IS学園 秘密の地下相談室   作:????

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C・Aちゃんの相談

 IS学園の地下、そこには形骸と化しているが、一応、教師用という名目で設営されているカウンセリングルームがあった。

 部屋の主は月崎瑞希(つきざきみずき)。住処はIS学園、職場もIS学園、ここまでくると分かるだろうが、彼女の悩みは彼氏ができないことだ。

 

 そんな彼女は一体何をしているのか、と言うと、

 

「あー、ひまー」

 

 暇すぎて、ダメ人間と化していた。

 上着は乱れ、スーツの胸元からワイシャツが大幅に飛び出している。

 流石に下半身の服装の乱れはないが、それでも上半身は乱れているのだ。元女子校のIS学園でも余裕のアウトだろう。

 

「あー、ああー、あー」

 

 変な歌を喉から出していると、部屋の外に気配がしてきた。

 扉の取っ手が少しずつ捻られてゆく。

 捻られるということは、当然、扉が開けられるということだ。

 

 もう一度確認するが、彼女の服装はとても乱れている。

 このままでは、社会的地位が地の底に落ちてしまうだろう。

 

 しかし、この一瞬、扉が開かれ相手が顔をだす前に身だしなみを整えればいいのだ。

 そう考えた瞬間、ワイシャツのへその下あたりの布地を右手で握り、下にずらす。これで、パッと見たらワイシャツは普通に見える。

 そしてスーツの襟を左手で直す。

 これでパッと見たら一般的な、身だしなみの整っている教師へと早変わりだ。

 

 ガチャ、今の時代にしては珍しい金属製のトビラが開く。今、メジャーなのは自動トビラなのに、この学園に所々にあるこういったトビラはどういった意味があって設置してあるのか……。

 

「……あのー、道に迷ったんですけど……」

「おやおや、いらっしゃい」

 

 入ってきたのは、綺麗な金髪のお嬢様って雰囲気を醸し出した女生徒だ。

 金髪縦ロールって珍しいな。

 

「で、道に迷ったのかい? それならカウンセリングをついでに受けてみないかい?」

「えぇ……? なんですの、このノリは……」

「いいからいいから」

 

 そう言って私は女生徒の背中を物理的に押して、席に座らせる。

 

「で、なにか相談ない?」

「本当に急ですわね……。しかし、相談ですか……ある、といえばありますね」

 

 腕を控えめに組んで、言うか言うまいか迷う、というのを身体で表現している。

 

「言ってみなよ。もしかしたら解決するかもよ?」

「絶対に解決するとは言いませんのね……」

「まあ、ね? 私、絶対って言葉はあまり好きじゃないの」

「はあ……?」

「ま、そんなことは置いておいて、相談相談」

 

 少し影のある表情を見せる月崎。

 それを見て何を考えているのか、と訝しむ金髪縦ロールの少女。

 

 どうしよう……なんて無いことをそれっぽく言ったら、この娘難しそうに悩んじゃってるよ……。

 もしかして天然が入ってる……?

 

「あの……それで、相談なんですけど、とある1日の記憶が無いんですよね……どうしてしまったのでしょうか……」

「……記憶喪失?」

「はい……」

「周りの人に聞いてみたりした?」

「はい……聞いてみましたけど、みなさん口を閉じてばかりで……」

「うーん、難しいねぇ」

「あっ、ある人から、忘れておいたほうが身のため、という言葉を聞きましたの」

「忘れておいたほうが身のため?」

 

 どういうことだろうか、もしかするとこの金髪縦ロールはとんでもないことをしでかしたのでは無いのだろうか。

 

「その次の日に何かおかしいことなかった?」

「おかしいこと……?」

「ほら、誰かの様子がおかしかったとか、誰か休んだとか、何かがなくなってた、とか」

「あ、そういえば担任と副担任が休んでいましたわ」

「手がかりになるかもねぇ……他には?」

「財布の中に売店のレシートが入っていましたの」

「あれ、レシートなんて取るタイプだったんだ」

 

 意外だ。この少女はレシートなんてその場でポイッと捨ててしまいそうな見かけなのに。

 

