有するレイヴェルとその眷属候補は、レイヴェル以外の家柄と血を抜かせば、力を持っただけの馬の骨であり、純血悪魔の数を減らさずに敵を殲滅できるうってつけの駒だと殆どの悪魔上層部は考えていた。

 しかし何度も言うとおり、何故かそれをサーゼクスが本気で庇って阻止するせいで上手くいかない。

 ゼファードルを半殺しにした事を盾に強要させる話も事前に釘を刺されて止められてしまったし、一体この魔王は何を考えているのか……上層部は苛立っていた。

 

 

「しかし、サーゼクス殿。

リアス嬢とソーナ嬢については残念な事になってしまった以上、無関係とは言い難い彼等がなにもしないというのは……」

 

「あの二人は赤龍帝に勝手に狂って自壊しただけです。

そもそも最初から言った筈です、コカビエルの件といい、これ以上彼等に我々が尻拭いをして貰うなど烏滸がましいと」

 

「これ以上あの子達に恩着せがましく強要するというのなら、私とサーゼクスちゃんにも考えがありますよオジサマ達?」

 

『ぐっ……』

 

「カテレア以外の旧魔王派の事もありますからね、これ等の件は我等の世代で片付けるべきです」

 

 

 サーゼクスとセラフォルーは本音八割と自分の欲2割混じりで集まった上層部に対して釘を刺すのを若手悪魔は困惑しながら眺めるしか出来ない。

 というか、魔王二人にそこまで庇われてる時点で異常だとサイラオーグ達若手悪魔はただ黙して佇む新世代フェニックス眷属達を見つめる。

 

 

「………。話が拗れたのは俺のせいだよな?」

 

「あの時本気でキレてたからなお前。

だが殺されなかっただけあのヤンキー崩れも幸せだろうよ……半年は再起不能だがな」

 

 

 特にゼファードルを本気で殺そうとしていた一誠と、セラフォルーとカテレアの心を射止めた――と冥界中に広まったせいで有名人化している元士郎は、それぞれ庇われる場合の魔王二人の力の入れ具合は半端では無かった。

 

 

「餓鬼の頃、レイヴェルに変態性癖持ちの悪魔から無理矢理縁談がどうのって話を聞いた時も、気付いたらその悪魔のヤサを更地にしてしまってな……。

どうもレイヴェルの事が絡むと短絡的になるというか――ぶっちゃけ後悔はしてないんだが」

 

「後に謎の災害として処理しましたので、一誠様の事はバレませんでしたけど、今回は目撃者が多すぎましたわ」

 

「だよなー……俺なんか勝手に捏造された噂流されてるし。別に堕としてねーっつーの」

 

 

 魔王二人と他の上層部が揉めまくる中、あのフェニックス家の令嬢とその眷属達はヒソヒソと関係ないとばかりに話をする始末であり、サイラオーグは特に一誠の力を前に興味が俄然沸いたのは云うまでも無かった。

 

 

 

 一誠がヤンキー崩れを全治半年程度で何とか済ませられたのはある意味幸運なのかもしれないが、あのヤンキー崩れは治ってもトラウマとして残るんだろうなぁ。

 何せ本当に……虫か何かを潰す様に手酷くボコボコだったもん――俺なら精神含めて再起不能になれるぜ。

 

 

「禍の団との戦いについては一旦保留として、まだ貴様等に問う事がある。

まず一つ目……この度悪魔としての位を昇格させた木場祐斗と塔城小猫はリアス・グレモリーの元眷属であり、匙元士郎はソーナ・シトリーの元眷属であった訳だが実情貴様等はそれぞれの主を見限ったという事で間違いないな?」

 

 

 そんなこんなで会合は続いていった訳だけど、案の定というべきか、やっぱりその話を出された。

 とはいえ、俺も木場も白音ちゃんも既に元主様を見限った事に対して何の罪悪感も無いので、いっそ連中がたじろかせる勢いで前に出ながらハッキリと言ってやった。

 

 

「一人の男を取り合って、テメーの成すべき事すら放棄して堕落しまくってましたからね。

既に知ってると思いますが、コカビエルが襲撃して来た際に何をしてたかご存じですか? その男と楽しくヤッてたんですよ? これで忠誠を誓えってのは無理だと思いますけどね」

 

「う、うむ……それは我々も報告で聞いている」

 

 

 ……? あれ、裏切り者と罵倒されると思ったら全員して気まずそうに目をそらしやがったぞ。

 なんでぇ……割りと信じてくれるのか?

 

 

「その尻拭いを貴殿達にさせてしまった事に関しては、我等全ての悪魔を代表して、謝罪と感謝をしようと思う」

 

「はぁ」

 

「正直例の赤龍帝がそこまで色狂いだとは思わなかったというか……これに関してだけは我々は最も恥ずべき事と反省する」

 

「……」

 

 

 ……。一誠の力を利用したがる面子も居たけど、中にはこんな考えの悪魔も居たんだな、とある種の感心を覚える。

 シトリー家とグレモリー家の面子から恨まれてるからてっきりこの連中からも裏切り者と言われるのかと思ってだけにな。

 

 

「特に元シトリー兵士の貴公は素晴らしい活躍をしたと聞き及んでいる。

カテレア・レヴィアタンを改心させ、更にはその心を射止めたとか……」

 

「それは流石にどっかの誰かが広めた捏造なんですけど……」

 

「それは貴公が気付いてないだけだ。

あの旧魔王派が大人しくセラフォルー殿の監視下に措かれているのだぞ?」

 

 

