IS学園 秘密の地下相談室   作:????

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I・Oくんの相談

 IS学園の地下区画の一つ、そこには秘密の部屋が設けられていた。

 

 教師専用相談室

 

 それはIS学園に在籍する教師のメンタルケアの為に存在する相談室だ。

 しかし、その相談室の主、『月崎瑞希(つきざき みずき)』は、お人好しな性格のため、偶に迷い込んでくる生徒の帰り道案内ついでに相談までしてしまうのだ。

 これは、そんなカウンセラーの物語である。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ふぁ~あ、相変わらず暇だなぁ……」

 

 そこにいる女性、月崎瑞希はいつもどおりの客(患者)の少なさに、暇を持て余していた。

 しかし、カウンセラーの仕事など、無いほうが良い物ばかりなので、彼女はその生活に満足しているのだ。

 

「あのー」

「ん!? お客さんかな?」

「いえ……道に迷ってしまって……。気が付いたらこんなところに来ていたんですけど、帰り道を教えてくれませんか?」

「ああ、いいよいいよ。案内してあげよう、っと、の前に」

 

 最近は見なかったのだが、この場所にはよく人が迷いこんでくる。

 特に新しいことを見つけたい新入生などが、よく迷い込んでくるので、案内作業は慣れている。

 なので、いつもどおりに案内しようか、思い、少年の顔を見ると、その顔色はとても悪かった。

 

 顔面蒼白など、カウンセラーとしては見逃せないことなので、話を聞いてみる。

 

「まあまあ、座ってよ」

「え、あ……はい」

 

 少年は少しの抵抗を見せるも、仕方ないと諦めたのか、それ以降はおとなしく席に座った。

 

「で、キミ顔色が悪いけどどうしたの?」

「え……? 俺の顔色ってそんなに悪いんですか……?」

「ああ、相当悪いよ。とりあえず疲れているならここで休むといい。心がつかれているなら直してあげるよ」

「仮眠もできるんですか……。まあ、いいです。相談なんですがね」

「何があったんだい?」

「同級生にセシリアって」

「あ、まって。名前出しはNG。私が今後カウンセリングをするときい気まずくなったりするから」

 

 一定の生徒の意見を聞いて、その意見を聞いた月崎は今後、その生徒にあった時にこの相談を思い出して気まずくなったりするだろう。そのため、名前出しはNGにしてほしい。

 そういったことを考えている彼女は少年に名前を伏せさせた。

 

「せめてイニシャルでお願い」

「……じゃあ、Sって呼びますね。そのSって、料理の腕が壊滅的に悪いんですよね……なんででしょうか」

「Sちゃん、ね。うーん、何が悪いっていうのは直接見なきゃわかんないんだけど……あっ、作り方とか聞いた?」

「聞きましたけど……教えてくれないんですよね」

「うーん、それじゃあわかんないかな」

「……そうですか」

「因みにその料理ってどのくらい悪いの?」

「どのくらい悪い……?」

 

 少年は腕を組んで考え始めた。

 不味い、ということはレトルトでも何でも無いだろう。正真正銘の手料理だ。

 なぜなら不味いレトルトは売れないために、売られない。つまり、そういうことだ。

 

「何が悪い、って聞かれると答えられませんね……」

「それなら、その悪いところを見つけてみなよ。なんでも頭ごなしに『悪い』って言ってるといつかそれしか言えなくなるよ?」

「悪いところを探す……? わかりました、やってみます」

 

 きっと少年は今まで人間の悪いところを探すという行為をやって来なかったのであろう。

 しかし、それでも、少し顔をしかめながらも少年は『悪いところ探し』をやると了承した。

 少年は一歩大人に近づいたのだ。

 

「はい! それじゃ、出口まで案内してあげるよ」

「え? もう終わりなんですか?」

「うん。私もノルマ達成したしね。あ、そういえば、美味しい不味いの次は好き嫌いを決めるといいよ。自分の好きな味とかあるしね」

 

