生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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ヘイトを溜めまくる。

故に一部不快な内容かも……


始動の前触れ

 昔、なじみの奴から聞いた話の中に黒神めだかという生徒会長が居た。

 曰く千年に一度の主人公でありなじみも敵わないと言われる物凄い人物との事らしく、その生徒会長は目安箱というシステムをその学園の生徒会長に就任した際、導入したとか何とか。

 

 だから俺も何となくその人物を真似て目安箱システムを入れてみたのだが、悩み事を持つ者というのは中々に多く、中々に繁盛する結果となった。

 

 なので本日もその目安箱に投書された依頼を捌いていく訳なのだが、どうにも本日は今までの中でも取り分け変な依頼というか……。

 

 

「一誠様、本日の目安箱への投書は一件なのですが……」

 

「む、どうした?」

 

「いえ……一誠様も読んでいただければお分かりかと」

 

 

 生徒会長室。

 会長に就任してからというもの、まだ俺以外のメンバーは居ないという、歴代でも前例を見ない状況の中でも学園の規定により生徒会に入れないレイヴェルのありがたいアシストで何とか運営しているのだが、その補佐をしてくれるレイヴェルが生徒会室の前に設置した目安箱から回収した一枚の封筒を手渡しながら微妙の物を見るような顔をしていた。

 

 

「ふむふむ」

 

 

 導入してから投書の内容を簡潔に確認させてるレイヴェルがこんな顔をするのは初めてなので、ちょっとした下世話な興味半分で渡された一枚の依頼書に目を通し…………

 

 

「『モテモテになってハーレムになりたい』………だと?」

 

 

 レイヴェルと同じような顔に俺も思わずなってしまった。

 

 

「なんだ……これは? どういう意味だ?」

 

 

 いや、書いてある意味は理解してるけど思わずこう言ってしまう。

 何せ今までの依頼は『部活の練習の助っ人』だとか、『学園で無くした探し物の捜索の手伝い』だとか、『ちょっとした恋愛相談』だとかそんな感じの奴だったのに、初めてこんなドストレートに『モテモテになりたい』なんて内容の依頼が来たのだ。

 思わずこう聞いてしまっても仕方ないというか……うむ

レイヴェルも呆れ顔だ。

 

 

「そのままの意味だと思いますわ。依頼書の端に記名されている名前を見ていただければ……まあ、理解するかと」

 

「む? どれどれ……」

 

 

 促される形で封筒の裏の端に小さく書かれた名前を拝見する俺は、即座に『あぁ』となった。

 それはこんな頓珍漢な依頼をしてくる相手の名前を知ってるのからというのもあるが、それ以上に其奴の普段の学園生活が~~というのもあったからだ。

 

 

「……。どうします? 内容が内容なので断ることも可能だと思いますが」

 

「いや、この二人らしい依頼だし断る訳にはいかないだろ。

奴等も学園の生徒だしな」

 

 

 ある意味前例の無い依頼にレイヴェルが断ろうかと確認するのを俺は首を横に振って受けると返す。

 確かに内容が内容だが、それ以上に『この二人の問題生徒』も駒王学園の生徒な事に変わりはないのだ。

 故に断るなんて道は最初から無く、俺は依頼を受ける為にこの後直ぐに来るだろう依頼人『二人』を迎える為、お茶の準備に取り掛かろうと席を立つ。

 

 

「私個人としては――まあ、年頃の男子と思えばそれまでですが、それでも多くの女子生徒達から苦情が来てますので……」

 

「フッ……分かってるさ。

だからこそ、前に言ったのにも拘わらず変わらないままやりたい放題のあ奴等とは、もう一度腹を割って話さなければならん。

それに俺はどんな内容の相談も受けると言ったのだからな、蔑ろにするつもりはない……いくぞ、生徒会を執行させて貰う!」

 

 

 本日の依頼人、元浜・松田。

 依頼内容『モテモテでハーレム』

 

 厳かに生徒会を執行する。

 

