生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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その頃、赤い龍にその精神を妨害されたイッセーは、自身の中に寄生する龍と対峙していた。


原点へ……

 兵藤誠八とのイザコザも終わり、マイナスも消失した今、俺に残されたやるべき事は、俺の中に寄生した赤い龍の妨害をどうにかする事。

 曰く『お前の方が宿主としての性能が遥かに上』と褒められたが、正直ちっとも嬉しくない。

 俺は赤龍帝とやらになるつもりは無いし、白龍皇とやらとの因縁に荷担するつもりだってない。

 

 あくまで俺が培ってきた技術は俺が信じた仲間の為に注ぎ込む事である。

 あぁ、そうだ……あのコカビエルとの再戦時に言われた通り、いくら取り繕っていようが俺は所詮黒神めだかの上部だけを真似ようとした模倣にもならない紛い物だ。

 

 誰も彼女の様にはなれないし、世界中の人間が大好きと公言していた以上、前提として俺は彼女のようにはなれない。

 コカビエル……確かに俺は嘘を吐いた。

 今の俺はお前の言うとおり上部だけの存在さ……。

 

 

『ほう、お前から俺に語りかけるとはな。

そろそろ俺を使う気にでもなったか?』

 

「…………」

 

 

 俺は弱い。

 フェニックスの家族を無くして俺は有り得なかった。

 所詮人は最初から一人では生きる事はできない。

 

 

『お前の持つ無限に進化する力と俺の力を合わせれば歴代最強の赤龍帝になれる。

そうすればあの白いのを完全にぶちのめせる……さぁ、俺に手を伸ばせ宿主』

 

「………………………………………」

 

 

 文字通りの赤い龍が俺の心の中から語りかけてくる。

 巨大な龍の姿が俺を取り込もうとする……。

 あぁ……よく解ったよ。お前とコカビエルのお陰で俺は自分の弱さを黒神めだかの劣悪な模倣で誤魔化してきた事を認めてやるよ。

 だから――だから―――――

 

 

「…………くくっ!」

 

『? 何を笑っ――――!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………図に乗るなよ、たかが蜥蜴ごときが」

 

 

 兵藤イッセー(ホントウノオレ)に戻る刻だ。

 

 

『こ、これは、な、何だ……!? 何だこの精神(チカラ)は!? 貴様、今までのは全部――』

 

「目が曇ってるぜ赤い龍? 俺の劣悪コピーの精神に寄生した程度で俺に言うことを聞かせられると思ったのか? 残念だったな」

 

 

 強く、もっと強く。

 誰にも奪われない、誰にも邪魔されない程の進化を……塞き止めていた更なる進化の濁流を受け止めろ。

 そして――取り繕うのをやめろ。

 気に入らない奴をぶちのめし、我を貫き、目の前の龍を―――――喰い殺せ。

 

 

「邪魔をする奴に一々構うわけねーだろうが……ボケが」

 

 

 

 

 

 目が覚めた時、兵藤イッセーは変質した。

 いや……戻ったという方が正しいと言うべきなのか。

 とある世界の生徒会長の模倣の為に作り上げた人格を脱ぎ捨て、本来の精神に戻る。

 その変化は何から何まで変わるのと同時に、煩わされていた赤い龍の妨害も踏み潰した。

 

 

「おはようレイヴェル。いや、久し振りだなレイヴェル」

 

「一誠……様……?」

 

 

 その変化にまず最初に気付いたのはレイヴェルだった。

 朝の挨拶を交わした際に放ったイッセーの久し振りという言葉にレイヴェルはイッセーがこれまで覆っていた模倣の人格を脱ぎ捨て、本来のスタイルに戻っている事を悟ったのだ。

 

 

「鬱陶しい蜥蜴を黙らせるには、今のままじゃあ駄目だと思ってね。

それに所詮は劣悪な模倣だったし、今回を機に戻ることにしたぜ」

 

「どちらにせよ一誠様に変わりはないと私は思っています。

しかし昨日までの状態で仲間となった皆さんは……」

 

「全員集めて正直に言うしかねーだろうよ。

『今までのは作ったキャラでした』……ってな。それで幻滅されたとしても仕方ない」

 

 

 口調が堅苦しくなく、年相応のやんちゃな少年を感じさせる話口。

 黒神めだかの模倣を辞めた事で本来のものへと戻ったイッセーの口調はどこか――なんとなく軽く、この違いを果たして仲間の皆は受け入れてくれるのだろうかとレイヴェルは不安になってしまう。

 

 

「あぁ、言うのを忘れてたよ、今日もレイヴェルは可愛いよ」

 

「……。(うん、戻って不都合な事はありませんわね)」

 

 

 だがそれも一瞬の事であり、抱き寄せられながら可愛いよと言われた瞬間レイヴェルは戻って貰って正解かもしれないとあっさり考えを変えた。

 元々黒神めだかの模倣をし始める前のイッセーも知っているし、別に何の問題もない。

 

