生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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ぶっちゃけ正直、一誠本人にしてみれば本来の宿主言われてもピンと来ない。

イリナさんとの面会は次回になります。


生徒会長と赤い龍の事情

 紫藤イリナ……。

 最後に見たのがコカビエルの時で、その時もやられて気を失っていたから会話なんてしてすら無かったし、そもそも会話になるとも思っちゃいなかったが……。

 

 会うのか俺が? 会うだけ会うと言ってしまった手前今更後には引けないが、会うのか俺が? ビンタされて嫌いと言われた相手と会うのか……。

 

 流石に戸惑うぞこれは……。

 

 

 

 

 

 本人は隠しているつもりなのだろうが、彼に近しい者達にしてみれば殆どバレバレだった。

 紫藤イリナの事然り、誠八だった者との決着後に一誠の中へと入り込んだモノ然り……。

 

 特にマイナスを失ったと同時に宿ってしまった力に関しては、その力が一誠の足を引っ張っているという、割りと早急に手を打たなければ後々マズイ展開になってしまうかもしれない。

 

 

「なに? 赤龍帝?」

 

「この前の検査の結果、何故か兵藤誠八に宿っていた筈の力が一誠君の中へと入り込んでるみたいなんだ」

 

「あぁ、その事か……」

 

「流石に気付いてたか? どうやら安心院さん曰く、本来の持ち主――つまりお前の中へと戻ってきただけの話らしいが……」

 

「うむ……まだ残ってるスキルと足の引っ張り合いになってしまってると言いたいのだろう? 正直に答えるとその通りだ、最近進化を感じなくなった」

 

 

 本来の宿主へと還ってきた、本来の力である赤龍帝。

 神を滅する器としての強大な力が備わっており、その元となる力はかの二天龍の片割れだ。

 しかるに、その本来の力を奪われた事で代わりに覚醒させたスキルを持つ今となっては、寧ろその力が一誠の精神依存である無神臓と相殺しあってしまい、逆に枷になってしまっていた。

 

 どちらも想いの強さを元に力を増す……つまり精神力を糧とする為……そして何より一誠自身が赤龍帝の力を不要としている為、その思いとで足を引っ張りあっているのだ。

 

 

「紫藤イリナは明日決着を付けるにしてもだ、赤龍帝の力に関してはそうはいかないぞ一誠? 何せ神器だからな……」

 

「うん、このままだと一誠くんの成長の邪魔になってしまう」

 

「ふむ、やはり放置という訳にはいかんのか……。一応二度ほど意識内で会話した際に貴様の力は一切使わないし、神器だけを抜き取る方法を知る者に頼んで他の宿主へと移すという話をしたのだがな……」

 

 

 最近の修行ではベタなミスをして怪我を何度かしていた一誠に対し、神器を持つ者として心配の声を向ける祐斗と元士郎。

 一誠としても確かに枷になってる自覚はしてるのと、赤龍帝が悪い訳じゃないが、誠八だった男が使用していたという先入観のせいで全く使いたいとは思わなかったりもしたので、早いとこ神器に詳しい誰かに上手いことこの力だけ抜き取って貰うか何かして欲しいと思ってる。

 

 

「堕天使のアザゼルさんが神器に詳しいと思いますよ。噂じゃ神器の研究をしているとか」

 

「なに? アザゼルというと確か堕天使のトップだったか……」

 

「なるほど、確かに彼なら上手く一誠君の中から神器を抜き取ってくれるかもしれないね」

 

 

 紫藤イリナとの面会を明日に控える生徒会室にて展開される、赤龍帝の力の後始末についての会議。

 宿主になってしまってる一誠は勿論として、生徒会室にて会議に参加する生徒会メンバーと+α達もまた、一誠が赤龍帝の力を使うのは違和感しか覚えないので、このままなぁなぁで宿すよりは抜き取って他の誰かに宿した方が赤い龍にとっても良い話なのかもしれないと思っているのだ。

 

 