 

 

 元浜と松田という二人組の男子がいる。

 一見爽やかスポーツ少年に見えなくもない松田。

 眼鏡で真面目そうに見えなくもない元浜。

 しかしながらその実態は、見た目を全部ぶち壊すかの如くアレなものである意味、歴代でも類を見ない支持率で生徒会長に就任した一誠やあからさまなハーレムを築いている誠八の様な有名人とタメを張るレベルで有名だった。

 

 

「やぁ、生徒会長、この前振りだな。

相変わらずレイヴェルたんと二人でイチャコラ生徒会は楽しいかい? 死ね」

 

「やぁ、生徒会長。

キミのせいで暫く腕が使い物にならなかった事は恨まないし、兵藤誠八みたいな嫌味っぽさは無いけど、美少女とリア充は羨ましいな? 死ね」

 

 

 主に……女子生徒からの絶大なる嫌われ具合で。

 そして例によって待ち構えていた一誠に対しての第一声は横に控えるレイヴェルからの『学園内では有名すぎる好意の示され方』を受けている一誠に対する妬みと嫉みの言葉だった。

 

 

「おい、この前もそうですが一誠様に向かって何て口の聞き方なんだよこのカ……」

 

「ストップだレイヴェル。

フッ、待ってたぞ元浜&松田同級生よ……」

 

 

 来て早々な挨拶に、一誠が大好き過ぎて冥界にある実家の自室のベッドには『手作りイッセーマスコット人形』を大量に置いてあるくらいなレベルのレイヴェルは、思わず悪平等としてのキャラで二人の男子に殺意を向け掛けるも、パッと一誠が手を挙げて制止させ、渋々と引き下がる。

 

 

「すまんな」

 

「いやいやぁ? そんなやり取りすら出来ない俺達からすればマジで羨ましいわぁ」

 

「良いよなぁ良いよなぁ!」

 

 

 三人が三人共不敵な笑みを浮かべながらの言葉の応酬。

 実のところ一誠は少しワクワクしてるのだ……『97%』もの支持率の中、支持をしなかった残り3%の中の二人である元浜と松田がわざわざ此方に出向いてくれた事に。

 依頼の内容は微妙だが、自分を敵視する相手とのやり取りが実に楽しく思えてしまう。

 ましてや一度徹底的な指導をしたのに改心をせずなのだこら尚更だ。

 これは一誠の悪い癖であり、何時に無くワクワクしている様子を1歩後ろから見ていたレイヴェルは小さくため息を吐き――

 

 

(もう、一誠様の悪い癖ですわ……。

でも、そんなお顔をする一誠様も素敵……♪)

 

 

 年相応な少年を思わせる表情を見せる一誠にレイヴェルのハートもドキドキワクワクだった。

 相変わらずの相変わらずなレイヴェルなのだった。

 

 

「さて、依頼書に目を通したが……モテモテになりたいらしいな貴様等は?」

 

「おう、生徒会長様はどんな悩みも聞いてくれんだろ?」

 

「最近キミのお兄さんがムカつく程モテモテでさぁ? 理不尽だと思わね? あんな笑ってるだけでさぁ?」

 

 

 そんなこんなで依頼の確認から入る一誠に元浜と松田は尤も露骨なハーレムになってる誠八を忌々しげな表情と共に引き合いに出して語る。

 

 

「学園二大お姉さま。アーシアちゃん。支取先輩。その他。

学園の有名所はみーんな奴だ、俺達カースト最下位はなーんもない」

 

「だから少しでもマシになりてぇと今をトキメク生徒会長様にご相談しに来た訳」

 

 

 確かに誠八は学園内でも有名な程にモテてる。

 入りたくても入れないオカ研にすんなり入部し、その部員の女性陣を虜にし、更には学園才女の支取蒼那まで好意を寄せられている。

 ハッキリ言って共学になったばかり故にまだ数の少ない残りの男子諸君からすれば学園の綺麗所を総取りしてる誠八は妬みの対象としては十二分だった。

 

