IS学園 秘密の地下相談室 作:????
IS学園地下一階にある相談室は、いつもとは違う雰囲気に包まれていた。いつもどおりに奥側の椅子に座っているのは
「あなたもいる?」
「お前は今の状態がわかっているのか……?」
対して、正面の入口付近に立っている少女は月崎に対して銃口を向けていた。黒髪のセミロングで、切れ目の彼女は、見た目だけならば世に名を轟かせている
「まま、とりあえずなんでここに来たのかを教えてくれないかい?」
未だに肘を机に付いて余裕を保っている月崎に苛立ったのか、千冬似の彼女は手に持った銃から銃弾を放つ。その銃弾は頬すれすれの位置を通り過ぎる。
しかし、月崎はそれを見ても余裕の表情を保つ。
「ほら、早く座りなよ」
「……くっ」
余裕の態度を崩さない月崎だが、千冬似の彼女はその光景を見て、なにかとっておきのものを隠し持っているんじゃないかと思案し、結果としておとなしく席へと着いた。
「さて、これでまともに話ができるね」
「抜かせっ、何かを隠し持ってるクセに」
「んー、なんのこと-?」
「白々しい」
こうした余裕の態度を保っている月崎だが、とっておきの手段などあるわけもない。正直に言うが、千冬似の彼女は信じてくれない。いや、とっておきと言えるかはわからないが、この状況を打破できるものはあるのだが。
「埒があかないね。それじゃ、話に移ろうか」
「ふんっ」
「キミはどうしてこの学園に来たの?」
そう、彼女はIS学園への不法侵入者なのだ。その彼女が、なぜこんなところにいるのかというと……分からない。なので、今聞いているのだ。
「言うと思っているのか?」
「言うでしょ……?」
そう言って、身体を少しだけ揺らす。もちろん、この行動はなんてこと無いもの、ブラフだが、なにか隠し持っていると勘違いしている彼女にとっては、とびっきりの行動だろう。
「言わなきゃ、ね?」
「……クソッ」
「お、やっと言ってくれる気になった?」
銃をレッグホルスターに仕舞い、両手を机の上に投げ出して降伏の姿勢を取る彼女。
「何が聞きたい」
「いや、だからさっきから同じことを聞いているんだけど……」
「……私の私怨を果たすためにここに来た。これでいいか?」
「私怨の内容なんか聞いてもいい?」
「…………」
「だんまりか」
しかたない、と再び思わせぶりに身体を揺らす。だが、今度は反応しない。
「フッ、何も無いんだろう?」
「……!?」
右手で一瞬の内に銃を抜き、目の前に突き付けられる。何故なにもないと気づかれたのだろうか。
「私の頭を見てみるといい」
彼女の頭を見る。すると、そこには先程までなかった、機械的な物があった。
「I……S?」
「そうだ。サーモからなにまで、お前の周辺を探ったが何もなかった」
つまるところ、月崎は彼女がISを持っていた時点で敗北していたのだ。
「後ろはしっかりと見ていたのか?」
しかし、そんな状況も後ろから声がかかってきたと同時に、ISが解除されることによって激変する。
「なに!?」
「こんなものか……」
後ろを振り返ると、そこには右手に彼女のISの待機状態を持った織斑千冬が立っていた。その姿は今この時に現れたようなものではなく、ずっと前からこの場に居た様な、そんな雰囲気を醸し出している。
「いつの間に現れた!?」
「酷いな、ずっとお前の後ろにいたじゃないか」
精確には、彼女が部屋に入ってきた瞬間に、トビラの裏に隠れて、その後は壁に身を預けていた。
「それじゃ、チッピーおねがいねー」
「だれがチッピーだ。握りつぶすぞ」
「ま、まてッ! こいつがどうなってもいいのか!?」
月崎と千冬がほのぼのとした会話を始める中、彼女は自分の状態を有利にしようと、月崎に向けていたはずの右手を少し振る。しかし、その右手には重さがなかった。
不思議に思い、右手の先を見ると、
「あれ……?」
「いやー、ごめんね?」
そこにあったはずの銃は、月崎の右手に握られ、こちらに銃口が向いていた。そもそもに、ここはIS学園。ISといったら軍事兵器と言ってもいいものだ。そのような施設に勤めるものが軍事訓練などを受けていないはずがあるだろうか? そんなことは無いはずだ。
何が言いたいのかというと、月崎は地味に強い。
「それじゃ、こいつは連れて行くぞ」
「あ、この銃はどうする?」
「お前が持っていろ」
「はーい」
「ついでにこいつも管理しておいてくれ」
「げ、ISじゃん」
彼女、Mが呆然としている内に話は進んでゆく。そして、彼女は千冬に引きずられ、部屋から出るのだった。
◇◆◇◆◇
「は、はなせっ!!」
「離すわけないだろう」
捕らえた下手人を逃がすわけには行かない。千冬はMの右腕を抑えながら歩く。だが、途中で面白いことを考え始めた。
「しかし、そうだな……10秒やる。私から逃げ切ったら開放してやろう」
「なに!? 本当か!?」
「ああ、期限は放課後までだ。カウントを始めるぞ、十、九……」
Mの右腕から手を離し、カウントダウンを始める千冬。ひとつ言っておくことがあるならば、最近の千冬の仕事量は去年の7倍だ。
Mは、カウントダウンを背中に聞きながら、事前に調べておいた出口へと駆ける。
「それでは、追いかけるぞ」