 一日1回のカウンセリング。

 地下に設置されたこの教師用のカウンセリングルームではほぼ不可能なことだろうけれども、上昇志向を忘れては何もできない。

 そのため、彼女はそういった目標を決めているのだ。

 

「それじゃ、行きましょうね~」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「それにしても、良い人だったなぁ」

 

 昼休み、学生にとってのその時間帯はいくらあっても足りない、かけがえのない時間だった。

 そんなかけがえのない時間を、世界で唯一の男性IS操縦者『織斑一夏(おりむらいちか)』は軽はずみな探検で潰してしまった。

 

 しかし、彼が得たものは大きかった。

 彼の友人S・O、セシリアの料理改善の目処が半分経ったようなものなのだ。

 

「よし、早速セシリアに聞いてみよう」

 

 そう呟いて、セシリアを探すことにする。

 

「……どうしたんですの? そんなところにいて……」

「あ、セシリア。なんでここにいるんだ?」

 

 探そうと思って林を出ると、そこにはセシリアがいた。

 

「なんでもなにも……みんな一夏さんを探していたのですよ?」

「あ、悪いな……」

「全くです。さ、教室に戻りましょうか」

 

 そう言って、踵を返して教室の方へ戻っていくセシリア。

 

「あ、なあセシリア。今度一緒に料理を作らないか?」

「いいい一緒に!?」

「? ああ、今度一緒に」

「ええ、いいですわ! いつにしますの!?」

 

 とても慌てた様子で手帳を開くセシリア。

 

 何だ? この様子は、もしかして予定でも入って忙しいのかな? だとすれば無理やり俺のために時間を設けてもらうのは申し訳ない。

 しょうがないので今回は諦めるとしよう。

 

「あー、セシリア、忙しいならまた今度でいいんだぞ?」

「いえいえ!! わたくし今日から一週間は予定は入ってないんですの!! いつでもいいですのよ!?」

「お、おう……」

 

 その光景を木の影から見る少女が一人居た。

 

 彼女の名前は凰・鈴音(ファン・リンイン)、中国代表候補生であるIS操縦者であると同時に、織斑一夏に恋する女の子でもある。

 

 そんな恋する乙女が、このような話を聞いたらどういったことをするだろうか。

 

 答えは単純、妨害工作だ。

 

「これは……箒たちにも伝えなきゃね……」

「ふふふっ、抜け駆けはさせないわよ……」

 

 こうして少女達の妨害工作は始まった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ルンルン♪」

「ねえ、セシリア」

「ひゃ!? ななな、なんですの鈴さん!?」

 

 すぐ後、廊下での出来事である。

 

「私、見たの」

「なななにをですの!?」

「アンタと一夏が料理の約束を取り付けるのを」

「そ、それがどうしましたの……?」

 

 すでにセシリアの顔色は真っ青になっていて、生気が抜け始めている。

 

「もちろん、わかってるわよ……ね?」

「ああぁ……せっかく二人っきりでしたのに……」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「で、どうしてこうなった……」

 

 家庭科室、そこで料理対決が開かれていた。

 参加選手は篠ノ之箒、凰・鈴音、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒの5名だ。

 しかし、今回、ハンデとして織斑一夏はセシリア・オルコットのアシストをするようにしてある。

 これで一夏はセシリアの調理シーンは見れるだろう。

 

「一夏とセシリアか……プラマイゼロでいい感じになるだろうけど……それでも強い」

「だね」

「うむ」

 

「それじゃ、はじめようか……料理開始!!」

 

 それぞれが自分の得意料理を作るために、まずは素材に手を出す。

 その中で、セシリアがとったものは、パン、レタス、トマト、ベーコン。どうやらBLTサンドを作るようだ。

 

「調味料を取ってきますわ」

「ああ、分かった……?」

 

 おかしい、調味料の争奪がないように各キッチンに基本的なモノは揃えているはずだ。

 なのになぜ追加で持ってくる必要がある……。

 

 家庭科室の奥に入っていったセシリアが持ってきたものは、ハバネロ!?