 

「なるほどな兄貴か……」

 

「……」

 

 

 それを聞かされた一誠とレイヴェルは、モテてる原因の真実の一端を把握してる為に渋い顔だ。

 

 

「理由は分かったが……それ以前に貴様等に対して女子生徒達から数多くの苦情が来ているのは分かってるよな? この前からまるで変わらずに」

 

「女子更衣室への覗き行為、教室での配慮のない会話、極めつけは成人向けの物品の持ち込みですわね」

 

 

 一誠は別に彼が誰にモテようが知ったこっちゃないと思えるだけの心があるのでどうとも思わないが、その他の男子はそうは思わない。

 故に嫉妬めいた事を聞いても同情はしないが理解してるつもりなのだが、それ以前にこの元浜と松田には見逃せない問題行為の数々があり、完全に見下した視線を向けたレイヴェルの淡々とした声による前科を聞かされた元浜と松田は、美少女からの責められる視線にちょっとだけ居心地の悪そうに目を逸らしてしまう。

 

 

「それはアレだ。そうでもしないと注目されないだろ?」

 

「それに反応が楽しいし」

 

「「……」」

 

 

 小学生の低学年みたいな言い分にレイヴェルはちょっとだけシラケた表情になる。

 結局この二人は女性に単にモテたいだけであって、真摯に向かい合うつもりが無いのだ……たかだか笑うか撫でるだけで女性を虜にし、平然と複数相手に肉体関係を持つ兵藤誠八のように……。

 いや、ハーレムになりたいとかほざいてる時点で同じか……とレイヴェルは既に呆れを通り越してそこら辺に転がる消ゴムの欠片を見るような認識になっていた。

 

 

「だからセクハラじみた行動をしたのか……なるほど――――図に乗るなよ小僧共」

 

「「あ? なんだっ―――ひっ!?」」

 

 

 それは一誠も同じであり、言ってることとやってる事が履き違えてる二人を『天頂から見下ろす』様な視線で二人を睨んでいた。

 

 

「モテモテになりたい、それは結構だ。

自分より優れている者に嫉妬するのも勝手だ。

だが、貴様等の言ってることは全て『他人任せ』だろうが。

自分よりモテる男に対抗するつもりか何だか知らんが、己を磨く事もせずセクハラを繰り返し、挙げ句に俺に何とかしろだと? ふざけるなよ貴様等、俺は確かに困ったことがあれば目安箱(めだかボックス)に投書しろとは言ったが、100%の手助けをするなど……ましてや自分でロクな努力もせんで只助けろとほざく奴に協力するなどとは1度も言ってない!」

 

「う……それは」

 

「……」

 

 

 生徒会長候補として壇上で演説をした時よりも比べ物にならない程の、押し潰されそうな重圧感に威勢の良かった二人は押し黙ってしまう。

 誠八の双子の弟且つ、圧倒的な支持率で生徒会長となった一誠も別ベクトルの有名さを誇っていたし、気に食わない相手として元浜・松田もマークしていたが、この瞬間で一気に一誠に対して『生物的本能で勝てない』と悟らされたのと同時に、安易に喧嘩売りのつもりで依頼なんてしなければ良かったと後悔した。

 

 

「あぁん♪ 一誠様の啖呵はやっぱり素敵ですわぁ……♪」

 

「「「………」」」

 

 

 そんな重圧(プレッシャー)が生徒会室を支配する中でも、同じく一誠しか見えてないので有名なレイヴェルは頬を染めながら一誠を絶賛する訳で……。

 三人は肩透かしを食らう気分になるものの、気を取り直す。

 

 

「こほん……つまり元浜&松田同級生よ。

モテモテになりたければ、まずそのふわついた考えと女性を蔑ろにする行動は慎むんだな」

 

「くっ……い、今更遅いんだよ……」

 

「どうせ止めたって女子達は変態二人組と……」

 