「いえ、日頃はすぐに捨てるんですけど、この学園の売店はレシートを捨てる場所が無いので…部屋に帰って捨てていますの」

「と、いうことは、記憶の無い期間中に何か買った、ということか」

 

 この学園の売店には食材から文房具、果ては工具まで様々な物が売っている。

 その中で一体何を買ったのだろうか……。

 

「そのレシートを見せてくれる?」

「いえ、それが……部屋に置いてきてしまって」

「ああ……なら、内容を教えてくれる?」

「はい。え、っと……確か、パンとレタスとトマトとベーコン……だったと思いますわ」

「サンドイッチの材料だね」

「ええ、私がBLTサンドを作る時の材料ですわ」

 

 サンドイッチかぁ……ただ昼食として作っただけ、ということもあるし、まだわからないなぁ。

 ん? あれ……料理? たしかこの間……。

 

「関係ないけど、キミの料理の腕前はどのくらいなの?」

「これでも上手と自負していますわ!!」

 

 胸を張って言う。

 あ、彼女の外国人らしい胸が少し揺れた。

 

「どのくらい?」

「それはもう、食べた方が気絶するくらいおいしく作れますわ」

 

 あ、これ確定だ。

 

「うん、それじゃ、今度は周りの人に浅く聞くんじゃなくて、一人の優しそうな人に絞って聞いてみたら?」

「……? はい、分かりましたの」

 

 いきなり話題を転換したから少女は少し困惑気味にそう答えた。

 

「あ、そういえばキミのイニシャルを教えてくれるかな?」

「C・A、セシリア・オルコットですわ」

「いや、、名前は言わなくていいけど……」

「わたくしの名前は隠すものでもなんでもありませんからいいのですの」

「いや、そういうわけじゃ……いや、もういいや。それじゃ、帰り道を案内するね」

 

 そう言って、トビラを開けて、出口まで案内する。

 

 しかし、セシリア、ね。CECILIAのC……。

 

あの少年の英語の点数、悪そうだなぁ……。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「はぁ……それにしてもあの日、わたしは何をしたのでしょうか……」

 

 金髪の彼女、セシリア・オルコットは月崎から案内されて、出口から外に出た後の林の中でそうひとりごちた。

 

「絶対何かしたはずなのですよね……織斑先生と山田先生が同時に休むなんて珍しいことですし」

 

 そういうと同時に、林の出口が見え始めてきたので、外に出る。

 

 林から出た箇所は、校舎から寮へと帰る道の逆方向の箇所だった。

 

「なぜこんなところに出口を作ったのでしょうか」

 

 それを知るものは、多数いるだろうが伏せておく。

 

「さて、それでは教室へ帰りましょうか」

 

 考え事をしながら教室へ帰ることにした彼女の頭の中は、ストレスやらなにやらでいっぱいになっている。

 

 一番やさしい人に相談……一夏さんでしょうか? いや、でも前回聞いた時は断固として教えてくれなさそうでしたし……。

 いや、でも何回も聞けば少しは教えてくれるだろう……。もしあの日に粗相をしたのであれば謝らなければいけません。

 というわけで、聞きましょう。

 

 結論に達すると同時に教室へ到着する。

 

「セシリア、一夏の居場所を知らないか?」

「あら、箒さん。一夏さんはその様子じゃ教室にいなさそうですわね」

「そっちもその様子じゃ知らなさそうだな」

 

 この学園に来てしばらく経つので、お互いを見ることによってある程度の考えなら分かるようになっている。

 

「そちらはなんのようでしたの?」

「いや、ただ一夏と話したかっただけだが……」

「そうですか……それじゃ、私は探してきますわ」

「ああ、私も一緒に探そう」

「二人なら、別行動のほうが効率的ですわね」

「ああ、それじゃあ、私は校舎の中を探すぞ」

「ええ、それならわたくしは校舎付近を探しますわね」

 

 そう言って教室から去って、校舎を出る。

 

 しばらく探すと、林の中から音がしてきた。

 一体何の音だろうか、と思い、セシリアは嫌々ながらも林の中に入って、音の元を探る。

 

