IS学園 秘密の地下相談室   作:????

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H・Nちゃんの相談?

 IS学園本島地下一階の廊下。とある部屋の中から光が溢れていた。

 

「むふぅ、これもなかなか」

 

 彼女の名前は月崎瑞希(つきざきみずき)、IS学園で働いている臨床心理士、俗に言うカウンセラーだ。カウンセラーとは資格の名称ではなく、書類上では臨床心理士となる。

 そんなことは置いておいて、月崎のいる部屋、カウンセリング室の机の上には色々なお菓子があった。それは、山田先生からの差し入れであり、前回相談に乗ってくれたお詫びだそうだ。

 本来ならば受け取ってはいけないであろうものだが、一度断ると山田先生が泣きそうな顔をしたので、仕方なく受け取らせてもらった。

 

「ふぅ、しかし、なんでこんな量を持ってきたんだろう」

 

 全20種類のお菓子をそれぞれ1袋ずつ持ってきてあり、処理することができずにいる。

 そんなお菓子だらけの相談室に立ち入る者が一人。

 

「あれ~なんでこんなにお菓子があるの~?」

 

 袖がダボダボに余った胸の大きな少女が扉から入ってきた。更に第一声はお菓子の事。月崎を容易に混乱に陥れる。

 

「えっと……お客さん?」

「お客さん~? 何のこと~?」

「あー、ここ、相談室なんだよね」

 

 頬を掻きながら控えめにそう言う。対するだぼだぼの少女は寝ぼけたような返答。

 

「とりあえず~お菓子食べていい~?」

「お菓子ぃ? いや、別に構わないけど……」

「ありがと~」

 

 モグモグ、そんな音が表示されそうな緩やかな速度でお菓子を食べてゆく少女。月崎はそのペースに呑まれてしまう。

 

「おいし~い」

「そ、そう?」 

 

 とりあえず、と自分の分を近くの戸棚に閉まい、改めて席に着く。それと同時にだぼだぼの少女は一息ついた。

 

「で、ここはどこなの〜?」

「知らなかったのね……いや、そうよね。話を聞いてなかったし……」

「ねえねえ〜」

「……ここは相談室よ。なにか相談とかある? というか貴方の名前は?」

 

 なんとか立て直し、無理やりいつも通りの自分を取り戻した。そして、いつも通りの自分がやることと言ったら? カウンセリングである。

 

「あ、私の名前は布仏本音(のほとけほんね)だよ〜。で、相談ね〜」

「なんでもいい。恋愛でも家庭事情でも噂でも」

「う〜ん、あ、そうだ。最近あったことを聞いてよ〜」

「最近あったこと? 何があったの?」

 

 相談とはかけ離れているが、月崎は話を聞く。

 

「う〜んとね〜、食堂でね〜、クラスメイトがね〜、働いてたの〜」

 

 恐らく、この間相談した篠ノ之箒(しのののほうき)の事だろう。

 

「で、彼女がどうしたの?」

「え〜っとね〜……なんでもないや〜」

 

 脱力。

 溜めに溜めた話のオチが何も無かったとあれば誰しも脱力するだろう。

 しかし、月崎は持ち前の根性で耐えた。耐えきったのだ。

 

「そ、そうね。他には何かある?」

 

 先ほどの話を聞いて尚それ以外の話も聞こうとする彼女は傍からみるとどう映るのだろう。

 

「他にか〜、ないなぁ」

「えぇ……ほんとに無いの?」

「うん、ないな〜」

 

 困惑しかない。悩みがないのだろうか。

 

「あ〜、そうだ〜、かんちゃんの〜、悩みを〜、聞いて欲しかったな〜」

「かんちゃん?」

「うん〜、人見知りな〜、友達いない〜、私の友達〜」

 

 友達がいないのに友達とは……どうなっているんだ……。

 

「ま〜いいや〜、ここに〜、連れてくるね〜」

「あ、ちょっ待って」

 

 話を聞かずに走って部屋から出ていった。急いで廊下に出て周りを見回すが、誰もいない。

 

「大丈夫かな……」

 

 見たところ、来た道が分からないようであったから帰り道を案内しようかと思っていたところにこれである。心配をしないはずが無い。

 

「あ、これ」

 

 机の上にあったのは、少女が食べたお菓子の空──ウイスキーボンボンであった。

 

「あれ、これ大丈夫なの?」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 その頃、地下通路からの出口に人影があった。布仏本音である。彼女はどこにそんな力があったんだと言わんばかりの全力疾走で、他に類を見ないほど速く走っていた。目指すはかんちゃんとやら。にげてかんちゃん。

 

「むふふ〜かんちゃんはどこだ〜」

 

 道行く人から変な目で見られながらもかんちゃん、更識簪(さらしきかんざし)を探し回る。

 そして彼女は校舎内へ。

 

