生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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感想の数だけモチベがめちゃ上がる現金な私です。


さて、そんなわけで今回は匙きゅん覚醒回

……なんて聞こえは良いですが、不快な内容です。


匙きゅん……失恋を糧に這い上がろうとするの巻

 

 球技大会というのが我が駒王学園にて近々開催される。

 読んで字の如く学年全体が球技による競い合いを行う訳であり、クラス対抗の部・部活動対抗の部と二部構成で行われる体育祭と対をなす盛り上がりを見せるイベントだ。

 

 そんな球技大会には当然俺も出る。

 部活動に所属はしてないので部活対抗の部には出ないが、クラス対抗の部には全力で出るので、近日開催にに向けて個人的な練習を生徒会の業務を片手間にやる。

 

 

「そぉらっ!!」

 

「速っ……!? 避け……否……死……!?」

 

「お、おい……生徒会長の投げたボールが5個に分身する処かポップアップまでしてるんだが……」

 

「本当に人間かよアイツ……」

 

「あぁ……子供の様にハシャグ一誠様も素敵……」

 

 

 クラス対抗の部での球技内容はドッジボール。

 クラスはバラバラでレイヴェルに至っては学年も違うが、お恥ずかしい話、こういった共に練習する相手が匙・元浜・松田同級生とレイヴェルぐらいしか居なく、木場同級生と白音は部活対抗の部の球技内容である野球の練習でグレモリー3年に呼び出されてるので、只今俺は4人相手に投げたり取ったり避けたりの練習を校庭の片隅でやってる。

 

 

「お、おい生徒会長――いやめんどくせぇからイッセーでいいか」

 

「む? 何だ松田同級生?」

 

 

 ドッジボール経験が色々あって皆無に近いせいか、やってみると中々面白い事に気付き、練習でも本番でも手は抜きたくないという癖でついつい色々な投げ方を匙同級生達に試しているのだが、悪魔である匙同級生は流石の身体能力で付いてこれてるのだが、一般人の元浜と松田同級生は投げる度に吹っ飛んでしまって練習にならん。

 

 いや、松田同級生はそれでも結構いい線をした身体能力を持ってるのでアレなのだが、元浜同級生はまんま見た目の身体能力だった。

 

 

「俺は元々運動が苦手って訳じゃねーから何とかなるが、元浜にはもう少し手加減してやってくれーねーか? さっきからイッセーのボールがバカスカ当たってるせいで――」

 

「は、はらほへぇ……?」

 

「………。パンチドランカーのボクサーみたいになっちまってるからさ」

 

「む」

 

 

 次は何も考えず全力で投げてみるかと思った矢先、気の毒そうにフラフラな元浜同級生を見ながら松田同級生が俺に加減をしてくれと懇願してきた。

 言われてみれば、元浜同級生にボールを投げても避けもせず取りもせず顔面キャッチしかしなかったのをちょっと冷静になって思い返し、生まれたての小鹿みたいな姿を見て自重する事にした。

 

 

「うむ、確かに人には得意・不得意があるしな。

すまんな元浜同級生よ……痛かったか?」

 

「め、めっちゃいてーよ! てか、ドッジボールなのにプロ野球選手ですらしそうも無い変化球だの魔球だのを楽しそうに投げるお前は何なんだ!」

 

 

 どうやら元浜同級生も限界だった様で、フラフラしながら俺に指差しながら怒っている。

 むむ……怒らせてしまうとは、失敗してしまったか?

 

 

「すまん、練習でも本番でも手を抜きたくない主義でな。ついつい……」

 

「ったく、そういやお前って去年の球技大会や体育祭も一人で無双してたっけ。

最近はレイヴェルたんと小猫たんに好かれてる妬ましさで忘れてたが……ちきしょう」

 

 

 ブツブツと言いながら練習の為に外していた眼鏡を掛ける元浜同級生。

 どうやら然程怒ってない様子で一安心した……本気で怒ってたら即帰る筈だしな……っと?