 

「あのー、セシリアさん? その手に持ったハバネロは何に使うんでしょうか……?」

「いえ、すこし辛味があったほうがスパイシーでいいかな、と思いまして」

「え、いや、あーそうだった。普通のBLTサンドが食べたかったんだ。すまないセシリア、今回は辛味無しで頼む」

「え? 一夏さんがそう言うなら……」

 

 そう言ってセシリアにハバネロを元の場所に仕舞いに行かせた。

 

「それじゃ、作ろうか」

「はい!」

 

 やることは簡単、レタスを千切(ちぎ)り、トマトを切って、置いておく。

 そうして、次はベーコンを焼く作業に移る。

 

「こっちでトースト機にパンを入れておくから、その間にベーコンを焼いておいてくれ」

「わかりましたわ」

 

 トースト機にパンを入れ、セシリアの方へ向くと、

 

「あ、セシリア、それ弱火のほうがカリカリッと焼けて美味しいよ」

「あら、そうでしたの? いつも強火で焦がしてしまうんですよね……」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 ……あれからミスはなかった。

 つまり、セシリアのあの味は、独自のアレンジと火加減によって作られているということだ。

 

「それじゃ、採点と行きましょうか」

「そうだな」

 

 採点者には、日頃の感謝も込めて山田先生と千冬姉を呼んである。

 あの二人のおメガネに叶う料理は一体どの料理なのか。

 

「和食か……篠ノ之だろうな、とりあえず食ってみようか」

「篠ノ之さんって和食が作れたんですね~」

 

 二人は箒の作ったお寺に出てくるような精進料理を食べる。

 

「ふむ、うまいな」

「普通においしいです~」

 

 どうやら好印象な模様。

 箒の顔も自慢顔だ。

 

「で、次は酢豚か」

「凰さんでしょうね」

 

 酢豚を口に含む。

 

「む、この絶妙なバランス。さすが酢豚以外作れないだけはある」

「酢豚以外にも作れるわ!!」

「でもホント美味しいです~」

 

 

 こうして、各々の料理採点が終わって、いよいよ次はセシリアの番になった。

 

「サンドイッチ……セシリアか」

「セシリアさんって料理出来たんですね~」

 

 セシリアは、その言葉を聞いて手を固く握り締めた。

 

「ま、まあ、食べてみてくださいな」

「そうする」

「美味しそうですね~」

 

 ハムッ、と擬音が立ちそうな勢いでサンドイッチに齧りつく二人。

 

「!?!?!?」

「ーーー--ッ!!??」

「先生!? どうしたんですか!?」

 

 どういうことだ!? 俺は料理から目を話してなかったはず……一体どこで何を入れたんだ!?

 

「あら、美味しすぎて気絶したんですか……?」

「わたくしの隠し味(・・・)にシビレたんでしょうね」

 

 シビレたんじゃない、痺れたんだ。そしてそのポケットから出したデスソースはどこから持ってきた!!

 

「それじゃ、みなさん、余った料理を食べましょうか」

 

 ガタガタ、と聞こえてきそうなほどみんなが震えているのが分かる。

 あの千冬姉を倒したんだ。一体これにどんな破壊力が秘められているか……。見てみろ、鈴と箒が抱きついて震えてるよ。

 

「あ、一夏さん、どうぞ」

 

 あああこっちにターゲットが来た。

 あ! そうだ!!

 

「セシリア! お前、味見してなかっただろう? 今、やってみるといい」

「……? わかりました」

 

 セシリアがその■■■■(サンドイッチ)を食べる。

 

「-----ッ!!??」

 

 声とも言えない声を出して、セシリアは気絶した。

 

「……俺、やっぱお前らの(料理の)ほうが好きだわ」

「---ーーッ!!??」

 

 次は鈴が気絶した!?

 一体どうなっているんだ?

 

「一夏……お前正気か?」

「一夏、大丈夫?」

「嫁よ、正気に戻れ」

「……なんだよ、料理の好みくらい伝えさせてくれよ……」

 

 いいじゃん。




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