「それは貴様等の自業自得だ。

だが、やり直しに早いも遅いもない……誠意を持ては全員とは言わぬが分かってくれる人も絶対にいる!」

 

 

 金髪碧眼美少女と宜しくやってる妬みで嫌味を言いに来たつまりが、ガチ説教をされてしまってすっかり凹んでしまった元浜と松田の何時にない萎んだ声に一誠は渇を入れるようにピシャリと言いながらコップに入ってるお茶をイッキ飲みして席を立つ。

 

 

「それは分からないというのであれば、俺が教えてやる。

そこから何を感じ、どう思い・行動するかは貴様等次第だがな」

 

「え……」

 

「え、な、なに?」

 

 

 勢いよく席を立つ一誠にポカンとした顔の二人は、立てと促されて困惑しながらも席を立ち、生徒会室のロッカーをゴソゴソやってる姿を見つめる。

 

 

「よし、あったぞ」

 

 

 やがてロッカーから何かを引っ張り出した一誠は、逃げられなくなってて怯えたゴリラみたいに小さくなってる二人に引っ張り出したそれをポイポイと投げて寄越す。

 

 

「モテモテになりたいという依頼は可能な限り叶えてやるが……実際俺は兄貴とは違って笑ってるだけで女性を虜には出来んし、イマイチどうすれば良いのかなどわからん。

だから、俺が考えるやり方で行かせて貰う……まずはその為に今まで迷惑を掛け続けた女子生徒達に誠意を見せに行くぞ!」

 

「あ、はい……」

 

「わ、わかったけど、でもこれって……」

 

 

 ヤケに張り切る一誠に圧される形で首を縦に振る元浜と松田は、キャッチしたソレを見て目を丸くする。

 というのも、一誠から渡されたソレは――

 

 

 

 

「行くぞ元浜&松田『庶務見習い』! 今から学園中の掃除だ!」

 

「「は、はぁ!?」」

 

 

 生徒会役員候補が一時期付ける見習いの腕章なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 おかしい気がする……。

 いや、確実におかしい。

 本当ならライザー・フェニックスとレーティングゲームをする筈だったのにそれが無くなったというのもそうだが、そもそも何故レイヴェルが既に駒王学園に居るのか、そして何も無い筈の一誠が生徒会長に――そしてレイヴェルに好意を寄せられているのか……原作ブレイクをし過ぎて流れが変わったのか? まあ、それならそれで構わないが……。

 

 

「セーヤ、今日は私と……ね?」

 

「いーえ私とですわ……そうですよね?」

 

「わ、私とです!」

 

「貴女方もしつこいですね。セーヤくんがかわいそうですよ」

 

 

 どうせ原作の一誠の力+がある俺なら何とでもなるのだからな……今は自分にゾッコンな美少女でも愛でてよう。

 クソみたいな前世と比べたらこの世界は最高だよ。

 こんな美少女に囲まれ、あまつさえ喰えたんだもん……ふふ、転生なんて嘘臭いと思ったが……くくく。

 

 

「まぁまぁ……今じゃなくて家でしましょ……?」

 

「「「むぅ……」」」

 

 

 原作主人公を完全に追い出せやしなかったし、何やらフェニックスの連中と妙な関係があるみたいだが、あんな連中なぞ大したものじゃない。

 今は一誠に懐いてるみたいだが、何れレイヴェルも……フフッ。

 

 

「……。すいません。席を外しますね」

 

「…………」

 

 

 それよりも今は居心地悪そうに席を立つ木場……はどうでも良いとして、同じく部室を出ようとする小猫をどうするかだ。

 リアス・アーシア・朱乃・ソーナみたいにてっきり好いてくれるのかと思ったらどうやらそうじゃないらしく、木場と何時も出て行っては、最近一誠の奴の所に行ってるみたいだが……。

 

 

「小猫ちゃん、お菓子あるけ――」

 

「結構です。では」

 

 