「決まりだな、明日の事が終わり次第、堕天使総督殿に頼んで――」

 

『待て……』

 

 

 なので明日の事について終わらせ次第、赤龍帝の事とも決着を付けてしまう方向……つまり赤龍帝の力を抜き取る結論に向かおうとしたその時だった。

 それまで決して表に出ることが無かった赤龍帝の籠手の元――つまり『赤い龍(ウェルシュドラゴン)』が神器の形として一誠の左腕全体を覆う様に出現すると、この結論にいきなり待ったを掛けてきた。

 

 

「二天龍の片割れである赤い龍でしょうか?」

 

「突然何だ貴様……」

 

 

 左腕に大型の真っ赤な籠手として勝手に出現した赤い龍に、勝手に乗っ取られた様な気がして顔をしかめる一誠とお茶のおかわりを一誠の為に準備していた最中のレイヴェルが反射的に冷たい声を放つ。

 いや、良く見ると元士郎達も警戒しているのか若干身構えている。

 

 

『そう警戒するな、別になにもしやしない。

ただ、本来の宿主であるお前から俺を抜き取るという話に待ったを掛けにだな――』

 

「待っただと? 貴様としても使うつもりが無い宿主より使う気満々の宿主の方が良い筈だし、この前はそれに同意しただろうが」

 

 赤い龍が一誠から出ていく事を躊躇う様な事を言うので、思わず一誠の声が低くなる。

 只でさえ兵藤誠八だった男は、自分の顔をトレースした容姿だったのに、本来の宿主が自分だったとはいえ、使えばあらぬ誤解をされてしまう可能性の方が高い力なんて絶対に使いたくない。

 

 寧ろ一刻も早くこのしがらみから解放されたいのだ。

 

 

「一誠様が使いたくないと言ってる以上、一誠様の中に宿っても無意味ですわよ?」

 

「そうよ、イッセーが使ったとしてもしも変な誤解をされたらアンタ責任取れるの?」

 

「てか、お前の力のせいで無用な枷になってんだけど」

 

「それに誠八君だった男が使ってたしね……」

 

 

 どこぞのアルター使い的なデザインに似てなくもない籠手に向かって次々と否定側な言葉をぶつける仲間達に赤い龍は若干押し黙る。

 

 

『それは本人から聞いたが、それでもやっと奴から解放されて本来の宿主――それも間違いなく歴代最高峰の予感をさせる使い手に巡り会えたんだ。

俺としては白いのとの決着をつけてからの方が……』

 

「白いの? というと二天龍のもう片割れの白い龍の事でしょうか?」

 

『あぁ、死にかけの偽の宿主の中からこの一誠とコカビエルという堕天使にボコボコにされていた白いのとその宿主を見ていたが、どうせならこの一誠が奴を潰せば因縁は終わると思ってな。だから白いのと戦う時だけ俺を――』

 

「断る」

 

 

 因縁の相手と決着をつけたいと主張する赤い龍に一誠は間髪入れずに切り捨てる。

 

 

「ハッキリ言ってしまうが、貴様の因縁とやらに興味なんて無いんだよ。

何故俺が貴様の為にわざわざ必要の無い戦いをせにゃならん? それこそ別の宿主に頼めば良かろう」

 

『だが元々の宿主はお前――』

 

「それはもう聞いた。しかしそうは言われても俺にはその自覚が無かったのだから元々も何も無いし、貴様の因縁に付き合う義務なんて無い。

兵藤誠八だった男の出現で俺から奴に強制的に移らされ、無理矢理使役されていた事は同情できるが、だからといって俺は赤龍帝とやらを名乗るつもりも、赤龍帝になるつもりも無い。俺には俺の人生があるのだ……貴様の因縁に巻き込まれるのはゴメンだな」

 

『………』

 

 

