生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

46 / 65
完全決着前のほのぼの……だろうか。

※ちょっと直しました。


騒動後のデビル共

 シトリーの乱心。

 後にそう呼ばれる事件は、またしても人と転生悪魔の若者により終焉へと導かれた。

 

 特に元ソーナ・シトリーの兵士だった少年、匙元士郎の覚醒は、会合の際に居合わせた冥界上層部と若手悪魔を大いに驚愕させるに充分な程だった。

 

 

『俺は匙元士郎でも、転生悪魔の兵士でもない……!』

 

『我が名は呀――――暗黒騎士!』

 

 

 現魔王派により敗れ、それでも反逆を目論んでいた旧魔王派の中心人物の一人であったレヴィアタンの血族者を戦わずして投降させたばかりか、親密な間柄にまでなる。

 更には今回の事件により危機に陥った彼女を助ける為に、現魔王派の上層部に対して自分の身すらどうでも良いから助けに行くと清々しい啖呵を切った姿もあってか、ますます元士郎の名前は有名になっていた……良くも悪くもだ。

 

 

 

「――以上の事から匙元士郎の地位を更に昇格させ、悪魔の駒(イービルピース)の所持を認めようと思う」

 

「………………………………………………。」

 

 

 シトリー家の存続すら危ぶまれる戦いも終わり、途中で中断された若手悪魔の会合が再開されるや否や、魔王の席に座る現・ルシファーであるサーゼクスの言葉は、若手悪魔達を驚かせ、一部否定派の上層部の顔を曇らせた。

 

 

「またしても彼等によって我等悪魔は尻拭いをして貰ったんだ。寧ろ昇格程度で済ませられる訳がない程にね――おっと、まさかこの中で『今回は勝手に彼等がやったんじゃないか……』なんて思う恥知らずは居ないよね?」

 

『……』

 

 

 にっこりと、笑顔の威圧というべきなのか……。

 四大魔王の中ではセラフォルーと肩を並べる程に兵藤一誠達を何かにつけて庇い立てするサーゼクス・ルシファーの良い人そうな笑顔に対し、あまり一誠達を快く思わない面子は内心小さく舌打ちをする。

 しかし相手はあのサーゼクス・ルシファー……。

 甘いと何故か誤解されている男だが、基本的に他者に対してドライで無関心で、それでいて敵となれば何の躊躇もなく悪魔という種族から逸脱した力で叩き潰す現代の超越者の一人。

 

 表だって意を唱える――ましてや逆らう等、戦時中からのサーゼクスを知る面々に更々無く、ただただ無言で渋い表情を浮かべている。

 

 

「ん、結構」

 

 

 笑顔という名の威圧で『口だけの役立たず共が黙ってくれて何よりだね』と、内心黒すぎる事を考えながら、満足気に頷いたサーゼクスは、早速とばかりに安心院なじみに一番に近く、そして何時でも会おうと思えば会える唯一の人間である兵藤一誠とその仲間達に揉み手揉み手で媚を売り始める。

 

 

「そういう訳でだ、カテレアを確実に守れるという意味では悪くないと思うんだ……どうかな?」

 

「は、はぁ……でも俺だけってのは……」

 

 

 ニコニコニコニコニコニコと寧ろ露骨な笑顔に元士郎はちょっとドン引きしながら、自分だけ何かを貰うのは気が引けると、後ろで全員して姿勢良く整列している一誠達の方へ振り向く。

 

 ちなみに、サーゼクスがカテレアと元士郎の距離を物理的に縮めまくる案を出している事に対し、両親の治療と催眠を掛けて動けなくしてから戻ってきたセラフォルーが、何処か恨めしそうな顔でサーゼクスを睨んでおり、彼女の放つ氷点下のオーラも相俟って、誰も直視が出来ない。

 

 しかしサーゼクスはそんな事は知らんとばかりに爽やかに同じく帰還した元士郎、祐斗、一誠……そしてフェニックス家に戻り『準備』を終わらせたレイヴェル、白音、黒歌、ゼノヴィア、ギャスパーに微笑みかける。

 

 

「当然だけど、木場祐斗君と兵藤一誠君にも――」

 