「やっほ〜かんちゃんいる〜?」

「え、布仏さん!?」

 

 何も考えずに4組へ突撃した彼女は、簪の場所を4組の生徒へと問う。

 

「いや、居場所は知らないよ」

「そっか〜、じゃ〜ね〜」

 

 知らないと聞くとすぐさま教室を出て、廊下を駆ける。

 

「こらっ、布仏さん! 廊下を走ってはって!?」

 

 途中、緑の人影が見えた気がするけれども、すぐに何処かへと飛んでいった。目指すは簪、障害物は排除するまで。

 

「食堂に行ってみよ〜」

 

 ああ恐ろしきかな。全力疾走の最中に行方を決める。右足を前に出し、土踏まずの部分を下にして地面へと付ける。その際、出来る限り膝を曲げ、重心を移動させて、身体に負担を掛けないように掛かる圧力のベクトルをも曲げる。そして、速度を微塵も落とさずに90度カーブを成す。

 普段の彼女には出来ない行動だ。

 

「か〜んちゃ〜ん!!」

 

 食堂への道中、特徴的な髪色を見つけ、飛びかかる。

 

「ちょっ、本音ちゃん!?」

「あれ〜? 会長〜?」

 

 簪を見つけたと歓喜したのもつかの間、見つけたと思った人は簪の実の姉である更識楯無(さらしきたてなし)だった。

 

「それよりもかいちょ〜、かんちゃんしらない〜?」

「簪ちゃん? てかそれよりも少しはお酒の匂いがするような」

「かんちゃんの場所しらないの〜?」

「あなた、お酒飲んでない?」

「の〜ん〜で〜な〜い〜」

「絶対飲んでるでしょ……」

「もういいもんっ、自分で探すもんっ」

 

 そう言って、全力疾走で何処かへと走り去ってゆく。

 

「ちょっと、待ちなさいー!!」

 

 悲しいかな。その声は届かない。

 

「くっ、簪ちゃんに報告だけでもしておきましょう」

 

 携帯を片手に妹へ電話をかける更識家当主だった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「と〜ちゃ〜くっ!」

 

 道中、何かとあったが、目的地である食堂へと到着した本音は、予定通り簪を探して周りを見渡す。

 しかし、簪の特徴的な青色の髪の毛を持つ生徒はいない。

 

「む〜、どこにいった〜?」

「来ましたか」

「あれ〜、おねーちゃん〜?」

 

 声をかけられ、振り向くとそこには実の姉、布仏虚(のほとけうつほ)が腕を組み、不機嫌丸出しな顔で立っていた。

 

「おねーちゃんど〜したの〜?」

「どうしたもこうしたも……はぁ」

 

 偶に自分へのご褒美として、食堂のパフェを食べることにしている彼女は、食堂にいるからという理由で本音の相手を任された。

 パフェを食べ始める時に電話がかかってきたのだ。時間なんてあるはずも無い。速く対応をしなければパフェの上に乗っているアイスが溶けてしまう。

 虚は素直に本音が帰ってくれる事を願うばかりである。

 

「ほら、大人しく教室へ帰りなさい」

「おねーちゃんかんちゃんしらな〜い?」

「知 り ま せ ん 。ほら、早く帰らないと織斑先生を呼びますよ」

「むー、さんじゅーろっけいにげるにしかず〜!」

 

 食堂内は大方横目で確認し終えた後なので、未練はない。本音は食堂から出ていった。

 

「はぁ、織斑先生に連絡を入れないといけませんね」

 

 静かに電話を取る苦労人だった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「布仏、そこまでだ」

 

 校舎へと走る。その道中に現れたのは、IS学園の鬼、世界最強(ブリュンヒルデ)の名を背負った女性、織斑千冬(おりむらちふゆ)だ。

 

「流石に目に余る行動をし過ぎたな。罰はそうだな……1週間の謹慎と反省文50枚程でいいだろう」

「織斑せんせー……? ふっふっふ〜、今の私を止められますか〜?」

「はっ」

 

 本音の余裕綽々な態度を鼻で笑う。たかが生徒の暴走、世界最強に勝てるわけがない。

 

「今の私は〜、誰にも負けない気がするんです〜」

「いいからかかって来い」

「行きますよ〜」

 

 常人の目には見えないであろう速度で本音は千冬に飛びかかる。そして、目の前に迫り、殴りかかる。

 

 が、しかし、千冬が一瞬で放ったクロスカウンターにより、気絶することになる。

 

「わたしぃ〜んぁ」

「はぁ……反省文を50枚追加だ」

 

 こうして、布仏本音の暴走は止まったのである。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 食堂では、黒髪(・・)の女性がうどんを啜っていた。彼女の名前は更識簪。布仏虚から貰ったカツラを被った只の日本代表候補生だ。

 

「ん、いつも通りの味だな……」




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