 赤い籠手に覆われた自身の左腕に向かってバッサリと言い切る様に赤い龍は押し黙ってしまった。

 どちらかといえば手合わせは好きな方だが、戦闘狂じゃ無いし、ましてや二天龍同士の宿命云々をいきなり言われてもピンと来ない。

 赤い龍本人は前の宿主よりも上のスペックを持つ一誠に宿れて白い龍に勝てると喜んでる様だが、これがもし自分が奴より下だったら罵倒でもするんだろうかと考えると、一誠的にはかなり素直に喜びたくないし、何より一誠が一番この赤い龍に対して割りと辛辣なのが……。

 

 

「それと貴様……人のスキルを塗り替えて俺を苗床にするなよ。俺が気づかないとでも思ったのか?」

 

『………』

 

 

 赤い龍が一誠の精神の源である無神臓自体を塗り替え、自分と一つに纏めようとしているのが何よりも相容れないのだ。

 

 

「は? 赤い龍の奴はそんな事を……?」

 

「うむ、精神依存という意味ではスキルも神器も同じらしいのでな。

どうやらこの龍、俺の無神臓を喰らって糧にしようとしているらしい」

 

「そ、そんな事が出来るのかい?」

 

「精神同士の喰い合いという意味では可能だろう。多分俺の無神臓を食って力を増したいのだろうが……」

 

「おいコラ赤蜥蜴……?

テメーは一誠様の中で何をふざけた真似してんだ……あぁん!?」

 

「レイヴェルさん、口調口調」

 

「一気にキレたらダメにゃ」

 

 

 枷どころか完全に足の引っ張り合い化している赤い龍との実は行われていた水面下での小競り合いを聞いた途端、それまで可愛らしくも優雅にしていたレイヴェルが三下の悪党のソレみたいなチンピラ口調で一誠――じゃなくて一誠の左腕の籠手に向かってオラつき始める。

 

 日に日に母のエシルに似ていく辺りは母娘そのものである。

 

 

「ふっ、心配するなレイヴェル。そうは言ったがこ奴に俺は食えんさ。だから落ち着け」

 

「あ……は、はい……私ったらまたしてもはしたない姿を……」

 

「問題ない。そこをひっくるめてこそのレイヴェルだし、俺は大好きだ」

 

 

 が、それも一誠にしてみれば可愛く思えるチャームポイントらしく、怒るレイヴェルの頭をポンポンと撫でながらヘラヘラと笑う辺りはバカップルそのものなのかもしれない。

 猫の姉妹が少しむくれてしまう程に。

 

 

「そういう訳だ赤い龍。貴様では俺の精神は喰えんよ……」

 

『………』

 

 

 くっくっくっ、と悪の親玉みたいな悪い顔で嗤ってそう言い放つ一誠もまた大概な辺りは似た者同士なのだろう。

 実力はあるのに仕草が三流悪役な所は、流石フェニックスの兄や両親の家族なだけはある。

 

 

『……。俺は諦めんぞ』

 

 

 それを受けて赤い龍は今は分が悪いと悟ったのか、小さく捨て台詞的に吐くと、そのまま再び一誠の中へと引っ込んだ。

 どうも赤い龍としては誠八だった男よりも元々の宿主を使い手として選んだ様である――――本人に使う気は一切無いとしても。

 

 

「早いとこアザゼルに頼むべきだな。イリナの事も明日に控えてるので後回しになるが……」

 

 左腕にあった籠手が消えたタイミングで声を出すゼノヴィアに一誠も皆も無言で頷いた。

 

 

「そうだな、リアス・グレモリー達も今日は学園を休んで実家で絞られてるようだし……」

 

「速攻で魔王二人と其々の両親に強制帰還を命じられたらしいぜ? 当たり前だがな」

 

「当然ですわ、よりにもよって一誠様に冤罪を吹っ掛けようとした報いです」

 

 

 リアスとソーナと女王二人は先日の冤罪事件にて早速其々の実家から強制帰還を命じられて暫くは戻っては来ないらしい。

 

 