「いや結構だ。

俺は只の人間だし、そもそも今回は元士郎の力により解決されたものだ。礼も褒美も必要ない」

 

「同じく。

ただ友達を助けた……それだけですから」

 

 

 元士郎と同じく報酬を渡すというサーゼクスの言葉に一誠と祐斗は自分自身に必要無いと首を横に振って辞退する。

 

 

「だが、カテレア・レヴィアタンの身柄をフェニックス家預かりにして貰えればそれで良い」

 

「それは当然だね。

物理的にも立場的に彼女を守るにはフェニックス殿の所が適任だ」

 

「むー……!」

 

 

 何故か白髪姿の一誠に周囲が怪訝そうな表情向けてるが、それら全てを無視してサーゼクスと話をどんとこ進めていく。

 

 

「ま、待て。

そう簡単に話を進めてしまっても、我等の承認を――」

 

「それとサーゼクス・ルシファーよ、すまんが『あの件』も……」

 

「わかってるよ、そろそろ互いに鬱陶しいからね。さっさと化けの皮でも何でも剥がして終わりにしてしまうべきだ。今後の事も考えれば余計にだ」

 

「うむ。

だが貴様に借りばかりでは悪いし、その、まあ、何だ……今度『セーラー服なじみ』と『巫女服白髪なじみ』の生写真でも――」

 

「ファッ!?

ほ、ほほほ、ほんとに!!? 欲しい欲しい超欲しいっ!

もうこれからは何でも言ってくれ! 越権行為と言われ様が何でもやるから!」

 

「あ、あぁ……あの、アンタの奥さんが凄い目を」

 

「え? 知らないよこんな変態。

そんな事よりアレなの? ちょ、ちょっと過激なのとかは?」

 

「……………。さ、さぁ……?

(じょ、冗談なのに本気にされた……)」

 

「セーラー服と巫女服安心院さん……にへへへへ!」

 

 

 

『…………』

 

 

 急に目をギラギラし始めるサーゼクスも、ドン引きしている一誠も難癖付けようとした初老悪魔の話を聞こうともしない。

 そもそも人としての力を逸脱してるといえ、人間が魔王相手に対等なやり取りをしているのは他の悪魔達からすればシュール極まりない訳で。

 黙して只立つのみを貫こうとしていた元士郎も、これには苦笑いしか出来なかったとか。

 

 

 

 

 

 ハァ、カテレアさんが無事で良かったと思うけど、結局今回もまた一誠達に助けられただけなんだよな。

 妙な力を獲ても、結局それは傷つけられた後だったし、マジで今度は絶対にこんな事が無いようにしないと……。

 

 

「カテレアさんは大丈夫だったの?」

 

「ええ、一誠様の幻実逃否(マイナス)により傷は否定されましたし、精神的にも問題ないとの事ですわ。

それにしても匙さんがよもや木場さんと同じ進化を辿るとは驚きでしたわ」

 

「ぼ、僕も近くで見たかったです……先輩のお姿」

 

 

 結局最後まで仕切り役っぽい初老のおっさんからは良い顔されないまま会合は終わり、帰るために控え室でちょっと談笑をしていた俺達。

 

 マイナス側のスキルの効力を絶大にする為に使用した廃神モードって奴のせいでなった白髪の姿に、レイヴェルさん以外の面々は最初かなり驚いていたが、今は慣れた影響で特に変わらず普通に接している。

 

 

「まさかの私とお揃いです。これはもう結婚ですね」

 

「お、お揃いというのとは違うというか……お、おい何か近いぞ白音」

 

「どっちでも良いよ。結局一誠の見た目が変わろうが関係ないもん」

 

「あ、あっそう……そう言って貰えるのは嬉しいんだけど、お前も近いぞ黒歌。

というかその……当たりまくってて落ち着かない」

 

「いい加減イッセーにメチャメチャにされたい欲求が爆発しそうだからねー? 正直言うとお腹の中でイッセーが欲しいよってキュンキュンしてるんだよ?」

 

「燃やされたくなければこんな所で一誠様にベタベタすんな淫乱雌猫。

まぁ、一誠様に変わり無い云々の考えだけは同意ですけど」

 

「ふっ、お前に言われると心底ホッとするよレイヴェル……」

 