 ハッキリ言おう……俺はそれが気に食わない。

 俺が成り代わり、補正の大半てある赤龍帝の称号も俺のものとなり、脱け殻のカスの分際で小猫に懐かれてる一誠がな。

 今だって笑みを見せながらお菓子で釣ろうとしたけど、小猫は即答で断りながら出て行ってしまった。

 

 

「何よ小猫ったら……最近よそよそしいわね」

 

「どうやらセーヤくんの弟さんの所に行ってるみたいですが……」

 

「セーヤさんのお誘いを断ってまで行くなんて、何かあるのでしょうか?」

 

「生徒会長候補だった私を圧倒的に差し置いて就任したのは凄いと思いますが、それでも彼は只の人間ですし、塔城さんが気にする程でも無いと思いますが……」

 

 

 小猫のよそよそしさにリアス達が不満そうにしている。

 俺だって小猫が美少女じゃなかったらほっといたが、紛れもない美少女だし……まだ会ってないが小猫の姉である黒歌は俺好みだからな。

 なんだっけ、所謂姉妹なんとかってのも是非試してみたいので、此処は我慢だ。

 

 

「弟と小猫ちゃんは仲良しみたいですからね。

両親と喧嘩別れしてから何処で何をしてたか心配でしたが、友達が居るみたいで安心ですよ俺としては」

 

「優しいわねセーヤは……ま、こっちとしてはライバルが増えなくて助かるけどね♪」

 

 

 そうウィンクしながら抱き付いてくるリアスと、それに負けじと対抗する朱乃、アーシア、ソーナ。

 あーぁ、家でなんて言ったけど……こりゃ無理だな。

 

 

 

 

 最近疲れる。

 特に赤龍帝という凄い力を持った兵藤君が眷属に入ってから感じるようになった。

 

 

「ハァ……」

 

 

 入って直ぐに部長や副部長……そしてシトリー様や最近はアーシアさんから好意を寄せられ、部室で――――なんて数多くだし、悪魔としての仕事もそのせいで若干疎かになってるから、それを防ぐために僕と塔城さんの二人でフォローしたり。

 眷属として仕事がいのあると言えばそれまでだけど、それでも兵藤君のせいで色々と話が拗れてる感は否めない。

 

 この前のライザー・フェニックス様との誤解ありきなリアス部長との婚約騒動だって、わざわざ冥界から謝罪までしに来たのを、兵藤君が好戦的な物言いをしてフェニックス家との関係にヒビを入れようとしてたし。

 アレだってライザー・フェニックス様が見た目と違って理性的で大人な対応をしてなかったら、完全に敵対しててもおかしくなかったし……。

 

 

「あ、一誠先輩……」

 

「え……?」

 

 

 その内大きな事件でも起こしてしまうのではないか……そんな嫌な予感すら感じてしまう中、同じく兵藤君に不信感を抱いてる様で、リアス部長達みたいな不自然な好意を持たない塔城さんの声に僕の思考は中断し、廊下の窓から外を見ている塔城さんに釣られて視線を追うと、兵藤君そっくりな顔立ちを持ち、本来ならシトリー様がなる筈だったの生徒会長に圧倒的な支持率を得て就任した兵藤一誠くんが……確か変態二人組のとか呼ばれてる同学年の人二人と、ライザー・フェニックス様の妹にて、アーシアさんの直後に最近転校してきたレイヴェル・フェニックス様と一緒にジャージ姿でゴミ拾いをしている姿が見えた。

 

 ……背中に籠なんて背負いながら。

 

 

「ゴミ拾いてすかね……しかもあの男子の人二人を連れながらなんて」

 

「みたいだね。どうする塔城さん? 僕の事は良いから行ってみたら……」

 

 

 役員が他に居なく、それでも実質一人で生徒会を運営してる兵藤君は、僕にとって羨ましいと思う存在だ。

 圧倒的な存在感にしてもそうだし……なにより――

 

 

「良いなぁ……自由そうで」

 

 