 

 

 

「いくわよ皆~!」

 

 

 そんな小話を挟み、ちょうどキリの良いところで小休憩をと皆で休んでいた時だった。

 邪魔にならんようにとグラウンドの一番端っこで休憩していた俺達の目に映ったのは、部活動対抗の部に出るつもりなのか、野球の練習をしているオカルト研究部のメンツだった。

 

 

「よっと……」

 

「良いわよセーヤ!」

 

「わぁ、凄いですセーヤさん……」

 

「うふふ、頼もしい限りですわね」

 

 

 

 

 

「オカルト研究部って文化部なのにアグレッシブだよなぁ」

 

「ま、モテモテ野郎で完璧超人様の兵藤誠八がいるからだろ。ったく、練習でもナチュラルにイチャ付きやがって」

 

 

 グレモリー3年がノックで打ち込んだ球を其々が、悪魔の身体能力が故に華麗にアルジェント同級生以外がキャッチする光景と、キャッチする度に誉められる兄貴の姿を見て元浜と松田同級生が妬ましそうに睨みつつ悪態を付いている横で、俺は木場同級生の様子が変な事に気付く。

 

 

「なぁイッセー」

 

 

 それは直ぐ横に居た匙同級生も気付いたようで、不審がるような表情で首をかしげながら話しかけてくる。

 

 

「木場の奴、この前から変じゃねーか? なんつーか『心ここにあらず』みたいな」

 

「うむ、確かにな」

 

「たしか、数日前辺りからでしたわね」

 

 

 グレモリー三年のノックを何度もエラーし、危うく顔に当たりそうになったのを白音にフォローされて事なきを得る姿を見ながら、白音にエールを送るのに夢中になってる元浜と松田同級生に聞こえない声量で話し合う。

 

 そう、レイヴェルが言った通り、木場同級生は3日程前から様子がおかしい。

 何時もの理由で生徒会室に来てくれるのだが、こう……最近は口数が少なくボーッとしているというか……。

 

 

「ちょっと祐斗! さっきからボーッとしてるわよ!」

 

「ぁ……すいません……」

 

 

 その様子は兄貴シンパでヤバくなってる連中も気付くれべるのようで、グレモリー3年の激にもボーッとした返事なのが俺達から見えた。

 しかも、何故かそのボーッとしてる木場同級生を見て兄貴がまるで『なにかを待ってる』かの様にニヤニヤしてるし……うーむ、彼から話をしないということは何か難しい個人的な問題という奴なのか?

 何れにせよ無理に聞くわけにはいかぬし、それよりも……

 

 

「セーヤくん、頑張って下さい」

 

『応援してます!!』

 

「あ、ソーナ先輩と皆……」

 

 

 匙同級生にとっては耐えられないだろうあの絵面についてどうフォローすべきかも考えなければ――――と思ったが。

 

 

「む、おい匙同級生。

あそこにシトリー3年とその眷属が居るぞ?

どうやら完全に兄貴シンパになってしまってる様だが……」

 

「知らね。

もうどーでも良いわ、何も女は先輩やその眷属だけじゃねーし」

 

「あーぁ、匙さんに見限られてることに気づかないせいで……」

 

「あ、あの野郎……! あんな沢山のおんにゃのこにまで!」

 

「死ね! てか死ね!! 羨ましいんじゃボケ!!!」

 

 

 匙同級生は結構ドライなのか、既にシトリー3年に続いてその眷属達が兄貴シンパになってる様子を見てても実に『冷めきった』様子だった。

 寧ろ『くだらん』と切り捨てる様子を見せる辺り、何となく俺に通じるものがあるような無いような……。

 

 

「洗脳だろうが何だろうが、本人が幸せなら良いやもう。

兵藤の馬鹿には借りを返すが、その周りはどうでも良いし」

 

 

 いや……似てるで間違いないな、匙同級生は。

 フッ、このまま積み重ねられれば、その内後天的な悪平等(ノットイコール)になれるかもしれんくらいには俺に似てるよお前は。

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 悪平等(ノットイコール)

 あの日兵藤一誠とレイヴェル・フェニックスは自らをその括りとして名乗った。

 曰く、悪魔でも堕天使でも天使でも妖怪でも……そして神でもない。

 そんなくだらない種族の壁を越え、真に上り詰めた者だけがイッセー曰くの『師匠』に名乗ることを許される存在らしい。

 

 それだけしか話は聞けなかったが、どうやらその悪平等(ノットイコール)ってのは並みの存在にはなれないらしく、イッセーの師匠は神ですら平等に見下せる人外だとか。

 

 そんな話を聞かされた処で、『なにを馬鹿な』と思う訳であり、現に俺も最初は只の虚言だと一笑していた。

 けれどレイヴェル・フェニックスと同じくイッセーに好意を持つ塔城小猫だけは、何処か納得した表情を見せていた。

 どうやら彼女はその昔、イッセーに不思議な力で助けられたらしく、俺と木場はイッセーが神器(セイクリッドギア)を持っていたのかと思っていたが、それはどうやら違うらしい。