「ふふ、廃神モードの一誠様は子供の頃から何度も見てましたから」

 

 

 まあ、当然一誠にお熱なこの三人はこんな様子だ。

 何気にアイツハーレムだよなー……。

 

 

「ふむ、暗黒騎士か……」

 

「うん、凄かったよ元士郎君」

 

「だろうな、元士郎という男なら特にそうだろう。

だが私はお前の銀牙騎士の方が……」

 

「え、あ……う、うん……ありがと……」

 

 

 ……。で、騎士二人組も相変わらず天然でお熱い。

 フリードがラブカップルと煽るのも無理無いよなコレ。

 だって一番普通だし。

 

 

「元士郎先輩……。

あの、後で僕にも見せてもらえますか? 鎧を纏った姿を」

 

「ん、良いぜ。

あんまり見ても面白いとは思えねーけど」

 

 

 うーん……それにしても俺って何で元主に惚れたんだっけ? 今もそうだが、あの時は輪に掛けてクソ餓鬼だったんだなとしか思えねぇぜ。

 

 

「…………。後、カテレア様とキスしたんですよね?」

 

「ぶっ!? な、何で知ってるんだ……!?」

 

「…………。セラフォルー様が泣きながらブツブツと独り言を仰有っていたのを聞いちゃいました」

 

 

 分からない。そして思い出せないほどどうでも良くなってたせいだったからか、あの人からされた時は頭がパンクしそうになる位びっくりしたんだよな……。

 セラフォルー・レヴィアタン経由でギャスパーに知られて、何故か悔しそうな顔を向けられてるのが意味解んないけど。

 

 

「あれは、その……」

 

「満更じゃない……ですか?」

 

「だ、だって思っていた以上に良い人だったというか……余計に」

 

 

 そうなんだよなぁ。俺、あの人にされたんだよな。

 まさか過ぎて色々とワケわかんなくなっちゃったけど、あの瞬間だけは頭の中に鮮明に残ってる。

 目の前で一度殺されたのも、何も出来ずにただ見ていただけだった俺自身も。

 

 

「だからこそ、今度こそあの人を守る……そのつもりだぜ」

 

「いいなー……カテレア様」

 

「いや勿論お前等もだ。

今まで散々助けられてばかりだったし、今度こそ恩返ししなくちゃな」

 

 

 この思い出だけは、自分自身の戒めの為に忘れてはならない。

 この思い出を糧とし、もっと強くなる為に……。

 

 

「…………。何かご用でもバアル殿?」

 

 

 例えあらゆる奴から敵意を向けられようとも、それをなぎ倒して強くなる。

 友を守る……それが俺の生きる意味なんだから。

 

 

 

 サイラオーグは噂である程度知っていたとはいえ、ある意味ショックだった。

 人の身でありながら、生きる伝説とまで畏怖されているコカビエルを単身で倒した男が居て、その仲間達もまた自分達と変わらない年代なのに異常な強さを保持している。

 背後に変わり者一族であるフェニックス家の影があるのもそうだが、何よりもサイラオーグは自分が若手悪魔ナンバーワンだと言われている事が恥ずかしかった。

 

 

「バアル……だと?

―――ハッ!? そ、そうだアナタには謝らないといけませんね。

申し訳ございません……会合前は実に迷惑をかけてしまいまして……はい」

 

「……。い、いや」

 

 

 何せ目の前に居る種族バラバラな集団の多くは確実に自分を越えている実力者なのだ。

 一体どれ程の経験を経れば此処までになるのか……特にサイラオーグが気になるのは、ペコペコと慌てて平謝りする人間・兵藤一誠と、先程シトリー乱心事件の際に先陣を切って出撃し、見事果たした転生悪魔の兵士と騎士……匙元士郎と木場祐斗。

 

 

「個人的に用があって来た。

だから立場も気にせず――」

 

 

 

 この三人はサーゼクスがわざと仕込んでシトリー乱心事件の様子をリアルタイムで隠し撮りしていた映像で魅せられたせいで、余計サイラオーグの心に火をつけた。

 

 故に、単身で和気あいあいやっている所に赴いたのだが……。

 

 

「サイラオーグに先を越されましたか……」

 

「む!?」

 

「考えることは一緒みたいだね……ふふ」

 