「どうも彼女達は俺がまだ幻実逃否の力を持ってる事を疑って、それを使って欲しいらしい。

兵藤誠八だった男の事から、その男と至った行為そのものを無かった事にな」

 

「……。妊娠したという現実を否定させてやった上に、まだそんな事を望んでるのかよ? 図々しいにも程があんだろ」

 

「其れほど正気に戻った奴等にしてみればおぞましき話なのだろう。

無かった事には最早出来ないと何度言っても信じては貰えず、あんな行動に出られた時はかなり驚いたよ」

 

 

 赤龍帝の籠手が消えた左手でペンをクルクルと器用に回しながら一誠は小さく苦笑いを浮かべる。

 あの時は運良く冤罪と信じて貰えたが、これがもし信じて貰えずだったと思うとかなりゾッとする。

 

 生徒会長としての普段と、レイヴェルに対する分かりやすい好意、なによりリアス達が一誠じゃなくて誠八だった男を巡って取り合いをしていたと生徒全体が認識していたお陰で助かった様なものだ。

 

 

「もし奴等の言い分が通ってたら、今頃俺はこの席に呑気に座ってる事も出来なかっただろうな……そう考えるとある意味奴等のやり方は理に叶ってるよ……くく」

 

「笑い事じゃないよ一誠君、そういう冤罪に苦しむ人達が世の中に沢山居るんだからさ……」

 

「む、そうだな。感心するのは確かに不謹慎だ」

 

「まあ、仮にそうなっても私達は一誠先輩を信じますけどね。悔しいですが、先輩がレイヴェルさん以外の女性をそんな目で見ることなんてあり得ませんし」

 

「普段の行いって大切よね~? レイヴェルが羨ましいにゃん」

 

「つーかもし俺だったらヤバかったかもしれねーな」

 

 

 これがもし自分だったら間違いなくヤバイと言う元士郎。

 

 

「大丈夫ですよ、元士郎先輩もそんな事しないって僕信じますから」

 

「まあ、確かに匙さんも付き合いのある私達からしたらあり得ませんわね」

 

 

 即座に否定する女の子形態のギャスパーにレイヴェルが同意するように頷く。

 何せ今の元士郎も一誠に似た女性に対する態度なのだ、主にカテレアとかカテレアとか……そう、カテレアとか。セラフォルーは――元士郎的にかなり複雑なので アレとしても。

 

 

「祐斗先輩に至っては男子の人達に責められそうだけど、女子の方には自分がされたいとか言ってきそうですもんね」

 

「え? ぼ、僕そんな事しないんだけど……」

 

 

 逆にある意味微妙な事になりかねないという白音からの祐斗への評価に、本人は戸惑いつつゼノヴィアをチラチラと気にしながら割りと必死に否定する。

 学園の王子様と呼ばれちゃってるが、ぶっちゃけ正直本人にしてみればどう対応して良いのかわからないし、最近は寧ろ他の女子の黄色い視線よりも、自分の視線に気付いてキョトンとしているゼノヴィアにどう思われてるのかが気になって仕方ない訳で………。

 

 

「確かに祐斗は女子に人気だな。大概キャーキャーと騒がれてるし」

 

「あ、あれは違うからね!? 別にいい気分とかになってないし!」

 

 

 余計な誤解をされたら実に困る祐斗はそれはそれは必死であった。

 

 

「だ、大体僕は――――あ、いや、な、何でもない……」

 

「む……何だよ、気になるだろ……?」

 

「だ、だって恥ずかしいし……」

 

「むぅ……」

 

 

 とにもかくにも冤罪を吹っ掛けられても跳ね返せる時点で、リアス達の選択は自爆と変わらないのだ。

 

 

 

終わり。

 

 

 

オマケ……普段のお二人。

 

 

 月満る夜天の下、これもまたリアスの尻拭いという形で行うはぐれ悪魔討伐作業を行う生徒会メンバーと仲間達。

 

 

「コイツは相当に厄介な装甲だぞ祐斗。デュランダルの刃が通らん」

 