 

 

「おぉい!! 野球の練習しろよ兵藤!!」

 

「なぁに大量の女の子から抱きつかれてんじゃボケ!!」

 

「まぁた人目も憚らずですわね」

 

「一種のステータスだなあれは」

 

 

「………………」

 

 

 

 神器(セイクリッドギア)じゃなく、能力保持者(スキルホルダー)とイッセーはそう自分の持つ力を自称していた。

 曰く神が封印してばら蒔いた力とは違う。

 曰く神に反逆可能な力。

 

 

 曰く……失った者が抱いた絶望(マイナス)希望(プラス)を糧に発現させられる力。

 

 

 別に研究者気質がある訳じゃないが、俺はそれが気になって仕方ない。

 人外の師匠という存在も、絶対に裏切らない究極的な絆を持つ悪平等(ノットイコール)という繋がりも。

 俺――そして恐らく木場が欲しがる全てを今のイッセーは持っている。

 

 ここ最近ずっとイッセーの所に来ては愚痴ったり他愛の無い話をしていたが、俺も木場もイッセーが提供してくれたこの場所に其々の眷属同士が持つ薄っぺらい絆より居心地が良いと感じてしまう。

 

 そりゃそうさ、何たってコイツは――イッセーは俺がどんな八つ当たりとしか言えない愚痴を言っても怒ることなく野郎の癖に包み込んでくれる。

 

 

「仕方ないな、何やらグラウンドを占拠し始めての取り合いが始まってしまった様だし、注意をしても取り合わんだろうから今日の練習は此処までにするか。

おい元浜と松田同級生、野次なんて飛ばしてないで先に生徒会室に行ってろ」

 

「ファック!」

 

「地獄に落ちてしまえ!!」

 

「ふむ、後で小猫さんと木場さんと合流確実ですわね、あの様子だと」

 

「…………」

 

 

 初恋に夢中になってた時……つまりソーナ先輩相手からは感じなかった絶大なる安心感。

 恐らくそれは、双子の弟故に俺達以上に色々と奪われ・失い、それに腐らずバネにして人知れず悪平等(ノットイコール)なる存在に昇格するまで這い上がれたからこそ出せる一種の説得力なんだろう。

 だから俺も木場も毎日コイツの所に来てしまう。

 

 兵藤誠八の行動に嫌気が刺し、初恋の人を文字通り寝取られえ疲れた心を癒すために――いや、癒えても多分イッセーのもとへと行ってしまうのだろう。

 

 

「ん、どうした匙同級生?」

 

「ふっ、別に? 生徒会室に戻るなら茶の用意が欲しいぜってな」

 

「なんだそんな事か、当然用意するぞ。

お前と木場同級生が俺達を必要としなくなるまで付き合うつもりだからな」

 

「………。すっかり私と一誠様の愛の巣が皆様の喫茶店になってしまいましたわね。

まぁ、一誠様が楽しければそれでよろしいですが」

 

 

 いっそお前がもし女だったら確実に惚れてたろうな、俺も木場も。

 其れほどにお前のところは自覚してねーだろうが居心地が良い。

 

 

 

 

 

 

 眷属の絆なんて『くだらねーカス』とすら思えるほどにな。

 そうだろ? だって――

 

 

「あら匙? そんな所で何を――」

 

「球技大会の練習ですよ先輩。

ですが、アンタ等がゴチャゴチャと喧しいせいで中止になり、代わりに生徒会室で美味しいお茶会っすわ」

 

 

 もはや今のこの人に声を掛けられようとも……。

 

 

「はい? 何ですかその口の聞き――」

 

「おっと、昔の俺はこんな口調じゃないっすか。

人目も憚らず醜く一人の男を取り合ってるアンタに失望の一つぐらい許せよ、器が小せぇなー?」

 

 

 なーんにも思わなくなっちまったんだもん。

 

 

「なっ!? 何ですっ――」

 

「おい、木場と塔城さんもこんなくだらねー茶番に付き合ってねーで此方来いよ。

何でもイッセーが地方で手に入れた美味しいお茶がどうとかってよー」

 

 

 俺は負けたのだ。周りを思うがままに虜に出来るなんてクソくだらねぇ奴に負けたのだ。

 その時点で俺の気分は急激に冷めてるし、目が覚めた事で冷静になった思考のもと、呆れ顔の顔のイッセーとフェニックスさんには悪いが、この程度の一言くらいこの人に言っても『俺は悪くねぇ。』