 

 考えている事は似通っているらしく、サイラオーグに続いて現れたのはサイラオーグと同じ若手悪魔として会合に出席し、ゼファードル・グラシャラボラスから最初に絡まれていたシーグヴァイラ・アガレス……そして妙に影の薄かったディオドラ・アスタロトに、レイヴェル達は一斉に立ち上がり、レイヴェルを前に整列しようとする。

 

 

「いえ、既にアナタ方のやり取りを見て把握しているつもりですので、畏まらずに結構です」

 

 

 しかし若手悪魔も間抜けではない。

 シトリー乱心事件の際、何の権力もこの場に居る資格すら本来は無い一誠がレイヴェルに指示を送り、それを当然の様に従うばかりか様付けまでしていたのだ。

 寧ろ畏まられる事自体、おちょくられてる気がして嫌だったので、普通にして欲しいと嘆願する。

 

 

「…………だ、そうだがどうするレイヴェル?」

 

「向こうの嘆願なら断る理由はありませんわね。

寧ろ私は一誠様より上なのが嫌ですしね」

 

「おいおい……。

ま、隠してるよりマシか」

 

 

 フッと理由不明の白髪頭で小さく笑みを溢した一誠に三人の若手悪魔はちょっと息を飲んだ。

 何せゼファードルの件の際、自身を加えて眷属総動員で止めようとしたのにまるで止まらず、結局止めたのがレイヴェル達だったのだ。

 今はあの時とはまるで違う雰囲気で、寧ろ何も感じられないが、それでも淀んだその瞳は『底知れなさ』を感じさせる。

 

 

「ゼ、ゼファードル・グラシャラボラスの件ではお世話になりました」

 

「は? ………。いや悪いが何の事だ?」

 

「へ?

ほ、ほら……アナタが気を逸らしてくれたおかげで……と言いますか」

 

「気を逸らした……………あぁ」

 

 

 そして何よりも『やり辛い』。

 底知れなさと、異常な戦闘力を持つ一誠にまずは挨拶とジークヴァイラが頭を下げるが、一誠はまるで気にもせず寧ろハッキリと言った。

 

 

「別に貴女の為にとかは無い、そもそもアレは偶然そうなっただけだしな。

ぶっちゃけ、絡まれなかったらそのまま放っておくつもりだったぐらいだ」

 

「は、はぁ……」

 

 

 ゼファードルとは超真逆の……明らかに『キミに興味が一切ございません』な表情でキッパリ言い切る一誠に微妙に悔しさを覚えるジークヴァイラ。

 

「あくまで俺はレイヴェルを守るつもり――という建前の基、知らん男にベタベタとレイヴェルが触られるのが嫌だったのと、笑えもしない台詞をそのゼファードルとやらが吐いたので頭に血が昇ってしまったんでね。

……。大体何がジークヴァイラのおねーさまより楽しめそうだだカスが……」

 

「………」

 

 

 

 

「これでまだ解らぬ様なら今度は―――――――っ!?

あ……っと、こほん……すまん、だからとどのつまり、俺の未熟な精神から放り出した小さな独占欲がだな」

 

「んっ……やぁん♪

嫌ですわ一誠様。こんな大勢の前で言われたら、レイヴェルは嬉しくて一誠様と早く子を為せと下腹部から喜びが沸いて――」

 

「レイヴェルも私達の事言えないにゃ」

 

「所詮同じ穴の狢」

 

「黙りなさい! 常時発情してる貴女方に言われたかありません!」

 

 

 

「まぁ、そういう訳なので全く気にしなくて結構。寧ろ忘れてくれ」

 

「………………」

 

 ゲスな視線を向けられるのは不愉快だが、こうまで無関心な顔をされるとそれはそれで色々と負けた気分というか……逆にあそこまで激怒させる程に大切にされているレイヴェル・フェニックスにそういう意味では無いが嫉妬すら覚える。……何か一誠に言われてクネクネしたり、猫妖怪の姉妹と言い合いしてるけど。

 じゃあそれならと、サーゼクスの仕込みで見た映像で暗黒騎士呀なる鎧を纏ってシトリー夫婦を蹂躙し、此度の件で更なる出世を果たした匙元士郎なる転生悪魔に話し掛けてみるも……。