 というか、匙も木場も白音も黒歌もギャスパーもカテレアも、今のイッセーを見ても特に変わらないだろう。

 そんは安い繋がりなどでは無いのだから。

 

 

「お早うございます先――」

 

「よぉ白音。今日も白くて可愛いな」

 

「輩……………え?」

 

「えっと、熱でもあるのイッセー?」

 

「見ての通り元気だぜ黒歌? 寧ろ良い気分だ。

にしても黒歌は何時見ても美人だなぁ」

 

「「……」」

 

「簡単に説明しますと、イッセー様は昨日までの模倣して作り上げたキャラを止めただけですわ」

 

「作ってたって……」

 

「そりゃ確かに若干無理して堅苦しそうな口調だったけど……」

 

 

 フェニックス家の客室から出てきた猫姉妹が、挨拶がてら軽くチャラい態度のイッセーに驚き、その理由をレイヴェルから聞かされて理解しはしたが、やはり戸惑いはあるらしい。

 まぁ……

 

 

「イッセー様、朝食が終わったらあの時の続きを部屋でするのはどうでしょうか……?」

 

「続き? あー……あの夢のお城みてーなホテルの事か? んー……まだ互いにガキだしそれはどうだろう?」

 

「貞操観念は微妙に変わりませんか」

 

「ちぇー……そこも変わって欲しかったにゃん」

 

「最近の若者が乱れすぎなんだよ。

つーかさぁ、取り繕っていた時もそうだったけど、お前等にあんな迫られてギリギリだっつーの」

 

「「「へー?」」」

 

 

 変にお堅い所は変わらないのだが。

 

 

 兵藤イッセー(原点返り)

 真・無神臓

 

 

始動。

 

 

 

 

 

 原点に返る。

 それはつまり身内以外は基本的に助けない。

 ましてや学園を退学になった者達には……。

 

 

「俺のせい……ねぇ? 良いんじゃねーの、そう思いたかったら思えよ? それでテメー等がやったことが無かったことにはならない訳だからなぁ?」

 

「あ、アナタ……だ、誰よ……!?」

 

「テメー等が愛しまくった(笑)兵藤誠八の弟という事になっている兵藤イッセーだが?」

 

 

 余計どうでもよくなっていた。

 

 

「俺を恨んで元士郎がどうにかなるのかよ? 恨む前にアイツに拮抗できる力を持つべきだったな。

もっとも逆立ちしようが今のアンタ等じゃあ元士郎にも祐斗にもギャスパーにも白音にも届きゃしねぇけどな」

 

「そ、それがアナタの正体だったのね!?」

 

「正体というか、取り繕うのをやめただけだ。

そうじゃないとこの先の領域にはとても進めないからな――と言ってもアンタ等には理解できやしねぇか。

まぁ確かにアンタ等もあのどこから沸いて出てきたのかもわからねぇ奴に好き勝手された被害者だってのは分かるが、それと匙と木場達がアンタ等から離れたのとはまた違うってのを理解したらどうよ?」

 

「だ、黙れ! あの男の様にアナタが匙を洗脳したのでしょう!? 返しなさい!!」

 

「都合が悪くなると洗脳扱いか。くく、俺もアンタ等も所詮同じ穴の狢だな。

そう思わなきゃやってらんねーもんなぁ? はははは!」

 

 

 寧ろ以前より攻撃的になり、相手の心を刺すように身も蓋もない言葉を返す。

 友達と家族以外は滅ぼうが知ったことではないという、いっそ狂気にも近い本来のイッセーは、戻ることで開け放った新たな進化を果たしている。

 

 

「所詮、取り繕おうが本質は変わらない。

気に入らねぇからぶちのめす、ムカついたから捻り潰す。感情がある生物なんて所詮そんなものなんだよ」

 

 

 より高く、より速く、より広大に。

 

 

「長い遠回りだったけど、これにて新しくスタートだ。

アンタ等を最後に消えたマイナスも無い今、俺はその次へと行く」

 

『これで終わりにしてやる――大魔獣陣!!!』

 

 

「頑張るんだな――クククッ! 今の元士郎は強いぜ? カテレアという原動力もあるしな……つくづく似てるぜアイツは」

 

『絶刀両断……!!』

 

「祐斗も、ね……」

 

 

 

 終わり




補足

曰く、劣悪な模倣をやめて本当の自分へと戻る。
 それは所詮上辺だけだったものが全て戻る事により覚醒したスキルが120%フルパワー状態で行使可能となる。


……………と、まぁ後々やってたIF集系設定を反映させただけなのだ。


その2
簡単にいえばドライグは戻ったイッセーの強烈すぎる自我という名の杭に串刺しにされ、完全に押し込められてます。
故に妨害どころか精神でのやり取りも不可能に……。

嗚呼……もっと違う出会い方さえあればドライグ自身も新たな領域へと進めたのに……数多の世界の様に。


その3
基本的に貞操観念はお堅いままながら、若干スケベ気質になっている。
とはいえ、どうでも良い相手には全く無反応なのですが。

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