背後からそう声をかけられ、ゆっくりと千冬がコチラに歩いてくる。しかし、その頃には、Mは出口から外に出ていた。
◇◆◇◆◇
林から走り出てきた少女、Mの姿は異常なものだ。スニーキングスーツの役割も果たしている暗色のISスーツに、セットであろうか、ISスーツの色に似たラバーの靴を履いている。それは潜入するときにうってつけの格好だ。しかし、ここはIS学園本島だ。IS学園ということは学生の島である。よって、周りにいるのはすべて制服を身に纏って歩いている生徒のみ。教師は見当たらない。
「逃げなければ……逃げなければ……!!」
何かにとりつかれたようにそう呟きながら 走る姿は、たとえIS学園の制服を纏っていたとしても異常に見えること間違い無しだろう。
彼女は、やっとのことで校舎にたどり着く。
「逃げなければ……逃げられなかったら……? ああ、そうか。当初の目標通りにあいつを狙えばいいのか……そうか……そうか……」
今までは、うつむいて顔を隠しながら宛もなく走っていたが、今度は、顔を上げて何かを探すように、周りに目を配りながら走る。
「何を探しているんだ?」
すぐ後ろから千冬の声が聞こえてくる。
バッ、と後ろを振り返るが、そこには何もない空間が広がっているだけで、千冬などは居ようもない。ついに恐怖で幻聴でも聞こえ始めたのだろうか? 幻聴ならば納得が行く。と思い、再び前を向くと、
「ああ、そうだ。生徒に危害を加えると容赦がなくなるから、覚悟しておけよ」
目の前に千冬の顔がアップで映し出された。よく見ると、その瞳は深く濁っており、見ているだけで恐怖が湧いてくる。
「ひっ、クソッ!!」
反転。本来進もうとしていた反対側の通路へと走る。そして、突きあたりに設置されている階段で、上階へと昇る。
--二階。
--三階。
校舎は4階まであるが、一応のために三階の廊下に出る。廊下に出て、辺りを見回すと、10mほど先にこの学園ではとても珍しく、希少種とも言えるような、男子生徒の背中が見えた。
喜色満面、素晴らしい笑顔でその男子生徒に向かって突っ込んで行くM。そう、彼女の狙いとは彼だったのだ。
「見つけたぞぉぉぉぉ!!!」
「……ブベッ!?」
Mが吼えると、その声に反応して、男子生徒はコチラを振り返る。が、しかし、その振り返った顔にはMの拳が叩きこまれた。変な声を出した後に倒れる。
流れるように、マウントポジションを獲得したMは、周りの様子など確認せず、そのまま男子生徒の顔をタコ殴りにし始めた。
◇◆◇◆◇
男子生徒の顔がアン○ンマンに見えてきた頃、Mの背後に立つ者がいた。
「気は済んだか?」
「ああ!!」
長年の願いがかなったような、そんな顔で振り返り、ガッツポーズをする。と同時に、顔面を捕まれ、宙に浮く。俗にいうアイアンクローだ。
「お前はこれがしたかっただけか?」
「ああ、そうだ。私はそこの織斑一夏をフルボッコにできれば其れで良かった」
「そうか、なら死ね」
そして、やっとのことでアイアンクローから開放される。窓を突き破って外に投げられるという形で。
ここは三階だ。普通の人間ならば、そんなところから落ちたら死ぬだろう。だが、あいにくのこと、Mは普通の人間ではない。
身体を捻り、体制を整え、着地する。着地時の衝撃は、全身のバネを使って相殺した。
「ふう……私が訓練を受けていなければ死んでいたぞ……」
織斑千冬なら飛び降りてくるだろうと、その場から全速力で離れる。
「……そういえばISを没収されていたんだったな」
走る方向を変え、地下の入り口へと向かおうとする。が、Mは視界に入ったものを見て、ニヤリッと笑った。目に入ったものは地下施設に空気を送り入れるためにある、ダクトホース。幸いというべきか、彼女の身体は小柄であり、入るだろう。
「ついでに織斑千冬も撒くか」
近くにあった物を踏み台にして、ダクトホースへと入り込む。
しかし、5回目の曲がり角、そこを曲がった瞬間にMはダクトホースから脱出した。なぜそんなことに及んだのかというと、遠く先、ダクトホースの中に千冬の姿がちらりと見えたのだ。
まずい、まずいまずいまずい。
「クソッ、こっちか!!」
その場から相談室までの最短コースをMは駆ける。うしろを見ると千冬がゆっくりと歩いて来る姿が。
「なんだ? 逃げるのか?」
千冬がその声を発したと同時に相談室に入る。
相談室の中には、机で寝ている月崎と、そのとなりには、自分のIS、『サイレント・ゼフィルス』の待機状態があった。
急いでそれをを手に取り、相談室を出る。千冬はまだまだ遠い。そう確認したMだが、一応のためにISを展開して、
その姿は、まるで死を恐れてライオンの前から逃げ出すうさぎの様だった。
◇◆◇◆◇
相談室の中、織斑千冬と月崎瑞希は向かい合って話をしていた。
「で、手はず通りに仕掛けたか?」
「もちろん、言われたとおり発信機を仕掛けたよ」
「そうか。では、私は被害にあった生徒の様子を見てくる」
「じゃーねー」
そうして部屋に残ったのは月崎ひとり。
「それにしても……すぐにバレそうな発信機を仕掛けて、チッピーは何がしたかったんだろう」
気に入ったの、チッピーチッピーと呟く彼女だった。
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