 

 

「アナタの事も映像で拝見しました。暗黒騎士の力を……」

 

「あ、はいそっすか」

 

「なっ……!?」

 

 

 この少年も少年で自分なんてどうでも良いとばかりに首をゴキゴキと鳴らしていた。

 いや確かに接点なんて眼鏡呼ばわりされた時以外無いけど、こんな無感心顔される謂れも無かったので軽くイラッとする。

 

 

「そうだ、帰りにカテレアさんにゼリーでも買って帰ろ。………あの人の舌に合うのが売ってれば良いが」

 

「あ、僕も付き合いますよ先輩」

 

「マジ? 半分女だし好みの判断はお前の方が詳しそうだし、頼むぜ」

 

 

 

「な、何ですかこの強烈な敗北感……」

 

「……」

 

「プッ……どんまい?」

 

「う、うるさい! どっちも笑わないでください!」

 

 

 名家の令嬢なんぞ糞喰らえな対応と、余りにも無関心な二人の態度を見たサイラオーグが無言でジークヴァイラの肩を叩きながら生温い笑みを浮かべて慰め、ディオドラに至っては普通に嘲笑ってきたので、羞恥と悔しさに思わず顔を真っ赤にしながら睨み付ける。

 

 

「く、ど、どうせ彼も無関心なんでしょうが、此処まできたら最後までやってやりますよ!」

 

 

 最早ヤケクソになったジークヴァイラ。

 ゼファードルぐらいとなれば嫌悪だが、無関心は無関心で悔しいし、別にそんな気持ちなぞ抱きもしないが女としてのプライドもある。

 故に最後の矛先であり男性である、白銀の鎧を纏いし金髪の少年にちょっと威圧的になってしまいながら話し掛けてみると……。

 

 

「あ、見ていただけたとは実に光栄です。

ありがとうございます、これからも友と切磋琢磨していきますのでどうぞよろしくお願いします」

 

 

 …………。前述二人が嘘の様に丁寧に返事をされた。

 

 

「へ!? あ……は、は、はい……」

 

 

 これには逆の意味で不意打ちを食らってしまい、言葉に詰まらせてしまうのは多分仕方ない。

 何せジークヴァイラ達は知らないが、廃神モード状態のせいで色々と底意地が悪い一誠と、さっさと帰ってカテレアの無事な姿を見てから修行したい元士郎の態度がこれなのだ。

 祐斗の対応は未熟なのかもしれないけど十二分に紳士的だったのだ。

 

 

「きゅ、急に振られてびっくりしたぁ……」

 

「無難な対応だと思うし、大丈夫だと思うぞ?」

 

「そ、そうかな?」

 

「うむお前の社交性は素晴らしいぞ。私も是非見習いたい」

 

「そ、そんなに誉められると照れちゃうな。ゼノヴィアさんからだと余計だよ」

 

「む……む……ほ、ほらやっぱり」

 

 

 

「………」

 

 

 まあ、疎外感というか敗北感は全然変わらなかったが。

 

 

「それじゃあ俺達はこの辺で……。

あの、個人的な話なんだが……今度お前達の修行を見に行っても構わないか?」

 

「む? ほほぅ……サイラオーグ・バアルは凄い努力家と聞いたことがあるが成る程な。

見に来る処か寧ろ夏休み期間はフェニックス家に皆居るし、シュラウドのおっさんとエシルねーさんも歓迎するだろうから一緒にやってみないか?」

 

「な、なに!? い、良いのか!?」

 

 

 何はともあえ、ジークヴァイラの敗北感を残した若者同士の会合はこれにて終了した。

 然り気無くサイラオーグが変わり者最強一族のフェニックスと一誠達の強さの秘密を探る処か、一緒にしようじゃないかと提案して貰い、次の日からサイラオーグが来城する流れとかになっていたりするが……。

 

 

「わ、私ってもしかして男性に受けない女……?」

 

 

 ジークヴァイラは独り女としての自信を、よりにもよって身内以外がどうでも良い思考の面子のせいで粉々にされて項垂れ……。

 

 

「ねぇ、兵藤君……初対面のキミに図々しくも一つ悩みを聞いて欲しいんだけど……」

 