 

 

「おい匙同級生……お前」

 

「へぇ……意外な早さでしたわね」

 

「見れば見るほど冷めちまってな。まあ、一言くらい言ってもバチは当たんねーだろ?」

 

 

 俺にこんな事を言われるなんざ思っても無かったのか、シトリー様は少々ショックを受けたご様子で此方を見てくるのを無視して、居心地が良すぎる居場所をくれた二人の悪平等(ノットイコール)とやらにヘラッと頬を緩める。

 

 くくっ、逆らわれるなんて夢にも思わず、そんなツラになってるとしたらめでたい思考回路だぜ。

 ただまあ、それでもアンタ等はグレモリー共と醜く兵藤の馬鹿の取り合いで幸せにでもなってなさいよ、俺と木場と塔城さんはそんなもんに巻き込まれるのは御免被るんでな。

 

 周りの女共と性欲馬鹿の取り合いをするのが幸せかは知らんがな。

 

 

「ちょっと待ちなさい匙!」

 

「そうよ、小猫と祐斗は練習を――」

 

「練習ぅ?

……ハンッ! そこでそ知らぬ馬鹿ツラ晒してる奴を大人数で取り合うのを白けた目で見るのが練習なんすか? 聞いたことねーなそんなの」

 

 

 まだボーッとしてる木場と、帰りたいオーラがずっとの塔城さんを連れ出そうとする俺に、反抗的なのがお気に召さない『我が王様。』と木場と塔城さんの王様が……いや、兵藤シンパの全員が殺気立って此方を睨んでらぁ。

 ったく、どこまでも俺を失望させてくれるぜ……っと?

 

 

「兵藤一誠……でしたね。最近匙と親好があると聞いてましたが、匙に何をしたのでしょうか? 少し前までの匙にまるで違う」

 

「そうね、うちの小猫と祐斗も最近反抗的だし、セーヤに嫉妬したアナタの入れ知恵かしら?」

 

「…………は?」

 

 

 おいおいおいおい、此処に来てイッセーに矛先変えやがったぞ? そらイッセーもポカーンとするわ。

 

 

「何をほざいてますの、このカス共は?」

 

 

 にしても無知って幸せだよな。

 イッセーにそんな真似したら、今ボソッと声を出したフェニックスさんがヤベーのによ。

 ハッキリ言って、フェニックスさんって絶対にこの連中なんて束でも捻り潰せる『迫力』があるのにね……。

 

 

「いや……俺はなにもしてないぞ? 寧ろ匙同級生が貴様等に啖呵を切るとは思わず、俺も驚いてるというか」

 

「そりゃそうだ。俺も話し掛けられなかったら言わんつもりだったしな」

 

「「………」」

 

 

 シンパどもの殺気を受けても平然としながら返すイッセーに、グレモリーと先輩――いや、『シトリー』は信じちゃ居ない様子なので、俺が横から補足する。

 ふぅ、先に元浜と松田の二人を生徒会室に向かわせて正解だったな……。

 

 

「ただ、まぁ……匙同級生もそうだが、木場同級生や小猫を蔑ろにして兄貴の取り合いに興じてればこうもなると俺は思うぞ?

生徒会室に来る理由だって、それに対しての不満だしな」

 

「なっ……」

 

「アナタ達、そんな事を彼に!?」

 

「そっすよ」

 

「え、まあ……」

 

「寧ろ当たり前だと思いませんか? 悪魔の仕事すらこっちに押し付けてるんだし、愚痴やら不満の一つくらい生まれるでしょうに」

 

 

 塔城さんの言う通りだわ。

 てか割りとシレッとハッキリものを言うよな塔城さんって。

 流石フェニックスさんとやりあえるだけあるぜ。

 

 

「へぇ、二人に不満があるのか……だったら眷属やめたら?」

 

 

 表だって言われると思わなかったのか、顔を歪める連中にちょいとスッキリした気分になると、それまで静観顔していた兵藤の馬鹿が待ってましたとばかりな空気を隠しもせず俺と木場…………ん? 俺と木場だけにそう言ってきた。

 

 あぁ、塔城さんは女の子だからってか? 救いようのねぇ馬鹿だなコイツ。

 

 

「やめさせて貰えるならやめるが? まあ、決めるのはシトリー様だが、この様子じゃあ直ぐに叶いそうだなぁ?」

 