「みたいだね……っと!!」

 

 

 その日討伐を行うは祐斗とゼノヴィアの騎士のペアなのだが、はぐれ悪魔というよりは誰かが捨てたペットが野生化した様な三メートル以上の図体を誇る化け物を相手に其々の得物を構えながら相対している。

 

 

「まるで実験生物みたいだよ、言葉も全然通じないし」

 

 

 双剣を手に鋼鉄を思わせる装甲で覆われた図体のデカい怪物にヒットアンドアウェイで斬りつけながら、小さく呟いた祐斗は、大振りに腕を振り回したり、腹部から謎の光弾を撃つ怪物から一度距離を置くと、持っていた双剣の刃を交差させると、頭上に掲げて円を描き、銀牙の鎧をその身に纏う。

 

 

『一気に終わらせる……!』

 

 

 聖魔を宿した双剣へと進化させた祐斗が更なる領域へと進んだ事で手にした銀狼の騎士。

 白銀の鎧は月夜に照らされる事でいぶし銀の如く輝いている。

 

 

『パンプティ……だったね? キミの陰我、僕が断ち斬る!!』

 

 

 本来なら持つ事すらあり得ない祐斗の切り札となりし力、白銀の閃光と共に……。

 

 

『ハァッ!!!』

 

 

 怪物を斬り伏せる。

 

 

『陰我……消滅……!』

 

 

 その名を銀牙騎士・絶狼。

 

 

「ふぅ……何とかなったよ」

 

「お疲れさま祐斗」

 

 

 怪物を退治し、鎧を返還して生身に戻った祐斗にゼノヴィアが労いの言葉を掛ける。

 

 

「私は結局役に立ってないな」

 

「いいや、寧ろゼノヴィアさんに見て貰ってるから僕はやれるんだよこうして。

それにほら……一緒に強くなれれば……」

 

「む、そうだな……少し弱気になっていた」

 

 

 自分はまるで役に立ってないと自虐するゼノヴィアに祐斗は即座に否定し、そんな事は無いと話す。

 実際問題この鎧を手にした理由もゼノヴィアに関係しているので、あながち間違いでは無いのだ。

 

 

「それより早く帰ろう……」

 

「うむ、そうだな……」

 

 

 故に祐斗にしてみれば見守って貰ってるだけでも力になる。

 その言葉を受けたゼノヴィアも見守るじゃなく肩を並べる様にならなければとやる気を燃やしながら、廃工場を後にするのだが……。

 

 

「ふむ、今日は月が綺麗だな祐斗……」

 

「うん、そうだね……綺麗だ」

 

「………………。あの、何だ、折角だし一誠達の真似でもしながら帰ってみるか?」

 

「え?」

 

「あーほら、アレだよ……その、手とか繋ぐとか……」

 

「う、うん……それはもう喜んで……!」

 

 

 平時は至って健全なお二人なのだ。

 手を繋ぐとかの話だけでテンパったりする辺りとかが特に。

 

 

「「………」」

 

 

 結局ゼノヴィアの提案に乗っかって手を繋ぎながら帰る事になった祐斗。

 その最中の会話な照れすぎて互いに声が出せずだったとか。

 

 

終わり

 

 

 

その2――モテ期続行なる彼の普段。

 

 

 シトリーからカテレアを奪還した際に覚醒した元士郎もまた、尻拭いの形ではぐれ悪魔やら怪物やらを退治してるのだが……。

 

 

『確かブレイド……つったか。ったく、誰のペットだか知らないが、野生化しまくりじゃねーかよ。

よし、ギャスパーとカテレアさんは見ててくれ』

 

「が、頑張ってください……!」

「怪我だけはしないで……」

 

『ふっ……承知!』

 

 

 この日担当だった元士郎は、祐斗と同じかそれ以上にデカい怪物を退治する為にとある裏世界へとやってきて暗黒騎士の鎧を纏って対峙していた。

 見守るギャスパーとカテレアの声援により一気に仕留める心を強めた元士郎は、持っていた両刃の剣を地面に叩き付ける。

 