 

 最後の一人……ディオドラ・アスタロトは一誠達――いや、一誠達と関わった集団で今は最下層送りとされている中の誰かを幻視しながら、一誠達からすれば実に胡散臭い笑顔を浮かべながら悩みの相談を持ち掛ける。

 

 

「……。(赤龍帝を始末する役は取られたが、彼女はまだ死んでない。

ふふふ……キミだけは絶対に取り戻す)」

 

 

 寝取られた金髪シスターを取り戻す為に。

 

 

「……。何故だかディオドラ・アスタロトとやらから、なじみ関連でおかしくなるサーゼクス・ルシファーの気配を感じるのだが……」

 

「じゃあそれ確定変態じゃねーかよ」

 

「ちょ、ちょっと二人とも……! ま、まだそうと決まった訳じゃ――」

 

「ゲッ、今見えたんだけど、アイツが羽織ってるマントの下は、あの男に引っ付いてたシスター服の娘がプリントされたシャツにゃん」

 

「―――――ごめん、僕が間違ってた」

 

 

 動体視力が異常じみてる黒歌によって、シスター萌えの性癖が既にバレてしまってる事も気付かず――

 

 

「相談というのはね、実は解散となって最下層に閉じ込められてる元グレモリー眷属の中に僕の妹であり見習いシスターだった子が居て――」

 

「お、おい何か語り始めちゃったぞ? どうすんだよ?」

 

「うむ……見習いシスターって誰だ?」

 

「見習いシスター……思い出しました。確かアルジェント元先輩ですよ」

 

「あー……うん、間違いないね。

確か血の繋がった家族は居ない筈というか、悪魔の時点で嘘がバレるって解らないのかなあの方は?」

 

 

 

「寝るときも一緒でお風呂も一緒で何もかも一緒で、最早兄妹の枠すら越えた愛で結ばれてるんだ僕とアーシアは! だから何とかならないかな!?」

 

 

 ディオドラ・アスタロトは……かつて正気だったアーシア・アルジェントに神器で治療を受けた以降、異常なまでの執着心を抱いた結果――

 

 

「ついでに赤龍帝のナニを永遠に使えなくしても良いかな!?」

 

『……』

 

 

 どっかの誰かみたいな変態に目覚めてしまった哀れな悪魔だったのだ。

 血走った眼光で問うディオドラに、一誠達はただただしょっぱい顔だったのだという……。

 

 

「変態はないにゃー」

 

「ええ、ましてやストーカーなんて最低ですね」

 

「絶対当時の私物とか盗んですよあの人……」

 

「うわー……ドン引きですわ」

 

 

「…………。え、これ突っ込んで良いのか俺は三人に?」

 

 

 そんな新たな敵……っぽい何かと邂逅してしまった一誠達はそのまま帰った。

 そして残った最後の仕事である過去の清算を果たすまで、一誠達はフェニックス家でのほほんとしながらも、その実力を更に磨きあげていく日々を過ごす日常へ……。

 

 

 

 

 正直セラフォルーは焦っている。

 実家の状況が壊滅状態になってしまった……では無い。

 自分より遥かに後知り合いの筈のカテレアと、マイハニーこと元士郎の距離が近いのだ。

 しかも先のシトリー乱心事件と、何故か水を得た魚のようにサーゼクスが動いたせいで、今カテレアはフェニックス家預かりとなっていてフェニックス城で暮らしている。

 

 つまりそれは、夏休み期間の丸々一ヶ月を元士郎とカテレアは一緒なのだ。

 まさに由々しき事態故に、最近のセラフォルーはデキる女アピールをしようと魔王の仕事を正確に……されど超絶スピードで日々終わらせては、カテレアの様子を見に来たと嘯いてフェニックス城に足を運んでいた。

 

 

『くっ……』

 

『剣に関しては僕の方が一日の長があるからね、そう簡単には負けないよ!』

 

 

 今日も超絶スピードで仕事と壊滅状態のシトリー家の後始末を済ませたセラフォルーが訪ねると、フェニックス家中庭にて鎧を纏った二人の少年が得物を持って実戦さながらの斬り合いに興じている様子が見えた。

 

 

「せんぱ~い! 頑張ってください~!」

 