「っ……匙……!」

 

「祐斗と小猫はどうなの!?」

 

「どうって……居心地の悪い空間から出られるのであれば僕は吝かじゃありませんけど」

 

「祐斗先輩と同じく。寧ろ私たちが居なければ気兼ねなく、互いをまさぐり合えるのでは?」

 

「う……」

 

「ふ……くっふふ……!」

 

 

 こんなにアッサリ辞めると言われるとは思わなかったのか、ムカつくヘラヘラ笑ってた兵藤も驚いてる様子だった。

 考えなくてもわかるだろうに……それほど周りが見えてない証拠か? ガッカリだぜ本当、そらフェニックスさんも笑うわ。

 

 

「ま、そういう訳なんでクビにしたければお好きにどうぞ。出来れば早めにね。

じゃ『また今度とか。』」

 

「僕も失礼します」

 

「練習なら個人でちゃんとやりますので、私もこれで失礼します」

 

 

 ほらな、木場と塔城さんも見限り始めてらぁ。

 

 

「ま、待ちなさい! 話はまだ終わってないわ!」

 

「戻りなさい!」

 

 

 戻っても話なんて進展しねーだろう? 誰が戻るか馬鹿らしい……んな事より今から生徒会室に戻ってこの話を肴にしてお茶会した方が絶対に楽しいわ。

 背後から聞こえる喧しい声をBGMに、俺と塔城さん……そしてさっきまでボーッとしていた木場までもが密かに口を半月の形に歪めた笑みを浮かべると、『はぁ、仕方のない奴だ』と言いつつ、俺達を許すように緩く微笑んでるイッセーとフェニックスさんと共にその場を去るのであった。

 

 

 

 

「…………………………クズ共が……!」

 

 

 プライドを傷つけられた馬鹿が勝手にキレてようが、俺は知らんな。

 

 

「おい、匙同級生よ。あんな啖呵を切ってしまって大丈夫なのか? 今の兄貴シンパな彼女等なら簡単にお前を――」

 

「構いやしねーよ、寧ろクビを切られた方がお前等と堂々とツルめるしな」

 

「むぅ、何か起こらなければ良いが……」

 

 

終わり。

 

 

 オマケ。

 全てから逃げられたお姉ちゃん。

 

 

「此処がイッセーのお家……」

 

 

 一誠達が学園で青春している頃、当然その間は留守になっている筈の一誠宅のアパートにて、一人の少女が上がり込んでいた……閉められていた鍵をピッキングして。

 

 

「すんすん……にゃにゃ……白音の言ってたレイヴェルって子の匂いが混ざってるけど、ちゃんとイッセーの匂いもするにゃ……えへへ」

 

 

 かつて修行の片手間で襲われていた所を、一人の少年に姉妹共々助けられた姉の方。

 名を黒歌という猫妖怪の上位種である少女は、はぐれ悪魔という現実を、転生悪魔だったという現実をも否定し、逃げさせて自由にしてくれた少年の変わらない匂いに一人頬を染めながら、成長し青年になっただろう彼が生活している空間を全身で満喫していた…………モロの不法侵入で。

 

 当然犯罪なのだが黒歌にその自覚は全く無く、匂いを頼りに何故か押し入れから探し当てた枕と掛布団にスーハースーハーしている。

 

 

「変わらないにゃ……あは、あははは♪ あの時のイッセーの匂いだにゃぁ……♪ 早く、早く会いたいな」

 

 

 枕、掛布団。果てには洗濯籠にあったYシャツにまでスーハースーハーしている黒歌は、家主の許可無しにトリップする。

 それはまるで……………ストーカーの様に。

 

 

 黒歌

 種族・猫妖怪。

 

 

備考…………少なくとも一誠とレイヴェルに悟られないレベルのスニーキングスキルを持つ、半ストーカー

 

 

 

 

 

「……。うぬ……!?」

 

「? どうされました一誠様? 窓の外に何か?」

 

「いや……こう、背中にゾゾッとしたものが」

 

 

To be continued?




補足

一足早く匙きゅんが見限りだしました。
そして前話と今話の間に触りだけ聞いた悪平等(ノットイコール)に興味津々。

え、言葉遣いが負完全っぽくちょくちょくなってる?
それは気のせいさ。


補足2
黒歌さん然り気無く凄い&ちょっとアレな巻。
早く会いたくて色々と突っ切ってます。

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