 だぞ? ……て言われてもピンと来ませんよあーた。

 第一惚れられたとか……こんな餓鬼にあの人がか? それこそ嘘臭いわ。

 

 

「キミが純血で無いことが本気で悔やまれると一部は言うが、私個人としては純血であろうがそうで無かろうが関係ないと思っている。

だから既に我々の事を幻滅してしまっているのかもしれないが、全てが全て同じ考えを持っている訳では無いとだけ解って欲しい」

 

「は、はぁ……」

 

 

 そう言って仕切り役の初老の悪魔に無言で睨まれても無視な中年の悪魔の人がペコリと俺達に頭を下げたので、思わずたじろいでしまった。

 純血の若手の悪魔達が驚愕して俺達とその中年の悪魔を交互に見返しているせいで変に窮屈な気分になっちまうぜ。

 

 なんて思いながらふと痴女魔王がヤケに大人しいと思って何となく視線を向けてみると……。

 

 

「ちょっと待ってお父様にお母様!? そんな事を私が許すと思って――もしもし!?」

 

 

 珍しく焦った表情で誰かと――多分実家の両親と思われる存在と電話をしていた。

 あまりにも焦った様子が見て取れたせいか、若手の人たちもサーゼクス様達も何事だと眉を寄せて痴女魔王に視線を向けてると……。

 

 

「…………。う、うちの両親がソーナちゃんは騙されていただけで罪は無いはずだから解放しろって」

 

 

 痴女魔王は悲しみまじりの表情で、俺達に電話の内容を説明した。

 どうやらシトリーの連中が元主を解放してほしくて仕方ないらしいが、騙されていただけだからとは恐れ入ったな。

 その騙されていただけのせいで危うく人間界の街一つが消滅してたんだぜ? 騙されていましたじゃ済まねぇだろう事くらい分かってるだろうに……。

 そう思いながら呆れる気分になっていた俺だが――

 

 

「解放し、元士郎くんを差し出さないと……カテレアちゃんを殺すって……」

 

 

 呆れる処かまるで笑えない話に、場は一気に凍りついた。

 

 

「ど、どうしよう……わ、私のせいで……」

 

「待て、セラフォルーのせいじゃない。

乱心してしまったかあのお二人は……」

 

 

 俺を差し出して元主を解放しなければカテレアさんを殺すだと?

 ふっ……クックックッ……!

 

 

「っ!? ま、待って元士郎君! どこに行くつもり!?」

 

「決まってんだろ! アンタの実家だ! あの人を殺させる訳にはいかねぇよ!」

 

 

 笑えない……全く笑えない。

 そんなに憎ければ俺を直接殺しにくれば良かったのに、よりにもよって力を制限されてるあの人を人質にだと? ふざけんじゃねぇぞゴラ。

 

 

「レイヴェルさん! 俺をシトリー城まで転移してくれ!」

 

 

 させる訳が無い。

 許す筈が無い。

 どうであれ、文通相手の友達を見殺しになんざ出来ないんだよ!

 

 

「待て! 勝手な事は――」

 

「椅子にふんぞり返ってるだけのくたばりぞこないは黙ってろクソボケ!! ハッキリ言ってテメーらなんぞよりカテレアさんの方が大事なんだよ!」

 

「なっ……!?」

 

 

 頭に血が昇ったせいで、何か言ってしまった感はあるが、もうどうでも良い。

 早くしなければカテレアさんが殺されてしまうんだ。今更どうでも良いジジィ悪魔なんぞの言葉なぞ知ったことか。

 

 

「待て元士郎、バックアップが必要だろ?

レイヴェル、俺と祐斗とセラフォルー・レヴィアタンを同時に飛ばせ。

その後白音と黒歌とゼノヴィアとギャスパーとでフェニックス家に戻って準備しろ」

 

「了解ですわ一誠様」

 

「よし、聞いたなセラフォルー・レヴィアタン! 貴様も来い!」

 

「う、うん……!」

 

 

 ご機嫌とりなんか要らねぇよ。地位なんてものも必要ない。

 そんなものよりもっと大事な友達が俺には要るんだ。

 だから俺は迷わずカテレアさんを助ける。

 

 

「サーゼクス・ルシファー……重々借りを作ってしまってすまんな」

 

「構わないよ。ここの煩い連中は僕が抑えておくから、気にせず行ってくると良い。

まあ、本音を言えば安心院さんに膝枕をしてくれるように頼んでくれたら嬉しいかな?」

 

「………。ホントにぶれんな貴様」

 

 

 足元に転送用の陣が広がり、光を放つ。

 

 

「元士郎くん……ごめん、私のせいで……」

 

「アンタのせいじゃない……だから謝るな」

 

 

 その際痴女――いやセラフォルー・レヴィアタンが泣きそうな顔してまた謝ってきたが、こればかりは本気で関係ないのでフォローをしてやりつつ、俺達は目映い光と共にその場からシトリー家へと転送した。




補足

と言っても書き直すかもなんで特には……。

強いていうなら、元士郎くんに対するヒロイン度が暴上がりしてるカテレアさん的な。








 進化もしてない、強くにもなれてない。
 全部単なる偶然でそう思われているに過ぎない俺は、見せしめ目的にボロボロにされていたカテレアさんを目にした瞬間その想いは爆発した。


『もっと、もっと力を……! 強くなって友達を守れる力を……!』


 その想いが俺の神器に呼応した時、初めて真の覚醒をする


『俺は匙元士郎……否! 我が名は――』





『呀……暗黒騎士!』


全てを喰らい、糧とする暗黒の鎧騎士へ。


次回

『黒炎』


※まあ嘘ですけど。

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