「元士郎、熱くならず落ち着いて」

 

『へへ……承知!』

 

 

 剣がズブの素人である元士郎の剣術特訓に『力の制御の封印がされていない』カテレアが仲間達と混ざって眺めている。

 フェニックス家に身を置いているので当然と言えば当然なのだが、セラフォルーの釈然としない気持ちは一向に晴れる様子は無く、楽しげに眺めていたカテレアの隣にちょこんと座る。

 

 

「や、カテレアちゃん」

 

「セラフォルー」

 

 

 思えばすれ違いばかりな関係だったのに、気付けば同じ少年に惹かれているのは何の因果なのか。

 黒き鎧を纏う元士郎の修行を眺める二人は、前ほどギスギスしたものは無くなっている――と少なくともカテレアは思っていた。

 

 

「良いよねー……カテレアちゃんは……」

 

「………」

 

 

 が、勢いで元士郎と交わしたキスとサーゼクスによる提案以降、セラフォルーはかつてレヴィアタンの称号を奪われた自分が向けていた様な嫉妬念を向けてくる様になった。

 カテレアも鈍くはない。理由は分からないが、セラフォルーもあの放って置けないタイプの元士郎に惹かれているのは、同じ惹かれ者同士としてよく分かる。

 

 しかしだからといってセラフォルーに遠慮する気は全然無いので、カテレア自身は突っ掛かる事もせずただ構えているだけだった。

 

 

「今日も履いて来なかったんだけど、元士郎くんはドキドキしてくれるかな? どう思うカテレアちゃん?」

 

「…………。だから痴女魔王と元士郎から蔑まれるんですよ貴女は」

 

「えー? でもでも、前は鼻血出しながら気絶するほど喜んでくれたんだけどなー」

 

「それは多分、ショックが大きすぎたせいで気絶したんだと思いますけど……」

 

 

 ……。というか、何もしなくても勝手に自爆しそうな相手に警戒もへったくれも無いというべきか。

 斬り合いが終わり、鎧を返還して生身に戻った元士郎が膝を付きながら汗だくで息を切らせている姿を、瞳を潤ませ、頬を紅潮させながら眺めているセラフォルーに引きながらカテレアは内心、その変態性が治らなければ一生無理だと思った。

 だいたいそんな短いスカートで下着を付けてないって……私はこんな女に負けたのかと思うと逆に惨めにすら思えてしまうのも無理はなかった。

 

 

「ふぅ、やっぱ木場は強いな……」

 

「お疲れさまです元士郎」

 

「お水です」

 

 

 数十メートル上空では、飛行手段が無い筈の一誠……しかと廃神モード状態が、レイヴェル、白音、黒歌と共に、会合以降セラフォルーと同じくフェニックス家に足を運ぶようになったサイラオーグ達と組手をしていたりするその下で、フラフラした足取りで戻ってきた元士郎に労いの言葉を掛けるカテレアと男の子モードのギャスパーと……

 

 

「タオルゲーッツ☆」

 

「あ、返せ!」

 

 

 元士郎の身体を拭いたタオルを掠め取るセラフォルー……。

 会合以降、一誠達の存在とその実力を知り、己を高めたいと願う悪魔が訪ねてくる事が多くなることでフェニックス城は実に賑わう様になっていた。

 

 

「返せコラ!」

「やーだよ。

元士郎くんの匂いが染み付いたタオルに価値があるんだもん☆」

 

 

 ……。まあ、一部はそんな健全な理由では無いが。

 

 

「………………」

 

「私……何で負けたのか本当にわかりません」

 

「バカの行動は予測不能だからじゃないですか?」

 

 

 タオルを奪い取り、顔に押し付けながらハァハァし始める姿を見て更なるショックを受けるカテレア。

 かつての宿敵が年下の少年の持ち物を盗んで、ハァハァしてれば余計にである。

 

 

「はぁはぁ……元士郎くんの匂いがしてキュンキュンしちゃうよぉ……☆」

 

「……。陰我まみれだなこの女。

喰ったらさぞ強くなれるだろうぜ」

 

「え!? 元士郎くんったら私を食べてくれるの!?