 最近部活がつまらないとすら思ってしまう僕とは違い、彼は生徒会長を心の底から楽しんでる様に見え、自由な姿に羨望すら感じる。

 そして思うのだ……僕も混ざってみたいなぁと。

 

 

「……。ふむ、確か一誠先輩は前にああ言ってましたし……」

 

「え?」

 

 

 そんな僕の現実逃避じみた気持ちが聞こえてしまったのか、塔城さんがふむと考えながら僕に向くと……。

 

 

「祐斗先輩も来てください。一誠先輩が話してみたいと前に言ってたのを思い出したので」

 

「……………え?」

 

 

 僕の願いをアッサリと叶えるように来いと言うのだった。

 

 

 

 

 

 

「クソ……ちくしょう……!」

 

 

 情けない……なんて情けないんだ俺は……!

 

 

「また先輩は兵藤の所かよ……!」

 

 

 一目惚れしたソーナ・シトリー先輩の下で兵士として頑張ろうとしたのに、俺と同時期にグレモリー眷属の兵士になった兵藤誠八に先輩は惚れてしまった。

 それだけじゃない。兵藤誠八は俺なんか屁でも無いほどに圧倒的な力と才能がある……それがますます先輩の心を独り占めできる要因であり、最近は俺の眷属仲間も兵藤誠八に好意的なせいで、敵視してる俺は疎外されてる。

 

 

「……。俺って何のために人間を捨てたんだ? くくく……惨め過ぎて涙もでねぇ……」

 

 

 こんな事なら、最初からこうなると分かってたなら眷属なんて……悪魔になんて転生しなければ良かった。

 いっそ躁鬱気味に死にたくなるすら思え、眷属としての集まりも最近少なくなったクソッタレな現状を嘆きつつ、一人だけになった教室の窓に射し込む夕日を眺めながら、フト視線を動かす俺は、その兵藤誠八にそっくりな顔を持ち、ソーナ先輩を完全に抑えて生徒会長になったあの男姿を捉えた。

 

 

「兵藤、一誠か……。

はは、最初はたった一人の癖にソーナ先輩を出し抜きやがってと勝手に敵視してたが、今じゃお前が生徒会長になって正解だったかもとすら感じるぜ」

 

 

 随分とシトリー眷属甲斐の無い事を口に出してるが、どうせ皆聞いてないし構うもんか。

 勝手に惚れて、その惚れた相手に想いも告げられず失恋した負け犬の戯れ言なんだからよ……。

 

 寧ろそっくりな兵藤一誠に愚痴りに愚痴って少しはスッキリ――――

 

 

『ゴミ拾いが終わったら校舎中の窓拭きだ! 付いて来い貴様等!!』

 

『『ひぇぇぇ……』』

 

『あぁん、強引な一誠様のお姿にレイヴェルの下腹部はきゅんきゅんですわ……♪』

 

 

 

 

 

 

「………………。よし、愚痴りに行こう。

何の相談も引き受けるなんて啖呵切ったんだ……愚痴の一つくらい聞いてくれるだろ」

 

 

 うん、言おう。

 オメーの兄貴のせいで初恋がメチャクチャだ! とでも言ってやろう。

 決して金髪美少女に熱っぽい視線を貰ってるからそんなんじゃねーしなうん……。

 

 

 

 こうして、一人の生徒会長に集まり始める男達。

 その選択が果たして吉なのか凶なのか……まだ彼等にはわからない。

 

 

終わり




補足

兄貴はキチンと記憶持ちです。

風紀委員長イッセーのお姉ちゃんみたいですが、決定的な違いは、その知識と得た力を己の快楽につぎ込むという所でしょうか。

ある意味一番人間らしいかもしれませんね……悪魔に転生してますが。


その2
匙きゅんと木場きゅんとのフラグが立つ一誠。
そして元浜&松田コンビとも……。
(ホモじゃないよ)


その3
レイヴェルさんの学生生活はこんなんです。
こう……一誠しか本当に見てません。

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