 

『ハッ!!』

 

 

 刀身を地面に叩き付けた瞬間、剣そのものが巨大化する。

 閻魔斬光剣と呼ばれる剣なのだが、生憎元士郎は知らないまま巨大化させた剣を持ちながら巨大怪物に向かって突進。

 

 

『ウォォォォッ! 滅せよぉぉっ!!! そして、我が血肉となれぇぇぇぇっ!!』

 

 

 ある程度距離を詰めた所で暗黒騎士と化した元士郎は、怪物よりも――下手なビルよりも高く飛び上がると落下と同時に一回転しながら巨大化させた剣を怪物に向かって振り下ろす。

 

 

『――!!』

 

 

 両手に鎌を思わせる巨大な刃物を持つ怪物が抵抗しようと振り下ろされた巨大な剣と火花を散らせながら鍔迫り合いの如く競り合おうとするが、それも一瞬の事であり、呆気なく怪物は頭から真っ二つに両断された。

 

 

 

 

 

 

 とまあ、こんな具合に怪物退治をする事で日に日に強くなる元士郎なのだが、決定的な失恋が原因なのか何なのか知らないが、今の彼は微妙にモテていた。

 

 

「ではそろそろ私はフェニックス家に戻ります……」

 

「あ……そうですか……」

 

 

 本人にしてみれば意図せずモテてる訳じゃないし、カテレアからどう思われてるかしか気になって仕方ないと思ってるのだが、ギャスパー然り、理由つけて頻繁に突撃してくるセラフォルーしかりと、ぶっちゃけ正直一誠よりも普通にモテていた。

 

 

「フェニックス家の方々はアナタと居ても良いと許可されてますけど、元士郎にはご両親が居ますし、転がり込む訳にはいきませんからね」

 

 

 しかし一誠本人から自分と似てると言われた通り、こういう点でも同じなのか、セラフォルーやギャスパーからのそういった感情を受けてても元士郎はカテレアに一直線であり、今もフェニックス家に戻るカテレアと両手を繋ぎながら、独り者には辛い雰囲気となっている。

 

 それは見ていたギャスパー的にも複雑な気分だし……。

 

 

「むー! くっつき過ぎだよー!☆」

 

「「!?」」

 

 

 何故かいつの間にか居たセラフォルーも複雑だった。というか普通に割って入ってきた。

 

 

「な、なんでアンタが……」

 

「というか何時から」

 

「今だけど? というかカテレアちゃんばっかりで酷いよ元士郎ちゃん」

 

「はぁ!? ばっかって何だし!? そりゃ俺はカテレアさんと――――う、な、なんでもねぇ」

 

「ほら、その照れてる感じがモヤモヤするの! ギャスパーちゃんだって同じだよ!」

 

「い、いや僕は……別に……」

 

 

 照れる元士郎とカテレアに納得できずに騒ぎ立てるセラフォルー。

 やはりモテ期なのかもしれない。

 

 

 ちなみに……。

 

 

「えっと、わ、私に出来るのはこのくらいしかありませんけど……よかったら……」

 

「う……柔っこい、カテレアさんのいい匂いもしてヤバイっす」

 

 

 隠れてイチャイチャしてるくらいには進んでたりはする。

 

終わり




補足

もし使ってあらぬ誤解(誠八に顔の作りまでトレースされた為、誠八と勘違いされるのが嫌だ)をされるが嫌で拒否ってます。

なので、使う気の無い自分よりもとっとと他の宿主に行った方が互いに良いという考えの一誠とは裏腹に、ドライグは白いのに確実に勝てる宿主故に嫌がってるというか構図。


その2
中学生的やり取りなのは歳が同じだから。


匙きゅんの場合は相手が年上だからなのと、モテ期だから。カテレアさんに優しくぎゅってされたらそら落ちる。

どちらも仕方ないね。

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