「あー! もう見つからないなぁー!!」

「ひゃ!? 一夏さん!?」

「あれ、セシリア? こんなところで何をしてるの?」

「こっちのセリフですわ……」

 

 林の中にいたのは、セシリアが探していた織斑一夏本人だった。

 その姿は、林の中にいたからなのか、樹の枝や葉っぱがあちらこちらに見える。

 

「とりあえず表に出ようか」

「はい」

 

 表通りに出て、近くにベンチがあるか探す。

 

 セシリアがベンチを探している間、一夏は最低減の身だしなみを整えようと、身体中に付いている枝や葉を手で払い落とす。

 

「あちらにベンチがありましたわ、行きましょうか」

「そうだな」

 

 近くにあったベンチに座り、何から切り出そうかと思案する一夏。

 

「それで、セシリアは何のようだったんだ?」

「えっと、以前も言いましたけど、私の記憶の無い一日について、話してもらえませんか?」

「いや、その話は聞かないほうがいいのかと……」

「もしかしたら誰かに粗相をしたかもしれませんし、お願いします」

 

 そう言って一夏に対し、セシリアは頭を下げた。

 

 基本的に織斑一夏という人間は頼みごとに弱い。〇〇を持ってきて、程度のお願いでも断れないほどの善人だ。

 それ故に、このお願いを断ることは出来なかった。

 

「……仕方ないな、話してもいいけど、絶対後悔するぞ?」

「覚悟はしてます」

「しょうがないな……。あの日、料理大会が開催されたんだ。参加者は俺、セシリア、箒、鈴、シャル、ラウラの6人でな。そして、何故か俺とセシリアはペアで料理を作ることになったんだ」

「まぁ! もしかして一夏さんに何か粗相を……?」

「いや、俺は何の被害も被っていない。安心するといい」

「よかったです」

 

 本心からそう思っているのか、セシリアは全身から安堵のオーラが出ている。

 

「それで話は戻るけど、その料理がみんながセシリアにその日のことを伝えようとしない原因なんだよ」

「料理……?」

 

 セシリアは、自分の料理の味に自覚がないため、首をかしげて続きを言うように促す。

 

「その料理でな……山田先生と千冬姉が気絶した」

「まあ! きっと織斑先生が気絶するほど美味しかったのですね」

「…………」

 

 料理の味について勘違いしたままのセシリアは、一夏の言ったことを、自分の料理の腕前が上がった、と間違った方向へ解釈した。

 

「ほう……いい話を聞いたな」

 

 後ろから、声が聞こえてきた。

 

「…………」

「あら、織斑先生。いかがしましたの?」

 

 織斑千冬(おりむらちふゆ)の声は怒りで震えていた。しかし、セシリアは千冬が何故起こっているのかなどわからないので、とりあえず当たり障りの無いことを言ったのだが、

 

「いかがしましたクソもあるか貴様! 私になんてものを食わせたんだ!!」

「あら、そこまで美味しかったんですの?」

「美味しくなんぞあるわけ無いだろ!! クソ不味かったわ!!」

 

 遂に千冬は真実をセシリアに伝えてしまう。

 それを聞いたセシリアは、絶句して口元を抑える。

 

「お・り・む・らぁ……お前はなんで逃げようとしているんだぁ……?」

「い、いや、織斑先生とセシリアの二者面談が始まったので、俺は邪魔かなぁ……? と思って……」

「……ふんっ、まあいい。お前も後で呼び出すから覚悟しておけよ」

 

 セシリアが固まったまま、織斑姉弟の会話は進んでいく。

 

「そりゃないでしょ!?」

「うるさい、黙れ、身体を後ろに向けて早く去れ」

「チクショウッ!!」

 

 一夏は目元を腕で抑えながら校舎の方向へ向かった。

 

「さ、て、セシリア・オルコット……後は、わかるな?」

「ひっ!?」

 

 一夏が去ると同時に意識が戻ってきたセシリアは、千冬の殺気を受けて、身を竦ませる。

 そして、千冬はセシリアの首を掴んで、校舎の方向へ引きずっていくのであった……。

 




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