そ、そんな……初めてなのにお外で、しかも皆に見られながらなんて……元士郎くんのえっち♪」

 

「やっぱ喰わずに殴った方が世の為だわ」

 

 

 元士郎の使用済みタオルでトリップしつつ、何の事を言っているのやら、ひたすら『ちょーだいちょーだい♪』と然り気無く引っ付こうと近付くセラフォルーから露骨に距離を取りつつ、ちょっと落ち込んでるカテレアを励ます元士郎。

 呀へと覚醒し、シトリー夫婦を達磨にした事で嫌ってくれると思いきやそうでもなく、寧ろ露骨になってきてるセラフォルーは元士郎でもよく分からず、なまじ魔王を名乗るだけの実力があるせいで煙にも撒けない。

 そして何より近日行われる完全な『清算』により起こる騒動を考えると、正直少しはセラフォルーに同情を覚えるので、今だけはアホを言わせても良いのかもしれないと思ってしまう。

 

 

「ぁ……ん♪」

 

「……。おい、今なんでブルッて震えんだ?」

 

「えへ、知ってるくせにー? ホントえっちなんだからー♪」

 

「……」

 

 

 ある意味ストーカー属性としては一番質の悪いタイプだ。

 しかもストーカーの自覚をしておきながら開き直ってるので余計にだ。

 

 

「ちゅーしようよ?」

 

「する訳ねーだろうが! ざけんな!!」

 

「ふざけて無いよ! 真剣だよ! カテレアちゃんは良くて私は駄目なんておかしい!」

 

「逆ギレしてんじゃねーよ! 寧ろホイホイする野郎の方がおかしいだろうが!!」

 

 

 ノーパンなのに気にせず飛び掛かって来るセラフォルーから逃げる元士郎。

 ソーナの件とシトリー夫婦の件で痴女魔王呼ばわりからセラフォルー・レヴィアタンと呼び名を変えた辺り、それなりに距離が縮まってるとはいえ、セラフォルーからすればカテレアの事もあるのでまるで足りない。

 

 キスしたのであるなら自分だってキスをすれば良いし、そこから続けで凄いことをしちゃえば尚良い。

 

 

「やめなさいセラフォルー! 何時までもしつこいと本当に元士郎に嫌われますよ!」

 

「ふーんだ! 私はこうでもしないと勝てないんだもん! 寧ろ元士郎君に変態と罵られながら縛られてバシバシされても良いもーん!!」

 

「するかっ!!」

 

 

 セラフォルーという女性は……実に情熱的だった。

 

 

 そして……。

 

 

「イッセーの使いたてタオルとジャージだにゃー!! あとペロペロ!」

 

「ひぇっ!? く、首はやめてくれぇぇっ!?」

 

「ま、また……! やめてください黒歌姉様! 私だってべろちゅーしたいのに!」

 

「っざけんな変態雌猫が!! 今日こそ燃やし尽くしてやるぞゴラァ!!」

 

「レ、レレ……レイヴェル口調口調! マジ切れエシルねーさんになってるから!」

 

 

 

 

「……………。なるほど、こういう日常が兵藤達を強くするのか……」

 

 

 類は友を呼ぶ………つまり、そういう事だたった。




補足

安心院さん←サーゼクスさん←グレイフィアさん←超シスコンという流れで続くストーカー連鎖

いや、サーゼクスが安心院さんに対してやってるのは兎も角、グレイフィアさんは夫になんだからまだ良いけど……似た者夫婦化してるのは否定しようもない。

そして一誠はなじみさんの生写真を借り返しであげると言ったことをかなり後悔してたり……。

理由? ちょっとスケベなのくれ! とギラギラした目で言われたらそうもなろう……。


その2
駒持ちの地位まで昇格は内定しましたが、まだ駒は持ってません。
色々と落ち着いてから後日改めて……ですかね。

まあ、既に彼を支える候補は居ますが。

その3

はい問題です。

キスをしてました、ヒロインしてました。
だからといって彼女が大人しく引き下がりますか?

答えは……まあ、今話の通りさ。


ね、やっぱりセラフォルーさん可愛いでしょ?(棒)


ラス。

ディオドラさんは変態だった。
ただし……こう、この世界基準の変態というか……まあ、サーゼクスさんと似てるようでちょっと違うというか……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。